緒言:外科待機手術患者に対する免疫増強経腸栄養剤(Immune-enhancing enteral diet;IED)の術前投与が術後感染予防に有用とされているが,術式により手術侵襲は異なるため,免疫栄養としての効果も異なると考えられる.今回,当科で術前IED(インパクト
®)を投与した症例を術式別に検討したので報告する.対象及び方法:対象は2005年1月から2008年12月までの消化器癌手術症例101例で,術前インパクト
®投与47例(I群)と同時期の非投与54例(R群)の2群間に分けて比較検討した.検討項目は,投与期間と投与量からみたインパクト
®投与コンプライアンス,インパクト
®投与前後の血液データ(白血球,ヘモグロビン,総蛋白,アルブミン,コリンエステラーゼ)の変化,I群とR群における術後合併症(縫合不全,呼吸器合併症,Surgical site infection,術後膵液瘻(膵頭十二指腸切除のみ))発生頻度について比較検討した.また,食道切除では術後Systemic inflammatory response syndrome(SIRS)期間と術後人工呼吸器管理期間も検討した.結果:インパクト
®投与群の術式別の内訳は,食道切除11例,胃切除10例,大腸切除8例,膵頭部十二指腸切除10例,肝切除8例であった.インパクト
®投与のコンプライアンスは,術式による有意差は認められなかった.食道切除例においてインパクト
®投与による白血球数の有意な増加が認められた.術後合併症では,食道切除における呼吸器合併症が有意に少なく,術後SIRS期間が短い傾向を認めた.結語:術式別の術前インパクト
®投与の臨床効果は,手術侵襲が大きな食道切除にのみ認められた.
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