マイカに切込みをつけたり,角穴をあけるための基礎研究として,切離し型を用いてすみ角θと丸み半径
Rの大きさの影響を調べた。直線部分の影響が大きいので切落し長さをかえて総抜き,先抜きとよぶことにした。
1)打抜き特性は丸形打抜きや小穴抜きと同様,クリヤランス
cよりも板厚
tによつて支配される。一般に
c,
Rはとくに小さくないかぎりその影響は少ない。
2)せん断機構はやはり切れ刃周辺で起こる曲げあるいは張出しに伴う各層の引張破断(金属におけるせん断に相当)と多くの層の同時引張破断(同じくクラック相当)による。
3)すみ部分は直線部分の多い総抜きと先抜きとで様子が異なる。前者は直線部分に支配されその末端の形ですみが作られる。このためθ,
Rの影響は少ない。後者ではせん断の様子も異なり切り口もわるい。
t>0.3mmでは同時破断が2回以上に分れて起こり,切落し部分は多数層に分れる。このため線図の荷重降下域(第4期)が階段状に長くなり,ポンチ食込み量もまして板厚に近くなる。ただし,この状態を除くと,ポンチ食込量は
t→小,
c→小で大となり60%をこえる。
4)総抜きではせん断抵抗
ksは
t=0.15mm附近に山(最大値約50kg/mm
2)を作り,0.3mm以上ではほぼ一定となる。また,θ,
Rの影響は少ない。先抜きでは
t,
c',θ,
Rが小さくなると
ksは増加し約60kg/mm
2にもなる。
5)剥離部分は
t→大,
c→大ほど大きくなる。θ,
Rの影響は少ない。平均剥離長さ
l1は
l1≦10tで,すみ部分で嫁直線部分よりも小さい。
6)θ,
Rが小さいときたとえばθ=30°,
R≦0.5mmでは
t>0.3mm,
Rが小さいとさらに
t<0.1mmでもすみの2等分面にき裂を生じる。き裂は板厚を貫かず,二つの直線部分切断で生じる曲げに原因すると考えられる。
7)せん断線にそう細かいわれで破砕部分が作られ,精度維持に関係する。この長さ
l2は直線部分では
tに比例する。すみ部分では一般に直線部分より大きくなり,
c,
Rの影響はθが小さいときのみにみられる.先抜きでは総抜きよりも
l2は小さく,直線部分のものとほぼ一致する。一般に
l2<0.1+0.4
t[mm]である。かえり,バルジは生じない。
8)切り口精度と剥離状態からきまる推賞条件は
t=0.2~0.3mm(
t≒0.25mm),
c/
t≒2~5%
θは30°以上であることがのぞましく,
R≧0.3mmがよろしい。θが大きくなると
Rの影響は少なくなる。
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