日本小児外科学会雑誌
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51 巻, 6 号
選択された号の論文の24件中1~24を表示しています
おしらせ
挨拶
プログラム
総説
原著
  • ―不要な人工肛門造設を避けるために―
    松田 諭, 連 利博, 矢内 俊裕, 平井 みさ子, 川上 肇, 坂元 直哉, 中島 秀明, 浅井 宣美
    2015 年 51 巻 6 号 p. 1025-1029
    発行日: 2015/10/20
    公開日: 2015/10/20
    ジャーナル フリー
    【目的】直腸肛門奇形のうち外観上で瘻孔を認めない症例の中にも低位鎖肛を少なからず認める.これらに対し全例で人工肛門を造設してよいのかは疑問である.人工肛門造設決定のための適切な病型診断法について検討した.
    【方法】過去10 年間に当院で経験した直腸肛門奇形50 例のうち,外観上瘻孔を認めなかった18 例を対象とした.診療録をもとにそれぞれの病型と病型診断方法,人工肛門造設の有無とその整合性について後方視的に検討した.
    【結果】Invertography を施行できた症例は16 例だが,正診率は75%であった.実際には低位であるが,invertography で中間位~高位と診断された症例が2 例あり,1 例は不要な人工肛門を造設された.もう1 例は超音波検査で低位と診断され,人工肛門造設を回避できた.
    【結論】外瘻孔がない直腸肛門奇形ではinvertography で実際よりも高位に直腸盲端が描出されることがあり,会陰部からの超音波検査が有用であった.また,尿所見や尿路造影が有用であった症例も認めた.
  • 小坂 太一郎, 黒木 保, 山根 裕介, 田浦 康明, 高槻 光寿, 大畠 雅之, 諸麥 俊司, 石松 隆和, 江口 晋
    2015 年 51 巻 6 号 p. 1030-1035
    発行日: 2015/10/20
    公開日: 2015/10/20
    ジャーナル フリー
    【目的】今回我々は腹腔鏡下経皮的腹膜外閉鎖法(以下LPEC 法)の腹膜-腹膜前筋膜深葉間の剥離操作(以下腹膜外剥離操作)の安全性向上を目的とした新規デバイスを開発した.新規デバイスはテフロンの外筒と手元のスイッチで構成され,既存のラパヘルクロージャーTM に装着し使用する.腹膜外剥離の際は針先先端を外筒に収納して鈍的剥離が施行可能である.本デバイスをラパヘルジャケットと命名し,安全性,有用性を検討した.
    【方法】9 例の鼠径ヘルニア(男児4 例 女児5 例)に対しLPEC 法施行時にラパヘルジャケットを使用した.両側の腹膜鞘状突起開存を4 例に認め,13 回の腹膜外剥離操作を実施.
    【結果】1 回の腹膜外剥離操作に要した時間は女児症例で平均8.0 分(4~15 分),男児症例で平均10.3 分(7~13 分),鈍的剥離による血腫発生は認めなかった.本デバイスを用いたことによる有害事象は認めなかった.
    【結論】LPEC 法の安全性向上を目的とした新規デバイスを開発し,臨床使用でその安全性と有用性を確認した.ラパヘルジャケットはLPEC 法の安全性の向上の一助となり得る.
  • 渡邉 高士, 窪田 昭男, 三谷 泰之, 瀧藤 克也, 山上 裕機
    2015 年 51 巻 6 号 p. 1036-1041
    発行日: 2015/10/20
    公開日: 2015/10/20
    ジャーナル フリー
    【目的】当科では小腸瘻を造設した超低出生体重児の早期経口(経管)栄養確立のため,閉鎖前の処置として肛門側腸管に成分栄養剤とprobiotics の注入を行っている.この処置の有用性について検討した.
    【方法】2008 年4 月から2013 年3 月までの5 年間に当科で小腸瘻を造設し,閉鎖した超低出生体重児7 例を対象とした.当科では肛門側腸管の廃用萎縮の予防,体重増加を目的に,肛門側腸管に成分栄養剤とprobiotics の注入を少なくとも1 か月以上行い,小腸瘻を閉鎖する方針としている.これらの症例の治療経過について後方視的に検討した.
