気管支学
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39 巻, 5 号
選択された号の論文の24件中1~24を表示しています
表紙
会告
目次
巻頭言
論評
症例
  • 川辺 梨恵, 松島 秀和, 大場 智広, 天野 雅子
    2017 年 39 巻 5 号 p. 381-385
    発行日: 2017/09/25
    公開日: 2017/10/14
    ジャーナル フリー

    背景.肺多形癌は,その病理学的な特徴から手術や剖検で確定診断されることが多い.我々は,経気管支生検で診断のついた肺多形癌を経験したので報告する.症例.75歳女性.検診の胸部X線で異常を指摘され,当科紹介受診となった.胸部造影CTでB1+2a末梢に,気管支内腔に鋳型状に進展する長径4 cmの腫瘤影と,その内側に直径1.2 cmの結節影を認めた.気管支内腔に進展する腫瘍を気管支鏡下に生検したところ,多形癌の診断となった.手術を施行し,肺原発多形癌pT2aN0M0 stage IB+肺過誤腫と診断した.結語.本症例は気管支内腔に病変が進展していたこと,壊死が少なく腫瘍細胞が密に存在していたこと,細胞成分が紡錘細胞と巨細胞から成る多形癌であったことなどから,経気管支生検で診断が可能であったと考えた.

  • 浅井 悠一郎, 梅田 泰淳, 黒沼 幸治, 横山 早織, 近藤 瞬, 須藤 悠太, 小林 智史, 亀田 優美, 錦織 博貴, 千葉 弘文, ...
    2017 年 39 巻 5 号 p. 386-391
    発行日: 2017/09/25
    公開日: 2017/10/14
    ジャーナル フリー

    背景.炎症性筋線維芽細胞腫瘍(inflammatory myofibroblastic tumor:IMT)は,炎症細胞浸潤を伴う筋線維芽細胞の増殖からなる稀な腫瘍である.今回,我々は気管支内腔にポリープ状に増殖したIMTに対して,気管支鏡下に高周波スネアによる切除を行った.症例.56歳の男性.咳嗽,喘鳴,血痰を主訴に近医を受診した.胸部CTで右主気管支内腔に結節性病変を認めた.FDG-PETで同部位に一致した集積亢進を認め,悪性腫瘍が疑われたため,精査・治療を目的に当科に紹介となった.気管支鏡検査では右主気管支内腔に軟骨輪側に基部をもつポリープ状腫瘍を認めた.画像所見から基部は比較的小範囲に限局していると推定されたため,高周波スネアによる気管支鏡下腫瘍切除術を施行した.病理組織検査では,異型性に乏しい核を有する紡錘形細胞の束状増殖に加え,背景にはリンパ球と形質細胞を主体とした細胞浸潤を認めることから,IMTと診断した.さらに1カ月後に切除断端にargon plasma coagulationを追加した.切除後1年4カ月が経過したが再発を認めていない.結論.気管支内腔にポリープ状に増殖したIMTに対する気管支鏡下腫瘍切除術は,有用な治療法の一つになりうると考えられた.

  • 玉井 浩二, 門田 和也, 岡田 信彦, 鈴木 雄二郎
    2017 年 39 巻 5 号 p. 392-397
    発行日: 2017/09/25
    公開日: 2017/10/14
    ジャーナル フリー

    背景.気管支原発の悪性リンパ腫は非常に稀である.症例.72歳の男性が石綿肺の定期検診で撮影した胸部CTで,左主気管支からsecondary carinaにかけての気管支壁肥厚を指摘され,当科を受診した.2カ月前から咳嗽があったが,医療機関は受診していなかった.気管支鏡検査では,左主気管支からsecondary carinaにかけて気管支粘膜の不整な肥厚があり,左上葉支に軽度の狭小化が見られた.気管支生検組織でMALTリンパ腫と診断した.病変が左気管支のみに限局していたことから経過観察を選択し,6カ月後の気管支鏡検査では,病変は自然退縮していた.結論.石綿肺の定期検診で発見され,自然退縮を認めた気管支原発のMALTリンパ腫を経験した.

