静脈経腸栄養
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26 巻, 3 号
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特集:ESPEN-LLLに学ぶ(後編)
原著
  • 藤牧 巳央, 林 直樹, 國場 幸史
    2011 年 26 巻 3 号 p. 955-963
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/15
    ジャーナル フリー
    新規糖尿病用栄養組成(DM−1)の血糖値および栄養管理における有用性について、モデル動物を用いて基礎的に検討した。DM−1は、糖質の筋への取り込みを促進して血糖値の上昇を抑制する分岐鎖アミノ酸のイソロイシンと、速やかにエネルギーとして利用される中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)を基本とした栄養組成である。DM−1は、糖尿病(GK)ラットの胃瘻連続投与で、標準組成流動食より血糖値の上昇を抑制した。また、DM−1は糖尿病(STZ)ラットの6週間の長期投与において、標準組成よりヘモグロビンA1c(HbA1c)の上昇を抑制した。更に、無たん白質飼料で低栄養としたGKラットの胃瘻栄養投与で、市販糖尿病用流動食に比べ体重の回復に優れた。これら結果から、DM−1は糖尿病動物において、投与時の血糖値上昇を抑制し、さらに栄養効果にも優れ、長期間の栄養管理での有効性が明らかとなった。このことから、ヒトにおいても同様の有用性が期待される。
  • 東口 高志
    2011 年 26 巻 3 号 p. 965-976
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/15
    ジャーナル フリー
    【目的】酵素分解法を用い一般の食事と全く変わらない自然な外観と風味を保ちながら、口腔内で容易に溶解し咀嚼困難や嚥下障害患者の経口摂取に適した形状を有する新しい食品“あいーと®”を開発した。その形状機能を評価する目的で、物性測定と組織成分を分析するとともに人工消化液への浸漬試験による崩壊性と消化性を検討した。
    【対象と方法】保形軟化食品“あいーと®”の物性と組成、ならびに人工消化液中での崩壊性と消化性について解析し、咀嚼および嚥下機能障害症例に対する有用性について通常調理の“常食”を対照として検討した。物性値はクリープメータを、蛋白分析はSDS電気泳動法を、食物繊維分析は酵素-重量とHPLC法を用いた。消化実験は、人工唾液、胃液および腸液中に浸漬し37℃で60分間反応させ、その残渣率や蛋白溶出量などを検索した。
    【結果】“あいーと®”の硬さは、いずれの食材でも2×104 N/m2以下の“常食”に比べて著しく低い値を示した。その変化は酵素処理によって食物の骨格を形成する蛋白や食物繊維が容易に消化され、低分子化されることによってもたらされることが判明した。人工唾液、胃液や腸液を用いた人工消化液浸漬実験では、“あいーと®”は常食に比べ速やかに崩壊し、わずかに残渣を残すまでに消化されることが示された。また、“あいーと®”の成分である蛋白は消化液中へ速やかに溶出しており、その濃度は常食に比べ明らかに高値を示した。
    【結論】酵素分解法を用いた保形軟化食品“あいーと®”は、外観は全く常食と変わらないが、口腔内でその形状が変化し咀嚼および嚥下がしやすい軟らかさと物性を有することが判明した。したがって“あいーと®”は咀嚼、嚥下機能や消化管機能が低下した高齢者や消化管術後早期の患者の経口栄養に適した全く新しい栄養製品であることが示唆された。
  • 赤津 裕康, 瀬藤 光利, 山本 孝之
    2011 年 26 巻 3 号 p. 977-983
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/15
    ジャーナル フリー
    【目的】ビタミン配合高カロリー輸液製剤を用いて高齢者の栄養管理を行った場合のビタミンB1、B6、C、葉酸の過不足を検討した。
    【方法】完全静脈栄養 (total parenteral nutrition ; 以下, TPNと略) 管理を要する必要水分量が1000mL前後の高齢な入院患者を対象とした。TPNは輸液量1000-1500mLを24時間持続点滴で投与した。追跡開始日、28日、56日、84日目に採血し、ビタミンB1、B6、C、葉酸の血中濃度を測定した。
    【結果】家族の同意が得られた17例の結果を得た。男性6例、女性11例で平均年齢は84.6±6.4歳 (70歳-98歳) であった。追跡開始日において、平均血中ビタミンC濃度は平均3.7±1.9μ g/mLと基準値 (5.5-16.8μ g/mL) より低かった。ビタミンC500mg/日を追加投与した6例の平均血中ビタミンC濃度は、基準値内に回復した (最終12.5±3.1μ g/mL)。追加投与を行わなかった11例の平均血中ビタミンC濃度は低値のまま推移した (最終3.5±2.4μ g/mL)。平均血中ビタミンB1濃度は基準値をやや上回る推移を示した。平均血中ビタミンB6濃度、平均血中葉酸濃度は基準値範囲内で推移した。
    【考察】TPNが必要な高齢者では、血中ビタミンC濃度が低下している可能性があり、ビタミン配合高カロリー輸液製剤の1000-1500m L/日投与では血中ビタミンC濃度が低値の持続を認めた。TPN管理が必要な高齢者では、定期的にビタミンCの血中濃度を測定し、補充する必要性が示唆された。
  • 篠田 正樹, 藤井 本晴, 村形 敦, 石川 陵一, 青木 光広, 青木 和裕, 長谷川 由美, 柳父 香澄, 飯田 正子, 鈴木 園子
    2011 年 26 巻 3 号 p. 985-990
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/15
    ジャーナル フリー
    【目的】水頭症に対するVPシャント術後にPEGが施行され、シャント感染を呈する報告が多い。その合併症を回避するために、腹腔内シャント挿入部とPEG予定部位との距離を長くする試みをした。【対象および方法】2008年5月以降に聖路加国際病院脳神経外科に入院した成人正常圧水頭症症例で、VPシャント術施行時に、嚥下障害・遷延性意識障害を認め術後に長期経管栄養投与が必要と思われ、将来のPEG造設が必要とされたくも膜下出血9例、脳内出血2例、特発性正常圧水頭症1例、計12例を対象とした。シャントシステムは前角穿刺法により行ない、一側下腹部に横切開を加えシャント管を挿入した。【結果】特発性水頭症1例を除く11例で画像上水頭症の改善を認めた。早期合併症として閉塞などは認めなかったが、2例で脳室側機械的閉塞、シャント管逸脱による皮下のう胞を認め、再建術を必要とした。12例中、PEGを施行した患者は3例であったが、特にシャント機能不全・感染は認めていない。【結論】水頭症VPシャント術後症例に対するPEGはシャント感染を惹起するとの報告が多いが、胃瘻部位とシャント挿入部との距離を隔てる工夫により合併症の発生を少なくする効果が得られた。
症例報告
平成21年度日本静脈経腸栄養学会フェローシップ賞受賞者学会参加記
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