症例は頻回の嘔吐を呈する1歳の男児.十二指腸内に総胆管末梢の拡張による囊胞性病変がみられた.膵・胆管合流異常は伴わなかったが,胆囊内胆汁中amylaseは6,048 IU/ lと上昇していた.Choledochoceleの診断で十二指腸下行脚の前壁を切開して囊胞切除と胆囊摘出を施行した.術後,食事摂取に伴い嘔吐が再出現し,上部消化管造影検査で十二指腸狭窄がみられたため再手術を施行した.初回手術の囊胞切除部位より口側で輪状膵による十二指腸狭窄を認め,十二指腸十二指腸吻合術を施行した.術後6年が経過し症状再燃なく胆管拡張もみられていない.Choledochoceleは稀な疾患であり,治療法について議論の余地がある.その決定には膵・胆管合流異常の有無が重要であることが知られているが,本症例のように膵の形態異常を伴うことがある.私たちの治療経験とともに,診療にあたっての注意点を報告する.
消化管動静脈奇形の症状のほとんどは血便,貧血であるが,ごく稀に腸重積,腸閉塞,穿孔等を呈する.今回消化管動静脈奇形を伴う小腸狭窄から小腸穿孔を来した乳児例を経験したので報告する.症例は胎生期より腸管拡張が指摘されていた月齢10の男児.出生後も小腸拡張は認めたが,各種検査で原因は特定されなかった.腸閉塞症状はなく体重増加も良好であったため経過観察されていた.月齢10に発熱,嘔吐が出現し,前医のCTで腹腔内free airが認められたため当院に搬送された.消化管穿孔の術前診断で同日緊急手術を施行したところ,回盲部から口側40 cmの回腸に狭窄とその口側小腸の拡張があり,狭窄の口側近傍にピンホールを認めた.小腸狭窄に起因する小腸穿孔と診断し,狭窄部を含む約17 cmの小腸を切除し端々吻合で再建した.病理組織学的検査で狭窄部の消化管壁内に動静脈奇形を疑う病変を認め,狭窄への関与が疑われた.術後経過は良好で術後11日目に退院し,その後は症状の再燃なく経過している.
症例は3歳0か月の男児.磁性玩具の誤飲を主訴に救急外来を受診,腹部X線写真で,右下腹部に9個連なった小球型の異物陰影を認めた.翌日撮影の腹部X線写真でも位置が変わらず,体外からの強力マグネットによる牽引でも動かなかったため,腸管を挟み込んでいる可能性があると判断し,下部消化管内視鏡下摘出術を施行した.上行結腸と虫垂開口部盲腸に位置した磁石が腸管壁越しに吸着しており,磁石を摘出したところ,陥入部に潰瘍形成を認めた.術後経過は良好で,術後4日目に自宅退院とした.複数の磁石誤飲は,腸管を挟み込んで穿孔・瘻孔形成を生じる可能性があるため,臨床症状の有無に加え,誤飲した磁石の数と位置を経時的に評価して,内視鏡的また外科的な摘出を速やかに判断すべきである.
11歳男児.右肘屈側に小丘疹が出現し掻爬していたところ皮疹が広がり,徐々に痂皮化していった.また右腋窩痛が出現し,自宅で経過観察していた.その後発熱と右腋窩痛の増悪による右上腕の挙上困難のため近医を受診した.化膿性リンパ節炎と診断され3日間の抗生剤加療を受けていたが,症状の改善がなく当院に紹介となった.画像検査にて右腋窩に腫大したリンパ節の集簇と大胸筋下に5 cm大の膿瘍形成を認めた.全身麻酔下に膿瘍の切開排膿ドレナージ術を施行し症状は速やかに改善した.膿瘍内容液よりメシチリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が検出され,肘の皮膚擦過検体からもMRSAが検出された.伝染性膿痂疹より体内に侵入したMRSAにより腋窩リンパ節炎が生じ,炎症の長期化のため膿瘍が形成されたと考えられた.病脳期間が長く,抗生剤による治療効果が得られない膿瘍を伴うリンパ節炎では,積極的な外科的ドレナージとともに薬剤耐性菌を念頭におく必要がある.
これまで腹部悪性腫瘍に対する放射線治療において,正常臓器との距離を保つために照射前に腹腔内に吸収性スペーサー留置を行った報告は散見されるが,後腹膜腔に留置した報告はない.今回,左腎保護目的に吸収性スペーサーを留置し,良好な経過を辿った後腹膜肉腫の1小児例を経験したため報告する.症例は5歳男児.左背部の膨隆を主訴に受診し,左腎に近接し脊柱管内進展を伴う巨大な左後腹膜腫瘍を指摘された.生検でBCOR関連肉腫と診断され化学療法で縮小したが,脊柱管内の腫瘍は完全摘出が困難と予想され陽子線治療の適応と判断した.腫瘍切除後に左腎の背側に吸収性スペーサーを留置し,陽子線治療を完遂した.画像上スペーサーは徐々に縮小し,約5か月で消失した.患児は1年10か月の緩解を維持している.吸収性スペーサーは抜去術が不要であり,アプローチが容易ではない後腹膜腔への留置に適していると考えられた.
