【目的】メッケル憩室を原因として発症した症候性小児症例について,発症病態を検討した.
【方法】当院で20年間に経験した症候性小児メッケル憩室24症例を対象とした.
【結果】年齢分布は生後4日目から13歳までみられ,性別では男児14例,女児10例であった.腸重積の先進部:5例,メッケル憩室バンドによる内ヘルニア:8例,下血の診断としてメッケルシンチ陽性:8例,メッケル憩室穿孔:3例であった.開腹手術は7例,腹腔鏡手術は15例,腹腔鏡手術から開腹手術に移行例は2例であった.術前に腹部エコー,CTなどでメッケル憩室が診断された症例は4例であった.年齢分布で,生後1か月未満は1例でメッケル憩室穿孔例であった.生後1か月以上生後1歳未満は5例,内訳はメッケルシンチ陽性:1例,腸重積による先進部:1例,メッケル憩室バンドによる内ヘルニア:3例であった.1歳以上は18例,内訳はメッケル憩室バンドによる内ヘルニア:5例,メッケルシンチ陽性:7例,腸重積の先進部:4例,穿孔:2例であった.穿孔例3例中,2例は異所性胃粘膜がみられ,1例は異所性胃粘膜がなかったが固有筋層の一部欠損がみられ,胎便栓症候群に伴いメッケル憩室内の腸管内圧が上昇したことが穿孔の原因と考えられる.
【結語】小児急性腹症の原因として,症候性メッケル憩室があるが,その病態としてメッケル憩室を先進部とする腸重積,メッケル憩室穿孔,メッケル憩室バンドにより内ヘルニアによる腸閉塞などが原因であることがあるので鑑別診断すべきである.
気道異物は気道閉塞により致死的な状況となり得るため,緊急処置が必要な救急疾患である.今回我々は,X線透視を併用することで細径気管支ファイバースコープによる気道異物摘出に成功した症例を経験したので報告する.症例は1歳女児,猫トイレ用の猫砂を誤嚥し救急要請となった.前医で胸部CTを撮影されたところ,右主気管支に円柱状で長径13 mm大の気道異物を認めたため,当科に転院搬送となり,緊急異物摘出術を施行した.X線透視にて右主気管支から主気管支へ移動する可動性のある異物を認め,気管支ファイバースコープよりバスケットカテーテルを挿入して異物を摘出した.従来,気管異物に対しては硬性鏡を使用した摘出術が主流であったが,本症例のように気管分岐部より末梢の異物摘出においては,気管支ファイバースコープも有用である.また,X線透視を併用することで,可動性のある異物を確実に摘出し得た.
川崎病は主要症状の他にも多彩な症状を来し,胆汁うっ滞を生じる症例も存在するが,総胆管拡張を来す症例は少ない.急性期に直径50 mmを超える著明な総胆管拡張を来し,先天性胆道拡張症の合併を疑われたが速やかに軽快した川崎病の1例を報告する.症例は2歳6か月の男児.川崎病加療中に造影CTで著明な総胆管拡張を認め,既に存在していた先天性胆道拡張症が川崎病によって増悪したものを疑い,根治手術も検討した.しかし,川崎病治療完了の頃より速やかに総胆管拡張は軽快し,計6年間のフォローでも再拡張を認めず,MRCPでも膵・胆管合流異常を認めなかったため,川崎病に伴う一過性の総胆管拡張であったと判断した.今後も症例の蓄積が必要だが,川崎病経過中の総胆管拡張は川崎病の軽快とともに改善する可能性があり,早期の治療介入に関しては慎重に検討すべきと考えられた.
空腸瘻からの腸液漏出管理に難渋していた症例に対し,ラッププロテクター®による新たな管理を導入し改善を得たため,その詳細と有用性について報告する.症例は食道閉鎖症術後で重症心身障碍のある45歳男性.経腸栄養のため胃瘻と腸瘻が造設されていたが,腸瘻周囲の化学性皮膚炎と低栄養状態が持続し,長期にわたり入院管理となっていた.両親の高齢化に伴う患者の施設入所の希望があり皮膚障害と栄養面の改善,管理の簡素化を目的に当院へ紹介となった.当院転院後,腸液漏出の軽減目的に腸瘻にラッププロテクター®とE・Zアクセス®を装着した.本管理開始後2か月で瘻孔は縮小し腸瘻周囲の皮膚炎は著明に改善した.漏出していた腸液が吸収されるようになり体重も約4 kg増加した.1年経過し皮膚・粘膜障害等の有害事象は認めない.腸液漏出による腸瘻周囲の皮膚炎に対してラッププロテクター®による管理は低侵襲かつ簡便で有用な方法と考えられる.
