日本周産期・新生児医学会雑誌
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最新号
日本周産期・新生児医学会雑誌
選択された号の論文の40件中1~40を表示しています
レビュー
  • 神谷 千津子
    2021 年 57 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

     循環器医療や新生児医療の進歩に伴い,先天性心疾患患者の予後が著しく向上したこと,遺伝性不整脈など若年で診断される疾患が増えたこと,母体の高齢化などにより,心血管疾患合併妊娠数が増えている.妊娠・出産を通じて,母体の循環動態はダイナミックに変化するため,合併症リスクが増加する.そのため,妊娠前カウンセリングの時点から,専門家の関与が推奨される.

     心血管疾患合併妊娠の診療においては,母体の循環動態の変化とタイミングを知り,合併症の予防や早期診断に努める.また,母体の安全最優先が原則ではあるが,母体の薬物治療における催奇形性や胎児毒性について,放射線検査における胎児被爆や造影剤の児への影響について知り,適切な検査・治療を施行する.わが国における妊産婦死亡の1割が心血管疾患原因であり,ハイリスク例の周産期診療においては,産科,循環器科をはじめ,関連科が連携したチーム医療が必須である.

総説
  • 近藤 厚生, 多田 克彦, 和田 誠司, 横峯 正人, 石川 浩史, 加藤 聖子, 味村 和哉, 宮内 彰人, 佐世 正勝, 伊藤 知敬, ...
    2021 年 57 巻 1 号 p. 8-18
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

     神経管閉鎖障害は脊髄髄膜瘤と無脳症を包括する病名であり,妊娠6週頃に発症する.この先天異常疾患の特徴は,妊娠前から葉酸を適切に摂取するとその発生リスクを40-80%低減できることである.2000年に厚生省は妊娠を計画する女性は,葉酸サプリメントを1日0.4mg摂取するよう勧告したが,その後の発生率は減少していない.2020年に我々が調査した(推定)真の発生率(2016-18年)は,7.93–8.82/10,000分娩であり,日本産婦人科医会が公表しているデータの約1.5倍であった.本稿では,神経管閉鎖障害と葉酸サプリメントの関連,本疾患のリスク因子,葉酸摂取による利益と有害事象,国際的な予防活動などについて報告する.神経管閉鎖障害の発生率を低減するためには,政府が穀類へ葉酸を添加する法律を制定することが必要であり有効である.

原著
  • 中金 朗子, 望月 純子, 大西 庸子, 服部 響子, 吉村 嘉広, 関口 和企, 金井 雄二, 海野 信也
    2021 年 57 巻 1 号 p. 19-25
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

     弛緩出血症例における大量輸血の予測因子を後方視的に検討し,適切な母体搬送の時期を判断する指標について考察した.対象は赤血球液と新鮮凍結血漿を輸血した症例のうち,主な出血原因が子宮弛緩と考えられた88例.10単位以上の赤血球液を輸血した大量輸血群(MT群)は46例,非大量輸血群(非MT群)は42例.当院での治療前の血中ヘモグロビン濃度(Hb),血小板数(Plt),血中フィブリノゲン濃度(Fib),ショックインデックス(SI)は両群間で有意差を認めた.多変量解析で,Fib ≦ 171mg/dLとSI ≧ 1.3が大量輸血の予測因子として抽出され,オッズ比(95%信頼区間)は,各々 4.81(0.62-0.83),7.40(0.61-0.82)だった.陽性的中率は各々 73%,82%であり,弛緩出血症例におけるFib ≦ 171mg/dL,SI ≧ 1.3は,高次施設への搬送を決定する指標であることが示唆された.

  • 九島 令子, 古谷 智子, 大森 意索
    2021 年 57 巻 1 号 p. 26-30
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

     NICU退院前の聴性脳幹反応(Auditory Brainstem Response:ABR)検査で異常を認めるも難聴は否定された超低出生体重児(ELBWI)22例の発達予後を,ABR異常のなかったELBWIと比較した.22例の在胎週数は中央値24.7週,出生体重は同618g,SGAは18.2%,人工呼吸日数,HOT施行率,PDA手術率,ROP治療率,ステロイド全身投与率の各中央値は62日,40.1%,27.3%,45.5%,59.1%であり,脳性麻痺3例,自閉スペクトラム症を5例に認めた.修正1歳半,暦3歳の発達指数(DQ)および6歳時の知能指数(IQ)は,ABR異常を認めた22例はABR異常のなかったELBWIに比較して有意に低値であった.これらは在胎週数や出生体重が同等で上記関連因子にも有意差がない在胎22〜25週出生のELBWIのみと比較しても,修正1歳半の認知・適応DQ以外はすべて有意に低値であった.ABR異常を認めるも難聴は否定されたELBWIは精神運動発達遅滞のハイリスクであり,早期より療育など介入を考慮すべきである.

  • 三宅 麻由, 衣笠 万里, 西尾 美穂, 松井 克憲
    2021 年 57 巻 1 号 p. 31-36
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

     ケタミン塩酸塩は日本では麻薬に指定されているが,われわれは産科病棟に常備して緊急時に使用してきた.2007年1月から2018年12月までに同病棟でケタミンによる静脈麻酔を行った32症例について,その有効性と安全性を評価した.22例は胎盤用手剥離術施行例であり,出血量は平均1,096mLであったが,輸血例はなかった.それ以外は分娩後子宮出血止血処置が3例,腟裂傷・血腫の止血処置が4例,III度およびIV度会陰裂傷縫合が3例であった.計5例に輸血を要したが,その後の回復は良好であった.ケタミン使用量は30~80mg(平均43mg)であり,単独でも良好な鎮痛・鎮静効果が得られ,血圧低下・呼吸停止・誤嚥はみられなかった.またケタミン投与後の授乳による新生児への影響は認められなかった.ケタミンは有効かつ安全な麻酔薬であり,母体救命の視点から緊急時にはただちにアクセスできることが望ましい.

