日本小児外科学会雑誌
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52 巻, 1 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
おしらせ
学術集会記録
原著
  • 坂井 宏平, 古川 泰三, 木村 修, 東 真弓, 文野 誠久, 青井 重善, 田尻 達郎
    2016 年 52 巻 1 号 p. 78-82
    発行日: 2016/02/20
    公開日: 2016/02/20
    ジャーナル フリー
    【目的】胃食道逆流症(GERD)に対する噴門形成術の術式はDor 法などのanterior wrapping(AW)とToupet 法,Nissen 法などのposterior wrapping(PW)に大別される.当科では2002 年より腹腔鏡下手術を導入し,2010 年まで主にAW を施行し,2011 年からPW を第一選択としている.今回その治療成績に関して検討した.
    【方法】2002 年から2013 年までに経験した腹腔鏡下噴門形成術施行例全33 例を対象とし,後方視的に比較検討した.施行された術式はAW が18 例,PW が15 例であった.PW のうち9 例はNissen 法,6 例はToupet 法であった.
    【結果】基礎疾患は重症心身障害児例24 例,先天性食道裂孔ヘルニア6 例,食道閉鎖術後3 例であった.年齢中央値は4 歳(0~39 歳)であり,男児26 例,女児7 例であった.AW 群とPW 群では手術時間,出血量ではPW の方が有意に減少していた(手術時間:p<0.05,出血量:p<0.05).再発率に関してはAW 群で18 例中3 例(16.7%),PW 群で15 例中1 例(6.7%)であり有意にPW で減少していた(p<0.05).また,Nissen 法とToupet 法では有意差を認めなかった.PW の再発例は重症心身障害児例であり,Toupet 法で施行されていた.
    【結論】当科における腹腔鏡下噴門形成術ではPW がAW よりも手術時間,術中出血量は少なく,再発率に差を認めなかった.PW の術式の選択は患児の基礎疾患を加味して判断することが重要であり,特に重症心身障害児ではNissen 法が有用であると考えられた.
  • 住田 亙, 小野 靖之, 渡邉 芳夫, 高須 英見, 大島 一夫, 小松崎 尚子
    2016 年 52 巻 1 号 p. 83-88
    発行日: 2016/02/20
    公開日: 2016/02/20
    ジャーナル フリー
    【目的】小児の直腸脱は小児診療でときに見られる疾患であるが,保存的治療で軽快が期待できるため,手術が必要な症例は多くない.当院で経験した直腸脱について検討したところ,注腸造影検査で特徴的な所見を認め,治療成績によって差異を認めたので報告する.
    【方法】2005 年1 月から2014 年12 月までに,直腸脱を主訴として当院を受診した18 例を対象とした.発症年齢,初診年齢,随伴症状,注腸造影検査所見,治療内容と成績,合併症と経過について後方視的に調べた.
    【結果】発症年齢の中央値は3.4 歳,初診年齢の中央値は5.0 歳であった.初診時に6 例に便秘,9 例に排便時のいきみ,3 例に肉眼的血便を認めた.注腸造影検査で,全症例に直腸が仙骨から離れて前方に落ち込む所見を認め,これを直腸の仙骨への固定不良とした.8 例が保存的治療で改善し,9 例が保存的治療では改善が見られず,腹腔鏡下直腸固定術を施行し,全例で直腸脱が消失した.1 例は手術予定として待機中である.発症年齢,初診年齢,便秘,いきみ,血便の有無について手術症例と非手術症例で統計学的有意差は認められなかった.固定不良は,保存的に治癒した症例では第1 仙椎までであったが,手術症例では第2 もしくは第3 仙椎まで及んでいた.保存的に治癒した症例,手術症例とも,現在再発を認めていない.
    【結論】当院を受診した直腸脱の全例に,直腸の仙骨への固定不良が認められ,直腸脱の原因のひとつであると考えられた.また,その程度によって保存的治療への反応性が異なった.直腸固定術はこの解剖学的異常を修復できる術式であり,再発率も低く有効な治療法であるといえる.
  • 仲谷 健吾, 平山 裕, 飯沼 泰史, 靏久 士保利
    2016 年 52 巻 1 号 p. 89-95
    発行日: 2016/02/20
    公開日: 2016/02/20
    ジャーナル フリー
    【目的】Hirschsprung 病(以下,H 病)根治手術前の腸管減圧の重要性は良く知られているが,具体的な手順は施設毎に異なる.今回,当科におけるH 病の根治術前管理法について報告する.
    【方法】2010 年1 月から2015 年5 月に経験したH 病患児9 例を対象とし,注腸造影による病型診断の後,経肛門的に塩化ビニル製チューブを2 本留置して1 日2 回の洗腸と持続ドレナージによる術前管理(以下,本法)を行った.
    【結果】各病型はrectal aganglionosis 2 例,rectosigmoid aganglionosis 5 例,long segment aganglionosis 1例,total colon aganglionosis(以下,TCA)1 例で,病型に応じてS 状結腸下行結腸移行部から盲腸の間にチューブ先端を留置した.留置開始時日齢は1~130(中央値3),チューブ総留置期間は17~88 日(中央値21 日),根治手術時日齢は20~301(中央値26)であった.留置期間中,全例経口哺乳による栄養管理が可能であった.TCA の1 例は病理診断が確定し回腸瘻を造設するまでの20 日間に渡って本法により管理でき,他の8 例は一期的根治術が可能であった.チューブ挿入に伴う合併症や腸炎増悪例はなかった.
