既存の工業材料を利用して, 従来品より高印字寿命 (インクリボン使用) を有するプラスチック複合材料活字の開発を目的とした.まず材料選択のガイドラインを求め, 次いで現状の掌握および実用化材料の開発を進めた.この結果, 従来品に比して大幅な高印字寿命を有するプラスチック複合材料活字が得られた.この開発経緯で得られた要点をまとめると次のようになる.
(1) 既存のプラスチック複合材料活字で最も印字寿命の高いのはフェノール系樹脂とガラス繊維の複合材料によるものであり, FRTP系ではこれを超えるものは見られない.
(2) 印字寿命強弱の判断は実用に近い打字試験で行うのが最も確かであり, これに代わる方法は見当たらない.
(3) 高印字寿命化に必要な最も重要な材料条件は, マトリクスは耐有機溶剤性が高いこと, 強化材はマトリクスとの結合性にすぐれていることである.
(4) 強化材の結合性の向上には, まず材質面からする改善が最も有効であり, 形状・寸法の効果はこれに比べると低い.
(5) 本開発により, 従来品に比して大幅な高印字寿命を有する活字が得られた.この構成材料は, フェノール樹脂にシラン系表面処理剤を施した炭化けい素繊維を複合したものである.複合率70%の印字寿命は, これまでの最強品の約4倍以上である.
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