  • 山下 健, 南 理志, 水田 裕久
    2021 年 57 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

     当院に通院する妊婦のうち,喫煙する妊婦56名を対象に喫煙習慣に対する質問表調査を実施した.妊娠前と妊娠中の1日喫煙本数は17.4本と6.9本であり,9割は妊娠後に喫煙本数を減らした.喫煙しているタバコの平均含有タール量は7.7mgであり,多くの妊婦は低タールタバコを吸っていた.家庭内での喫煙場所は,約9割が同室内や換気扇下であった.妊娠中の飲酒率は約16%で,朝食を毎日食べる者は半数以下であった.喫煙妊婦の喫煙ステージは準備期が多かった.約9割に周産期的異常を認めた.タバコをやめられない理由で最多のものは「気分転換のため」であった.喫煙の害についての有知識率は,「流早産」や「FGR」などは高かったが,「ADHD」,「肥満・糖尿病」や「ED」などの有知識率は低かった.喫煙妊婦の有知識率は前喫煙妊婦および非喫煙妊婦に比べ有意に低かった(p < 0.05).喫煙妊婦は妊娠中の喫煙の害についての有知識率が低いため,喫煙妊婦に対する禁煙啓発教育の重要性が示唆された.

  • 花木 麻衣, 宮園 弥生, 永藤 元道, 竹内 秀輔, 梶川 大悟, 日高 大介, 金井 雄, 小畠 真奈, 高田 英俊
    2021 年 57 巻 1 号 p. 43-48
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

     分娩施設外での非計画的分娩により出生した新生児(以下,病院前出生児)の初期対応は主に救急隊が行うが,その教育体制は未だ確立していない.救急隊への周産期救急教育の課題を見出すことを目的に本研究を行った.2008年1月〜2018年12月の11年間で,救急隊による初期対応を受け当院に搬送された病院前出生児は40例であった.救急隊の分娩立ち会いは23例(57.0%)で,出生時の処置は32例(80.0%)がルーチンケアのみであったが,5例で人工呼吸を要し,そのうち1例では胸骨圧迫も要した.アプガースコアの採点は16例(40.0%)にとどまり,児の状態把握が不十分である可能性が示唆された.児の異常所見では体温36.0℃未満の低体温が最も多く24例(60.0%)に認め,保温方法にも課題が残ると考えられた.救急隊が周産期救急に関連した講習会を受ける機会は増えており,これらの課題に重点を置き,より実践的なシミュレーション教育を行うことが望まれる.

  • 田中 宏和, 林 敬二, 香西 亜優美, 山本 健太, 石橋 めぐみ, 天雲 千晶, 伊藤 恵, 森 信博, 新田 絵美子, 花岡 有為子, ...
    2021 年 57 巻 1 号 p. 49-54
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

     離島は医療資源が限られるため,しばしば緊急母体搬送が必要となる.今回,瀬戸内海の離島からの緊急母体搬送について,適用疾患と転帰,搬送方法と搬送時間について検討した.2016年4月から2020年4月までの緊急母体搬送事例は17例であった.適用疾患は,早産関連が13例,妊娠中の腹痛・出血が2例,分娩後異常出血が2例であった.離島施設では早産児の管理が問題となるため,早産期の母体搬送が最多で76.5%であった.搬送方法はヘリコプターが13例,救急艇およびフェリーでの搬送が各2例であり,主要搬送先までの実質搬送時間は,ヘリコプター搬送は平均17分,救急艇は約70分,フェリー搬送の場合約100分であった.ヘリコプターによる搬送は時間的に非常に有効であるが,搬送決定時間によっては選択できない場合があり,早産が予測される症例においては搬送決定までのプロセスに注意が必要であると考えられた.

  • 前田 朋子, 奈良 昇乃助, 古賀 愛美, 三木 希望, 羽生 直史, 西袋 麻里亜, 西端 みどり, 菅波 佑介
    2021 年 57 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

     早産児をはじめとするNICU退院児のより良い神経発達のために,ファミリーセンタードケアの重要性が明らかになってきている.当院では,ファミリーセンタードケアの一環として,新病院開設に伴い,家族がより快適にNICUで過ごせるようOBD型NICUから半個室/個室型NICUへ改築を行った.病棟の変化がスタッフ,患児と家族に及ぼす影響を調査する一環として,病棟移転前後にNICUで勤務していたスタッフおよび,同時期に入院していた患児の両親に対して,アンケート調査を行った.スタッフ・両親ともに,家族が個室化により快適に過ごせるようになったという意見が多く,個室の広さや壁の高さが高くなったことにより全体的な満足度は上昇していた.一方,スタッフからは安全面を懸念する声も多くみられたため,病棟運営上注意が必要な点もあると考えられた.

  • 佐藤 工, 佐藤 啓, 杉本 和彦
    2021 年 57 巻 1 号 p. 61-65
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

     【背景】里帰り妊婦が里帰り後に,突然重症胎児心疾患が発見されることは妊婦と家族に大きな負担となる.【目的】里帰り妊婦の重症胎児心疾患診断に関わる問題点を明らかにする.【対象と方法】2017年1月から3年間,当科で胎児心エコー検査を受けた里帰り妊婦の胎児診断と転帰について検討した.【結果】胎児心エコー検査を受けた全妊婦1,662例中里帰り妊婦は346例(21%),妊娠週数は平均33.5週と非里帰り妊婦より有意に遅かった(p<0.01).胎児診断9例中,両大血管右室起始,総動脈幹,肺動脈閉鎖兼心室中隔欠損の3例が他の高次医療施設に紹介された.【結語】里帰り後の重症胎児心疾患の診断時期は遅く,妊婦や家族への病状説明や心理的援助が不十分なまま分娩施設の変更を余儀なくされる場合がある.かつ重症例の多くが大血管異常を伴うことから,里帰り前の胎児心臓病学会ガイドラインレベルIスクリーニングが必須である.

