静脈経腸栄養
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27 巻, 5 号
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特別寄稿
特集
  • 児玉 浩子, 小川 英伸
    2012 年 27 巻 5 号 p. 1163-1167
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/31
    ジャーナル フリー
    食育とは「さまざまな経験を通して“食”に関する知識と“食”を選択する力を習得し、健全な食生活を実践できる人を育てる」と定義されている。食育推進は生活習慣病予防に不可欠である。学校、地域、医療機関、家庭などあらゆる所で、あらゆる機会に食育を推進する必要がある。小児の生活習慣病には、メタボリックシンドローム、肥満症、2型糖尿病、高脂血症、脂肪肝による肝機能異常などがあり、肥満児に発症しやすい。また、小児肥満は成人肥満に移行する率が高い。肥満・生活習慣病患児には早期からの対応が必要で、食事療法・運動療法が基本であるが、近年、小児の2型糖尿病、著明な高脂血症では薬物療法も行われている。治療を行っている場合は、身長の伸びもチェックして、順調に成長していることを確認することも忘れてはならない。
  • 高増 哲也
    2012 年 27 巻 5 号 p. 1169-1173
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/31
    ジャーナル フリー
    先天性代謝異常症は、代謝に関わる酵素の働きが先天的に障害されているために代謝産物の欠乏と蓄積によりさまざまな臨床症状を呈する疾患群である。先天性代謝異常症はできるだけ早期に診断して症状の出現を予防することが重要であるので、新生児マススクリーニングを行い、疑いのある例では血液ガス、血漿アンモニア、アミノ酸、有機酸分析を行う。先天性代謝異常症は多岐にわたるため、全体を見渡すことは困難であるが、本項では代謝の系統別に分類したり、治療のカテゴリーに分けて論じたり、急性期と慢性期の治療に分けて論じてみた。さらに、食事療法を必要とする代表的な先天性代謝異常症について紹介し、ビタミン療法について、また特殊ミルクを用いる際に気をつけるべき欠乏症についても紹介した。
  • 口分田 政夫, 永江 彰子
    2012 年 27 巻 5 号 p. 1175-1182
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/31
    ジャーナル フリー
    重症心身障害障害児(者)は、呼吸障害や消化管通過障害、筋緊張の変動といった病態を合併することが多く、摂取エネルギーの決定には個別の評価が必要である。また、多くは摂食機能障害を合併し、ペースト食や経管栄養といったように特別な栄養摂取形態が必要となる。このため、長期に人工的栄養が投与されることも多く、蛋白質や微量元素、電解質の欠乏や過剰が生じる可能性があり、評価と対策が必要である。
  • 向井 美惠
    2012 年 27 巻 5 号 p. 1183-1188
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/31
    ジャーナル フリー
    小児の嚥下障害は、代謝の維持とともに発育を考慮した栄養管理が必要とされ、経口からの栄養摂取が困難なために長期に経管に頼らざるを得ない場合が多い。
    小児の嚥下障害の主訴は様々だが、特徴的には出生直後からの吸啜機能不全で哺乳障害の既往が多いことにある。哺乳障害により経管栄養となり、その後は嚥下障害により経口からの摂取が進まず、多くは継続して経鼻経管や胃ろうによる栄養摂取が主となっている。
    小児の嚥下障害に対するリハビリテーションの特徴は、原疾患の特徴に加えて、口腔・咽喉頭領域の形態的な成長を考慮したリハビリテーションの対応を常に必要とするところにある。また、経口摂取経験が極端に少ない場合には、口腔・咽頭・喉頭部の協調運動を学ぶことができずに嚥下障害が重度となっている場合も多い。随意的な嚥下機能獲得後に嚥下障害となった成人とは異なった対応が必要とされ、その対応には発達面からの注意が必要である。
  • 曹 英樹
    2012 年 27 巻 5 号 p. 1189-1193
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/31
    ジャーナル フリー
    最初のPEGは1979年米国で6歳の小児例に対して施行された。この簡便で低侵襲な胃瘻造設法は急速に広まり、現在では我が国でも成人を中心に「PEG=胃瘻」と呼ばれるほど普及した。小児においても適切なデバイスが少ないこと、鎮静・麻酔の問題、胃食道逆流症の合併、親による介護などさまざまな問題があるが、適応を慎重に検討しデバイス、手技を適切に選択することにより、小児であっても安全で低侵襲にPEGを行うことができる。適応も幅広く、食道疾患、慢性偽性腸閉塞症、難治性下痢などの消化管疾患や、脳性麻痺、精神発育遅延などの重度の中枢神経障害、先天性の神経・筋疾患など多くの疾患が対象になる。一方で、入れ替え時のトラブルや肉芽形成、瘻孔周囲炎などの合併症も知られており、とくに瘻孔周囲炎、漏れが増悪すると著しくQOLを損なう。丁寧できめこまやかな管理を心がける。
