気管支学
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39 巻, 2 号
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表紙
会告
目次
巻頭言
論評
原著
  • 水守 康之, 中原 保治, 佐々木 信, 守本 明枝, 塚本 宏壮, 横井 陽子, 勝田 倫子, 鏡 亮吾, 東野 幸子, 花岡 健司, 加 ...
    2017 年 39 巻 2 号 p. 121-126
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/04/04
    ジャーナル フリー

    背景.近年,肺末梢病変の診断において仮想気管支鏡による標的気管支への経路同定の有用性が報告されているが,理論的には通常のCT画像から3次元的に標的気管支を把握することが可能であり,仮想気管支鏡の必要性には疑問がある.目的.熟練者においても仮想気管支鏡が通常のCT読影を上回る意義を有するかを検討する目的で,2症例をモデルにCT読影実験を行った.対象と方法.過去に当院で仮想気管支鏡を用いて診断した末梢小型肺癌症例のうち,標的気管支以外の気管支が喀痰で閉塞していた症例1と,ブラのため正常構造が変位している症例2をモデルとし,気管支鏡経験5~31年の呼吸器科医16名に標的気管支への経路を同定させる実験を行った.被験者に時間制限なく胸部CT読影を行わせ,その後に仮想気管支鏡像を提示し,気管から標的気管支まで画像を進めながら,分岐部毎に正しいルートを選択させた.進路を間違えた時点で終了とした.結果.症例1の正答率は3次,4次気管支でそれぞれ88%,50%,症例2では38%,6%であった.また,気管支鏡経験年数と正答率には相関がみられなかった.結論.CT読影による肺末梢病変への経路同定能には経験年数に依存しない個人差がみられた.これにより医療の均てん化の見地から仮想気管支鏡の有用性が示唆された.

症例
  • 寺田 七朗, 渡辺 和良, 西川 晋吾
    2017 年 39 巻 2 号 p. 127-131
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/04/04
    ジャーナル フリー

    症例.94歳,男性.20XX年2月,歯科治療中に歯冠を誤飲し,紹介医を受診した.胸部単純X線写真で気管支異物が確認された.異物除去目的に同日当院へ紹介となった.気管支鏡検査にて左底幹に歯冠を確認し,バスケット鉗子を用いて除去した.その際,気管に白色隆起性病変を多数認めた.再度気管支鏡検査を施行し,同部位から生検したところ気管気管支骨軟骨形成症(tracheobronchopathia osteochondroplastica:TO)の診断を得た.結論.高齢化の進行に伴い,誤嚥に起因する病態に遭遇する機会が増えている.気管支異物もそのひとつである.TOの病因は不明で諸説があるが,そのなかで慢性炎症説と弾性線維異形成説が有力視されている.誤嚥に伴う慢性炎症により,TOにも遭遇する機会は増加する可能性がある.

  • 谷口 春樹, 福本 泰三, 金井 理紗, 石垣 昌伸
    2017 年 39 巻 2 号 p. 132-135
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/04/04
    ジャーナル フリー

    症例.28歳女性.脳性麻痺があり低酸素血症,意識障害のため救急搬送となり,喀痰閉塞と診断され人工呼吸器管理となった.外科的気管切開術を施行したが呼吸器離脱困難と判断し,長期療養型病院への転院となった.転院後に気管狭窄の疑いで再入院となり,当科紹介となった.気管支鏡検査を行い気管切開チューブ先端の軟骨側に半周性の肉芽形成を認め,扁平型の気管内腔の虚脱を認めた.CT検査では側弯に伴う気管の右側偏移を認め,気管切開チューブ先端での腕頭動脈,右鎖骨,椎体による気管の圧排所見を認めた.気管支鏡下に調節型カニューレを挿入し,先端を気管分岐部直上で固定した.気管支鏡下に肉芽焼灼切除術を行ったが窒息を繰り返したため除圧目的に右鎖骨部分切除を行い,気管動脈瘻予防の目的で腕頭動脈を剝離し気管前面を前頸筋弁で被覆した.症状は改善したが,肉芽による気道狭窄,呼気時の気管扁平化を認めたため,硬性鏡下にI字型Dumonステントを留置した.治療後は症状の改善を認め,気管切開チューブをTチューブへ変更し人工呼吸器の離脱を行った.結論.気管軟化症,気管内肉芽形成による気道狭窄に対して鎖骨切除,気管内ステント留置術を施行した1例を経験した.