  • 釼持 学, 大岡 麻理, 石田 宗司, 山口 綾乃, 小阪 裕佳子, 横関 祐一郎, 野渡 正彦, 中西 秀彦, 石倉 健司
    2021 年 57 巻 1 号 p. 66-72
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

     本邦の超早産児の中・長期的な予後調査報告は少ない.そこで当院の超早産児の就学状況と学童期の合併症を調査した.対象は2005〜2014年に入院した在胎28週以下の児とし,アンケート調査を行った.対象の165人中,91人から返答を得た.このうち72人(79.1%)が通常学級に在籍していた.中学生の通常学級の在籍率は78.1%であった.脳室周囲白質軟化症,壊死性腸炎/消化管穿孔,重症SGA(Small for Gestational Age),ABR(Auditory Brainstem Response)に異常があると通常学級への就学率は低下した.合併症は68.1%に認め,斜視が14.3%,眼鏡使用は28.6%だった.中学校での通常学級在籍率は小学校入学時と同様であった.退院時のABR検査は予後を反映する可能性があった.斜視はこれまでの報告より多く注意が必要である.

  • 森田 篤志, 宮園 弥生, 永藤 元道, 竹内 秀輔, 梶川 大悟, 日高 大介, 金井 雄, 藤山 聡, 齋藤 誠, 高田 英俊
    2021 年 57 巻 1 号 p. 73-78
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

     本邦において,新生児黄疸に対する光線療法後のリバウンドフォローアップについて検討した報告はない.2010年1月から2014年8月に,筑波大学附属病院新生児室で光線療法を施行された在胎36週以上かつ出生体重2, 500g以上で明らかな合併症のない新生児黄疸143例を対象とし,光線療法後のリバウンドフォローアップに関する探索的な検討を行った.再治療を要した症例は4例(2.8%)のみであった.再治療を要した4例中3例が在胎37週で出生しており,4例中3例が日齢2で光線療法開始となっていた.光線療法終了時点での値を基準とした血清総ビリルビン(TB)値の低下の有無に着目すると,光線療法終了後24時間または36時間時点での血清TB値が光線療法終了時の値を下回っていた場合において再治療を要した症例はなく,これらの条件を満たす児については,その後のフォローアップは不要である可能性が示唆された.

  • 望月 響子, 臼井 秀仁, 八木 勇磨, 篠原 彰太, 都築 行広, 河北 一誠, 北河 徳彦, 新開 真人
    2021 年 57 巻 1 号 p. 79-83
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

     新生児開腹手術の疾患毎の癒着性腸閉塞(ASBO)発生頻度や特徴をまとめた報告は少ない.1980年1月から2012年12月まで当院で新生児開腹手術を行い,術後ASBOで閉塞解除術を行った55例を対象に原疾患や特徴を後方視的に検討した.原疾患は,腸閉鎖(IA)13例(発生頻度5.3%),横隔膜ヘルニア(CDH)10(6.2),腹壁異常9(5.7),超低出生体重児(ELBWI)消化管穿孔7(9.1),直腸肛門奇形6(3.5),腸回転異常症4(3.8),その他6例.ASBO初回手術年齢中央値は0.75歳で,疾患毎ではIA 1.12,CDH 0.83,腹壁異常0.92,ELBWI消化管穿孔0.17,鎖肛1.71,腸回転異常症5歳であり30例で乳児期に手術を要した.最終follow up年齢中央値は8.58歳.腹膜炎や腸管刺激による癒着と手術操作に伴う癒着のどちらも腸閉塞発生因子となっていると考えられた.

  • 黄 彩実, 來間 愛里, 和形 麻衣子, 山本 瑠美子, 川口 晴菜, 山本 亮, 林 周作, 石井 桂介
    2021 年 57 巻 1 号 p. 84-90
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

     目的:一絨毛膜二羊膜(MCDA)双胎のSelective intrauterine growth restriction,Type Iの予後不良例の頻度と臨床的特徴を検討する.

     方法:妊娠26週未満のType Iを対象とした後方視的コホート研究である.主要評価項目は妊娠あたりの予後不良(死亡[流産,胎児・新生児死亡])の頻度とした.副次評価項目は,急速遂娩を要する胎児機能不全,予期せぬ胎児死亡,MCDA双胎特有の合併症の頻度とした.

     結果:40例において,予後不良は両児新生児死亡1例,smaller twinの胎内死亡3例の計4例(10%)であった.胎児機能不全,予期せぬ胎児死亡,およびMCDA双胎特有の合併症は,それぞれ10例(25%),1例(2.5%),17例(42.5%)であった.

     結論:Type Iの予後不良は10%であり,さらに全体の約半数は特別な管理を要した.

  • 藤岡 泉, 笠井 靖代, 寒川 早織, 芥川 香奈, 有馬 香織, 渡邊 理子, 宮内 彰人
    2021 年 57 巻 1 号 p. 91-97
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

     てんかん合併妊娠の周産期管理の課題を明らかとするため,2014年から5年間に当センターで分娩した15, 344例のうち,てんかん合併妊娠58例(0.38%)を抗てんかん薬の服薬状況に基づき4群に分け,周産期予後を後方視的に解析した.

     4群の内訳は,a群(服薬あり怠薬なし)22例,b群(服薬あり怠薬あり)4例,c群(服薬なし妊娠判明後中止)1例,d群(服薬なし妊娠前から)31例であった.分娩週数・出血量・児体重・Apgar score,臍帯血pHに有意な差はなかった.妊娠中の発作は13例(22.4%)で認め,怠薬した症例などにみられた.バルプロ酸が必須の患者では妊娠判明後の薬剤変更が発作原因となる可能性があった.母乳育児は混合を含めると55例(94.8%)が行っていた.

     妊娠前から母児の影響を考慮した薬剤の選択と,本人が妊娠中の発作コントロールの重要性を十分に理解することが重要である.

  • 世永 由里子, 梁 栄治, 八木 慶太, 瀬戸 理玄, 森田 政義, 鎌田 英男, 渡辺 達也, 伊東 明彦
    2021 年 57 巻 1 号 p. 98-102
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

     切迫早産の妊婦に対して頻用されるリトドリン塩酸塩錠が胎動に及ぼす影響を胎動計(Fetal movement acceleration measurement recorder)を用いて検討した.2010年4月から2019年8月までに帝京大学医学部附属病院で分娩した171例(服用群65例,非服用群106例)の単胎妊娠を対象とした.妊娠28週以降,週に1回自宅で夜間の胎動を測定した.前期(妊娠28-31週)と,後期(妊娠32-35週)に分け,両群間で,胎動占有率を比較した.胎動占有率は,前期では服用群18.84±9.06%,非服用群17.33±7.92%(p=0.90),後期では服用群13.87±5.52%,非服用群14.64±6.94%(p=0.15)と両時期とも有意な差は認められなかった.リトドリン塩酸塩錠の投与は胎動の発生頻度に影響しないことが明らかとなった.