症例1は7歳女児.低位鎖肛に対しカットバック術を施行され,術後は浣腸と下剤で排便管理されていた.6歳時に痔瘻を合併し保存的治療を行ったが効果が乏しく,次第に体重増加不良を呈した.便中カルプロテクチンおよび血清LRGの上昇を認め,精査を進めた結果,クローン病と診断された.
症例2は8歳男児.全結腸型ヒルシュスプルング病に対しSoave法による回腸pull-through術を施行され,術後は浣腸とカテーテルドレナージで排便管理されていた.6歳頃より腹痛と肛門部痛を反復し,7歳半時には鉄欠乏性貧血を呈した.同様に便中カルプロテクチンおよび血清LRG高値を契機に精査を行い,クローン病と診断された.
直腸肛門奇形やヒルシュスプルング病の術後合併症とクローン病の症状は類似する場合がある.特に難治性の症状出現時には全身症状を含めて多角的に評価を行い,クローン病の可能性を念頭に置いた精査が重要である.
Obstructive hemivagina and ipsilateral renal anomaly syndrome(以下OHVIRA症候群)は,重複子宮の片側膣閉鎖と,閉鎖した膣と同側の腎奇形を合併する症候群である.
症例1は重複子宮膣,左側膣閉鎖と左腎無形成を認めた.右水腎水尿管症があり,膣留血腫の圧排による通過障害の可能性が考えられたため,日齢5に経腹超音波ガイド下に経膣的に閉鎖膣壁に穿刺ドレナージを行った.症例2は重複子宮膣,左側膣閉鎖と左低形成腎を認め,左尿管は左閉鎖膣に開口していた.閉鎖膣内に尿が貯留し自然穿破や感染の危険性があると考え,日齢29に左腎尿管摘出術と閉鎖膣ドレナージ術を行った.症例1,2ともに術後閉鎖膣内に再貯留なく経過している.
OHVIRA症候群は多種多様な病態が存在しており,各症例に応じて治療方針を決定する必要があると考えられた.
症例は腹部手術歴のない12歳の男児.9歳時に上腹部痛を主訴に受診し,その後も腹痛発作を繰り返した.上腹部は常に膨満しており,腹部単純X線写真で著明な胃泡拡大を認めていた.上部消化管造影検査では椎体手前の十二指腸の通過不良があり上腸間膜動脈症候群を疑った.体位調整で造影剤は小腸に流れたが,左上腹部の小腸で造影剤が停滞した.腹部造影CT検査では腸間膜の血管の緩やかな回転像を認めたが,小腸の拡張所見はなく通過障害は認めなかった.約3年にわたり腹痛発作が繰り返され,腹腔鏡下試験開腹術を施行した.十二指腸上行脚の左側,横行結腸背側に小腸が嵌入して口側小腸が拡張していた.嵌入している小腸を還納すると,十二指腸上行脚と下行結腸のあいだに索状物が存在し,下行結腸が内側に引き寄せられていた.その奥にある通常なら正常な解剖である傍十二指腸窩がヘルニア腔となっており,非典型的な左傍十二指腸ヘルニアと診断した.腹腔鏡下試験開腹術は低侵襲で腹腔内全体の検索が可能であり,原因が同定できない腹部症状では症例によって検討すべきである.
先天性胆道拡張症(以下,CBD)の術後合併症として吻合部狭窄が知られている.今回,戸谷Ic型CBDに対する腹腔鏡下肝外胆管切除および肝管空腸吻合の4年後にStapler断端による挙上空腸狭窄から胆管炎を発症した8歳女児を経験した.保存療法後にダブルバルーン内視鏡を試みたが到達困難であり開腹手術を施行したところ,内翻したStapler断端が腸管粘膜と癒着し内腔狭窄を形成していた.癒着粘膜を切除して内腔狭窄を解除し,肝管空腸吻合部狭窄に対して胆管拡張バルーンカテーテルで拡張術を行い,術後経過は良好であった.Stapler断端による腸管狭窄は稀だが,本症例では埋没の際の過大な内翻により内腔狭窄が生じており,術後胆管炎の原因の一つとして留意が必要と考えられた.また,CBD術後の胆管狭窄では内視鏡治療が困難であり,再吻合による再狭窄が懸念される際には術中バルーン拡張は有効な選択肢であると考えられる.