  • 坂口 直, 畑地 治, 斎木 晴子, 伊藤 健太郎, 西井 洋一, 林 香介, 渡邉 文亮, 大井 牧, 内藤 雅大, 小林 哲, 田口 修
    2017 年 39 巻 5 号 p. 398-402
    発行日: 2017/09/25
    公開日: 2017/10/14
    ジャーナル フリー

    背景.再発性多発軟骨炎の気道病変の評価法として,気管支鏡検査は気道炎症を増悪させ呼吸不全に陥る危険性が指摘されている.バーチャルブロンコスコピーは非侵襲的な気道病変の評価方法として近年注目されている.今回我々は再発性多発軟骨炎における気管支鏡画像とバーチャルブロンコスコピー画像を比較し,その整合性を評価した.症例.47歳女性.慢性咳嗽,関節痛を主訴に当科に紹介され,胸部CTで中枢気道の全周性の壁肥厚を認め,気管支鏡で気道粘膜の浮腫と気管軟骨の不明瞭化を認めた.プレドニゾロン内服後,症状は改善し再発性多発軟骨炎と診断した.その後喘鳴が増悪し,気道ステント留置を要した.その際同時期に施行した気管支鏡画像とバーチャルブロンコスコピー画像を比較し,両者の整合性が高いことを確認した.結論.バーチャルブロンコスコピーは,再発性多発軟骨炎の気道病変の非侵襲的な経過観察の手段に利用できる可能性が示唆された.

  • 住友 賢哉, 山子 泰斗, 坂東 弘基
    2017 年 39 巻 5 号 p. 403-406
    発行日: 2017/09/25
    公開日: 2017/10/14
    ジャーナル フリー

    背景.精神疾患に罹患している患者は誤嚥しやすいが,その機序も様々である.一方切迫摂食という食行動の異常のため誤嚥し,気管支鏡により除去した報告は少ない.症例.52歳男性.統合失調症のため他院に通院中に血痰を認め,当院の外来を受診した.右胸部に喘鳴が聴取され,胸部CTでは右肺上葉入口部に狭窄を認めたため,気管支鏡検査を実施した.右上葉入口部は狭窄し異物を認め,生検鉗子で摘除した.異物の組織所見から食物が疑われ,食物の表面には放線菌が付着していた.周辺の気管支粘膜には扁平上皮化生が認められた.血痰の出る2週間前に食事中誤嚥があり,その時から喘鳴が出現したことが問診で判明した.異物の摘出後から喘鳴が消失し,気管支入口部の狭窄は改善した.誤嚥の原因として言語聴覚士から食行動の異常を指摘された.結論.統合失調症などに罹患している患者では,嚥下障害以外に食行動異常という精神症状により誤嚥を生じることに注意すべきであり,誤嚥を疑われたらすみやかに気管支鏡検査を行うことが重要である.

  • 西井 洋一, 斎木 晴子, 坂口 直, 伊藤 健太郎, 林 香介, 渡邊 文亮, 畑地 治, 小林 哲, 高尾 仁二, Gabazza E. ...
    2017 年 39 巻 5 号 p. 407-411
    発行日: 2017/09/25
    公開日: 2017/10/14
    ジャーナル フリー

    背景.悪性黒色腫の気管・気管支内転移はしばしば報告されるが,無色素性悪性黒色腫(amelanotic malignant melanoma:AMM)の気管へ直接転移である気管内転移を呈する報告はない.症例.93歳,女性.2004年2月より紅色調の踵部腫瘤性病変を認め,組織にてAMMと診断された(T4aN1bM0,stage IIIB).化学放射線療法により腫瘍は原発,リンパ節転移ともに著明に縮小したが,経過中に喉頭部に吸気性喘鳴,SpO2の低下があり,胸部CTにて気管をほぼ閉塞する占拠性病変を認めた.気管分岐部より口側に気管壁を茎の起始部とする表面滑沢で結節状の腫瘍性病変を認め,気道閉塞が懸念されたため軟性気管支鏡下に高周波スネアを用いて病巣を切除,同部位を止血目的にargon plasma coagulation(APC)にて焼灼した.病理組織で踵部AMMと同様であり気管内転移と診断され,後日残存部に外照射を追加(32 Gy/8 fr)した.結語.本症例は,肺内病巣,リンパ節転移からの気道内進展でなく気管への直接転移を来したAMMの気管内転移症例で,非常に稀であり,有意義な処置であったと考えられたため報告する.

