背景.非小細胞肺癌Stage I症例や,孤発の転移性肺腫瘍,高齢や合併症などで手術や化学療法が困難な肺腫瘍の症例において,定位放射線照射(stereotactic body radiotherapy,SBRT)は有用である.肺癌の定位放射線治療における呼吸性移動対策は,腫瘍に対する線量を損なうことなく,また,腫瘍周辺の正常組織への線量を低減させる.その方法の一つに,呼吸による移動長が10 mmを超える腫瘍に対し,気管支鏡を用いて4個の金球を腫瘍辺縁から3 cm以内に腫瘍を取り囲むように留置し,それが一定の位置にきた瞬間のみ同期照射する動体追跡放射線照射法(real-time tumor-tracking radiotherapy,RTRT)がある.目的・方法. RTRTおよび金球留置法の安全性と効果を検討することを目的とし,2013年2月から2015年8月までに当院で行った金球留置およびRTRTについて後方視的に分析した.結果.金球留置手技件数は25症例で,年齢は41~88歳であった.手技中の合併症は出血1例のみで,翌日には呼吸状態は安定した.手技中の金球の脱落は1例で,手技後,治療開始前に脱落を認めた症例は4例,うち2例は再留置を行い,1例はRTRTを中止しSBRTを施行した.治療計画用CT撮影時から治療終了までの金球の脱落はなかった.治療関連合併症は放射線肺臓炎が18例であった(Common Terminology Criteria for Adverse Events:Grade 1:13例,Grade 2:5例).観察期間は4カ月から31カ月(中央値22カ月)で,局所制御率は100%,1年生存割合は95.6%であった.結論.呼吸性変動による治療精度への影響を軽減するRTRTおよびそれに必要な金球留置手技は,合併症が少なく安全に行うことができ,良好な治療成績をもたらす.
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