  • 田中 和樹, 松田 周一, 加藤 慎平, 矢野 利章, 小笠原 隆, 笠松 紀雄, 須田 隆文
    2017 年 39 巻 2 号 p. 136-141
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/04/04
    ジャーナル フリー

    背景.肺原発の悪性リンパ腫は全悪性リンパ腫の0.4%前後,全肺腫瘍の0.5~1%以下と報告されている稀な疾患である.今回我々は肺原発MALTリンパ腫を経験したので報告する.症例.69歳女性.某年7月初旬より3週間咳嗽や呼吸困難が持続し,近医の胸部X線写真で右肺野に広範な浸潤影と右胸水を指摘され,当院に救急搬送された.1週間の抗菌薬投与も胸部陰影は改善乏しく,右胸水が増加したため胸腔ドレナージを開始した.血清中のIgMが上昇しており,免疫電気泳動でIgM λ型のM蛋白が検出された.気管支鏡検査では肺胞洗浄液中のリンパ球分画増加が認められ,肺組織へのlymphoepithelial lesion(LEL)を呈するCD20陽性リンパ球の浸潤も伴っており,MALTリンパ腫が疑われた.胸水中にもCD20陽性リンパ球が増加しており,フローサイトメトリーでλ型への明らかな偏りが見られたことからmonoclonalityが証明された.肺組織と胸水中の細胞が同一であると考え,肺原発MALTリンパ腫と診断した.結論.肺原発MALTリンパ腫は稀な疾患である.今回我々は初診時に肺炎・胸膜炎を疑い抗菌薬治療を行ったが反応が乏しく,精査の過程で肺原発MALTリンパ腫の診断に至った症例を経験したので報告する.

  • 狩野 裕久, 市原 英基, 南 大輔, 妹尾 賢, 西井 和也, 秦 雄介, 渡邉 洋美, 谷本 光音, 木浦 勝行
    2017 年 39 巻 2 号 p. 142-145
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/04/04
    ジャーナル フリー

    背景.超音波ガイド下経気管支針生検(endobronchial ultrasound-guided transbronchial needle aspiration;EBUS-TBNA)が普及することで,縦隔・肺門リンパ節の病変を低侵襲に診断できるようになった.今回,EBUS-TBNAを用いて,肺内リンパ節である区域気管支周囲リンパ節を穿刺し,歯肉癌転移と診断した1例を経験した.症例.歯肉癌に対して下顎亜全摘の既往のある69歳の男性に,右下葉区域気管支周囲リンパ節のみの転移を疑った.この病変に対してEBUS-TBNAを行った.区域気管支周囲リンパ節にエコープローベを当てて確認すると,気管支径が細いことによってスコープをしっかりと固定でき,病変も鮮明に描出できた.安全に穿刺が行え,得られた検体より歯肉癌転移と診断した.結論.肺内リンパ節である区域気管支周囲リンパ節に対しても,EBUS-TBNAは低侵襲で有効な診断方法である.

  • 竹ヶ原 京志郎, 佐藤 明, 揖斐 孝之, 井上 達哉, 臼田 実男
    2017 年 39 巻 2 号 p. 146-149
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/04/04
    ジャーナル フリー

    背景.悪性腫瘍の気管•気管支腔内転移は比較的稀であり,中枢気道を閉塞する肝癌の気管腔内転移は非常に稀である.症例.症例は75歳,女性.肝癌術後3年後に転移性肺腫瘍のため右肺下葉切除術を施行した.その後2年間無再発であったが,経過観察中に血痰が出現し,当科紹介となった.胸部CTで気管分岐部直上に腫瘍を認め,臨床経過より肝癌気管腔内転移が疑われた.診断•治療目的に硬性気管支鏡下に腫瘍を可及的に切除し,気道狭窄を解除した.病理診断は肝癌気管腔内転移であった.現在外来において経過観察中である.結論.肝癌気管腔内転移に対し,硬性気管支鏡下に腫瘍を切除し得た1例を経験した.本症例のように気道狭窄をきたす気管腫瘍に対して,硬性気管支鏡を用いた処置は気道の確実な確保,出血への対応が可能であり安全な手技と考える.

