静脈経腸栄養
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25 巻, 2 号
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特集:栄養管理のピットフォール -理論と実際のはざま-
  • 井上 善文
    2010 年 25 巻 2 号 p. 573-579
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    必要エネルギー量の算定方法として、Harris-Benedictの公式(HBE)から基礎エネルギー消費量(BEE)を求め、これに活動係数とストレス係数をかけて計算する方法が用いられている。しかし、HBEからBEEを求める方法は過剰評価になる場合が多いことが認められている、本邦で用いられている活動係数およびストレス係数の多くは根拠となる検討結果に基づいたものではない、またその数値としての選択は結果的に主観的なものとなる、などの問題がある。基本的投与量として25~30kcal/kg/日を設定し、ストレスの度合に応じて増減し、積極的なモニタリングを行いながら投与量・組成を調整する方法の方が臨床的ではないかと考える。
  • 早川 麻理子, 西村 佳代子, 山田 卓也, 岩田 尚, 竹村 博文
    2010 年 25 巻 2 号 p. 581-584
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    より良い栄養管理は、栄養アセスメントの質によって決まる。特に栄養アセスメントの門番を担う栄養スクリーニングは、全入院患者を対象とするため、職種を問わず誰にでも簡便に効率よく実施でき、かつ有用性が高くなければならない。現在あるいくつかのアセスメントツールの項目と内容について栄養スクリーニングを中心にまとめた。さらに、岐阜大学医学部附属病院高度先進外科における術後の入院期間と入院時アセスメント項目との関連性について後ろ向き調査を行い、検討を加えた。その結果、今回取り上げたアセスメントツール5種に、食事量の減少と体重減少の項目があり、当科においても原疾患や術式を問わず、術後の入院期間と食事量の減少との間に有意な相関関係を認めた。栄養アセスメントで最も重要な項目は、食事が十分に食べられるかどうかということとそれを反映する体重測定であり、食べられない理由について傾聴することの重要性を再認識した。
  • 杉浦 伸一
    2010 年 25 巻 2 号 p. 585-590
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    高カロリー輸液製剤のキット化は、細菌汚染や異物混入のリスクを軽減し、調製時間を短縮することで業務の効率化に寄与した。在宅医療においても、高カロリー輸液を利用できる環境が整備され、短腸症候群患者など、消化管から栄養を摂取できない患者らの生命予後を改善し、輸液療法の安全性向上に貢献してきた。しかし、画期的な高カロリー輸液製剤の組成が開発されたわけではなく、過去に開発された製剤の組み合わせ処方や、バッグなどの周辺デバイスを改良した製剤にすぎない。さらに、ビタミン剤や微量元素、あるいは脂肪乳剤までも一包化したための弊害も発生している。例えば、以前では考えられなかった過剰投与や、高窒素血症あるいはカテーテル関連血流感染症などの医原性副作用が増加した。したがって、高カロリー輸液キット製剤であっても、製剤の特性の違いをよく理解し、適正な使用に心がけることが重要である。
  • 宇佐美 眞, 三好 真琴, 川上 沙央理, 青山 倫子, 飯塚 宣仁, 渡邉 万里, 濱田 康弘, 上野 公彦, 河野 圭志, 戸田 明代, ...
    2010 年 25 巻 2 号 p. 591-596
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    静脈栄養を行うに際しては、脂肪乳剤を投与することが原則である。他方、本邦で発売されている脂肪乳剤の添付文書には、肝機能低下、感染症、重度呼吸障害など多くの禁忌や慎重投与事項が記載されている。本稿では、脂肪乳剤投与の及ぼす効果と重症患者への脂肪乳剤投与のASPEN、ESPENガイドラインを中心に適応と限界を述べる。TPNが必要な重症患者では、脂肪乳剤投与が必須であり、0.7g/kgを12~24時間かけて投与することが安全基準とされている。
  • 中村 卓郎
    2010 年 25 巻 2 号 p. 597-602
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    高血糖は傷害やストレスなどの侵襲への生体反応であるが、術後感染、心筋虚血、中枢神経障害において、高血糖は予後不良因子であることが報告されている。周術期・重症患者において、従来、血糖管理は血糖値の上限を200mg/dL前後として行なわれてきたが、侵襲時のインスリン抵抗性などによる耐糖能異常で、血糖管理には難渋することが多い。心臓血管外科患者においては、血糖上限値を110mg/dLとする強化インスリン療法が臨床的に有用であることが示されていた。外傷、脳損傷、敗血症などの他の対象疾患では血糖管理の目標値が異なることが考えられ、強化インスリン療法の一律の施行については疑問視されている。重症患者における血糖管理の重要性が薄れたわけでなく、栄養投与量、栄養投与経路、栄養基質についてのさらなる今後の検討が必要である。
原著
  • 三浦 あゆみ, 辻仲 利政, 今西 健二, 白潟 初美, 櫻井 真知子, 森岡 亜希子, 辻阪 真衣子, 梶原 絹代, 上野 裕之, 三嶋 ...