    【結果】小腸瘻からの注入は術後14 日から65 日(平均33 日,中央値25 日)で開始しており,小腸瘻閉鎖は腸瘻からの注入開始後31 日から75 日(平均41 日,中央値34 日)で施行した.閉鎖時の平均体重は1,621 g(中央値1,400 g)で小腸瘻閉鎖後4 日から6 日後に経口(経管)栄養を開始できた.小腸瘻からの注入開始前に体重増加不良があった症例は,注入開始後に10 g/day 以上の体重増加がみられるようになった.また術後縫合不全や通過障害を認めた症例はなく小腸瘻を閉鎖した症例は全例が生存退院している.
    【結論】肛門側腸管に成分栄養剤とprobiotics の注入を行うことは小腸瘻閉鎖前の体重増加不良を改善する可能性がある.
  • 福田 篤久, 小野 滋, 馬場 勝尚, 薄井 佳子, 辻 由貴, 河原 仁守
    2015 年 51 巻 6 号 p. 1042-1047
    発行日: 2015/10/20
    公開日: 2015/10/20
    ジャーナル フリー
    【目的】当科では小児急性虫垂炎に対し,保存的治療を第一選択としている.今回,我々の治療経験から小児急性虫垂炎に対する保存的治療の適応および限界について検討した.
    【方法】2012 年1 月から2014 年8 月までに急性虫垂炎の診断で入院し抗菌薬を用いた保存的治療を行った53 症例を対象とし,保存的治療奏効群と保存的治療抵抗群に分けて比較検討した.
    【結果】53 例中,奏効群は36 例,抵抗群は17 例.入院時体温は奏効群が37.4±0.7°C,抵抗群が38.2±0.8°C で抵抗群において高かった(p=0.01).入院時血液検査所見では,CRP が奏効群1.4±1.7 mg/dl,抵抗群9.7±7.0 mg/dl と,抵抗群で高値であった(p<0.01).画像所見では,虫垂最大径が奏効群8.4±2.7 mm,抵抗群11.3±2.5 mm と抵抗群で有意に腫大していた(p<0.01).糞石は奏効群の16.7%(6/36 例),抵抗群の76.5%(13/17 例)に認めていた(p<0.01).治療開始後24 から48 時間での白血球数は奏効群6,988.9±2,884.8/μl,抵抗群11,741.2±3,845/μl と,抵抗群で高値であった(p<0.01).再発率は奏効群8.3%に対し,抵抗群では36.4%と高率であった(p=0.042).治療開始から48 時間での2 群のカットオフ値は,白血球数9,650.0/μl,CRP 値が6.67 mg/dl と推定された.
    【結論】治療後48 時間において白血球数が9,650.0/μl またはCRP 値が6.67 mg/dl を超える症例では早期の外科治療を検討すべきである.
  • Toshiaki Takahashi, Florian Friedmacher, Prem Puri
    2015 年 51 巻 6 号 p. 1048-1052
    発行日: 2015/10/20
    公開日: 2015/10/20
    ジャーナル フリー
    Purpose: Pulmonary hypoplasia (PH) remains a major therapeutic challenge associated with congenital diaphragmatic hernia (CDH). Leukemia inhibitory factor (LIF) and its receptor (LIFR) play an essential role in airway branching morphogenesis in developing fetal lungs. With a significant increase just before birth, high LIF expression level has been demonstrated in the pulmonary epithelium, whereas LIFR is mainly expressed in the surrounding mesenchyme. Furthermore, LIF-deficient fetuses exhibit PH with defective airway tissue. We hypothesized that pulmonary LIF and LIFR expression levels are decreased during lung branching morphogenesis in nitrofen-induced PH.
    Methods: Timed-pregnant rats received either nitrofen or a vehicle on gestational day 9 (D9). Fetuses were harvested on D15, D18 and D21, and dissected lungs were divided into control and nitrofen-exposed groups (n = 12 per time point and group). The pulmonary expression levels of LIF and LIFR were analyzed by quantitative real-time polymerase chain reaction. Immunohistochemical staining of LIF and LIFR was performed to evaluate protein expression and localization in branching airway tissue.