症例は月齢5の男児.月齢3に前医で胃食道逆流症と肥厚性幽門狭窄症に対して腹腔鏡下噴門形成,胃瘻造設,幽門形成術が施行され,術後早期に腹膜炎を発症したが保存治療で改善した.当院転院後,月齢5に胸部単純X線検査で縦隔内に消化管を疑う異常陰影を認めた.注腸造影検査で,横行結腸全体が食道背側から縦隔内へ脱出しており,二次性食道裂孔ヘルニアと診断した.同時期に現れた無気肺と酸素需要の原因と考えられたため,外科的治療の方針とした.腹部の高度癒着が予想された一方,胃食道逆流の再発は認めなかったため,胸腔鏡下に脱出腸管を腹腔内に還納し,開大した食道裂孔を縫縮し食道と固定した.術後3日目には右肺の無気肺は改善,酸素投与は不要となった.現在術後1年で再発なく経過している.腹腔の高度癒着が予測される食道裂孔ヘルニア症例では,胸腔鏡アプローチは選択肢となりうる.
症例は2歳女児.異物誤飲を主訴に前医受診し,肛門異物疑いで当院紹介受診となった.肛門正常位置の6時方向に重複管開口を認め,直腸診では肛門狭窄は認めなかった.造影検査では重複管長3 cmの肛門管重複症の所見であった.肛門括約筋および肛門挙筋との位置関係を評価すべく施行した術前の骨盤部MRIで肛門管左背側に11 mm大の囊胞性病変を認めた.以上より肛門管囊胞性病変を合併した肛門管重複症の診断で後方矢状切開アプローチによる重複肛門切除および肛門管囊胞摘出術を施行した.病理組織診断では,重複肛門内腔は平滑筋層を伴う重層扁平上皮および移行上皮に覆われており,囊胞性病変はepidermoid cystであった.術後経過は良好であり,現在までに重複肛門管遺残や排尿排便障害は認めていない.今回,肛門管囊胞性病変を合併した肛門管重複症について文献的考察を加えて報告する.
症例は手術時6歳女児.3歳時に右頸部腫瘤に気付き,近医小児外科を受診した.右頸部鎖骨上窩に40×20 mmの腫瘤を認め,超音波検査で静脈瘤と診断されたが,疼痛などの症状はなく,一旦経過観察となった.5歳時に静脈瘤が60×20 mmに増大傾向を示し,当院へ紹介された.右頸部鎖骨上の静脈瘤は息こらえで膨隆を認めた.画像診断で静脈瘤と右外頸静脈との交通を認めた.静脈瘤の増大傾向があり,また保護者から整容面に対して治療希望があることから手術適応と判断した.全身麻酔下に静脈瘤摘出術を施行した.病理診断はvenous aneurysmであった.術後合併症なく経過し,軽快退院した.術後2年経過し,再発を認めない.Venous aneurysmは小児では稀な静脈の拡張性病変である.無症状のまま経過する場合もあるが,有症状時や自験例のように増大傾向や整容的問題を伴う症例に対して外科的摘出が推奨される.
症例1は7歳女児.無痛性の右鼠径部腫脹を主訴に受診した.右鼠径部~大陰唇にかけて柔らかい腫脹を認めた.エコーで,脂肪組織の肥厚を認め,MRI検査でT1・T2強調画像とも繊維成分に富む境界不明瞭な低信号領域が描出され,Prepubertal fibrous hyperplasia(以下,PUFH)と診断した.症例2は9歳女児.5年前に左鼠径ヘルニア根治術を施行した.2か月前から無痛性の右大陰唇部腫脹を認め再診した.検査でPUFHと診断した.症例3は6歳女児.右鼠径部腫脹を認め,受診した.同様の検査でPUFHの診断とした.全例で経過観察し,自然軽快した.PUFHは,性ホルモン依存性の繊維組織の過形成による思春期前の女児に好発する大陰唇の腫大を示す疾患で,その概念は比較的新しい.発症年齢や画像所見から,本症と診断可能だが,増大する症例や画像的に確定診断が困難な症例には生検や切除をされた報告もある.しかし,保存的に自然縮小した報告があることや,完全切除が困難で再発例も多いことから,積極的切除は慎重に検討が必要である.
男児における陰囊鼠径部手術の際,稀に精巣固有鞘膜微小結節を偶発的に認めることがある.著者らもこれまで4症例を経験したがいずれも生後11か月から5歳の男児で,停留精巣または移動精巣に対する精巣固定術時に精索または精巣近傍の精巣固有鞘膜外において1~3 mm大の脂肪様の微小結節が指摘された.全て容易に摘出できたものの当初は病理診断に苦慮し,免疫染色を踏まえた最終診断は異所性副腎(以下,本症)とされた.本症は胎児期の副腎-生殖腺原基からの分化異常および精巣下降時に伴う発生過程の位置異常が病因と考えられている.基本的に無症候性で自然退縮することが多いが,将来的に過形成変化や内分泌症状を誘発する可能性も否定できない.また,術中の肉眼診断は困難であるため,摘出後は免疫染色検査を含む組織学的評価を早期に行って診断を確定することが重要である.