  • 戸井 之裕, 石本 修, 川名 祥子, 清水 恒, 杉坂 淳, 小野 紘貴, 相羽 智生, 中村 敦, 木村 雄一郎, 菅原 俊一
    2017 年 39 巻 5 号 p. 412-417
    発行日: 2017/09/25
    公開日: 2017/10/14
    ジャーナル フリー

    背景.手術適応のない続発性気胸に対するEndobronchial Watanabe Spigot(EWS)充填術の有効性は知られているが,進行肺癌に併発した続発性気胸に対するEWS充填術の報告は少ない.症例.症例1:63歳,男性.X年6月右胸水精査目的に当院へ入院した.胸腔ドレーンを挿入し胸水より肺腺癌と診断された.挿入時より気漏は遷延し,肺癌による続発性気胸と判断しEWS充填術を施行した.右B2,B3に挿入し,その後胸膜癒着療法を繰り返し施行し,気漏は停止した.その後抗癌剤治療を開始した.症例2:64歳,男性.Y-8年右肺腺癌と診断し抗癌剤治療を開始した.Y年1月抗癌剤三次治療の経過中,突然の呼吸困難を自覚し当科へ救急搬送.左気胸のため緊急入院となり胸腔ドレーンを挿入した.気漏は遷延し,COPDの続発性気胸と判断しEWS充填術を施行した.左B3c,B6にEWSを充填し,胸膜癒着療法を3回施行したところ気漏は停止し,抗癌剤治療を再開した.結語.進行肺癌に併発した続発性気胸に対してEWS充填術が有効であり,その後抗癌剤治療が奏効した2例を経験した.

  • 小室 彰男, 中山 侑季, 今坂 圭介, 高倉 裕樹, 砂田 幸一, 濱中 伸介, 高橋 実希, 井上 芳正, 青木 輝浩, 清水 邦彦
    2017 年 39 巻 5 号 p. 418-423
    発行日: 2017/09/25
    公開日: 2017/10/14
    ジャーナル フリー

    背景.超音波気管支鏡ガイド下針生検(EBUS-TBNA)はその有効性と安全性が報告されているが,近年,縦隔炎合併例の報告が散見されている.症例.67歳男性.胸部CT上,右下葉結節影と#7縦隔リンパ節腫脹を認め,肺癌を疑い#7縦隔リンパ節よりEBUS-TBNA施行.検査後2日目から発熱を認め,検査後5日目に胸部CT上,#7縦隔リンパ節腫脹とリンパ節周囲の濃度上昇を認め急性縦隔炎と診断.縦隔炎に対して抗菌薬投与を行うも改善なく,検査後8日目に開胸縦隔ドレナージ術を施行し,さらに,約6週間の抗菌薬継続投与を行い症状が改善した.縦隔膿汁からは口腔内常在菌のStreptococcus milleri group(SMG)の1つであるStreptococcus constellatusが検出された.結論.口腔内常在菌のSMG感染によるEBUS-TBNA後に生じた縦隔炎の1例を経験した.壊死を伴うリンパ節を生検する場合や口腔内衛生が不良な症例では,抗菌薬の予防的投与や検査前の口腔ケアの実施が必要と考えられた.

