加工に関する研究は種々の方向から現象的にまた解析的に,あるいはマクロ的にまたミクロ的に行なわれており,それぞれ意味において生産加工技術の発展に大きく寄与している。
本稿は最近の加工法を従来とやや異なったエネルギ的な見方でそれをマクロ的に考察し,将来の加工法の展開の道筋に新らしい道標を置いて見ようとするものである。加工はエネルギ的にみれば,素材(被加工物,ワーク)にエネルギを与えてそれを変形したり(変形加工),あるいはその実質部を破壊除去したり(除去加工),分割したり(分割加工),また素材同士を接合したり,(接合加工)集合付着させたり(付着加工)して所定の形状寸法のものを作ることとみなされるであろう。
除去加工や分割加工はその実質部を分離(separate)する現象を基本としており,蒸発・融解・拡散分離・溶解等の熱的エネルギを中心とするもの,電気分解・化学分解等の電気化実的あるいは化学的エネルギを中心とするもの,およびぜい性破壊・塑性変形・流動変形等の力学的エネルギを中心とするもの等考えられる。
接合加工や付着加工はその実質部を結合(consolidate)する現象を基本としており,蒸着・融着・焼結・拡散接合・結晶生長等の熱的エネルギを中心とするもの,電着・化合・接着等の電気化学的あるいは化学的なエネルギを中心とするもの,および圧着・固着等の力学的エネルギを中心とするものなどがあげられる。
変形加工は塑性変形・流動変形を生ぜしめる力学的エネルギが中心となるのであるが,塑性なり流動性を増加せしめるために熱的なり化学的なりのエネルギを付与する場合が多い。
もちろん電気的・あるいは磁気的エネルギも非常に多く用いられるが,最終的には上述の形のエネルギに変換されて加工に用いられると解釈した方がよい場合が多い。たとえば筆者が試みているマイクロ波エネルギを用うる加工も,結局は材料の誘電損失の形として熱エネルギに変換され,素材を融解蒸発し除去加工を行なうものである。また多くの高周波電力を用うる加工も高周波誘電加熱・高周波誘導加熱,あるいは高周波抵抗加熱の形でその電力は熱エネルギとして利用されているものである。もちろん高周波電力を用うるのは大きい熱を特定の'局所に加え,材料にたいして選択的に与えうるという特性を利用するものである。電子ビームを用いる加工,レーザビームを用いる加工も最終的には熱として利用されているのであるが,その素材へのエネルギ供給の形に特徴があるのである。
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