静脈経腸栄養
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21 巻, 4 号
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特集:他職種との協同の中で栄養士の専門性をいかに発揮するか
  • 小山 広人
    2006 年 21 巻 4 号 p. 4_3-4_7
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/06/01
    ジャーナル フリー
    管理栄養士の受けた臨床栄養に関する教育内容は、医師教育のそれをはるかに凌駕する内容である。その教育を生かす場は、従来、給食の献立・衛生管理(厨房)、病態栄養指導(主に外来)が主たるものであったが、NSTの活動の広まりにより臨床栄養管理(病棟)、そして在宅栄養管理(在宅)へと広がってきた。管理栄養士は、その教育内容に裏づけされた栄養管理のプロとして医師・看護師とは違った視点から、チーム医療において欠くべからざる位置を占めてきている。
  • 岡本 康子
    2006 年 21 巻 4 号 p. 4_9-4_16
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/06/01
    ジャーナル フリー
    NSTは院内複数の医療職種が各専門家としての知恵を出し合い、患者に最適な栄養治療を検討し、主治医に提案していくシステムである。その中で管理栄養士は職種間をつなぐ重要な働きを担っている。また管理栄養士は栄養療法において患者の栄養アセスメントを行うことで、必要なエネルギー量や三大栄養素の適正比率などを求めることもできる。それらは経口栄養法のみならず、非経口栄養法においても同様であり、患者毎に栄養必要量や病態に応じた三大栄養素の適正比率、微量栄養素までを考慮した最適な提案をし、さらに再アセスメントを行うことが求められている。現在、経腸栄養剤は多種多様な製品が開発され、流通しているが、その中での選定をまず行う必要がある。患者に適した投与量や投与方法・投与回数を管理栄養士が円滑に提案する上で、あらかじめ医師をはじめ看護師・薬剤師などとの連携を密にしておくことは不可欠である。本稿では、経管栄養を開始したものの、血糖調節不良をはじめとしたトラブルが併発した脳梗塞回復期患者に対し、アセスメントを行うことにより、問題点をみつけ、栄養ケア計画を立案し、管理栄養士の専門性を発揮しながら、他職種の協力体制を得る。そして最終的には栄養状態の改善とインスリン療法の離脱が可能になった症例を通じて、管理栄養士が非経口栄養法において果たすべき専門的役割について考察してみた。
  • 佐藤 敦子, 阿部 尚美, 土屋 誉, 荒木 孝明, 生澤 史江
    2006 年 21 巻 4 号 p. 4_17-4_22
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/06/01
    ジャーナル フリー
    当院では、2003年1月より全科型のNSTが活動している。そのシステムの運用において、管理栄養士は、スクリーニングシートの判定とそれに基づいた栄養管理計画の立案を行う一方で、カンファレンスで使用する「ラウンド名簿」を作成し、活動が円滑に行えるようコーディネートする役割も担っている。また、個々の症例で見ると、経口摂取栄養量の算出や、経腸栄養剤や保健機能食品などに対しての適切な使用法の指導を行っており、これらは管理栄養士の専門性においての役割と考えている。
  • 井上 好美
    2006 年 21 巻 4 号 p. 4_23-4_27
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/06/01
    ジャーナル フリー
    高齢者医療においては、栄養状態の改善・水分管理が治療効果を高める点で重要な位置を占める。施設からの入院患者が約3割を占める当院は、短期に病状を改善させることに力を注いで来た。施設で健やかに過ごしていただくために、この中で管理栄養士は、問診・身体状況・検査データや病態などから栄養状態を評価し、必要エネルギー量や各栄養素・水分量を考えるだけでなく、限りない個人対応をして、食べる喜びという点でも満足していただけるよう形としては見えないサービスを心がけている。さらに、最近では、施設入所者の高齢化が進み、咀嚼困難・嚥下困難からの栄養状態悪化、褥瘡をともなっての再入院も増えており、施設への増悪化防止につながる栄養情報提供の必要性を痛感している。そのようなことから、管理栄養士として施設との連携・情報提供も行い始めたところである。今回は、そのような中での1症例を報告する。
  • 高崎 美幸
    2006 年 21 巻 4 号 p. 4_29-4_34
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/06/01
    ジャーナル フリー