  • 河合 紀和, 山本 佳史, 大田 正秀, 木村 弘, 東条 尚
    2017 年 39 巻 2 号 p. 150-153
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/04/04
    ジャーナル フリー

    背景.近年,難治性気胸に対するEndobronchial Watanabe Spigot(EWS)を用いた気管支充填術の有用性が報告されている.しかし,若年者に対して使用した報告は乏しい.症例.16歳男性.身長139 cm,体重27 kg.4歳時に急性リンパ性白血病を発症,6歳時に同種末梢血幹細胞移植を施行し,慢性移植片対宿主病(graft-versus-host disease)・移植後間質性肺炎に対して長期間prednisolone(PSL)投与が行われている.間質性肺炎のコントロールは難渋し,移植後air leak syndromeの状態である.2013年(14歳時)難治性気胸を発症し,EWSを用いた気管支充填術で改善した.2015年に同側の気胸が再発し,難治性であった.再度EWSによる気管支充填術を施行し,気ろう減少後に胸腔内自己血投与を施行して改善した.結論.小柄な若年者の難治性気胸に対して,EWSを用いた気管支充填術を施行した1例を経験した.

  • 濱口 愛, 兒玉 明里, 森 雄亮, 中尾 美香, 天野 芳宏, 木庭 尚哉, 堀田 尚誠, 沖本 民生, 津端 由佳里, 濱口 俊一, 星 ...
    2017 年 39 巻 2 号 p. 154-158
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/04/04
    ジャーナル フリー

    背景.気管支結石の成因には,石灰化リンパ節の気管内穿破や気管内異物の石灰化などがあるとされる.しかし気管支結石症で真菌の関与する報告例は少ない.また多くは咳嗽や血痰などの呼吸器症状を伴い,無症状でCT検診で発見された症例も稀である.症例.61歳,男性.胸部CT検診で異常を指摘され当院受診.左B1+2の気管支内に石灰化を伴う結節影と左S1+2に楔状の浸潤影を認めた.精査目的に気管支鏡検査を実施.左B1+2aに褐色の異物を認め,鉗子と生食の注入で除去した.病理組織診断では気管支結石症で,結石のほとんどをアスペルギルス様の真菌の菌糸が占めていた.気管支鏡検査後に再発は認めていない.結語.無症状で発見された気管支結石症に対し,内視鏡的に結石除去を行った例は稀である.無症状の気管支結石症に対する治療適応について,今後症例を重ねて検討していく必要がある.

  • 奥野 雄大, 出村 芳樹, 田畑 未央, 山口 牧子, 多田 利彦, 菅野 貴世史, 塩崎 晃平, 赤井 雅也
    2017 年 39 巻 2 号 p. 159-164
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/04/04
    ジャーナル フリー

    背景.超音波気管支鏡下針生検(endobronchial ultrasonography guided transbronchial needle aspiration:EBUS-TBNA)は,リンパ節病変の存在を確認しながらリアルタイムに針生検を施行するため,合併症が少なく,肺癌のN因子診断において有用性が高いとされている.一方で近年,EBUS-TBNAは肺野末梢病変に対する有用性も報告されており,経気管のみならず,経気管支的アプローチも試みられている.今回,我々は気管支鏡の可視範囲では確認することのできない,亜区域支に隣接する病変へのEBUS-TBNAによるアプローチが可能であった1例を経験した.症例.60歳女性,胸部異常陰影精査目的にて当科紹介となった.胸部CT上,右肺S4にB4bの下方に接する結節を認め,診断目的に気管支鏡検査が行われた.病変は気管支鏡では観察できなかったが,radial EBUS(R-EBUS)によりB4b下方に低エコーに描出される病変を確認することができた.この透視像をリファレンスイメージとしconvex probe EBUS(CP-EBUS)をこの像に重なるように盲目的に気管支に楔入し,病変の描出を可能とした.同部位よりEBUS-TBNAによる生検を行い,大腸癌肺転移の診断に至った.結語.R-EBUSリファレンス法により,CP-EBUSを目的部位に到達させ,従来の気管支鏡検査法ではアプローチが困難な亜区域支病変の診断を可能とした.

