静脈経腸栄養
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29 巻 , 3 号
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特集
  • 山中 英治
    2014 年 29 巻 3 号 p. 799-803
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/23
    ジャーナル フリー
     高齢社会となり入院患者も高齢化している。栄養管理とくに強制栄養が、単なる延命治療ではないかとの批判もある。高齢者は入院時栄養不良も多く、栄養不良では術後の回復も遅れ、筋力や免疫能を始めとする体力も低下しやすい。
     体力低下は離床の遅れにつながり、入院中の嚥下機能低下、誤嚥性肺炎、褥瘡なども発生しやすい。結果的に動けない、食べられない、家に帰れないことになれば、QOLは大きく低下する。ゆえに適切な栄養サポートは重要である。
     周術期の栄養管理についても、不要な長期間の絶食や輸液は患者のQOLを低下させることになるので、科学的根拠に基づいた栄養管理で標準化すべきである。また、静脈栄養よりも経腸栄養が生理的で安全であるが、最もQOLが良好なのは、経口摂取すなわち食事である。生命維持だけが目的ではなく、美味しく食べてこそ、生きている喜びがある。
  • 井上 善文
    2014 年 29 巻 3 号 p. 805-810
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/23
    ジャーナル フリー
     本邦においては、経腸栄養至上主義と表現してもいいような傾向があるため、静脈栄養の有効性や効果が実感されにくくなっている。簡便なTPNキット製剤の普及により、静脈栄養の処方内容や実施方法についての啓発活動が不十分になっていることも一つの理由であろう。適正な投与量・投与組成、適切な投与経路の造設と管理を行えば、静脈栄養は極めて有効で、特に、QOLの改善・維持向上に果たす役割は大きいことを再確認すべきである。静脈栄養自体に栄養治療効果があること、SPNとして食事や経腸栄養と併用することの有用性、cyclic TPNという管理方法によって輸液休止期間を設けることによる輸液ラインからの開放、PICCは中心静脈カテーテル挿入時の患者の恐怖心を軽減できる方法で、上腕PICCが推奨されること、CVポートは患者のQOLの維持向上に極めて有用であるが、上腕ポートは特に女性のQOLを考慮した場合には推奨される、など、特にQOLとの関連が強いものについて概説した。
  • 佐々木 雅也, 阪井 那津子, 栗原 美香
    2014 年 29 巻 3 号 p. 811-817
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/23
    ジャーナル フリー
     腸が機能している場合には腸を使用するという考え方が浸透し、経腸栄養は多くの疾患で施行されている。クローン病では、経腸栄養は原疾患の寛解導入・寛解維持療法として重要な治療法である。抗TNF-α製剤や免疫抑制剤との使い分けや併用方法が課題であり、治療成績のみならず、QOLの観点からの評価も重要である。また、頭頸部腫瘍や進行性の神経疾患である筋委縮性側索硬化症においては、経腸栄養は生命予後を左右する必須の栄養法として位置づけられており、経腸栄養によりQOLが向上することが明らかにされている。これらの疾患では、経管栄養を開始する時期、施行する方法などについて、QOLを含めて総合的に評価することが重要である。
  • 丸山 道生
    2014 年 29 巻 3 号 p. 819-824
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/23
    ジャーナル フリー
     摂食・嚥下障害患者にとって、人工的水分・栄養補給(AHN)を行う場合、その多くはPEGが第一選択となる。特に適応上議論のある認知症に関して、欧米では医学的観点からもPEGの効果は認められないとされ、合理的にPEGの適応はないことが導き出されている。しかし、本邦ではPEGは生存も効果も良好であるゆえに、AHNをすると意思決定した場合は、PEGをして長く生きることを、一方、AHNを選択しない場合はPEGを施行せず、早く死ぬことを意味する。その意思決定はより哲学的な問題で、PEGによるQOLの考慮は副次的なものでしかない。医療者・介護者の役割は、患者と家族のPEG選択への苦悩を軽減させること、そして、患者がPEGとそれに続く胃瘻栄養を行った時に、患者と家族のQOLを向上させ、患者の人生の物語を豊かにするのを応援することである。
  • 西山 順博, 小山 茂樹, 佐々木 雅也, 伊藤 明彦