    【結論】経肛門的洗腸チューブを2 本留置する当科独自の本法の方式は,腸管内の圧バランスを一定に維持しながら結腸内を還流させ,効率的にかつ比較的短時間で洗浄できる利点があり,H 病患児の術前を安全に管理できる有用な方法となっていると考えられた.
  • 山根 裕介, 吉田 拓哉, 田浦 康明, 小坂 太一郎, 大畠 雅之, 江口 晋, 永安 武
    2016 年 52 巻 1 号 p. 96-101
    発行日: 2016/02/20
    公開日: 2016/02/20
    ジャーナル フリー
    【目的】腹腔鏡下噴門形成術(以下,LF)時に行う肝外側区域圧排法(以下,肝圧排)の操作性,術後肝機能障害に関して検討した.
    【方法】2013 年4 月から2015 年3 月で,当科で施行したLF 11 例を対象とした.肝圧排法はNathanson liver retractor による圧排(以下,N 法),テフロンテープによる3 点支持法(以下,T 法),糸針による2 点支持法(以下,V 法)の3 種類が施行され,肝機能障害に関しては,術前および術後1 日目のALT 値について比較を行った.
    【結果】N 法3 例,T 法5 例,V 法3 例であった.肝圧排完了までに要した時間は,N 法3.7 分,T 法11.6 分,V 法10 分で,N 法はT 法,V 法それぞれと比較して有意に短時間で肝圧排が可能であった.術後ALT 値は,3 群とも術前よりも有意に上昇していたが,V 法はN 法,T 法と比較して有意に低値であった.また術後ALT 値が100 IU/l 以上に上昇した症例は,100 IU/l 未満の症例と比較して有意に若年であった.
    【結論】各種肝圧排法のメリット,デメリットを熟知し,症例に応じて適切な肝圧排法を選択することが肝要であると思われた.
症例報告
  • 亀井 尚美, 赤峰 翔, 大津 一弘
    2016 年 52 巻 1 号 p. 102-107
    発行日: 2016/02/20
    公開日: 2016/02/20
    ジャーナル フリー
    磁石玩具誤飲により緊急手術を要した2 例を経験したので報告する.症例1 は1 歳5 か月女児.近医にて2 個の異物(磁石)の存在を指摘,経過観察を指示され,誤飲33 時間後に当科紹介受診となった.内視鏡的摘出を試みたが,内視鏡所見より切迫穿孔が疑われ,開腹手術に移行した.胃切迫穿孔,小腸多発穿孔,腸間膜穿孔と診断,修復された.症例2 は5 歳2 か月男児.誤飲4 日後に当科紹介受診,レントゲン上9 個の異物(磁石)を認めた.内視鏡的摘出を試みたが術中所見より切迫穿孔と診断し,開腹手術へ移行した.開腹所見より胃十二指腸切迫穿孔と診断,修復された.誤飲した固形異物の多くは自然排出され良好な経過をたどるが,危険な異物誤飲もある.複数個誤飲された磁石は腸管壁を隔てて吸着し,腸管が圧挫されて穿孔または内瘻化を起こすことがある.複数個の磁性体の誤飲は,たとえ無症状でも手術を要する可能性があり,保存的経過観察は推奨されず,できるだけ早期に摘出すべきと考えられた.
  • 大島 一夫, 渡邉 芳夫, 高須 英見, 住田 亙, 小松崎 尚子
    2016 年 52 巻 1 号 p. 108-112
    発行日: 2016/02/20
    公開日: 2016/02/20
    ジャーナル フリー
    症例は7 歳男児.5 歳時より繰り返す腹痛嘔吐あり,症状の改善なく当院紹介受診した.腹部超音波および上部消化管造影検査で腸回転異常症と診断した.腹腔鏡下の観察で,盲腸は後腹膜に固定されておらず,Ladd 靭帯が形成され,Treitz 靭帯は正中寄りに偏位していた.非定型的腸回転異常症と診断し,Ladd 靭帯を切離,十二指腸と結腸間膜の間を剥離,開大してnon rotation の形にした.腸管固定術は行わず,術後癒着防止材も使用しなかった.術後7 日で経口摂取良好となり退院したが,術後10 日より腹痛嘔吐が出現した.上部消化管造影検査で十二指腸に通過障害を認め,術後の癒着による狭窄を疑った.消化管内視鏡下で狭窄を確認し,バルーン拡張を12 mm 径まで施行した.拡張後は症状消失し,食欲も初回手術前より増加した.以後症状の再燃を認めていない.腸回転異常症術後早期の癒着による十二指腸狭窄に対し,バルーン拡張が有用であったので報告する.
