日本小児外科学会雑誌
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おしらせ
原著
  • ―一小児病院の経験―
    狩野 元宏, 古金 遼也, 橋詰 直樹, 小林 完, 森 禎三郎, 渡辺 栄一郎, 高橋 正貴, 藤野 明浩, 米田 光宏, 金森 豊
    2025 年 61 巻 4 号 p. 717-722
    発行日: 2025/06/20
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】卵巣茎捻転は急性腹症として外科的介入を要する病態で,小児外科医が診療する機会が多い.手術では原則として卵巣を温存すべきとされるが,小児では卵巣茎捻転時に卵巣切除を選択する施設が未だ少なくないと報告されている.本研究では当院の卵巣手術症例を振り返り,卵巣茎捻転や卵巣の切除・温存の有無,病理組織診断などから茎捻転症例に対する卵巣温存の可能性について検証し報告する.

    【方法】2002年から2021年3月に当院で卵巣疾患に対して手術介入を行った20歳以下の症例のうち,新生児期に診断された7例を除く68症例について後方視的に診療録を参照し,データを抽出しまとめた.卵巣茎捻転があったものをT+群,なかったものをT-群として検討した.

    【結果】対象期間中に68症例74件(T+群30件,T-群44件)の手術介入がなされた.捻転を疑い緊急手術を実施したのは31件(T+23件,T-8件)だった.T+群の術式は捻転解除1件,卵巣固定術0件,核出14件で,卵巣温存目的の二期的手術は実施されていなかった.卵巣切除は15件,うち9件は完全な梗塞壊死にも至っていない病理組織診断可能な良性腫瘍で,後方視的には安全に卵巣温存ができた可能性のある症例だった.一方T-群で卵巣を切除されたのは9例,うち3例が良性だったが,いずれも悪性が考慮されていた.

    【結論】卵巣茎捻転に対する術前検査で良悪性が十分に判断できない症例においては,二期的手術を含む卵巣温存を志向した治療戦略をとることで,卵巣温存が可能な症例が増加する可能性が示唆された.

症例報告
  • 尾形 誠弥, 城田 千代栄, 住田 亙, 牧田 智, 滝本 愛太朗, 高田 瞬也, 中川 洋一, 合田 陽祐, 檜 顕成, 内田 広夫
    2025 年 61 巻 4 号 p. 723-727
    発行日: 2025/06/20
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    下血,ショック状態,門脈ガス血症を呈した新生児ミルクアレルギー症例を経験した.患者は,在胎39週4日,3,020 gで出生した男児で,日齢1に嘔吐,日齢3に少量の鮮血便を認め近医で経過観察となっていたが,日齢8に哺乳不良,傾眠傾向,頻回嘔吐,赤褐色水様便を認め前医を受診した.下血,腹部単純X線検査で門脈ガス像,造影CTで腸管拡張を認めたため絞扼性腸閉塞が疑われ緊急手術目的で当院へ搬送された.超音波検査や造影CTでは全体的な腸管壁の肥厚を認めたが腸閉塞や腸管壊死の所見はなく,ミルクアレルギーを疑い保存的治療を行った.その後速やかに症状は改善し,アレルゲン特異的リンパ球刺激試験でκ・βカゼインとラクトフェリンが強陽性と判明し,ミルクアレルギーの診断が確定した.ショック状態,門脈ガス血症を呈していても腹部所見や造影CT画像などの検査所見を十分に検討し,ミルクアレルギーも含めた鑑別診断を行うことが重要と考えられた.

  • 田中 聡志, 好沢 克, 浅香 志穂, 高見澤 滋, 笠井 智子
    2025 年 61 巻 4 号 p. 728-733
    発行日: 2025/06/20
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    肝臓のリンパ管奇形(lymphatic malformation,以下LM)に対して外科的切除を行い再発なく治療し得たため報告する.症例は1歳3か月男児.腹部膨隆を主訴に当院を受診し,腹部超音波検査および腹部MRI検査で腹部LMと診断された.3週間後,腹部膨隆が増悪し嘔吐が出現したために入院となった.呼吸不全を認め,集中治療室にて超音波ガイド下に囊胞ドレナージを施行した.症状は改善しドレナージ後1週間で退院したが,腹部膨隆と嘔吐が再燃し3日後に再入院となった.保存的治療は限界と判断し手術を行った.腫瘤は肝左葉下面から発生して肝外性に発育し周囲との癒着や浸潤は認めず,肝臓から腫瘤を剥離し切除した.病理組織診断は肝LMと矛盾しなかった.術後3年経つが,病変の再発は認めていない.肝LMは極めて稀であり,ガイドラインでも治療方針の確立には至っていないが,切除可能病変では外科的切除が有効であると示唆された.

  • 岸田 匠平, 中畠 賢吾, 山内 勝治, 木村 浩基, 古形 修平, 米倉 竹夫
    2025 年 61 巻 4 号 p. 734-739
    発行日: 2025/06/20
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    出生前診断し新生児期に腹腔鏡下根治術を行った先天性食道裂孔ヘルニア症例を経験した.症例は男児で,在胎37週に全胃挙上した先天性食道裂孔ヘルニアと出生前診断した.在胎37週6日に胎児心拍が低下し帝王切開にて出生した.上部消化管造影検査では短食道は認めず,全胃は短軸方向に捻転し胸部に挙上していた.経鼻空腸チューブを挿入し経腸栄養管理を行ったのち,日齢18に腹腔鏡下食道裂孔ヘルニア根治術とHis角形成術を施行した.術後,喉頭軟化症に伴う哺乳障害に対し経鼻胃管による経腸栄養を行った.術後34日目に経口哺乳を開始し,術後76日目に退院となった.術後1年現在,哺乳・発育は良好で,嘔吐・再発は認めない.先天性食道裂孔ヘルニアの出生前報告は少ないが,周産期管理のもと新生児期に腹腔鏡下根治術を行うことで,嘔吐や呼吸障害など症状を呈する前に低侵襲下に根治しえた.