    2014 年 29 巻 3 号 p. 825-831
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/23
    ジャーナル フリー
     在宅栄養管理を円滑に行うために、地域一体型NST(Nutrition Support Team 栄養サポートチーム)が必要であることは言うまでもない。全国各地で試みられているが、真の地域一体型NSTを実現するシステムの構築には至っていないのが現状ではないだろうか。医療としての病院での栄養管理はNSTの活動により飛躍的に発展しているが、療養としての在宅でのNSTの活動は難航している。この理由に、在宅療養の認識不足が挙げられると考える。そこで、我々の地域では、在宅で活躍する介護福祉職の基本理念でもある国際生活機能分類(International Classification Functioning, Disability andHealth : ICF)に基づいた理念「こころの平安」で心を一つにし、「おうみ在宅療養連携シート」をツールとして在宅療養を多職種で協力しサポートしていける地域を目指し、大津市を7つのエリアにわけ、各々の在宅療養サポートチーム(Home care Support Team: hST)を結成する構想の実現に向けて活動している。これらの活動が、QOLを高める在宅栄養管理にもつながると確信している。また、2008年より稼働している病診(後方)連携の必須アイテムの大津市PEG地域連携パスについても、本稿で紹介する。
  • 藤谷 順子
    2014 年 29 巻 3 号 p. 833-836
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/23
    ジャーナル フリー
     摂食嚥下障害のQOL改善には、①摂食嚥下障害自体の改善、②現在の摂食嚥下機能でもできることを増やすこと、③摂食嚥下障害に関しての診療への信頼感 が重要である。摂食嚥下障害による影響は、社会参加への阻害要因および、家族の不安や介護負担にもつながるため、それらも含めた目配りと対応が必要である。現在の摂食嚥下障害による「困っていること・社会参加の阻害」について、構造的に把握し、医療者の側から働きかけることが望ましい。摂食嚥下機能の重症度自体を変えられなくても、QOLを上げることは可能である。
  • 若林 秀隆
    2014 年 29 巻 3 号 p. 837-842
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/23
    ジャーナル フリー
     サルコペニアの定義は、狭義では加齢による筋肉量減少、広義ではすべての原因による筋肉量減少、筋力低下、身体機能低下となる。成人低栄養の原因である飢餓、侵襲、悪液質は、すべて二次性サルコペニアの原因でもある。つまり、高齢者で低栄養を認める場合、二次性サルコペニアのことが多い。高齢者では低栄養とQOLに関連を認め、栄養改善で身体的QOLと精神的QOLを改善できる。サルコペニアとQOLの関連も示唆されるが、サルコペニアの改善によるQOL改善のエビデンスは乏しい。
     サルコペニアに対する栄養補給は、高齢者の筋肉量と筋力を改善させる。ただし臨床現場では、広義のサルコペニアの原因である加齢、活動、栄養、疾患の有無をそれぞれ評価したうえで対処する。サルコペニアの原因によって、レジスタンストレーニングの可否や栄養療法の内容が異なるからである。サルコペニア対策では、リハビリテーション栄養の考え方が有用である。
  • 濵 卓至
    2014 年 29 巻 3 号 p. 843-849
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/23
    ジャーナル フリー
     緩和ケアとは、重い病を抱える患者やその家族一人一人の身体や心などの様々なつらさをやわらげ、より豊かな人生を送ることができるように支えていくケアであり、診断された時からいつでもどこでも切れ目なく、治療と並行して実施することが望まれている。栄養療法は、がん患者の支持療法(supportive care)として重要な役割を担い、緩和ケアには欠かせないものである。がん悪液質の進行度、重症度に応じた栄養療法を選択し、多面的なアプローチを行いながら、患者・家族のQOL向上に努めることが重要である。終末期がん患者に対する輸液療法の実施では、治療の目標を確認しながら、その利益と不利益を患者・家族と十分に相談し、医療チームとして継続的に検討していく。その際、輸液療法に関する患者・家族の様々なつらさ、不安などの思いに対して、共感的に傾聴し、意思決定支援を早い時期から行うことが、QOL向上にとって大切なことである。
  • 荒金 英樹
    2014 年 29 巻 3 号 p. 851-856
