高感度電気受容のストラテジーについて, まとめとして述べよう.
電気受容の末梢, 中枢機構を通じて, いくつかの共通した原則を認めることができよう.
(1) 高感度の受容器を安定に動作させ, さらに
S/
N比を高めるための方法として, 一定のリファレンス信号の変調なる技術が使われている.非発電魚では, このリファレンスとして, 受容器内の機構によって発生する一定周波数の求心神経インパルス系列がキャリアとして利用される.弱電気魚でのリファレンスは, EODでドライブされた同調受容器からの特定のインパルスパターンであり, さらに複雑な情報抽出が可能となる.大別して, EODに対する時間または位相差と, 電場強度の2種の情報が, それぞれ別種の受容器によって検出される.
(2) 中枢神経系は, 体表に分布する無数の受容器からの信号を入力として, 何段かのニューロン回路網を通じて, さらに複雑な特徴抽出を行う.ここでの過程は基本的には, シナプスにおけるゲート機構と考えられる.時間差と強度分布についての情報は, 少なくとも2種の系によって並行して処理され, この処理過程の結果は, 運動およびEODを調節する遠心系に伝えられて, 適切な行動反応 (JAR, 索餌など) がもたらされる.
(3) 末梢, 中枢を通じて, いろいうな方法により時間的な平均加算の技術が応用されているのに気がつく. これは
S/
N比の改善により検出感度を相対的に向上させるが, 必然的に時間的解像力は低下する.多くの場合, この時間的解像力の低下は, 動物の運動反応EOD頻度の変化などによって補償されると考えられよう.
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