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田村 健太郎, 福山 聡, 工藤 国弘, 原田 英治, 濵田 直樹, 中西 洋一
2018 年 40 巻 3 号 p.
185-190
発行日: 2018/05/25
公開日: 2018/06/13
ジャーナル
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背景.超音波気管支鏡ガイド下針生検(EBUS-TBNA)は有用で安全性の高い検査とされているが,検査後に心膜炎を来し,心タンポナーデに至った1例を経験したので報告する.症例.81歳男性.転移性脳腫瘍による痙攣発作を契機に精査され,胸部造影CT検査にて縦隔リンパ節腫大を認め当科紹介となった.#10Lリンパ節に対してEBUS-TBNAを行い非小細胞肺癌と診断し,合併症なく退院した.検査後14日目に呼吸困難を認め緊急入院となった.急性心膜炎,心タンポナーデと診断し,心囊穿刺にて膿性心囊液を600 ml排液した.その後12日間の心囊ドレナージと26日間の抗菌薬投与を行い軽快に至った.結論.EBUS-TBNA後に心膜炎を来した症例の報告は稀であるが重篤な合併症であり,文献的考察を加えて報告する.
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小林 哲也, 遠藤 俊輔, 山本 真一, 手塚 憲志, 金井 義彦, 柴野 智毅
2018 年 40 巻 3 号 p.
191-195
発行日: 2018/05/25
公開日: 2018/06/13
ジャーナル
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背景.結核性気管支狭窄はしばしば治療に難渋する.症例.30歳代女性.3年前に結核の診断で加療を受けた.治療後に喘鳴がみられるようになり,加療を受けていた.2年前に近医で左主気管支狭窄を指摘されるも,治療を希望しなかった.しかし,その後肺炎の反復を認め,気管支狭窄が原因と推測されたため,気管支鏡治療目的に当院に紹介され受診した.胸部CTで左主気管支に狭窄を認め,気管支鏡検査では細径気管支鏡の通過困難な瘢痕性狭窄を認めた.局所麻酔下で気管支拡張用バルーンとアルゴンプラズマ凝固法(APC)を用いて気管支鏡下狭窄解除術を施行し,狭窄部の拡張が得られた.重篤な合併症はみられず,その後の経過観察でも明らかな再狭窄徴候を認めていない.結論.結核性気管支狭窄に対し,気管支鏡下狭窄解除術が有効であった.
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鳥居 厚志, 沖 昌英, 堀 和美, 中畑 征史, 岡 さおり, 小暮 啓人, 北川 智余恵, 川崎 朋範, 市原 周, 坂 英雄
2018 年 40 巻 3 号 p.
196-200
発行日: 2018/05/25
公開日: 2018/06/13
ジャーナル
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背景.19ゲージEBUS-TBNA針の臨床使用が可能となった.この針を用いることにより,大きく良質な検体採取が期待できる.症例.69歳男性.4年前に右脈絡膜悪性黒色腫のため,右眼球摘出術を受けた.3年前に胸部CT上,気管支に接する右S6領域に,長径23 mm,PET陰性の結節影を指摘され,経過観察していた.1年半前に,確定診断を目的とし22ゲージ針を用いてEBUS-TBNAを行ったが,特異的診断は得られなかった.その後の経過観察において腫瘍径が微増したため,EBUS-TBNAによる再検を行った.前回の検査で十分な検体が得られず,より大きな検体を採取する目的で19ゲージ針(ViziShot FLEX,Olympus)を用いて穿刺を行った.計4度の穿刺を行い,いずれの検体においても異型のない硝子軟骨を含む組織が採取され,臨床経過と合わせて肺過誤腫と診断した.結論.本症例においては,19ゲージ針を用いたEBUS-TBNAの検体は,以前に行った22ゲージ針での検体に比べ,大きく良質で肺過誤腫の診断に有用であった.
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鈴木 寛利, 桜田 晃, 野津田 泰嗣, 新井川 弘道
2018 年 40 巻 3 号 p.