  • 菅井 佑, 三宅 啓, 津久井 崇文, 矢本 真也, 野村 明芳, 合田 陽祐, 山城 優太朗, 福本 弘二
    2025 年 61 巻 4 号 p. 740-745
    発行日: 2025/06/20
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は17歳の女性.漏斗胸に対してNuss手術の2か月半後に突然呼吸困難感があり,徐々に増悪したため近医受診した.胸部レントゲン写真にて両側気胸と診断され当院救急搬送となった.来院時は呼吸回数増加,起坐呼吸,臥位にて経皮的酸素飽和度の低下を認め,緊張性気胸の状態であり,直ちに胸腔ドレーンを留置し,速やかに呼吸状態は改善した.胸部単純CT検査で右上葉のブラを含め,他複数個の疑い病変も認めた.保存的治療では改善せず,入院17日目に胸腔鏡下右肺ブラ切除術を施行した.右上葉以外に明らかなブラ病変は認めなかった.術後5日目に退院し,術後1年5か月現在外来経過観察中である.Nuss法術後は医原性のバッファローチェストの状態であり,自然気胸を発症した際は両側発症となる可能性が高い.両側自然気胸は緊張性気胸となるリスクがあり,入院加療の上迅速な対応を要する.ドレナージ治療が奏功しないことが多く,早期の手術介入を検討する.

  • ―気管腕頭動脈瘻の高リスク症例,短頸・喉頭低位に対する安全な気管切開―
    遠藤 悠紀, 佐野 信行
    2025 年 61 巻 4 号 p. 746-749
    発行日: 2025/06/20
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    医療技術の進歩に伴い外科的気道確保の適応症例は多様化している.輪状軟骨切開(開窓)術(Cricotracheostomy; CT)は最短距離で気道に到達可能で,高い位置で気管孔を作成できる新しい術式である.症例1は11歳男性,基礎疾患に先天性筋強直性ジストロフィーがあり,症例2は16歳男性,基礎疾患に低酸素性脳症後遺症があり,症例1,2ともに肺炎後の抜管困難で外科的気道確保の方針となるが,腕頭動脈が胸骨切痕の頭側に位置し,気管腕頭動脈瘻の高リスクのためCTを行った.症例3は39歳女性,基礎疾患に骨形成不全症あり.喘息発作による抜管困難のため外科的気道確保の方針となるが,極度の短頸,喉頭低位のためCTを行った.3例とも術中術後の有害事象はなく,経口摂取や発声が可能な状態で外来通院中である.CTは気管孔が頸部高位に作成され,安定性も良く,気管腕頭動脈瘻の高リスク症例,短頸・喉頭低位症例における気道管理において極めて安全性が高い術式である.

  • 目谷 勇貴, 石井 大介, 元木 惠太, 石井 生, 久万田 優佳, 松本 陽, 宮城 久之
    2025 年 61 巻 4 号 p. 750-754
    発行日: 2025/06/20
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は14歳,男児.生後2週で初回の人工乳哺乳後にショック,心停止となり救急搬送された.蘇生後に施行した開腹手術にて小腸大量壊死を認め,残存小腸38 cmの短腸症候群となり,小腸瘻を造設した.病理検査によりミルクアレルギー+Hirschsprung病extensive aganglionosisと診断された.4か月時に木村法にて右結腸パッチを施行したが,短腸症候群による栄養吸収不良のため在宅中心静脈栄養は離脱できず継続し,感染等の理由のため9年間で11回の中心静脈カテーテルの入れ替えが行われ,皮下トンネルを作成する胸壁の皮膚トラブルの管理にも難渋するようになった.上腕留置式皮下植え込み型中心静脈ポートを参考にして,上腕にブロビアック®カテーテルを留置した.家族からは胸壁の皮膚の安静を保て,管理も簡便であり好評を得ている.胸壁の皮下トンネル作成に難渋する症例で,年長児や重症心身障碍者などに対しては,上腕留置式ブロビアック®カテーテルも選択肢のひとつと考えられた.

  • 難波 愛佳, 都築 行広, 大城 清哲, 玉城 倫, 屋冝 孟, 比嘉 猛, 福里 吉充
    2025 年 61 巻 4 号 p. 755-761
    発行日: 2025/06/20
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    一期的切除困難で転移巣を有する仙尾部卵黄囊腫瘍(yolk sac tumor; YST)の詳細な報告は少ない.今回,我々は多発転移を伴った仙尾部YSTに対して集学的治療を行い,合併症なく寛解を得られた症例を経験したので報告する.症例は1歳7か月女児.臀部膨隆の偶発的発見で精査し,リンパ節・肺・肝に転移を伴う巨大な仙尾部YST(Altman III型)と診断した.化学療法(BEP療法)を先行し,腫瘍縮小が得られたのち手術を施行した.腹腔鏡を用いた腹腔内観察とリンパ節生検を行い,臀部から尾骨を含む腫瘤全摘術を行った.術後に明らかな膀胱直腸障害はなかった.術後化学療法で肺転移巣は消失し,肝転移巣は残存したが,活動性は低いと判断し経過観察とした.治療終了後,約11か月時点でAFPは正常で画像上の明らかな再発はない.巨大な仙尾部YSTにおいて,予後決定の重要な因子である完全切除の達成には適切な化学療法とともに,臀部及び腹腔内検索を併せたアプローチが有効と考える.

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