  • 増本 幸二, 新開 統子, 上杉 達
    2012 年 27 巻 5 号 p. 1195-1201
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/31
    ジャーナル フリー
    新生児は、各種栄養素の代謝や消化管における消化・吸収において、成人や小児とは大きく異なっている。さらに児の出生体重や在胎週数によっても、各種栄養素の代謝や消化管における消化・吸収は異なっている。そのため、新生児の栄養管理を行う上では、児の出生体重や在胎週数を考慮した、生理的な特殊性を理解する必要がある。
    新生児の栄養管理でも、まず成人や小児と同様に栄養アセスメントと栄養管理計画書作成を行う。病的な新生児では特に栄養障害を有することが多く、栄養アセスメントと栄養管理計画書に基づき、可能な限り早期に栄養療法を開始する。
    栄養療法は消化管が使用可能であれば経腸栄養を用いるのが原則であるが、投与量が不十分あるいは、病態的に必要であれば、静脈栄養を躊躇せず行う。なお、静脈栄養、経腸栄養ともに、新生児の代謝や消化吸収の特殊性を考慮し、成長発達を考えた慎重な管理を行う必要がある。
  • 加治 建, 向井 基, 林田 良啓, 武藤 充, 桝屋 隆太, 山下 達也, 右田 美里, 松藤 凡
    2012 年 27 巻 5 号 p. 1203-1207
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/31
    ジャーナル フリー
    小児短腸症候群に対する栄養管理は、原因疾患に対する手術を行った直後から始まっている。術後早期は、多量の下痢により水分、電解質を失うため、中心静脈カテーテルを用いて静脈栄養による栄養投与と下痢によって失った水分、電解質を十分に補充する必要がある。経腸栄養は可及的早期に開始し、静脈栄養に伴う合併症に留意しながら管理していく必要がある。失った腸管の部位や長さにより、PN離脱後も栄養吸収障害による問題を認めることがあるため、長期にわたる経過観察を行っていくことが重要である。
  • 西本 裕紀子, 川原 央好, 惠谷 ゆり, 松尾 規佐, 豊田 利恵子, 宮部 祐子, 庵森 靖弘, 馬場 千尋, 寺内 啓子, 野田 侑希
    2012 年 27 巻 5 号 p. 1209-1215
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/31
    ジャーナル フリー
    TPNないしEDP(エレンタール®P)による栄養管理中の小児20例を、脂肪乳剤非投与のTPN・EDP群(n=14)と投与した脂肪乳剤群(n=6)に分類して血漿脂肪酸値を比較検討した。更に、TPN・EDP群4例、脂肪乳剤群2例にω3系脂肪酸補充目的でシソ油を経腸投与して、その効果を検討した。リノール酸、αリノレン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)は脂肪乳剤群でTPN・EDP群より有意に高く、アラキドン酸(AA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、EPA/AAは2群間で差は認めなかった。ω3系脂肪酸のEPAとDHAは両群とも半数以上が正常範囲より低値を示した。シソ油投与によりαリノレン酸は有意に増加したが、リノール酸、DHAは投与前後で変化がなかった。EPAとEPA/AAは投与後有意に増加するとともに全例が基準値範囲に到達した。シソ油の投与による血漿ω3系脂肪酸値改善の可能性が示唆された。
  • 和田 基, 工藤 博典, 天江 新太郎, 石田 和之, 上野 豪久, 佐々木 英之, 風間 理郎, 西 功太郎, 福沢 太一, 田中 拡, ...
    2012 年 27 巻 5 号 p. 1217-1222
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/31
    ジャーナル フリー
    腸管不全合併肝障害(intestinal failure associated liver disease ; 以下、IFALDと略)は腸管不全(intestinal failure ; 以下、IFと略)の致死的かつ重大な合併症であるが、IF、IFALDの発生数、発症率、死亡率などの実態は知られておらず、今後の詳細な調査、検討が期待される。IFALDが進行し、不可逆的肝不全を来たした場合には肝臓-小腸移植、多臓器移植によってしか救命できないが、国内では依然として小児の脳死ドナーからの臓器提供の困難な状態が続いており、特に小児IF症例におけるIFALDの治療と予防はIF治療における最重要課題である。
    長期の静脈栄養(parenteral nutrition、以下、PNと略)症例では非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis、以下、NASHと略)来たすことが示され、IFALDの発症には肝臓での脂質代謝異常が関与すると考えられている。IF症例では長期PNに伴う過栄養/低栄養、必須脂肪酸の欠乏など肝臓での脂質代謝異常を来たす要因に加え、腸管細菌叢の異常などを原因とする敗血症、肝臓の循環不全により肝細胞障害を来たし、NASH/IFALDを発症し、重症化すると考えられる。新生児・乳児期のIFでは、胆汁輸送機構の未熟性や腸内細菌叢の異常をより来たしやすいことなどから胆汁うっ滞を主体とするIFALDが問題となり、幼児、学童以降ではNASHを主体とするものが多い。