  • 川上 直樹, 安東 敬大, 大川 宙太, 山名 高志, 西山 直樹, 若井 陽子, 齊藤 和人, 小貫 琢哉, 稲垣 雅春
    2017 年 39 巻 5 号 p. 424-429
    発行日: 2017/09/25
    公開日: 2017/10/14
    ジャーナル フリー

    背景.珪肺症によるリンパ節症は,良性食道気管支瘻のまれな原因の一つである.今回我々は,上部消化管内視鏡下に採取した生検組織に肉芽腫を認め,抗原特異的インターフェロン-γ遊離検査(IGRA)陽性で結核性リンパ節炎による食道縦隔瘻との鑑別を要した珪肺リンパ節症を経験したので,報告する.症例.75歳,男性.慢性C型肝炎があり,食道静脈瘤のスクリーニングで行った上部消化管内視鏡検査で食道に潰瘍性病変を認めた.造影CTでは縦隔リンパ節の多発腫大を認め,食道との交通所見を認めた.上部消化管内視鏡下生検を計5回施行されるも生検組織に悪性所見を認めず,肉芽腫を認めた.IGRA陽性であり結核が疑われたが,PCR法や培養検査陰性であり診断はつかなかった.外科的胸腔鏡下縦隔リンパ節生検を行い,珪肺によるリンパ節症が食道縦隔瘻を来したものと診断した.その後経過観察のみで瘻孔は閉鎖した.結語.結核との鑑別を要した珪肺リンパ節症による食道縦隔瘻の1例を経験した.

  • 鳥井 亮, 野口 真吾, 島袋 活子, 吉井 千春, 矢寺 和博
    2017 年 39 巻 5 号 p. 430-435
    発行日: 2017/09/25
    公開日: 2017/10/14
    ジャーナル フリー

    背景.メトトレキサート(methotrexate:MTX)関連リンパ増殖性疾患はしばしば散見されるが,肺病変をきたす報告は少なく,また,気管内病変を気管支鏡検査にて直接確認し得た症例は,非常に稀である.症例.73歳,女性.関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)に対して,2011年6月よりMTX・サラゾスルファピリジンによる治療が開始された.2014年11月に咽頭痛・右扁桃腫大が出現し,MTX関連リンパ増殖性疾患が疑われた.その後,MTXを中止し,咽頭痛は改善した.しかし,4カ月後(2015年2月)に症状の再燃を認めた.また,同年3月の胸部CTにて肺多発結節影が出現し,6月の胸部CTにて陰影の増悪を認めたため,当科紹介となった.気管支鏡検査の結果,気管内に多発する隆起性病変を認め,肺・気管内病変の生検より悪性リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma:DLBCL)の病理所見が得られ,臨床経過と合わせ,MTX関連リンパ増殖性疾患と判断した.結語.RA患者に対してMTXなどの免疫抑制剤使用中に肺内および気管支内に多発する病変を認めた場合には,本疾患の可能性も念頭に置く必要がある.

  • 岸本 久美子, 押尾 剛志, 中野 千裕, 黒瀬 嘉幸, 渡邉 賀代, 小高 倫生, 山岸 亨, 横内 幸, 松瀬 厚人
    2017 年 39 巻 5 号 p. 436-441
    発行日: 2017/09/25
    公開日: 2017/10/14
    ジャーナル フリー

    背景.肺多形癌は紡錘細胞あるいは巨細胞を含む扁平上皮癌,腺癌,大細胞癌,あるいは紡錘細胞と巨細胞のみからなる癌である.定義上,紡錘細胞,巨細胞の成分は腫瘍全体の10%以上を占めるものとされるが,稀な腫瘍であるため症例報告数が少ない.症例.72歳男性.呼吸困難のため受診し,右胸膜の多発結節,大量胸水貯留を認めた.局所麻酔下胸腔鏡による胸膜生検とasbestos吸入歴,臨床経過から,悪性胸膜中皮腫と診断した.その後腫瘍は急速に胸膜全体に浸潤し,病理解剖で肺多形癌と診断が確定した.結論.一般的に肺多形癌は切除による十分な組織量がなければ病理診断が困難であり,生前は他の腫瘍性疾患と診断されることも多い.稀な腫瘍で多様な経過をたどるため,今後も症例の蓄積が必要である.

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