  • 田尾 克生, 鈴木 秀文
    2021 年 57 巻 1 号 p. 103-107
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

     プレセプシン(以下,P-sep)は感染症の指標として既知の炎症指標よりも早期に上昇し,外傷,手術などの影響を受けにくく,重症度を反映する信頼性の高い指標である.2018年4月から2019年5月まで当院で妊娠初期から妊婦健診を受けている単胎の児を出生した20歳以上の妊婦を対象とし,基礎疾患をもつ症例は除外した(N=501).妊娠期間中(中央値28週3日)と分娩時(中央値39週4日)のCRP,白血球,単球,好中球,P-sepを測定したところ,P-sepと他の採血指標との間に相関を認めなかった.分娩時のP-sepに影響を与える因子について,切迫早産の有無が分娩時のP-sepや妊娠期間中からのP-sepの変化率に有意差を認め,早産症例のみでも同様であった.切迫早産時から分娩までの期間と分娩時のP-sepとの関係に逆相関を認め,切迫早産をきたす周産期における胎内の炎症指標である可能性が示唆された.

  • 向井 勇貴, 瀬尾 晃平, 奥山 亜由美, 土肥 聡, 市塚 清健, 長塚 正晃
    2021 年 57 巻 1 号 p. 108-113
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

     緒言:2020年初頭よりCOVID-19パンデミックが発生した.医療界全体でこれまでの診療体制とは異なる対応が求められた.当院では産科合併症がなく児の発育に異常のない経過良好な妊婦を対象として,健診回数を減じた管理を実施した.本研究は,妊婦健診回数の頻度の変化によって周産期予後に違いがあるかを調査すること,またそれに伴う患者の心理的調査を行うことを目的とした.

     方法:当院で妊娠分娩管理を行った488例を対象とした.選択基準は,定期的通院を要する他科疾患合併症がなく,胎児異常をいずれも認めない妊婦とした.対象はコントロール群(n=238)とケース群(n=250)に分類され,母体および胎児の周産期合併症の発生率,および分娩と新生児の転帰に関する多変量解析を実施した.さらに,分娩後のアンケートを用いて精神的な評価を行った.

     結果:多変量解析では,すべての周産期転帰に違いはみられなかった.また,精神的評価の回答率は68.0%であり,経産婦では実施した健診項目に満足している傾向がみられたが,初産婦・経産婦ともに頻度に関しては少ないと感じる傾向がみられた.

     考察:当院で実施したCOVID-19パンデミック後の妊婦健診の体制は,周産期予後に影響を与えなかった.一方,健診間隔の開大により,どの妊婦も漠然とした不安感を抱いており,心理的サポートの面では不十分であったと思われる.COVID-19パンデミックを契機に,今後の周産期管理の在り方について検討を重ねることで,より安全でより効率の良い管理へとつながる可能性が示唆された.

症例報告
  • 安田 美樹, 上林 翔太, 増田 望穂, 池田 真規子, 中島 文香, 森下 紀, 安堂 有希子, 種田 健司, 佐藤 浩, 廣瀬 雅哉
    2021 年 57 巻 1 号 p. 114-118
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

     胎児頭蓋内出血は非常にまれであるが,児の生命予後,神経学的予後に大きく影響する.原因としては児の先天性疾患,母体の血小板減少,凝固異常など多岐にわたる.今回,胎児期に脳室内出血が疑われ,MRI検査でPVIの発症が疑われた症例を経験した.症例は25歳,初産婦,妊娠31週で胎児脳室拡大,脳室周囲の高輝度エコー像を指摘され当科に紹介.胎児MRI検査で右優位の側脳室拡大,右側脳室周囲に血腫を認め,PVIの疑いと診断された.各種原因検索を行ったが明らかな原因を指摘できず,胎児の出血性素因が否定できなかったため妊娠37週に選択的帝王切開術を行った.児に合併奇形はなく,血液検査異常を認めなかった.頭部MRI検査で右側脳室の拡大,白質容量の低下,右脳室内血腫を認めた.麻痺症状や痙攣発作は認めず日齢15に退院し,生後7カ月で軽度の左片麻痺と診断された.

  • 藤本 真徳, 戸川 泰子, 杉本 真里, 杉浦 崇浩, 岡田 真由美, 村松 幹司, 小山 典久
    2021 年 57 巻 1 号 p. 119-123
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

     Beckwith-Wiedemann症候群(BWS)は巨舌,腹壁欠損,過成長を三主微とし,染色体11p15のゲノム刷り込み現象が関与して発症する.数%は父由来の11p15を含む部分トリソミーに起因する.18q部分モノソミーは髄鞘化遅延や精神運動発達遅滞を特徴とする.我々は在胎38週5日,体重3,406g(+1.5SD),身長51.5cm(+1.6SD)で出生し,耳介低位,眼間開離,巨舌,心房中隔欠損,臍ヘルニア,左鼡径ヘルニア,脊柱形態異常を認めた非典型BWSの男児を経験した.重度精神運動発達遅滞を認め,遺伝学的検査から46, XY, der(18)t(11;18)(p15.3;q21.1)patが判明した.過去の報告から不均衡型相互転座を伴うBWSは精神運動発達遅滞と巨舌を主な臨床的特徴とし,精神運動発達,腫瘍発生の可能性,遺伝カウンセリングの観点から診断後のフォローが重要と考えられた.