    Results: Relative mRNA expression levels of LIF and LIFR were significantly reduced in the lungs of nitrofen-exposed fetuses on D15 (0.21 ± 0.13 vs 0.49 ± 0.19; p < 0.05 and 0.24 ± 0.13 vs. 0.36 ± 0.12; p < 0.05), D18 (0.11 ± 0.07 vs. 0.49 ± 0.41; p < 0.05 and 0.10 ± 0.03 vs. 0.16 ± 0.03; p < 0.05) and D21 (0.13 ± 0.04 vs. 0.27 ± 0.05; p < 0.05 and 0.18 ± 0.03 vs. 0.34 ± 0.12; p < 0.05) compared with controls. LIF immunoreactivity was markedly diminished in the distal airway epithelium, whereas LIFR expression level was decreased in mesenchymal cells surrounding terminal bronchioles and alveoli on D15, D18 and D21 compared with controls.
    Conclusion: Decreased pulmonary LIF and LIFR expression levels may disrupt epithelial-mesenchymal interactions during lung branching morphogenesis and cause PH in the nitrofen-induced CDH model.
症例報告
  • 田中 彩, 土岐 彰, 菅沼 理江, 八塚 正四
    2015 年 51 巻 6 号 p. 1053-1058
    発行日: 2015/10/20
    公開日: 2015/10/20
    ジャーナル フリー
    卵巣囊胞滑脱型外鼠径ヘルニア術後に卵巣奇形腫と診断した1 歳児例を経験した.初診時はNuck 管水瘤と診断したが,手術時には卵巣囊腫を内容物とする鼠径ヘルニアであった.この囊腫は卵胞囊胞と思われたため腹腔内に還納して鼠径ヘルニアの根治術を行った.術後6 か月目の超音波検査で患側卵巣に充実成分および石灰化像が出現し,卵巣奇形腫と診断した.腫瘍核出術を行い,病理学的検索では成熟型囊胞性奇形腫であった.女児の鼠径ヘルニアでは,卵巣囊腫や卵巣腫瘍がヘルニア内容となり得ることを考慮に入れ,適切な診断と治療を行うことが重要である.また,鼠径ヘルニアの手術時に卵巣の囊胞性病変を認めた場合には,後に同側腫瘍の変化や対側卵巣腫瘍の発生を考慮に入れ,長期的な経過観察を定期的に行うべきである.
  • 柴田 涼平, 菱木 知郎, 齋藤 武, 照井 エレナ, 光永 哲也, 松浦 玄, 齋藤 江里子, 小原 由紀子, 三瀬 直子, 吉田 英生
    2015 年 51 巻 6 号 p. 1059-1064
    発行日: 2015/10/20
    公開日: 2015/10/20
    ジャーナル フリー
    肝未分化肉腫はかつて予後不良と考えられていたが,近年集学的治療の発達によりその治療成績は向上している.我々は腫瘍破裂を契機に診断に至り,長期生存を得た1 例を経験したので報告する.症例は13 歳女児.心窩部痛を主訴に前医受診し,肝腫瘍を疑われ当科紹介となった.腹部CT で肝左葉に巨大な腫瘍と腫瘍破裂に伴う血性腹水をみとめた.開腹生検にて肝未分化肉腫と診断し,軟部組織腫瘍治療レジメンで術前化学療法を開始したが,1 コース後腫瘍は増大したため肝拡大左葉切除術を行った.顕微鏡的完全切除が得られ,腫瘍はほぼ全域にわたり壊死しており,術後5 コースの化学療法で治療終了とした.現在初発後5 年経過し無病生存中である.自験例を含む内外の報告計341 例を解析したところ,完全切除の有無が極めて重要な予後規定因子であり,化学療法の併用も重要であることがわかった.一方で腫瘍破裂の有無の予後への相関はみとめられなかった.