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/23
    ジャーナル フリー
    超高齢社会の到来に伴い食支援を必要とする高齢者は急増、多くの病院でその対策が急務とされている。当院では摂食量が少ない患者に対し独自に作成したアセスメントシートを利用し、多職種による食欲不振の原因の検討と介入を行っている。こうした要因の幾つかは病院だけで解決は難しく、中でも摂食・嚥下障害は地域での継続した支援が必要とされる。京都府、滋賀県で栄養サポート、摂食・嚥下障害に取り組まれている多職種が集い「京滋摂食・嚥下を考える会」が組織され、嚥下調整食の共通基準や摂食・嚥下連絡票を作成、地域での食支援の体制づくりの活動をしている。また、京料理や和菓子、茶、食器などの地元の食産業の協力を得ながら、一般市民へ介護食の理解を促し、介護食を食文化へと高める活動も行っている。こうした医療、介護の枠を越えた地域作りは、患者のみならず周囲の人々、地域のQOLを高める食支援に繋がると考える。
原著
  • 上村 朋子, 前田 大登, 岩田 菜津美, 吉村 潤子, 坂井 尚二
    2014 年 29 巻 3 号 p. 857-862
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/23
    ジャーナル フリー
    【背景】透析患者は便秘になりやすいが、血液透析患者は腹膜透析患者よりも便秘の頻度が高い。これは、血液透析患者の食物繊維摂取量が腹膜透析患者よりも少ないことが原因の1つである。【目的】水溶性の食物繊維であるグァーガム酵素分解物の摂取が便秘や栄養状態に与える影響について検討を行った。【対象、方法】対象は当院で外来維持透析中の患者33名(平均年齢 71±9歳、性別:男性21例、女性12例、原疾患:糖尿病13例、非糖尿病20例)。グァーガム酵素分解物を6週間、10g/日投与した。排便状態は「日本語版便秘評価尺度LT版」を用い、0点‐16点で評価を行った。また栄養状態は、Geriatric Nutritional Risk Index(GNRI)で評価した。【結果】CAS-LT版スコアは4.5から3. 0に有意に低下(p<0.05)し、便秘の有無及び便の形状についても改善した。GNRIは95.0から95.9と有意に上昇した。【結論】透析患者へのグァーガム酵素分解物投与は便秘を改善させた。また、栄養状態も改善する可能性がある。
  • 井上 善文, 桂 利幸, 國場 幸史, 藤牧 巳央, 梶原 賢太
    2014 年 29 巻 3 号 p. 863-870
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/23
    ジャーナル フリー
    【目的】脂肪乳剤をTPN(Total Parenteral Nutrition)製剤投与ラインに側管投与する方法における脂肪粒子の安定性について検証する。【対象および方法】TPN製剤(ビタミンおよび微量元素製剤添加)に脂肪乳剤を混合して100mL/ 時で投与する場合と、脂肪乳剤をTPN製剤投与ライン(100mL/時で投与)に側管投与(100mL、50mL、33mL、25mL、20mL、17mL/時で送液)する場合において、輸液の外観観察、平均粒子径、5μmよりも大きい粗大粒子の体積の測定を行った。【結果】混合液では平均脂肪粒子径に変化はなかったが、粗大粒子体積は投与後2時間より増加し、USP(UnitedStates Pharmacopia)基準の「5μmよりも大きい粒子の体積が全脂肪の0.05%未満」を超えた。側管投与では外観にも変化はなく、平均粒子径、粗大粒子の体積にも変化はなく、基準値未満であった。【結論】脂肪乳剤をTPN製剤投与ラインの側管から投与する方法は、平均脂肪粒子径の増大および脂肪粒子の粗大化は認められず、USP基準を満たしており、安全に投与できると考えられた。
  • 若林 秀隆, 栢下 淳
    2014 年 29 巻 3 号 p. 871-876
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/23
    ジャーナル フリー
    【目的】摂食嚥下障害スクリーニング質問紙票であるEAT-10の日本語版を作成し、信頼性・妥当性を検証する。【対象及び方法】EAT-10英語版の順翻訳、逆翻訳、英語原版と逆翻訳の整合性の検討を行い、EAT-10日本語版を作成した。次に摂食嚥下障害もしくは摂食嚥下障害疑いの要介護高齢者393人を対象にEAT-10日本語版を実施した。信頼性を内的整合性であるクロンバッハのα係数で、妥当性を臨床的重症度分類とスペアマンの順位相関係数でそれぞれ検討した。【結果】EAT-10日本語版を実施できたのは237人(60%)であった。クロンバッハのα係数は0.946であった。EAT-10を実施できない場合、摂食嚥下障害と誤嚥を有意に多く認めた。EAT-10と臨床的重症度分類に有意な負の相関(r=-0.530、p<0.001)を認めた。EAT-10で3点以上の場合、誤嚥の感度0.758、特異度0.749であった。【結論】EAT-10日本語版の信頼性・妥当性が検証された。EAT-10日本語版は、摂食嚥下障害スクリーニングに有用な質問紙票である。