  • 橋本 実沙, 神澤 孝洋, 山本 啓之, 加藤 英子, 家田 訓子
    2021 年 57 巻 1 号 p. 124-128
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

     フェノバルビタール(以下PB)及びミダゾラム(以下MDL)に抵抗性の新生児発作の治療について十分なエビデンスは未だ得られていない.新生児発作にホスフェニトイン(以下fos-PHT)が有効であった1例を報告する.症例は,在胎40週5日に胎児機能不全のため吸引分娩にて出生した.Apgar Score1点(1分),4点(5分),5点(10分)で,新生児仮死が疑われNICUに入院した.生後32時間よりamplitude-integrated EEG(以下aEEG)波形は鋸歯状パターンを呈し,脳波波形では律動的に反復する同一波形を認めた.左上肢の間代性けいれんも出現し新生児発作と診断した.PB及びMDL投与で発作は持続し,fos-PHT投与で発作は消失した.低血圧や徐脈などの副作用は認めなかった.両親にfos-PHTが新生児に対し適応外使用である旨を説明し同意を得た.本症例では新生児発作にfos-PHTが有効で,安全に使用することができた.

  • 庄 隆成, 前田 隆嗣, 戸田 薫, 切原 奈美, 谷口 博子, 上塘 正人
    2021 年 57 巻 1 号 p. 129-134
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

     子宮筋腫合併妊娠は,様々な産科合併症の原因となるが,子宮筋腫合併妊娠と静脈血栓塞栓症の関連について述べた報告は少ない.今回,帝王切開術後に肺塞栓症を発症し,venoarterial extracorporeal membrane oxygenation;以下VA-ECMO(percutaneous cardiopulmonary support;以下PCPS)を含めた集中治療により救命できた子宮筋腫合併妊婦の症例を経験したので報告する.

     症例は36歳初産婦で,約14cmの巨大子宮筋腫合併妊娠のため当科へ外来紹介となった.妊娠40週5日分娩停止で緊急帝王切開術を行った.術後1日目,初回歩行時に心肺停止となり,胸骨圧迫を実施した.肺塞栓症を強く疑い,気管挿管,VA-ECMO(PCPS)を装着した.造影CTで肺塞栓症と診断した.骨盤内静脈に血栓は認めなかったが,子宮による下大静脈の圧排所見を認めた.集中治療を行い,術後34日目に自宅退院となった.

     巨大子宮筋腫合併妊娠では,凝固機能評価を含む血栓の評価や周術期の予防的抗凝固療法などの血栓塞栓症を念頭に置いた管理を実施することが重要である.

  • 鵜飼 聡士, 戸川 泰子, 杉本 真里, 杉浦 崇浩, 村松 幹司, 小山 典久
    2021 年 57 巻 1 号 p. 135-139
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

     シベレスタットナトリウム(シベレスタット)を投与した重度の呼吸障害の超低出生体重児3例のカルニチン動態を検討した.シベレスタット投与に伴い遊離カルニチン(C0)は低下し,投与終了後も約2週間低値が持続した.ピバロイルカルニチン(C5piv)はシベレスタット投与に伴い血中,尿中ともに上昇し,投与終了後も約2週間尿中排泄が続いた.シベレスタットはピボキシル基を有しており,ピボキシル基の排泄過程でC0が消費され,C5pivが合成されて尿中に排泄される.このためカルニチン代謝への影響が指摘されているが,それを裏付ける結果となった.超低出生体重児はカルニチン不足に陥りやすく,シベレスタット投与終了後もカルニチン補充を必要とすることが示唆された.また,シベレスタット投与で血中に増加したC5pivにより,新生児マススクリーニングにてイソ吉草酸血症が偽陽性と判定されることがあり,注意が必要である.

  • 服部 葵, 吉田 彩, 奥 楓, 神谷 亮雄, 黒田 優美, 笠松 敦, 岡田 英孝
    2021 年 57 巻 1 号 p. 140-145
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

     オウム病はChlamydia psittaciC.psittaci)による人畜共通感染症で,鳥類から感染する.本疾患はインフルエンザ様症状の軽症例から播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)や多臓器不全の重症例まで多様な症状を示す.今回,オウム病罹患後に敗血症性DICにより胎児死亡に至った妊婦症例を経験したので報告する.

     症例は31歳の3回経産婦の妊婦である.妊娠15週3日,発熱・頭痛・咳嗽を主訴に他医療機関を受診したが,症状が悪化し,妊娠17週2日,髄膜炎疑いで当院に救急搬送された.敗血症性DICを疑い,抗菌薬及び抗DIC治療を開始した.第2病日に胎児死亡を認め,母体は肺水腫による呼吸状態悪化のため,第3病日に気管挿管管理とし,同日陣痛誘発し分娩(死産)した.病原体を特定できず,胎児剖検でも異常は認めなかった.胎盤病理所見で広範囲絨毛周囲フィブリン沈着(Massive perivillous fibrin deposition:MPFD)を認めたことから,ウイルス感染を疑い,国立感染症研究所に精査を依頼した.その結果,C.psittaci DNAが胎盤組織検体のみから検出された.以上より,妊娠オウム病による敗血症性DICでMPFDが起こり,胎盤機能不全から胎児死亡に至った可能性が高い.妊娠中に鳥類やその排泄物への接触をできるだけ避けるよう指導する必要がある.ただし,どの程度の接触が危険かは不明で,今後の研究が待たれる.

  • 髙野 苗江, 中尾 朋子, 神谷 亮雄, 吉田 彩, 辻 祥子, 岡田 英孝
    2021 年 57 巻 1 号 p. 146-151
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

     胃食道重積(Gastroesophageal intussusception:GEI)は胃壁の一部が食道内腔へ陥入するまれな状態で,Mallory-Weiss症候群や食道穿孔に進行し,大量出血をきたし得る疾患である.今回,妊娠中に発症したGEIを内視鏡的に整復し,選択的帝王切開術で再発なく周産期管理できた一例を経験した.症例は原因不明のイレウス既往のある28歳,初産婦.妊娠31週0日に頻回の嘔吐と増強する腹痛のため受診した.妊娠31週2日に血性嘔吐が出現し,胸部X線検査で食道の拡張を認めた.MRI検査で拡張した食道に胃が陥入しておりGEIの嵌頓を疑った.妊娠31週3日,全身麻酔下に上部消化管内視鏡検査を施行しGEIを整復した.胃壁に裂傷を認めたが,壊死や穿孔は認めなかった.分娩時の努責による腹圧上昇でGEI再発のリスクがあると考え,妊娠37週5日に選択的帝王切開術を施行し,2,290gの女児を娩出した.妊娠中のGEIはまれな病態であり,妊娠中の整復方法や分娩方法に関する一定の見解はまだない.我々の調べる限り妊娠中に発症したGEIを上部消化管内視鏡下に整復できた報告は世界で初めてである.