    2010 年 25 巻 2 号 p. 603-607
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    【目的】近年、外来化学療法患者が増加しているが、栄養状態の実態は明らかではない。【方法】今回、外来化学療法施行中の312症例(女性218例、男性94例)を対象に、簡易栄養スクリーニング法SNAQ(Short Nutritional Assessment Question)を用い、栄養状態を調査した。【結果】質問3項目のうち2項目以上該当した栄養介入必要群は51例(16%)であった。血清アルブミン値、ヘモグロビン値、小野寺の予後指標は、介入必要群で有意に低下していた。「食欲低下」項目該当患者の割合は、1項目該当群78例のうち73%、2項目該当群31例中では100%であった。男女別の比較では、血清アルブミン値、小野寺の予後指標は男性で有意に低下していた。疾患別では、下部消化管癌に栄養介入が必要な患者が多かった。【結論】今回の調査で、外来化学療法患者には栄養評価と栄養介入が必要であり、食欲低下への対策が重要であることが示唆された。
臨床経験
  • 三松 謙司, 大井田 尚継, 川崎 篤史, 加納 久雄, 藤江 俊雄, 斎野 容子, 辻 陽子, 荒居 典子, 佐伯 郁子, 大野 匡之
    2010 年 25 巻 2 号 p. 609-615
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    緒言:外科待機手術患者に対する免疫増強経腸栄養剤(Immune-enhancing enteral diet;IED)の術前投与が術後感染予防に有用とされているが,術式により手術侵襲は異なるため,免疫栄養としての効果も異なると考えられる.今回,当科で術前IED(インパクト®)を投与した症例を術式別に検討したので報告する.対象及び方法:対象は2005年1月から2008年12月までの消化器癌手術症例101例で,術前インパクト®投与47例(I群)と同時期の非投与54例(R群)の2群間に分けて比較検討した.検討項目は,投与期間と投与量からみたインパクト®投与コンプライアンス,インパクト®投与前後の血液データ(白血球,ヘモグロビン,総蛋白,アルブミン,コリンエステラーゼ)の変化,I群とR群における術後合併症(縫合不全,呼吸器合併症,Surgical site infection,術後膵液瘻(膵頭十二指腸切除のみ))発生頻度について比較検討した.また,食道切除では術後Systemic inflammatory response syndrome(SIRS)期間と術後人工呼吸器管理期間も検討した.結果:インパクト®投与群の術式別の内訳は,食道切除11例,胃切除10例,大腸切除8例,膵頭部十二指腸切除10例,肝切除8例であった.インパクト®投与のコンプライアンスは,術式による有意差は認められなかった.食道切除例においてインパクト®投与による白血球数の有意な増加が認められた.術後合併症では,食道切除における呼吸器合併症が有意に少なく,術後SIRS期間が短い傾向を認めた.結語:術式別の術前インパクト®投与の臨床効果は,手術侵襲が大きな食道切除にのみ認められた.
症例報告
  • 小暮 利和, 菊池 誠, 鷲澤 尚宏, 川村 智子, 豊田 めぐみ, 下岡 悦子, 川口 キミエ, 藤田 正和, 皆川 規雄
    2010 年 25 巻 2 号 p. 617-620
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は脳出血後遺症で嚥下機能障害と食道裂孔ヘルニアに伴う高度の胃食道逆流を有する84歳の女性患者で、経胃瘻的空腸栄養カテーテル(以下、PEG-Jと略記)より経管栄養剤及び簡易懸濁法による薬剤投与が行われた。鉄欠乏性貧血を認めPEG-Jより投与することを考慮し、クエン酸第一鉄ナトリウム錠(フェロミア®錠:以下SFC錠と略記)が追加投与された。10日後にカテ-テルが閉塞し、カテーテルを入れ替えたが5日後に再度閉塞した。SFC錠が投与されるまではファモチジン口腔内崩壊錠、塩化ナトリウム、フロセミド錠が投与されていたがカテーテルの閉塞は認められなかった。短期間における連続した2回の閉塞は、SFC錠の投与方法に問題があると考えられ、投与方法を変更した。SFC錠を錠剤のまま併用薬剤と共に簡易懸濁法により投与する方法から、SFC錠を粉砕後、剤皮を除去するために篩過し、併用薬剤と共に簡易懸濁法により投与する方法に変更した。以後、薬剤及び経管栄養剤の種類を変更することなくカテ-テルの閉塞は認めなかった。
  • 小澤 修太郎, 合川 公康, 佐藤 貴弘, 山口 茂樹, 小山 勇, 河合 恵里
    2010 年 25 巻 2 号 p. 621-624
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は49歳、男性。出生時の低酸素脳症による脳性麻痺のため介護施設に入所中であった。貧血に伴う意識消失発作があり精査施行したところ上行結腸癌を認めた。進行上行結腸癌にて根治的右結腸切除術を施行。病理組織学的検査ではStage IIIbであった。術後、廃用症候群となり絶食となったため、経皮内視鏡的胃瘻造設術percutaneous endoscopic gastrostomy(以下PEGと略)を施行。経腸栄養にて栄養状態改善したため介護施設に転院。術後50日目より胃瘻から倉田式簡易懸濁法にてフッ化ピリミジン系経口抗癌剤であるtegafur・uracilおよびleucovorinによる補助化学療法(以下UFT+LV療法と略)を開始。計画通り完遂した症例を経験した。PEGは栄養のみならず経口摂取不良な患者に対して補助化学療法の投与経路にもなる為、大腸癌の予後向上にも影響を及ぼすと思われた。
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