  • 河島 茉澄, 和田 知久
    2015 年 51 巻 6 号 p. 1065-1069
    発行日: 2015/10/20
    公開日: 2015/10/20
    ジャーナル フリー
    症例1 は9 歳男児.右鼠径ヘルニアの診断で根治術を行ったところ,ヘルニア囊内に大網に被覆された腫瘤を認めた.病理組織学的検査では虫体の破壊が強く種別の判定は困難であったが,血清免疫学的検査によりアニサキス抗体の陽性反応を認め,アニサキス肉芽腫症と診断した.症例2 は2 歳男児.右鼠径部腫瘤を主訴に来院した.エコー,MRI 検査では腹腔内から右鼠径管内に連続した索状構造を認め,辺縁整な楕円形腫瘤に続いていた.右鼠径ヘルニアおよびヘルニア囊内腫瘤の診断で根治術を行い,ヘルニア囊内の腫瘤を摘出した.病理組織学的検査でアニサキス幼虫と考えられる虫体を認め,血清免疫学的検査よりアニサキス抗体陽性であったことから,アニサキス肉芽腫症と診断した.鼠径ヘルニアのヘルニア囊内に生じたアニサキス肉芽腫症は極めて稀であり,虫体の判定が困難な場合には,臨床経過や病理結果,血清免疫学的検査を総合的に検討する必要がある.
  • 高橋 雄介, 後藤 隆文, 中原 康雄, 片山 修一, 大倉 隆宏, 真子 絢子, 豊岡 晃輔, 青山 興司
    2015 年 51 巻 6 号 p. 1070-1073
    発行日: 2015/10/20
    公開日: 2015/10/20
    ジャーナル フリー
    症例は4 か月,女児.在胎38 週,胎児超音波で腹腔内囊胞を指摘され卵巣囊腫を疑われていた.在胎40 週5 日,3,066 g で出生した.生後,低位鎖肛(ano-cutaneous fistula)とともに腹部単純レントゲンで囊胞と考えられていた部位に消化管ガスの流入を認め重複腸管を疑われた.生後4 か月時に注腸造影検査を行った結果,S 状結腸におけるsegmental dilatation of colon と診断し,拡張腸管切除を行った.本症例は,胎児期より腹腔内囊胞として同定された極めてまれなsegmental dilatation of colon の1 例であり,文献的考察を加え報告する.
  • 林 憲吾, 安部 孝俊, 廣谷 太一, 下竹 孝志
    2015 年 51 巻 6 号 p. 1074-1077
    発行日: 2015/10/20
    公開日: 2015/10/20
    ジャーナル フリー
    症例は在胎36 週,2,910 g で出生した男児.生下時より鎖肛に気付かれ,日齢1 に当院へ新生児搬送された.来院時,会陰部に瘻孔は認められず,尿中への胎便混入も見られなかった.腹部レントゲンでは腹部正中~左側に拡張した腸管ガス像を認め,倒立位レントゲン所見より高位鎖肛と診断.日齢1 に横行結腸に人工肛門を造設した.術後ストーマからの造影を施行したところ,回盲部が右上腹部に認められるとともに6 cm の結腸をはさんで囊状の拡張を認めた.生後7 か月時に腹腔鏡補助下鎖肛根治術を施行した.本症例では結腸盲端部は高位で腹腔内にとどまり,骨盤底筋群も低形成であった.
  • 洲尾 昌伍, 安福 正男, 久野 克也, 片岡 大, 親里 嘉展
    2015 年 51 巻 6 号 p. 1078-1083
    発行日: 2015/10/20
    公開日: 2015/10/20
    ジャーナル フリー
    褐色細胞腫はカテコールアミン産生腫瘍であるため,周術期の厳密な血圧管理が重要とされている.したがって,安全に手術を行う上で的確な術前診断は非常に重要と考えられる.今回我々は,排尿時頭痛発作を主訴とする典型的な膀胱褐色細胞腫に対し,安全に切除しえた小児例を経験したので報告する.症例は7 歳男児の膀胱褐色細胞腫で術後の遺伝子検索ではコハク酸脱水素酵素複合体サブユニットB(SDHB)変異陽性の所見が得られた.SDHB 変異を有する例は悪性化の頻度が高いとされ,今後厳重な経過観察が必要と考えている.