  • 林 藍, 木下 大介, 西村 陽
    2021 年 57 巻 1 号 p. 152-157
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

     鎖骨頭蓋異形成症(Cleidocranial dysplasia:以下CCD)は,鎖骨低形成,頭蓋骨縫合骨化遅延,歯牙萌出遅延を特徴とする比較的稀な骨系統疾患である.我々は,在胎39週,出生体重2,272gで出生し,鎖骨低形成と広範囲な頭蓋骨欠損を呈し,RUNX2の翻訳領域を含む6番染色体の微細欠失を認め,CCDと診断した1例を経験した.両親は精神疾患を合併し,育児支援者はおらず,社会的支援を要する家庭環境であった.退院後の養育環境を整備するため,妊娠中から児の退院まで,地域支援機関との多職種カンファレンスを複数回実施した.継続的に地域支援機関と連携し,育児支援体制を構築することで,生後4カ月時に自宅退院にいたった.社会的支援を要する家庭に対し,妊娠中から継続的に地域支援機関と連携し,育児支援体制を整えることは,CCDといった養育上特別な配慮を要する児に対しても虐待防止の観点から有用であった.

  • 三宅 龍太, 山本 皇之祐, 福井 陽介, 竹田 善紀, 中野 和俊, 市川 麻祐子, 赤坂 珠理晃, 丸山 祥代, 成瀬 勝彦
    2021 年 57 巻 1 号 p. 158-161
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

     Klippel-Trenaunay-Weber症候群(以下,KTW)は,四肢の片側肥大,皮膚毛細血管奇形,二次性静脈瘤を三徴とする先天性疾患である.KTW合併妊娠の1例を経験した.25歳,初産婦.自然妊娠が成立し経過良好であったが,妊娠25週より切迫早産のため管理入院した.全脊髄単純MRIで硬膜外静脈の怒張を認めるため分娩様式は全身麻酔での帝王切開とした.妊娠36週1日に帝王切開で3,110gの児を分娩した.脊髄海綿状血管腫破裂の既往があるため抗凝固療法を行わなかったが,妊娠中および産褥期に静脈血栓症の合併はなかった.KTW症候群合併妊娠は深部静脈血栓症,産後出血のハイリスクである.また外陰部,子宮,脾臓,脊椎近傍や頭蓋内に異型血管を生じる可能性があり,妊娠管理や分娩様式の決定に留意が必要である.本症例での対応について考察した.

  • 徳重 悠, 石田 憲太郎, 中村 彩加, 東山 希実, 清川 晶, 竹川 麻衣
    2021 年 57 巻 1 号 p. 162-166
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

     妊娠中に子宮頸癌が発見される症例は1.6-4.6例/10万妊娠とされる.子宮頸癌合併妊娠の管理では妊娠中に化学療法を施行する場合があるが,施行される大半のレジメンはcisplatinを用いたものであり,carboplatinの情報は不足している.我々は妊娠中に子宮頸癌IB1の診断に至り,TC療法(paclitaxel, carboplatin)を施行しながら妊娠を継続し,妊娠34週で帝王切開術,術後3週間後に根治術を施行し,5年間の無病生存を得た2症例を経験した.プラチナ製剤の副作用に難聴があるが,carboplatinはcisplatinよりもリスクが低いとされる.2症例共に4年間の聴力フォローを行い,難聴を生じなかった.蝸牛の障害が原因と考えられる難聴は,薬剤投与後も進行の可能性があるため,プラチナ製剤の治療を受けて出生した児は中長期的な聴力管理が必要と考える.

  • 若木 優, 渡邊 佳織, 太田 邦明, 鈴木 りか
    2021 年 57 巻 1 号 p. 167-174
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

     一過性大腿骨頭萎縮症(Transient Osteoporosis of the Hip;TOH)は股関節に疼痛を伴う骨萎縮を生じるが,負荷を避けて安静を保つことで自然軽快することが多い運動器疾患である.妊娠39週に股関節痛を生じた後経腟分娩,分娩後に大腿骨骨折が判明し,TOHを背景とすると診断された症例を経験した.TOHは中高年男性と妊娠後期女性に多く,診断にはMRIが有用,原因は骨盤静脈圧迫説,閉鎖神経圧迫説,Sudeck骨萎縮説などがいわれているが,どれも決定的ではない.1990年から2019年までの医学中央雑誌の検索にて,55症例の妊娠中のTOHを確認した.発症時期は妊娠第3三半期が最も多く,これまでの報告例と一致した.病側は右側が多く,従来左側に多いとされている報告とは異なる結果であった.TOHは保存的治療のみで予後良好な疾患であるが,他の合併症があると骨折の頻度が高くなる.妊娠中の股関節痛,浮腫等を認める場合は本疾患を疑うことが早期診断と予後向上につながる.

  • 齋藤 光里, 野呂 歩, 水島 正人, 内田 雅也, 里見 達郎, 塩野 展子, 本庄 遼太, 木下 貴正
    2021 年 57 巻 1 号 p. 175-181
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

     無症候の母体より出生した単純ヘルペス1型ウイルス(HSV-1)による壊死性網膜炎の早産児例を経験した.症例は在胎29週4日,出生体重1,321gの男児.母体に性器ヘルペスの既往はなく口唇ヘルペスの既往があった.破水を主訴に初診し,計測値で妊娠29週1日と診断した.破水後3日目に帝王切開分娩で出生し,RDSで日齢5まで人工呼吸器管理後,CPAPに移行した.日齢4に紅斑を認め,翌日消退し,日齢12より無呼吸発作増悪で治療を要した.日齢29の眼科診察で壊死性網膜炎,超音波検査で脳室拡大を認めた.前房水および髄液HSV-DNA陽性,髄液HSV-1抗体陽性,HSV-2抗体陰性でHSV-1感染症と診断した.アシクロビルを21日間静注後,内服投与に移行したが,網膜剥離は進行し,日齢63の頭部MRIで多嚢胞性脳軟化症を認めた.社会背景や非特異的感染所見からのHSV母子感染早期鑑別が重要である.