症例報告
  • 長沼 篤, 高木 均, 小川 祐介, 清水 香絵, 荒木 朋貴, 高橋 悦子, 荻野 隆史, 佐藤 弘晃, 田中 俊行, 小川 哲史
    2014 年 29 巻 3 号 p. 877-881
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/23
    ジャーナル フリー
    症例は63歳、女性。C型慢性肝炎で近医通院中、肝細胞癌初発し2010年11月当院紹介受診した。肝S7に4cmの肝細胞癌と肺転移を認め、2011年1月上旬よりソラフェニブ内服を開始した。その後本人の強い希望で原発巣を切除する方針となり、1月末ソラフェニブを休薬し、2月中旬他院にてJ型切開開腹開胸で肝S7部分切除を施行した。術後軽度の創感染を合併していたが、3月上旬に退院した。同日よりソラフェニブを再開したが、3月下旬より創部感染・哆開が悪化、感染膿汁が排出された為、当院外科へ入院し,ソラフェニブは休薬とした。壊死組織はデブリードマン施行し、連日創部洗浄を施行した。食事摂取は良好であったが、入院1週間後も創部の改善は認められずNST依頼となった。ここでCaHMB・L-アルギニン・L-グルタミン配合飲料(アバンドTM)1日2袋内服を開始したところ、5日目に創底の肉芽形成を認め、7日目には排膿量が減少傾向となり,以後徐々に創部は縮小し,4月中旬に退院した。血管新生を阻害するソラフェニブが創傷治癒遅延に関与し、アバンドTMが創傷治癒に効果を認めたものと考えられ、示唆に富む症例と考え報告した。
  • 市下 和博, 平林 伸治, 狭間 洋至, 吉田 真佐子, 吉持 奈津子, 河合 佐紀子, 深海 広平, 谷尾 正昭, 中井 規臣子, 根津 ...
    2014 年 29 巻 3 号 p. 883-887
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/23
    ジャーナル フリー
    症例は69才男性。2009年6月、転落外傷による多発骨折、気胸にて人工呼吸器管理下に手術施行。その後、経口開始するも嚥下障害にて肺炎頻発したため、同年10月経皮内視鏡的胃瘻造設術(percutaneous endoscopic gastrostomy;PEG)施行、その後内視鏡下に2回カテーテル交換し、廃用症候群に対するリハビリ目的にて2010年8月当院転院となった。経腸栄養(enteral nutrition;EN)投与するも肺炎を繰り返し、末梢静脈栄養を併用していた。10月末、突然多量の水様下痢が出現、EN中止し中心静脈栄養管理とし、その後EN再開を試みるも水様下痢がみられた。2011年4月、内視鏡下にカテーテル交換を試みるも胃内に内部ストッパーはなく、CT・造影にて内部ストッパーは横行結腸内にあることが判明、胃結腸皮膚瘻と診断された。PEG施行後1年を経て発症し、診断までに6ヶ月を要したが、経腸栄養剤投与直後の水様性下痢が認められた場合には本症を念頭に入れる必要があり、PEGの稀な合併症として留意すべきと考えられた。
  • 甲田 貴丸, 鷲澤 尚宏, 山﨑 有浩, 大嶋 陽幸, 名波 竜規, 金子 奉暁, 水津 優, 島田 英昭, 金子 弘真
    2014 年 29 巻 3 号 p. 889-892
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/23
    ジャーナル フリー
    上部消化管の術中に造設される小腸瘻カテーテルは術後早期からの経腸栄養投与に使用できるため有用である。
    今回、胃空腸バイパス術施行後、空腸瘻カテーテル先端による腸管穿孔の症例を経験したので報告する。
    症例は73歳男性、早期胃癌の診断にて開腹幽門側胃切除、Roux-Y再建施行、術中胆道損傷のため胆管空腸再建を加え、術中ジュジュノストミーカテーテルキット9FrTM(日本コビディエン)を留置した。術後、残胃小腸吻合部狭窄となり消化管バイパス術を施行した。初回の腸瘻をそのまま流用したが、再手術後第9病日の造影検査で空腸瘻カテーテル先端による消化管穿孔が確認された。腹腔ドレナージが良好であったため絶食、TPN管理にて軽快、経口摂取再開し経過良好にて再手術後第63病日に退院となった。空腸瘻カテーテル先端による腸管穿孔を防ぐためには、術中にチューブ先端の位置確認、腹壁固定を確認する事が重要と思われた。
日本静脈経腸栄養学会認定地方研究会
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