気管支学
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39 巻, 6 号
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表紙
会告
目次
巻頭言
論評
原著
  • 三輪 槙, 四方田 真紀子, 長又 誠, 渡邊 景明, 善家 義貴, 大熊 裕介, 細見 幸生, 岡村 樹
    2017 年 39 巻 6 号 p. 486-489
    発行日: 2017/11/25
    公開日: 2017/12/22
    ジャーナル フリー

    背景.非小細胞肺癌Stage I症例や,孤発の転移性肺腫瘍,高齢や合併症などで手術や化学療法が困難な肺腫瘍の症例において,定位放射線照射(stereotactic body radiotherapy,SBRT)は有用である.肺癌の定位放射線治療における呼吸性移動対策は,腫瘍に対する線量を損なうことなく,また,腫瘍周辺の正常組織への線量を低減させる.その方法の一つに,呼吸による移動長が10 mmを超える腫瘍に対し,気管支鏡を用いて4個の金球を腫瘍辺縁から3 cm以内に腫瘍を取り囲むように留置し,それが一定の位置にきた瞬間のみ同期照射する動体追跡放射線照射法(real-time tumor-tracking radiotherapy,RTRT)がある.目的・方法. RTRTおよび金球留置法の安全性と効果を検討することを目的とし,2013年2月から2015年8月までに当院で行った金球留置およびRTRTについて後方視的に分析した.結果.金球留置手技件数は25症例で,年齢は41~88歳であった.手技中の合併症は出血1例のみで,翌日には呼吸状態は安定した.手技中の金球の脱落は1例で,手技後,治療開始前に脱落を認めた症例は4例,うち2例は再留置を行い,1例はRTRTを中止しSBRTを施行した.治療計画用CT撮影時から治療終了までの金球の脱落はなかった.治療関連合併症は放射線肺臓炎が18例であった(Common Terminology Criteria for Adverse Events:Grade 1:13例,Grade 2:5例).観察期間は4カ月から31カ月(中央値22カ月)で,局所制御率は100%,1年生存割合は95.6%であった.結論.呼吸性変動による治療精度への影響を軽減するRTRTおよびそれに必要な金球留置手技は,合併症が少なく安全に行うことができ,良好な治療成績をもたらす.

  • 髙﨑 千尋, 小林 正嗣, 今井 紗智子, 石橋 洋則, 大久保 憲一
    2017 年 39 巻 6 号 p. 490-495
    発行日: 2017/11/25
    公開日: 2017/12/22
    ジャーナル フリー

    はじめに.近年,小型肺癌の発見率増加に伴い,肺部分切除や肺区域切除といった縮小手術が増加している.小型病変の手術に際しては,術中の腫瘍の位置の同定と,十分な切除断端確保が問題となる.腫瘍位置や切離線確認のための肺マーキング方法は各種報告されているが,当科では,臓側胸膜の穿刺を行わず,したがって致命的合併症である空気塞栓を起こすリスクのない,virtual-assisted lung mapping(VAL-MAP)を行っている.VAL-MAPに用いる仮想気管支鏡と3D-CTの作成を,当科ではフリーの画像ソフトを用いて行っており,この有用性について報告する.対象.2014年2月~2016年3月に,術前VAL-MAP後に肺切除を行った,35症例39病変を対象とした.1病変に対して平均2.7か所,計106か所にVAL-MAPを施行した.結果.106か所のマーキング中,87か所(82.1%)を術中に同定し,全例で腫瘍切除が可能であった.合併症は血胸1例(2.9%)であった.術中のマーキングをもとにした手術完遂率は,従来の専用の画像ソフトを用いたVAL-MAPと遜色ない結果であった.結語.VAL-MAPは,肺の術前マーキングとして有用であった.フリーソフトを用いた画像でも,十分にマーキング可能であった.

  • 田原 正浩, 前倉 俊也, 田宮 朗裕, 杉本 親寿, 新井 徹, 井上 義一
    2017 年 39 巻 6 号 p. 496-501
    発行日: 2017/11/25
    公開日: 2017/12/22
    ジャーナル フリー