  • 森 将, 岸上 靖幸, 伊藤 泰広, 金 明, 森部 真由, 柴田 崇宏, 稲村 達生, 上野 琢史, 山田 拓馬, 竹田 健彦, 宇野 枢 ...
    2021 年 57 巻 1 号 p. 182-188
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

     症例は35歳,妊娠35週3日.吐血によるショックバイタルと意識障害の事前情報で当院に救急搬送された.消化管出血はなく,舌咬傷と口腔内出血がみられ,血圧182/130mmHg,尿蛋白定性は4+であった.胎児心拍数は70-100bpmと胎児徐脈を認めた.子癇による痙攣後の意識障害と,舌咬傷による口腔内出血,痙攣に伴う低酸素血症による胎児機能不全と診断した.ニカルジピン塩酸塩,硫酸マグネシウム投与後に母体循環動態,胎児心拍数は改善した.MRIではPRESの所見を認め,意識障害が遷延するため,緊急帝王切開を施行した.分娩後,意識障害,PRESの所見は改善し,血圧も安定し,術後11日目に退院となった.児は日齢18で退院となり,その後,発達に異常はみられていない.子癇では母体治療により児の状態改善も期待できるため,妊婦の意識障害では,常に子癇を鑑別に挙げることが重要である.また,舌咬傷による口腔内出血を吐血と誤診する可能性も念頭に置く必要がある.

  • 清水 彩理, 山下 洋, 五十川 智司, 倉田 奈央, 古賀 恵, 杉見 創, 梅﨑 靖, 菅 幸恵, 福田 雅史, 安日 一郎
    2021 年 57 巻 1 号 p. 189-193
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

     可逆性脳血管攣縮症候群(Reversible Cerebral Vasoconstriction Syndrome:RCVS)は,雷鳴様頭痛といった激しい頭痛を特徴とした多発性の脳血管の攣縮を認める疾患である.今回,妊娠中に激しい頭痛を発症し,RCVSと思われた1例を経験したので報告する.症例は28歳,未産婦,妊娠37週に突然発症した激烈な頭痛のためくも膜下出血を疑われ,当院に救急搬送された.搬送時に常位胎盤早期剥離による胎児機能不全を併発しており,救急科医師らと連携した迅速な母体の状況判断から,超緊急帝王切開術を優先することが可能と判断し,生児を得ることができた.術後経過からRCVSと診断した.

  • 菊池 友明, 阿部 春奈, 八木 洋也, 木村 友沢, 細川 義彦, 飯場 萌絵, 西田 恵子, 眞弓 みゆき, 大原 玲奈, 小畠 真奈, ...
    2021 年 57 巻 1 号 p. 194-198
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

     腹部大動脈縮窄症(Mid-aortic syndrome:MAS)は,腹部大動脈の区域的狭窄・閉塞により,上半身の高血圧や頭痛,間欠性跛行,腹部臓器の虚血症状などを呈する稀な疾患である.動脈炎に由来する後天的なもののほか,先天的要因によるものもある.MAS合併妊娠の症例報告は少なく,特に先天性のMASにおける妊娠分娩管理に関する報告はほとんどない.今回,新生児期にMASと診断され,成人期には腹部大動脈閉鎖に至っていた症例における周産期管理を経験した.循環器内科と連携し,降圧剤の多剤併用・調整や循環機能評価を継続した.妊娠後期に加重型妊娠高血圧腎症を発症したが,満期の経腟分娩にて生児を得た.未修復の大動脈縮窄症合併妊娠は非常に周産期リスクが高いとされるが,妊娠前からの厳密な血圧・循環動態管理により,良好な妊娠・分娩経過を得ることができる可能性がある.

  • 柘植 志織, 柴田 真由, 永井 孝, 篠根 早苗, 松川 哲, 中村 浩美
    2021 年 57 巻 1 号 p. 199-204
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

     癒着胎盤や前置胎盤などに起因する帝王切開術時の止血困難例に対する子宮圧迫縫合術(UterineCompression suture:UCS)の有効性は多数報告されているが,合併症の報告は限られている.今回,帝王切開術時の止血困難に対してUCSにより止血を得たが,術後29日目に再開腹術を要する腸閉塞を発症した症例を経験したため報告する.症例は31歳で2回の帝王切開術既往がある.妊娠38週0日に選択的帝王切開術施行時,癒着胎盤を認め,胎盤用手剥離後に超鈍針付モノディオックス®にてUCS施行し止血を得た.術後16日目より腹痛を認め,腸閉塞の診断で再入院とした.保存的治療に反応せず,術後29日目に再開腹術を行ったところ,小腸周囲には断裂した縫合糸が巻き付いており,腸閉塞の原因と考えられた.UCSの合併症として,縫合糸に起因する腸閉塞が起こりうることを念頭に置き,治療を行うことが重要と考える.

  • 遠藤 英作, 小畠 真奈, 宮代 夢子, 照屋 浩実, 足立 結華, 西田 恵子, 飯場 萌絵, 眞弓 みゆき, 阿部 春奈, 大原 玲奈, ...
    2021 年 57 巻 1 号 p. 205-208
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

     先天性の脂肪酸代謝異常である極長鎖アシルCoA脱水素酵素(VLCAD)欠損症の骨格筋型は,絶食や激しい運動などの異化亢進状態において筋痛・筋力低下と横紋筋融解症を容易にきたす疾患である.本疾患患者の妊娠・分娩に関する報告は少なく,その管理については明らかではない.今回,われわれは骨格筋型VLCAD欠損症の患者の妊娠・分娩管理を行ったので報告する.症例は27歳の未妊婦で,25歳時,虫垂炎の手術後に横紋筋融解症を発症した既往があった.妊娠初期は妊娠悪阻に対しブドウ糖を含む輸液治療を行い,筋痛や筋力低下などの症状の出現はなかった.妊娠39週4日,陣痛発来による入院時から5%ブドウ糖液の持続輸液を開始し,自然経腟分娩となった3日後まで継続した.分娩当日にクレアチンキナーゼ値の軽度上昇を認めたものの筋痛や筋力低下は出現しなかった.ブドウ糖液等の適切な投与により,症状の出現なく妊娠・分娩・児の養育が可能であることが示唆された.