  • ―本邦28例の文献的考察―
    曽我美 朋子, 富樫 佑一, 文野 誠久, 東 真弓, 青井 重善, 古川 泰三, 田尻 達郎
    2016 年 52 巻 1 号 p. 113-119
    発行日: 2016/02/20
    公開日: 2016/02/20
    ジャーナル フリー
    主膵管損傷を伴う膵損傷IIIb 型は小児では稀であり,標準的な治療指針は確立していない.今回,小児IIIb 型膵外傷の1 例を経験したので,本邦28 例の検討を含めて報告する.症例は6 歳男児.自転車ハンドルで腹部を強打し,腹痛が増強したため近医を受診,仮性膵囊胞を認め入院となり,受傷後11 日に当院へ転院となった.受傷後15 日に内視鏡的逆行性膵管造影(ERP)を行い,膵体部での膵管断裂を確認し,逆行性に囊胞ドレナージを試みたがチューブを挿入できず,膵頭部にチューブを留置して終了した.しかし,翌日に仮性膵囊胞破裂を発症し,緊急開腹術を行った.膵切除は施行せず,腹腔ドレナージのみを行った.術後経過は良好で受傷後75 日に退院となった.小児IIIb 型膵損傷に対しては,膵切除による手術合併症のリスク,非切除治療による長期入院および経過中の合併症によるリスクを考慮し,症例ごとに十分検討して治療方針を決定することが望ましい.
  • 鈴東 昌也, 松久保 眞, 野口 啓幸, 向井 基, 加治 建, 家入 里志
    2016 年 52 巻 1 号 p. 120-123
    発行日: 2016/02/20
    公開日: 2016/02/20
    ジャーナル フリー
    A 型食道閉鎖症と前腸囊胞を合併した症例を経験した.症例は男児.妊娠24 週時の胎児超音波検査にて食道閉鎖症と右胸腔内囊胞を指摘され,36 週2 日1,762 g で出生後にA 型食道閉鎖症および右縦隔囊胞と診断された.出生後の呼吸障害は一過性であり,囊胞サイズや呼吸状態を注意深く監視しながら計20 回のブジーによる食道延長術を行ったのち,生後192 日目に囊胞切除と食道端々吻合を同時に施行した.切除した囊胞壁には線毛円柱上皮と扁平上皮を認め,最終的に前腸囊胞と診断された.A 型食道閉鎖症は一般的に食道盲端間の距離が長く根治術までに長期間を要するが,一方,前腸囊胞は後縦隔に好発し,圧迫による呼吸障害の原因となるため早期手術が望まれる.自験例では最終的に一期的に同時手術を行い得たが,待機するにあたっては急速な呼吸障害発生も想定した綿密な治療計画の策定が必要である.
  • 濟陽 寛子, 浦尾 正彦, 田中 奈々, 鈴木 光幸, 清水 俊明, 山高 篤行
    2016 年 52 巻 1 号 p. 124-129
    発行日: 2016/02/20
    公開日: 2016/02/20
    ジャーナル フリー
    胆道閉鎖症(以下,本症)の早期発見率の向上を目的として,便色カラーカード法が利用され,2012 年には便色カードの全国配布が開始された.背景として本症の黄疸消失率,長期予後は満足といえず,要因の一つとして診断の遅れがある.2012 年に便色カードの配布を開始した地域で,生後2 か月以降に本症の診断に至った3 例を経験した.いずれも生直後は黄色調の便で,のちに白色調の便を認め,葛西手術は生後3 か月時に施行された.本症では母親や小児科医,看護師など医療従事者が必ずしも便色の異常を認識せず,病状の進んだ症例が散見され問題となる.①母親へ日常的な便色チェックの指導,②小児外科医,小児科医,看護師など医療従事者と統一した本症の知識・情報の共有,③簡便かつ見逃しを抑制するための健診体制が重要である.血清ビリルビン値測定,尿中硫酸抱合型胆汁酸,便色の写真判定法を併用し対費用効果も考慮したスクリーニングの方策が必要である.
  • 正畠 和典, 黒田 征加, 長谷川 利路
    2016 年 52 巻 1 号 p. 130-134
    発行日: 2016/02/20
    公開日: 2016/02/20
    ジャーナル フリー
    杙創は転落,転倒することなどにより先端が鈍な物体が生体内に刺入することで生じる外傷である.今回,杙創により直腸穿孔をきたした稀な小児症例を経験したので報告する.症例は7 歳男児,庭の柵を飛び越えた際,支柱に掛っていたS 字型の金具が肛門に刺入した.肛門部に出血,疼痛を認め,前医を受診.直腸穿孔が疑われ,当院に紹介となった.直腸に裂創と出血を認め,CT 検査にて,骨盤内後腹膜腔にガスの貯留を認めた.全身状態は安定し,損傷も内肛門括約筋のみで直腸以外の臓器損傷を疑わす所見は認めず,人工肛門を造設せず一期的に直腸損傷部を修復した.術後は合併症なく経過し,術後7 日目に退院となった.小児の会陰部杙創は64 例が報告されているが,人工肛門を造設することなく損傷部位の縫合閉鎖のみで治癒せしめた症例は稀である.外傷の程度によっては,十分に選択しうる術式と考えられた.
委員会報告
地方会
研究会
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