  • 山本 正嗣, 里内 美弥子, 高瀬 直人, 伊藤 彰一, 河 良崇, 河野 祐子, 浦田 佳子, 島田 天美子, 服部 剛弘, 根來 俊一
    2017 年 39 巻 2 号 p. 165-169
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/04/04
    ジャーナル フリー

    背景.経気管支吸引針細胞診や経気管支吸引針生検は,縦隔や肺門のリンパ節病変の診断に用いられる.また病理診断において細胞診と組織診で診断が異なることがあり,注意が必要である.症例.70歳男性.他病経過中のCTで右肺下葉の結節陰影を指摘され,胸部CTで精査したところ,鎖骨上窩,縦隔および両側肺門リンパ節腫大を認めた.気管分岐下リンパ節からの経気管支吸引針細胞診では小細胞癌が疑われたが,経気管支吸引針生検と細胞診検体のセルブロックの免疫組織化学的検討によって,成人T細胞白血病リンパ腫と診断した.化学療法が奏効し,治療後1年経過した時点でも明らかな再発は認めていない.結論.小細胞癌と悪性リンパ腫は細胞診のみでは鑑別が困難なことがあり,十分な組織採取が困難な場合には形態学的・免疫組織学的検討の必要性も踏まえ,セルブロック作製を念頭に腫瘍細胞を採取することが重要と考えられた.

  • 井上 勝博, 古川 里恵, 岡松 佑樹, 川上 覚, 河口 知允
    2017 年 39 巻 2 号 p. 170-175
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/04/04
    ジャーナル フリー

    背景.非結核性抗酸菌症による気管気管支病変の報告は少ない.症例.67歳男性.201X年3月にS状結腸癌術後フォローCTで左肺上葉に空洞性結節を認め当科初診.気管支鏡検査でMycobacterium fortuitumM. fortuitum)を認めたが経過観察.201X+1年5月に既知の左上葉空洞性結節の増大の他,右主気管支に結節を認めた.同時期の喀痰培養でMycobacterium aviumM. avium)を認めたことから,同年9月より抗菌薬加療を開始し1カ月後には菌は陰性化した.201X+2年2月には喀痰でM. fortuitumを認めたため気管支鏡検査を実施.CTで指摘された右主気管支に隆起性病変を認め擦過にて壊死物質が排出された.同部はM. fortuitumによる病変と診断しレボフロキサシンを追加し,以降経過良好である.結論.M. fortuitumによる気管支病変が疑われた1例を経験したので報告する.

  • 梶原 浩太郎, 甲田 拓之, 加藤 高英, 波呂 祥, 濱口 直彦, 牧野 英記, 兼松 貴則
    2017 年 39 巻 2 号 p. 176-180
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/04/04
    ジャーナル フリー

    背景.免疫抑制療法を受けている患者の呼吸不全では,非侵襲的検査で診断が付かず,気管支鏡による微生物・病理学的検査を要することがある.しかし,重症呼吸不全において気管支鏡検査はしばしば困難である.症例.60歳女性.関節リウマチのためプレドニゾロンとメトトレキセートによる免疫抑制療法を受けていた.2014年11月より呼吸困難が出現し,positron emission tomography-computed tomographyで18F-fluorodeoxyglucose集積のある両肺野のびまん性浸潤影・結節影を指摘された.メトトレキセートを中止されたが肺病変が増悪し,重症呼吸不全のため当院に入院した.血清学的検査で呼吸不全の原因は不明であり,重症呼吸不全が持続したため非侵襲的陽圧換気療法補助下で気管支鏡による経気管支肺生検を施行した.気管支鏡検査中は酸素化は保たれ,合併症なく検査を終了した.関節リウマチによる二次性器質化肺炎と診断し,ステロイド治療が奏効して自宅退院した.結論.十分なリスク管理のもと,非侵襲的陽圧換気療法補助下での気管支鏡検査は確定診断のための選択肢となり得る.

  • Yosuke Eguchi, Ichiro Sato, Kohei Iwasaki, Koichi Ogawa, Gaku Kuwabara ...
    2017 年 39 巻 2 号 p. 181-184
    発行日: 2017/03/25
    公開日: 2017/04/04
    ジャーナル フリー

    Background. There is no previous report of autoimmune hemolytic anemia manifesting after bronchoscopic examination. Case. A 73-year-old woman presented with a dry cough. Computed tomography revealed a nodule measuring 4×2 cm in size at the base of the left lung. A bronchoscopic examination revealed malignancy in the form of adenocarcinoma. Two days later, the patient was admitted to the emergency department with complaints of dizziness. The direct Coombs test yielded positive findings, and the patient was diagnosed with autoimmune hemolytic anemia. The patient received treatment with oral steroids because of the positive Coombs test results, but no first-line chemotherapy for lung cancer was performed. However, her performance status gradually declined. The patient died 2 months after the initial administration of oral steroids. Conclusions. This report highlights the possibility of autoimmune hemolytic anemia occurring after bronchoscopic examination in a patient with primary lung cancer.

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