  • 林 魅里, 藤原 ありさ, 田浦 裕三子, 杉浦 多佳子, 松本 恵, 蓮尾 泰之
    2021 年 57 巻 1 号 p. 209-214
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

     妊娠後期に特発性脳脊髄液減少症を発症した1例を経験した.39歳,G1P0,妊娠33週4日に突然の強い頭痛で発症し,入院管理した.臨床症状から脳脊髄液減少症と診断し保存的治療を行った.症状は改善せず,妊娠38週2日に硬膜外麻酔下での帝王切開分娩を行った.硬膜外麻酔時に一時的な呼吸抑制をきたし,術後の頸椎単純MRI検査でC7付近に硬膜穿孔を疑う所見を認め,診断を確定した.児は3,006gの女児で,Apgarスコア1分後8点,5分後9点であった.母体は術後1日目に頭痛が軽快し,育児に支障なく退院した.同疾患の妊娠合併例での管理に具体的な指針はなく,保存的治療で改善しない場合は症例毎に治療方針を検討し,選択することが必要である.

  • 大森 大輔, 五十里 東, 片岡 英里奈, 兵藤 玲奈, 杉山 裕一朗, 服部 哲夫, 加藤 有一
    2021 年 57 巻 1 号 p. 215-220
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

     症例は,胎児不整脈で発症し,出生時に2:1房室ブロック(以下AVB)とQT延長が確認された女児.先天性QT延長症候群による2:1AVBを疑ったが,経過中に交代性脚ブロックが生じ,伝導障害の病態が懸念された.無投薬で観察を続けたが,日齢41に完全房室ブロックとなり,日齢70でペースメーカーが植込まれた.のちにSCN5A variantと判明し,SCN5A異常による,QT延長症候群と進行性心臓伝導障害(progressive cardiac conduction defects,以下PCCD)の合併例と診断した.新生児期より交代性脚ブロックが観察され,伝導障害の進行を連続的に確認できた世界初の報告である.

  • 濱口 史香, 豊福 彩, 中村 充宏, 額田 貴之, 春日 摩耶, 日野 麻世, 山西 恵, 山西 優紀夫, 横山 玲子, 山村 省吾, 吉 ...
    2021 年 57 巻 1 号 p. 221-225
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

     Femoral-facial syndrome(FFS)は,大腿骨低形成と,眼瞼裂斜上や小顎などの特徴的顔貌を呈する稀な疾患で,母体の糖尿病との関連が指摘されている.今回,著明な大腿骨短縮から骨系統疾患を疑ったが,出生後にFFSと判明した糖尿病合併妊娠の1例を経験した.症例は37歳,1経産.2型糖尿病で治療中であった.妊娠19週より大腿骨の著明な短縮と変形を認めた.母体血清ALPは低値であり,妊娠29週に胎児3D-CTを撮像し,周産期良性型低ホスフォターゼ症または骨形成不全症I型が疑われた.児は在胎35週帝王切開で出生し,低く幅広の鼻,上唇の菲薄化,長い人中,小顎といった特徴的な顔貌と,両側大腿骨の低形成,左腓骨の無形成からFFSと診断された.著明な大腿骨短縮を認める糖尿病合併妊娠ではFFSも疑い,小顎等の顔貌所見の精査を行うことが重要である.

  • 寺田 悠里子, 西原 正人, 豊 奈々絵, 丸尾 伸之, 陌間 亮一, 鍋谷 まこと
    2021 年 57 巻 1 号 p. 226-229
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

     A群β溶血性連鎖球菌(group A Streptococci:GAS)は母体の産褥敗血症や新生児敗血症をきたし,死亡率の高い感染症である.今回,母と同時期に発症したGASによる新生児敗血症の一例を報告する.在胎39週4日,Apgarスコア1分値8点,5分値9点で経腟分娩にて出生.日齢7に発熱と活気不良のため来院した.新生児敗血症として抗菌薬治療を開始したが,播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation:DIC)による血栓性静脈炎となり,指趾の腫脹や可動域制限をきたした.母も子宮内膜炎を発症した.児の血液培養と,母の腟培養からGASを検出した.早急に治療を行い,両者共に救命できたが,児には指趾の可動域制限が残った.B群β溶血性連鎖球菌のリスクの低い新生児では,GASも想定して早期から多臓器不全やDICの検索,治療を行うべきである.

速報
  • 福間 理子, 長谷川 潤一, 西村 陽子, 本間 千夏, 古谷 菜摘, 倉﨑 昭子, 近藤 春裕, 鈴木 直
    2021 年 57 巻 1 号 p. 230-233
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

     【目的】妊婦の家庭内感染のリスク把握,感染予防の実態を明らかにすること.

     【方法】2020年11月,妊婦健診受診中の妊婦に,コロナウイルス感染症に関するアンケート調査を行った.

     【結果】316例(回収率100%)のうち,家庭内感染が多いことは52%に知られていた.外出時マスク着用は緊急事態宣言中(4-5月),解除後(7月)いずれでも100%,手洗い・うがいは98%以上で施行されていたが,家庭内でマスクの着用は6%以下であった.妊婦本人・同居者の外出自粛は,4-5月が89%,82%,7月が72%,65%(p<0.01),家庭内の消毒は4-5月で52%,7月で43%であった(p=0.03).

     【結論】外出時の十分な感染予防の励行に対し,家庭内での認知,励行は不十分であることが示唆され,家庭内感染予防,とくに家庭内でのマスク着用の啓発が重要である.

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