背景.気管・気管支上皮下には樹枝状に分布する血管系が発達し,気管支粘膜を病変の場とする疾患で様々な変化を呈する.目的.側視型拡大気管支ビデオスコープ(XBF200HM3,オリンパス社)を用いて,上皮下の血管分布と血管径の変化を観察し比較する.方法.気管支喘息(BA)10例,慢性気管支炎(CB)7例,サルコイドーシス(SAR)9例,健常者(対照)11例を対象とし,拡大気管支ビデオスコープによる観察を行なった.次に,記録画像について解析システム(オリンパス社)を用いて,血管網を画素数の総和として算出し,血管長/ROI面積比,血管面積/ROI面積比,血管長/血管面積比,フラクタル次元を比較した.結果.対照では,軟骨輪間溝を中心に樹枝状に分布する血管が観察され,軟骨輪の血管は比較的少なかった.血管の走行は,概ね軟骨輪に対して平行な血管と垂直な血管が認められた.BAとSARでは血管増生を認め,通常は血管の少ない軟骨輪にも血管を認めた.CBでは血管は比較的少なく,血管の見え方もやや不明瞭であった.解析システムによる検討では,血管長/ROI面積比は,SARが最も高く,CB(p=0.0009)と対照(p=0.025)よりも有意に増加していた.また,BAはCBとの比較で有意な増加を認めた(p=0.0018).同様に,血管面積/ROI面積比は,SARではCB(p=0.0009)と対照(p=0.0009)よりも有意に増加し,BAはCBとの比較で有意差を認めた(p=0.0018).しかし,血管長/血管面積比では,4群間で有意差を認めなかった.抽出した血管分布のフラクタル次元は,SARがCB(p=0.0009)と対照(p=0.0021)よりも有意に増加し,BAはCBよりも有意に増加をしていた(p=0.0047).結論.血管分布はSARが最も増加しており,以下,BA,対照,CBの順であった.SARは対照とCBよりもROIあたりの,血管長,血管面積,フラクタル次元は有意に増加しており,また,BAはCBとの間にも同様の結果を認めた.しかし,血管長/血管面積比は4群間で有意差を認めなかったことから,気管支上皮下の血管増生の場合,血管径はあまり肇化せずに血管の形状が複雑化している可能性が示唆された.
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