腸重積症は小児救急の代表的疾患の一つである.その大半を占める特発性の回腸結腸型とは違い,結腸結腸型は先進部に器質的病変を有することが多い.今回,非観血的整復後に若年性ポリープを内視鏡的切除した結腸結腸型の腸重積症の1例を報告する.症例は7歳の男児.腹痛,嘔吐を主訴に救急外来を受診し,腹部超音波検査および腹部CTで結腸結腸型腸重積症の診断となった.高圧浣腸での非観血的整復を施行し,重積の解除は完遂した.病的先進部を疑う造影所見は得られなかったが,確認のため下部消化管内視鏡検査を施行したところ,病的先進部と推定されるポリープ性病変を確認し,内視鏡的に切除した.
結腸結腸型の腸重積症では初期治療として,一般的な腸重積症と同様に非観血的整復術が推奨される.整復後も病的先進部の存在を念頭に置き,早期の下部消化管内視鏡による精査および積極的な治療介入が必要であると考えられた.
Cornelia de Lange症候群(CdLS)に短腸症候群を合併し,在宅中心静脈栄養管理を要する25歳男性に対し,Advance Care Planning(ACP)を導入した1例を報告する.度重なるカテーテルトラブルや合併症による入退院を繰り返す中,唯一の養育者である祖母より侵襲的処置および入院加療の中止を希望する相談があり,患者本人の意思確認が困難である状況下において,家族の意思を尊重しつつ,倫理的・法的観点を考慮して治療方針を検討した.院内臨床倫理問題相談委員会や顧問弁護士,在宅医療チーム,市職員を含む地域連携,ACPシートを用いた意思確認と合意形成を行い,非侵襲的な在宅療養体制を整備した.本症例は,非担癌状態にある重症心身障がい者におけるACP導入の意義とともに,小児外科医もACPの理念を理解し,多職種連携の中で意思決定支援を担う姿勢が求められることを示唆するものである.
正中弓状靱帯圧迫症候群(median arcuate ligament syndrome: MALS)は,正中弓状靱帯が腹腔動脈起始部や腹腔神経節・神経叢を圧迫し,腹痛等の慢性消化器症状を呈する疾患である.症例は14歳3か月,女児.食後の腹痛と,摂食量低下による体重減少を認めた.発症5か月後に施行された超音波検査にて,腹腔動脈起始部の血流は呼気時の収縮期最高速度(PSV)が238.8 cm/秒と速く,吸気時のPSVは154.6 cm/秒で著明に低下していた.CTでは腹腔動脈起始部は狭窄していた.MALSと診断し,14歳5か月時に腹腔鏡下正中弓状靱帯切離術を施行した.正中弓状靱帯と,腹腔動脈や大動脈前面の腹腔神経叢を切離した.術後に腹痛は消失し,腹腔動脈の流速も低下した.MALSは潜在例が多いと考えられているが,本邦小児例の誌上報告はない.腹痛精査時にMALSを念頭におくことが重要である.
総排泄腔外反症(cloacal exstrophy:以下CE)はbladder plateや臍帯ヘルニアの大きさに多様性を有する極めて稀な疾患である.今回我々は「Paint & Wait management」(以下:本法)により,巨大臍帯ヘルニアの上皮化後に待機的手術を行ったCE治療の1経験例を報告する.【症例】在胎32週4日の胎児MRI検査でCEと胎児診断され,在胎38週6日に2,686 gで出生した男児.出生後にCEを確認し,巨大臍帯ヘルニアに対し含銀抗菌性創傷被覆材等を用いて臍帯ヘルニアの上皮化を図った.母乳主体の経腸栄養で体重増加を得ながら,臍帯ヘルニアが上皮化した日齢58に後腸盲端部をend stomaとして造設し,皮膚と,縫合した左右のbladder plateで腹腔を閉鎖した.本法は巨大臍帯ヘルニアを合併するCEに対する,安全かつ有効な治療戦略の一選択肢となり得ると考えられた.
症例は既往のない女児で,生後1か月時に活気不良を主訴に受診し,高度貧血を認めた.画像所見からリンパ管腫の出血による腹腔内出血が疑われ,経過観察目的に入院した.出血の再燃なく第7病日に退院したが,第14病日に再出血し,第28病日に審査腹腔鏡を行った.術中所見では横行結腸間膜に血腫を認めこれを切除したが,第51病日,74病日に血腫および腹腔内出血が再発した.原因検索のため繰り返し超音波検査を行ったところ,胃大彎側に胃重複症を疑う囊胞性病変を認め,第84病日に開腹手術を施行した.胃前庭部大網内に穿孔を伴う重複胃を認め,腹腔内出血および腸間膜上の血腫は同部位より出血し形成されたものと判明した.重複胃を切除し,欠損部を修復し手術を終了した.術後経過は良好であり第94病日に退院した.本症例のように腹腔内出血と貧血を繰り返した胃重複症はこれまで報告がなく,診断に難渋した.文献的考察を加え,報告する.