  • 澤井 利夫, 前川 昌平, 吉田 英樹, 八木 誠
    2015 年 51 巻 6 号 p. 1084-1088
    発行日: 2015/10/20
    公開日: 2015/10/20
    ジャーナル フリー
    5p 欠損症候群の喉頭軟化症に舌根部甲状舌管囊胞を合併した1 例を経験した.症例は2 か月の男児.出生直後から吸気障害著明で,直ちに挿管され前医に搬送となった.抜管するも吸気性喘鳴のため,再挿管となった.喉頭内視鏡検査上,喉頭軟化症と診断され,気管切開術を勧められたが,両親が当院を希望され転院となった.喉頭内視鏡検査再検にて舌根部に隆起性病変を認めた.CT およびMRI 上,舌根部正中に囊胞性病変が存在したため舌根部甲状舌管囊胞と診断した.囊胞壁切除による開窓術を施行したが,上気道狭窄症状に軽快なく,喉頭軟化症のため気管切開術を施行した.現在外来通院中である.たとえ,吸気性喘鳴について喉頭軟化症が予測され,喉頭内視鏡検査で本症が確認された場合でも,舌根部甲状舌管囊胞といった他の上気道狭窄病変を念頭に置いた上で検査をしなければ見落とす可能性があり注意を要する.
  • 澁谷 聡一, 岡崎 任晴, 小笠原 有紀, 石原 唯史, 角 由佳, 山高 篤行
    2015 年 51 巻 6 号 p. 1089-1092
    発行日: 2015/10/20
    公開日: 2015/10/20
    ジャーナル フリー
    症例は8 か月の男児.玩具から取り出した直径1 cm のコイルを誤飲したが,病院を受診せず経過観察されていた.3 日後に経口摂取が不良となり,当院を紹介受診した.コイルは食道内腔に形成された肉芽内にステント様に埋没し,フォーリーカテーテルや内視鏡を用いた摘出は困難であった.初回摘出操作時の食道粘膜の損傷,浮腫の消退を数日間待機し,内視鏡下での摘出を再度試みた.まず,食道拡張用バルーンダイレーターをコイルの内腔で拡張させることで食道壁を伸展し,肉芽を圧排することによりコイル全形が直視可能となった.その後,把持鉗子で牽引することでコイルを摘出し開胸手術を回避し得た.食道異物の多くはカテーテルや内視鏡を用いて摘出可能だが,異物の形状や食道壁内への迷入により摘出困難となることもある.その様な症例に対しては手技に工夫が必要であり,本症例ではバルーンダイレーターを用いた食道拡張により内視鏡摘出が可能となった.
  • 橋詰 直樹, 八木 実, 石井 信二, 浅桐 公男, 深堀 優, 七種 伸行, 吉田 索, 升井 大介, 坂本 早季, 恵紙 英昭
    2015 年 51 巻 6 号 p. 1093-1099
    発行日: 2015/10/20
    公開日: 2015/10/20
    ジャーナル フリー
    機能性ディスペスシアに対し漢方療法を施行し,胃運動機能の観点からその有効性が認められた1 例を経験した.症例は5 歳男児.急性胃腸炎症状軽快後より腹部膨満,心窩部痛,嘔吐を認め近医を受診した.約50 日間摂取後の嘔吐が続き,発症前より3.6 kg の体重減少を認めた.上部消化管内視鏡検査では軽度の胃炎が認められ,画像検査では器質的疾患は認められず,感染性胃腸炎を契機とした機能性ディスペスシアと診断した.胃運動機能検査では13C 酢酸および13C オクタン酸呼気胃排出機能検査,胃電図検査を用いて評価した.入院後アコチアミドとH2 ブロッカーにて治療を開始したが,薬剤性肝機能障害を認め,六君子湯に変更した.内服開始後も水分摂取にて上腹部膨満が認められたため茯苓飲合半夏厚朴湯を追加した.症状改善し固形食摂取可能となった.4 か月間の内服治療により正常な胃排出機能が確認され廃薬とし,廃薬後も経過良好である.
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