静脈経腸栄養
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20 巻, 4 号
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原著
  • 谷口 靖樹, 東口 高志
    2005 年 20 巻 4 号 p. 4_3-4_9
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/12/27
    ジャーナル フリー
    肝不全例では糖質、脂質、蛋白質代謝異常が顕著に現れ、特に血清アミノ酸濃度の不均衡が特徴的であり、分岐鎖アミノ酸 (BCAA) /芳香族アミノ酸 (AAA) の比で表されるFischer比の低下をきたす。このような疾患に対して経口BCAA療法が有効であり、食事摂取とともに高濃度のBCAAを内服することによって長期にわたる良好な栄養管理が可能である。
    我々は、腹水を合併したC型肝硬変に対し長期間にわたり経口BCAA療法を行い良好な経過をたどった症例を経験した。さらに、非代償性肝硬変15例を対象に経口BCAA療法を行った結果、Fischer比は1.52±0.60から投与12ヶ月後には2.20±1.02までの改善が得られた。またPhe/Tyrモル比についても同様に投与前0.68±0.10が投与12ヶ月後0.82±0.15と改善が得られ、経口BCAA療法が有用であることが示された。
総説
  • 山中 英治
    2005 年 20 巻 4 号 p. 4_11-4_15
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/12/27
    ジャーナル フリー
    約10年前に日本にも導入し始められたクリニカルパス (CP) は、ここ数年急速に普及した。DPCの導入が拍車をかけているが、CPでバリアンスとなる患者には、原因として栄養不良も少なくない。栄養サポートチーム (NST) による栄養療法は、合併症を減少させ、患者のQOLを向上させる。また、NSTが関与するCPには消化器癌術後パス、褥瘡パス、PEGパスなどがあり、最近では病病連携や病診連携にもNST関連のパスが活用されている。
  • ―NST活動におけるグルタミンと亜鉛投与の有用性について―
    東口 高志
    2005 年 20 巻 4 号 p. 4_17-4_23
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/12/27
    ジャーナル フリー
    栄養管理はすべての疾患治療のうえで共通する基本的医療のひとつであるが、中心静脈栄養に頼りすぎた栄養管理は長期の絶食につながり、腸管の萎縮、免疫能の障害などを併発することがある。腸管の栄養学からみると栄養素の投与経路として経静脈栄養よりも経腸栄養の方が、生理反応を維持することにより利点を多く有する。NST (Nutrition Support Team : 栄養サポートチーム) における活動の質を向上させ、適切かつ効果的な栄養管理を実践するためには、この腸管が有する多くの利点を如何にいかすか、またグルタミンや亜鉛などのように特異的な効果を有する栄養素を如何に活用するかが求められる。すなわち、腸管絨毛上皮の萎縮防止や侵襲時におけるいわゆるbacterial translocationの発生を抑制するためには、経腸栄養の併用や、腸管粘膜細胞の主要エネルギー基質であるグルタミンの投与が有用と考えられる。一方、亜鉛も火傷、外傷、外科手術などの侵襲期や腸粘膜疾患、肝疾患、感染症の急性期では著しく欠乏するため適切な補充が必要となる。このように種々の栄養素を適切な経路を用いて投与することが今後の栄養療法には不可欠と考えられる。
症例報告
  • 井上 善文, 廣田 昌紀, 阪尾 淳, 野村 昌哉, 藤田 繁雄, 森 エミ
    2005 年 20 巻 4 号 p. 4_25-4_28
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/12/27
    ジャーナル フリー
    症例は18歳、女性、クローン病。在宅経腸栄養法へのコンプライアンスが不良であったため、在宅静脈栄養法HPNを実施した。ポートを用いてHPNを実施する場合、前胸部にリザーバーを留置する方法が行われているが、皮膚瘢痕の問題に加え、リザーバー埋め込み部分が皮膚面から突出するという問題もあり、QOLを損なう可能性がある。本症例は若い女性であるため、特に整容上の問題およびQOLを考慮して上腕ポートという新しい方法を採用した。局所麻酔下に上腕内側で尺側皮静脈切開によりカテーテルを挿入し、皮下トンネルを介して上腕外側にリザーバーを留置した。予想以上にリザーバー埋め込み部皮膚の突出は目立たず、留置後3年が経過しているが、合併症の発生もない。現在、ポートに関しては、リザーバーを前胸部に留置するという方法がもっぱら実施されているが、上腕外側にポートを留置するという方法は、整容上の問題とQOLを考えた時、一つの有力な選択肢となると考えられる。
