近年精密加工法の進歩は誠に目覺ましいものがある.往時は普通切削仕上,研削仕上を以つて又特に高精度を要求される場合に限りラップ仕上を以つて滿足して居た加工技術界も1925年ホーン盤がバーンズ會社より賣り出されて以來その作業時間は非常に短縮される様になり更に1935年超仕上法が,クライスラー會社の一技師により發明されるや仕上面の品位は更に一段と向上し作業時間は益々短縮されるに至った。他方切削仕上法,研削仕上法,ラップ仕上法も亦益々發達した.
近年に至り電解研磨法が實用の域に達した結果,精密加工法は茲に新天地を開拓し從來精密加工を施す事は殆んど不可能とさえ考へられて居た複雑な曲面,極端に小さな部品,非常に細く且つ深い孔,細い針金,軸,尖軸等の精密加工も極めて容易になり又從來より行はれて居たバニシ仕上,ロール仕上,等の押付仕上法,パフ磨き法,囘轉研磨法等も種々研究の結果益々發達し最近では砂吹き法を改良した液體ホーニング法或は放電現象を利用せる電孤穿孔法と云ふ新しい加工法も發明されるに至つた.又從來の精密加工技術は主として金屬材料を對象として發達して來たが近年はガラス,水晶,寳石,合成樹脂,ゴム,木材,石材等の非金屬材料に封しても研究される様になつて來た。
更に精密加工に依つて得られた仕上面の品位(表層の内部組織,表面粗さ等)も近年益々問題となり各種の加工條件と仕上面との關係が探究され又種々の仕上面檢査法も考案されるに至つた.
又精密加工の觀點から工具,工作機械,工作油劑等も種々研究され益々發達しつゝある.
上述の如く精密加工法に關する研究,進歩は誠に目覺ましいものがあるが然らばわが國に於けるこの方面の研究状況は如何であらうか.
終戰後各大學の報告,各試驗研究所の所報,學會の會誌,技術雜誌等に發表された精密加工技術に關する論文は非常な數にのぼるがそれ等の中には講議的性格を持ったもの,或は内外研究文獻の紹介を主とせるもの等も含まれて居るので,それ等の中から主として獨創的研究論文のみを拾つて下記の如き精密加工技術界の各分野に亘つて終戰後今日までの研究状況を展望して見やう.
(1) 精密切削法
(2) 精密研削法
(3) ホーン仕上法
(4) 超仕上法
(5) ラップ仕上法
(6) 砂吹き法
(7) パフ磨き法,囘轉研磨法
(8) 押付仕上法
(9) 電解研磨法
(10) 放電加工法
(11) 特殊材料の加工法
(12) 仕上面の粗さ
(13) 工作精度檢査法
(14) 精密工具
(15) 精密工作機械
(16)工作油劑
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