以上のような原理と方法によって,小物体の顕微鏡的輪郭測定器を試作し,主として顕微鏡光軸のずれについて実験し,さらにいくつかの試料について実際に測定した.
その結果,
(1) 顕微鏡光軸と回転軸が微少量Δずれると,得られる輪郭線の大きさと相似性に変化が起こるが,式(4)より与える影響の度合は
X軸方向のずれのほうが大きいから,より慎重に取扱わねばならない.
(2) 測定精度はずれ量Δによって大きく左右されるので,Δをゼロに近付けることにより精度を向上させることができる.
(3) 顕微鏡光軸と回転軸が一致していれば,被測定物の全周にわたっての輪郭線が顕微鏡(レンズ系)によって拡大された機械的正確な結果を得ることができる.したがって測定装置についての二つの仮定が保証されていれば機械的な測定精度は光軸のずれ量Δ
x,Δ
yに依存するので,理想的な装置であればΔ量をゼロに近付けることにより精度を上げることができるから,2軸の一致の度合が直接機械的精度といえよう.
(4) 本試作測定器での寸法精度は,実際の測定の場合,たとえば図6のような正六角柱の試料について真上から撮つた顕微鏡写真と,同じ試料について本法による輪郭線との重合せの一致をみることはきわめて容易であるので,Δ=0の場合を見いだすことは.能である.
一例として,
r=1mm,
M=60において,Δ
x=0.1mm,Δ
y=0.1mm,すなわち直径2mmの円柱で両方の軸に沿って光軸が100μmずつずれていたとすれば,
D'''=132.54mmとなり,正常な状態では
D=120mmであるからその誤差は10.45%となる.
一般には
{(
r+Δ
x)
2+Δ
y/
r2-1}×100(%)
次に線の太さによる精度,すなわち読取精度は,試料の反射の状態と回転速度によって線幅の太さは変わってくるが,最良の状態Δ=0であっても読取りによる誤差が考えられる.今回の実験で得られた結果について考えると,フィルム面上でのその線幅は0.2mm~0.3mmであったので,線幅の中心位置の決定により輪郭線は決まるので(1/10の読取精度として)約0.02mm~0.03mmの誤差が考えられる.
途中での「装置における二つの仮定」は現在の加工技術と組立技術から十分満足させることが可能であり,また回転軸と光軸の一致も十字線や案内を用いて一つ一つていねいに合わせていけばなしうるから,大物体の測定のみならず小物体の顕微鏡的輪郭測定ができ,その実用性はきわめて広範囲になった.
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