    IFALD治療の骨子は、1) 残存する腸管を最大限に利用し、PNへの依存度を軽減すること、2) 個々のIF症例の病態を的確に評価し、適切なPN、経腸栄養(enteral nutrition ; 以下、ENと略)を実施すること、3) 短腸症候群や腸管内容のうっ滞に伴う腸内細菌叢の異常と合併するbacterial translocation(以下、BTと略)、敗血症を最大限に予防すること、である。最近、IFALDに対する魚油由来ω3系静脈注射用脂肪製剤(商品名 : Omegaven®、以下、omegavenと略)の有効性が報告されている。omegavenは(1)胆汁流出の改善、(2)脂肪化の減少、(3)免疫抗炎症作用、といった機序により胆汁うっ滞、肝炎、線維化を軽減すると考えられている。
    本稿では、当院におけるIF、IFALDの治療経験とomegavenの使用経験、IFALDの病因やIFALDに対するomegavenの効果に関するこれまでの報告を紹介し、IFALDに対する治療の今後の展望について考察する。
  • 上原 秀一郎
    2012 年 27 巻 5 号 p. 1223-1227
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/31
    ジャーナル フリー
    中心静脈栄養施行時に微量元素欠乏症が起こることが報告され、現在、ルーチンに微量元素製剤が投与されている。小児における体内の微量元素動態の特徴として体重あたりの需要量が多いため、欠乏症が生じやすい。従って静脈栄養の開始後、速やかに複合微量元素製剤の投与を開始すべきである。
    自施設では少なくとも3か月に1回の血液検査を施行し、血中微量元素のモニタリングを行っている。複合微量元素製剤の投与量は年齢に応じて決定しているが、特に過剰症や欠乏症などの有害事象は起きていない。しかし複合微量元素製剤に含有されない微量元素に関しては欠乏症を来す可能性があり、その代表がセレンである。セレンの投与量においては各個人差があり、必要量と中毒量の幅が比較的狭いため、その投与中には注意深い臨床症状の観察と血漿セレンのモニタリングが重要である。従って中心静脈栄養施行時には、複合微量元素製剤をただ漫然と投与していればいいのではなく、投与量が適切かどうか、病態の把握とともに定期的なモニタリングを行いつつ、複合微量元素製剤に含有されない微量元素の欠乏症も念頭に入れながら診療すべきである。
原著
  • 玉井 由美子, 海道 利実, 秦 浩一郎, 幣 憲一郎, 上本 伸二, 稲垣 暢也
    2012 年 27 巻 5 号 p. 1229-1237
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/31
    ジャーナル フリー
    【目的】肝移植患者の術前栄養状態は移植後成績に影響を及ぼすが、術前栄養療法の効果は明らかでない。そこで肝移植術前栄養療法の有用性について検討した。
    【対象及び方法】2009年1月から2011年1月までに成人肝移植手術を施行し経時的にデーターを得ることができた60例を、肝不全用経口栄養剤やシンバイオティクス、亜鉛補充などの術前栄養療法を1週間以上施行できた施行群(n=33)と施行できなかった非施行群(n=27)に分け、各種栄養パラメーターや移植後菌血症発症に対する有用性を後ろ向きに検討した。
    【結果】術前栄養療法施行群は非施行群に比較し、総リンパ球数、プレアルブミン、CRP、亜鉛の血中濃度が有意に改善し、移植後菌血症発症率が低下した。また栄養療法施行群で亜鉛とアンモニアの変化率について有意な負の相関を認めた。
    【結論】肝移植術前栄養療法は術前栄養状態改善に有用であり、アンモニア代謝改善効果や術後菌血症発症抑制効果も示唆された。
臨床経験
  • 津賀 祥子, 坂口 恵里子, 細井 香織, 小松 百合, 山崎 珠絵, 福島 芳子, 中村 浩志, 桑原 博, 馬場 裕之, 五関 謹秀
    2012 年 27 巻 5 号 p. 1239-1244
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/31
    ジャーナル フリー
    胃切除後は、食物の貯留能が変化し摂取量の減少や小腸への輸送能の変化を来す。栄養指導では失われた胃の機能を理解し“食べ方”の工夫が必須である。当院では栄養指導に術後透視動画を利用したのでその経験について報告する。胃癌にて胃切除を施行した全患者に自身の術後透視動画で上部消化管の構造の変化を確認後食べ方の指導を行い、患者の受け入れ状況、退院後の食事摂取状況を調査した。結果、患者は胃の食物貯留能の減少や小腸内への排出状況の変化を視覚的に理解でき、患者自身の動画であることでより興味をひくことができ、動画を用いた指導は有用であった。その反面、検査自体は増えることになり、術式ごとのサンプル動画を用いた栄養指導も取り入れ、術後に狭窄症状がある患者や、食べ方の重要性が理解できないなど、食事に工夫が必要であったり、上手く食事摂取がすすまない患者には患者自身の透視動画を用いた栄養指導を有効に利用したい。
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