    背景.肺病変を有する悪性リンパ腫では,気管支鏡検査のみでは診断困難なことが多く,しばしば外科的肺生検などの侵襲を伴う検査を要する.今回我々は,当院における悪性リンパ腫診断における気管支鏡検査の有用性を明らかにするため,後方視的に症例検討を行った.対象と方法.2009年から2015年の7年間で,当院において悪性リンパ腫と病理組織診断した44例のうち,気管支鏡検査を施行した16例を検討した.結果.年齢は20歳から82歳(中央値70歳),男性5例,女性11例であった.最終診断はMALTリンパ腫が6例,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫が8例,ホジキンリンパ腫が2例であった.気管支鏡検査時目的病変の胸部CTの主な所見としてはpulmonary mass(≧3 cm)が7例と最多で,次いでmass-like consolidationを5例認めた.確定診断法は経気管支生検9例,外科的肺生検5例,CTガイド下肺生検1例,縦隔鏡下リンパ節生検1例であった.気管支鏡検査時に直視下生検を行った症例が6例あり,そのうち5例で確定診断が可能であった.結論.悪性リンパ腫に対し気管支鏡検査を施行した16例のうち,9例が経気管支生検で診断可能であった.直視下生検例では悪性リンパ腫と診断できる可能性が高いことが示唆された.

  • 石井 聡, 竹田 雄一郎, 鈴木 学, 藤本 祥太, 川本 浩徳, 塩沢 綾子, 橋本 理生, 仲 剛, 飯倉 元保, 泉 信有, 杉山 温 ...
    2017 年 39 巻 6 号 p. 502-507
    発行日: 2017/11/25
    公開日: 2017/12/22
    ジャーナル フリー

    背景.局所麻酔下胸腔鏡は内科医も施行でき,多くの学会・論文報告がされているが,今までに検査施行過程における手技難易度に関しての報告は少ない.対象.2008年3月から2016年11月までに原因不明胸水に対して局所麻酔下胸腔鏡検査を施行し,術者を経験した若手医師31人に対して,検査終了後アンケートを行い,手技の難易度を評価した.アンケートの結果を点数化し,Kruskal-Wallis検定を用い,P<0.05で有意差ありと判断した.結果.31人の若手医師が術者を経験した.男性18人・女性13人,医師になってからの年数中央値は4年(3~6年),検査時間中央値は43分(28~66分)であった.肺腺癌胸膜転移7例・結核性胸膜炎7例・悪性胸膜中皮腫4例などの診断に至った.アンケート10項目に関して,Kruskal-Wallis検定においてP<0.001であり有意差を認めた.検査施行過程において手技難易度の1番高い項目はファイバーの操作であり,2番目は胸腔内所見の把握であった.また良性疾患・悪性疾患による分類では,Mann-WhitneyのU検定において,ファイバーの操作においてP<0.025と有意差を認めた.結核性胸膜炎は結節が壁側胸膜全体に多数認められたが,肺腺癌胸膜転移は一部に限局する症例も認めたことが,理由として考えられた.結論.今回のアンケート調査では1番難易度が高い項目はファイバーの操作性であり,2番目は胸腔内所見の把握であった.

症例
  • 大立 知子, 奥村 暢将, 深津 明日樹, 池ノ内 紀祐, 原 徹
    2017 年 39 巻 6 号 p. 508-512
    発行日: 2017/11/25
    公開日: 2017/12/22
    ジャーナル フリー

    症例.75歳男性.健康診断の胸部X線写真で胸部異常陰影を指摘され当院を受診.胸部単純CT画像で原発性肺癌が疑われたため,ガイドシース併用気管支腔内超音波断層法(EBUS-GS)を併用した気管支鏡検査を実施した.超音波走査にて充実性の内部不均一な,高輝度超音波像がびまん性に散在する病変を認め,同部位より経気管支肺生検を施行し,病理所見から肺アミロイドーシスと診断した.全身検索の結果,限局性結節性肺アミロイドーシスと診断した.自覚症状を認めなかったため,診断後は経過観察を行っていたが,経過観察5か月目に病変の増大傾向があり開胸肺部分切除術にて完全切除した.切除病理標本にても,結節性肺アミロイドーシスの診断を得ており,切除後5か月の現在も再発なく経過している.結語.健診異常を契機に受診され,EBUS-GSを用いて限局性結節性肺アミロイドーシスと診断した症例を経験した.