原著
  • 日高 敏晴, 土師 誠二, 竹山 宜典, 大柳 治正, 山内 清孝, 國場 幸史
    2005 年 20 巻 4 号 p. 4_29-4_36
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/12/27
    ジャーナル フリー
    末梢静脈栄養で、エネルギー投与量が制限された時、蛋白代謝に好影響を及ぼすエネルギー基質の投与比を、糖とアミノ酸の至適投与比に着目し実験的に検討した。ラットに3%アミノ酸と種々のグルコース濃度の輸液を行い、体重変化、累積窒素バランス、血清総蛋白値、アルブミン値、血中尿素窒素値、精巣上体脂肪重量、腓腹筋重量を測定した。また15Nグリシンを持続投与し、尿中15N量を測定後、蛋白代謝回転速度、合成速度、分解速度を算出した。さらに肝組織中のDBP (D site binding protein) mRNA、アルブミンmRNAの発現を比較した。累積窒素バランスは7.5%グルコース投与で正へ転換するのに対し、蛋白合成速度、組織重量は10.0%以上で上昇することから、蛋白合成に好影響を与えるのは10.0%グルコース投与が至適と考えられた。また肝のアルブミン合成の核内転写因子の発現に差を認めず、蛋白合成の主座は肝以外であることが推察された。
施設近況報告
  • 中野 美佐, 巽 千賀夫, 嘉手川 淳, 高橋 佳文, 高瀬 俊幸, 竹内 憲民, 中井 智明, 井上 文子, 島田 裕之, 高力 美幸, ...
    2005 年 20 巻 4 号 p. 4_37-4_43
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/12/27
    ジャーナル フリー
    当院では誤嚥性肺炎を未然に防ぐために、嚥下障害患者のみではなく、誤嚥が起こりそうな意識障害回復期や、認知障害があり安全に食べられるか不明な患者、術後や感染症等で体力低下のある患者も対象にして、嚥下チームが関わることにした。嚥下障害患者の段階的摂食法を決めるアルゴリズムを作成し、嚥下障害クリニカルパスを使用し、嚥下回診を行っている。チームの流れは、まず患者を神経内科医に院内紹介し、神経内科学的嚥下障害要因のスクリーニングを行う所から始まり、次に全例歯科で口腔チェックを受け、必要時耳鼻科で咽頭ファイバー検査を行い、嚥下リハビリをリハビリテーション科で行う。嚥下障害のある患者に神経疾患が見つかることも多く、また近年誤嚥性肺炎の予防効果のある薬剤の報告もあり、嚥下チームの中で神経内科医が病態ごとに適切な薬剤の使用を主治医に促し、病院全体での叡智を生かせるようにすることが望ましいと考える。
臨床経験
  • 岡村 美智子, 坂口 一彦, 川野 幸子, 小野 達也, 川島 明美
    2005 年 20 巻 4 号 p. 4_45-4_50
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/12/27
    ジャーナル フリー
    当院での摂食・嚥下障害患者の多くは、脳神経疾患によるもので高次脳機能障害が見られる。そのため嚥下に対して、画一的な機能評価や訓練ができない状況にあった。そこで評価項目と評価基準、訓練方法を確立するため、嚥下機能評価表を利用してのクリティカルパスの作成を行った。これらを作成したことで、これまで医師・看護師・コメディカルそれぞれが主観的にしてきた評価・訓練を統一することができた。これによって、様々な職種がチームで同一のケアを行うことが必要であると考えられた。
  • 野口 佳奈子, 河田 玲奈, 安田 健司, 藤原 英利, 野村 秀明
    2005 年 20 巻 4 号 p. 4_51-4_55
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/12/27
    ジャーナル フリー
    早期経腸栄養管理時のアクセスルートとして、幽門後栄養チューブ (EDチューブ群) と従来の胃栄養チューブ (胃チューブ群) を比較検討した。チューブ挿入手技平均所要時間、ICU入院期間は両群間に有意差はなかった。EDチューブ群では全例、チューブ先端が幽門輪を越え、トライツ靭帯付近に到達した。経腸栄養製剤の注入速度を70~100mL/hとすると、胃チューブ群のうち3例が口腔より栄養製剤の逆流がみられたが、EDチューブ群では逆流症例はなかった。注入速度を70mL/h以上にすると腹部膨満をEDチューブ群で4例に認めたが、胃チューブ群にはなかった。下痢やチューブ閉塞は両群とも認めなかった。
    早期経腸栄養を安全、確実に施行するには幽門後栄養チューブを用い、適度に注入速度を管理することが、合併症の予防へとつながり、医療リスク軽減のためにも大切であると考えられた。
JSPEN全国栄養療法サーベイ委員会 報告
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