百年に及ぶ気管支鏡の歴史を振り返ると, 初期においては直達鏡の開発・改良, 鮮明な視野を得るための光源の開発, 麻酔や施術手技の改善などに力が注がれ, 多くの先駆者の努力, 情熱, 卓越した創造力などによって今日の隆盛がもたらされ, 現在では気管支ファイバースコープや電子内視鏡が実用化されるに至った。現在の気管支鏡はもはや単なる診断のための道具ではなく, 気管支鏡を通して気道内に於いて, 様々の処置や手術を行う事ができるようになってきた。その結果, 施術時間は長時間化し, 行う内容は複雑多岐にわたるようになり, ひいては, 患者への苦痛と不安が増すようになってきた。現在, 気管支鏡は主として意識下(局麻)で行われているが, 患者の負担を軽減し, 安全に行うために, 従来の局所麻酔のほかに, 非意識下で行い得る麻酔法の開発が急務とされている。本講演では, 我々の行っている非挿管静脈内麻酔による非意識下気管支鏡について述べた。最後に, このような麻酔を駆使して行われるであろう気管支鏡の将来の可能性について展望した。
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