  • 上村 豪, 青木 雅也, 徳永 拓也, 原田 亜矢, 永田 俊行, 大塚 綱志, 横枕 直哉, 狩集 弘太, 中村 好宏, 佐藤 雅美
    2017 年 39 巻 6 号 p. 513-517
    発行日: 2017/11/25
    公開日: 2017/12/22
    ジャーナル フリー

    背景.気管ステントにおいては長期留置を観察し得た症例は少ない.症例.初診時40歳女性.自殺目的で有機リンを内服した.気管挿管を行い人工呼吸器管理とした後に,気管切開を施行した.その後に肉芽病変による気管狭窄を認め,レーザー焼灼とバルーン拡張後にT-tubeを留置した.経気管・気管支超音波内視鏡では気管軟骨破壊が認められた.T-tube周囲に肉芽増生を認めたためシリコンステントに入れ換えたが,肉芽増生のためレーザー焼灼・入れ換えを必要とした.最終的にステントは皮下にナイロン糸で固定した.その結果,定期的なメンテナンスの回数が減り長期間観察が可能となった.12.5年後に呼吸苦で来院し,シリコンステント尾側に肉芽増生を認めた.シリコンステントを抜去し肉芽を切除したところ,呼吸状態に悪化なくステント再留置の必要性はなかった.長期間留置に伴うステント周囲組織の線維化・瘢痕化,また加齢による気管の硬化がステント抜去を可能にしたと考えられた.結語.12.5年間の留置後に気管ステントを抜去し得た.本症例は,長期間留置後抜去の最長例となった.

  • 伊志 嶺篤, 剱持 喜之, 竹田 真一, 餌取 諭, 福原 正憲, 中野 亮司, 渋谷 直道, 佐藤 くみ子
    2017 年 39 巻 6 号 p. 518-524
    発行日: 2017/11/25
    公開日: 2017/12/22
    ジャーナル フリー

    背景.良性石綿胸水はアスベストばく露によって生じる非腫瘍性胸水で,①アスベストばく露歴がある,②胸水の原因となる基礎疾患がない,③胸水発生後3年間悪性腫瘍の発症がない,が診断基準とされる.剖検で確認された3例を報告する.症例.3例とも同時または異時性に対側の胸水貯留を認め,胸膜肥厚が進行して拘束性換気障害が出現し,肺炎または呼吸不全で死亡した.胸水指摘から死亡までの全経過はそれぞれ9か月,2年5か月,1年3か月といずれも3年に満たず,予後不良であった.結論.良性石綿胸水の中には進行性で予後不良な症例が存在するため,厳重な経過観察が必要である.診断には胸腔鏡検査が有用と考える.

  • 浅野 俊明, 林 信行, 日比野 佳孝, 山田 祥之
    2017 年 39 巻 6 号 p. 525-529
    発行日: 2017/11/25
    公開日: 2017/12/22
    ジャーナル フリー

    背景.多発血管炎性肉芽腫症(GPA)は比較的稀な疾患であり,生検しても診断が困難な場合がある.症例.63歳女性.来院6か月前から咳,痰を自覚.近医で胸部CTを撮影したところ,両下葉に多発腫瘤影を認めて当院紹介.肺癌を疑い,気管支鏡検査およびCTガイド下肺生検を施行したが診断がつかなかった.初診時から2か月後に38℃台の発熱が連日出現.CTでは両肺野腫瘤が増大し,右下葉病変には空洞が出現したため,再度気管支鏡検査を施行.多核巨細胞と好中球を伴う壊死組織,肉芽様病変を指摘.血液検査ではproteinase-3抗好中球細胞質抗体が11.9 U/mlと上昇しており,GPAと診断した.結論.肺野に多発腫瘤影を認めた場合にはGPAを鑑別に入れる必要がある.

  • 赤城 和優, 澤井 豊光, 吉岡 寿麻子, 松尾 信子, 須山 尚史, 迎 寛
    2017 年 39 巻 6 号 p. 530-534
    発行日: 2017/11/25
    公開日: 2017/12/22
    ジャーナル フリー

    背景.気管支内過誤腫は比較的稀な疾患であり,その報告例の多くは中枢気管支に発生したものである.今回,極細径気管支鏡を用いて第VII次分岐気管支に過誤腫を観察しえた症例を経験した.症例.66歳,男性.乾性咳嗽を主訴に近医を受診し,胸部CTにて右S5領域の気管支内に径5 mm強の結節影を指摘され,当科紹介となった.極細径気管支鏡下に観察すると,右B5aiβxxに粘膜下主体型の黄白色調のポリープ様病変を認めた.カルチノイドの可能性もあり出血の危険性を考えて生検は行わず,後日,右中葉切除術を施行し,軟骨性気管支内過誤腫と診断された.結論.末梢気管支に存在する気管支内過誤腫を極細径気管支鏡で確認しえた.本症例では出血の危険性を考慮して生検まで行っていないが,末梢気管支病変の確認,診断ツールとしての極細径気管支鏡の有用性が示唆された.

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