以上ホブ盤の熱変形と, それが加工歯車の精度に与える影響について述べたが, 結局歯すじの精度が熱変位の影響を最も受けやすい.その他の精度については, 熱変位との関係はそれほど大きいものではなくまた, その関連を追求することも困難である.
本稿では, ホブ盤に例をとり, その熱変位について述べたが, 他の歯車加工機についてもまったく同様であり, ただ歯車の加工方式と, 機械の構造の差が歯車の精度, への影響の与え方に若干の相違を生ずる程度である.機械メーカは, 熱変位の少ない機械を製造すべく常に努力をはらっているが, その方向としては,
(1) 発生熱量を僅少におさえること
(2) 発熱源の機械本体よりの分離
(3) 発熱源相互間のバランス
(4) 発生熱の除去
(5) 熱膨張の基点の適正選択
(6) 機械構造の熱的対称性確保
などがあげられる.
しかしながら以上のような熱変位対策を完全に行なうことは, きわめて困難なことであり, 大形機械ではその困難性も著しく増大する.また, 積極的に熱変位を補償する方式も考えられてはいるが, 完成するまでには種々の問題が含まれており, 今後の研究が一層望まれる.
一方歯切盤のように比較的安定した切削条件下で作動する機械においては, 使用環境を整備すれば機械の忠実度向上に大きな効果を期待できるのも事実である.すなわち,
(1) 機械に相応した予備運転の実施
(2) 精度に応じた室温・油温・切削剤の管理を実施することにより実用上十分な精度の歯車を製作しうるのである.
抄録全体を表示