    透析医療には、医師、看護師、臨床工学技士、薬剤師、管理栄養士、医療ソーシャルワーカー、臨床検査技師などの多くの職種が関わっている。医療チームとして、それぞれの職種のメンバーが、ある程度の役割分担とお互いの業務内容を明確にし、相互理解を深めて、医療情報の共有化を実現することが大切である。透析医療における管理栄養士の専門性は、対象者の栄養状態・生活環境・心理状態などを適切に評価し、個々の価値観に合致した栄養ケアを実践することである。さらに、透析医療スタッフの栄養教育、地域医療機関との連携も管理栄養士の専門性発揮の場である。また、サプリメントや長期合併症の栄養療法、高齢化に伴う摂食・嚥下障害の問題など、透析医療分野において、管理栄養士が取り組むべき課題は多い。
  • 手塚 波子, 小川 滋彦
    2006 年 21 巻 4 号 p. 4_35-4_41
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/06/01
    ジャーナル フリー
    在宅訪問を行なう管理栄養士の役割は今、重要な転換期を迎えている。一つは、医師のみならず、管理栄養士も病診連携の一端を担い地域に出向き、在宅療養者への「栄養」と「食」の支援を行うことが、従来にも増して求められること。もう一つは、管理栄養士の地域における「チーム医療」活動への参画と実践が求められ、ひいては在宅療養者に対して病院や施設と同レベルの栄養ケアマネジメントが望まれることである。
    これらの役割を果たすには、われわれ管理栄養士が訪問栄養指導を実施する前に、まず如何なる手段で介入し、他職種との連携をどのように行えば在宅患者の栄養改善とQOLの向上に寄与できるのかを、実践を通して模索していく必要がある。一方では、在宅訪問栄養士と病院・施設栄養士、配食サービス業者の栄養士間の連携や情報交換が重要になると考えられる。
    今回、小さな無床診療所である当院が、地域一体型NST活動などを通し、試行錯誤しながら実践している訪問栄養指導と、「連携ワークシート」を使った他職種との連携の取り組みを報告する。
  • 寺本  房子
    2006 年 21 巻 4 号 p. 4_43-4_47
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/06/01
    ジャーナル フリー
    医療施設における栄養士の役割は大きく分けて栄養部門における食事の調製と、ベッドサイドでの栄養ケアである。これらの現場で発揮しなければならない専門性は異なるが、ベッドサイドと栄養部門のバランスが整うことで、患者のQOL向上につながる栄養ケアが実現できる。
    管理栄養士養成の新カリキュラムが平成14年度より実施されている。新カリキュラムでは、管理栄養士としての必要な知識及び技術が系統的に修得できるよう、また、臨床栄養を中心とした専門分野の教育内容の充実が図られた。
    注目すべきは、カリキュラム改正の基本的考えの一つとして「チーム医療の重要性を理解し、多職種や患者とのコミュニケーション能力を円滑にすすめる能力を養うこと」が提示されたことである。ベッドサイドでヒトを対象として業務をする職種であることが強調されたと考える。養成にあたっては、管理栄養士が果たすべき多様な専門領域に関する知識・技能はもちろん、さらにコミュニケーション能力、医療人としての心構えなどの教育も検討し、医療チームの一員となり適切な栄養管理(ケア)ができる管理栄養士・栄養士の養成が望まれる。
JSPEN 全国栄養療法サーベイ委員会 報告
臨床経験
  • 奥田 博明, 白鳥 敬子, 立松 栄次
    2006 年 21 巻 4 号 p. 4_71-4_77
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/06/01
    ジャーナル フリー
    代償期肝硬変患者における栄養管理として、C型肝硬変患者2例を対象に夜間就寝前栄養(late evening snack;以下、LESと略)を用いた栄養療法を実施し、長期的LESの効果を検討した。通常食あるいは肝不全用経腸栄養剤による200 kcal程度のLESをそれぞれに3ヶ月間実施し、3ヶ月目からは2例ともに肝不全用経腸栄養剤によるLESに変更し2年間継続実施した。通常食によるLES実施ではコンプライアンスが不良であったが、肝不全用経腸栄養剤によるLES摂取はコンプライアンスが良好で長期継続可能であった。LESの長期実施の結果、3ヶ月以降徐々に窒素出納(以下、N-balanceと略)、非蛋白呼吸商(non-protein respiratory quotient;以下、npRQと略)及び基質燃焼比率、自他覚症状(こむら返り、不眠)の改善効果が得られた。SF-36による生活の質(quality of life;以下、QOLと略)評価では、これらの改善に伴い“精神的健康度”の改善が認められた。肝硬変患者におけるLESは長期的栄養療法として有効であり、特に肝不全用経腸栄養剤によるLESはコンプライアンスが良好であった。代償期肝硬変患者(Child-Pugh分類:A)では、コンプライアンス及び治療効果の両面に対し肝不全用経腸栄養剤によるLESでの適応の可能性が考えられた。
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