201-205
発行日: 2018/05/25
公開日: 2018/06/13
ジャーナル
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背景.気管支胃管瘻は,気管支食道瘻よりも発生は稀であるが,瘻孔がある限り胃液の気道への流入が続くため,気道ステントによる瘻孔の遮断の必要性はより大きい.症例.57歳.男性.X年8月に胸部食道癌のため放射線治療後(30 Gy)に根治術を施行した.経過観察中に肝転移,縦隔内リンパ節腫大を認め,食道癌再発と診断された.化学療法を施行し,肝転移は消失したが,縦隔リンパ節が増大したため,X+2年9月放射線治療を施行した(60 Gy).同年10月肺炎を発症し,気管支鏡で左主気管支入口部に最大径約1.0 cmの瘻孔を認め,気管支胃管瘻と診断した.瘻孔を遮断する目的で,左主気管支にDumon stentを留置した.咳嗽と肺炎が改善し,抗菌薬の投与を終了した.中心静脈栄養を継続しながら自宅療養へと移行することが可能となった.結論.気管支胃管瘻に対し気道へのDumon stent留置により在宅療養が可能となった症例を経験した.
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曽根原 圭, 安尾 将法, 堀内 俊道, 加藤 あかね, 小林 信光, 牛木 淳人, 山本 洋, 花岡 正幸
2018 年 40 巻 3 号 p.
206-210
発行日: 2018/05/25
公開日: 2018/06/13
ジャーナル
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背景.気管支原発の神経鞘腫は稀な良性腫瘍である.近年,本邦では気管支鏡下に高周波スネアを用いて切除する報告例が増えてきている.症例.47歳,女性.咳嗽,発熱を主訴に前医を受診し,閉塞性肺炎と診断された.胸部CTで右主気管支に腫瘤を認め,気管支鏡検査で右主気管支から気管分岐部にかけて表面平滑な有茎性の腫瘤を認めた.組織診で悪性細胞を認めず,気管支鏡下切除の適応と判断された.高周波スネアを用いて切離し,残存腫瘤に対してはAPC(argon plasma coagulation)焼灼を追加した.生検検体で神経鞘腫と診断した.切除10カ月後の気管支鏡検査で再発は認めていない.結論.気管支原発良性腫瘍に対する高周波スネアを用いた切除術は,安全性や侵襲性の観点からも有用である.今後さらに適応が拡大していくと考えられる.
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小林 零, 北原 佳奈, 永山 加奈, 高橋 保博, 川野 亮二
2018 年 40 巻 3 号 p.
211-215
発行日: 2018/05/25
公開日: 2018/06/13
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背景.Endobronchial Watanabe Spigot(EWSⓇ)による気管支充填術は,気管支断端瘻治療の選択肢となりうる.症例.75歳男性.右肺上葉切除後気管支断端瘻の治療にて,大網充填術も効果がなく,EWSⓇによる気管支充填術を施行した.しかし,初回の気管支充填術はEWSⓇの逸脱により失敗したため,再施行を試みた.その際,EWSⓇ挿入後に胸腔ドレナージの吸引圧を-50 cm H2Oとすると,EWSⓇが瘻孔に密着し気漏が消失した.EWSⓇ留置+高吸引圧により膿胸腔が一時的に無瘻化することで感染が軽快した.持続吸引圧を軽減した際,EWSⓇは再逸脱し,気管支断端瘻は残存していた.しかし,膿胸腔内が大網充填術後の再生上皮ですでに覆われていたので,腔内と気管支との内瘻化が完成しても感染徴候を認めなかった.結語.気管支断端瘻に対する気管支充填術+高陰圧持続吸引ドレナージの併用は,膿胸腔感染の改善に有用な治療オプションである可能性が示唆された.
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伊藤 有平, 近藤 茂人, 井谷 英敏, 笹野 元, 岩本 圭右, 徳井 俊也, 谷川 元昭
2018 年 40 巻 3 号 p.
216-220
発行日: 2018/05/25
公開日: 2018/06/13
ジャーナル
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背景.トロンビン阻害薬や第Xa因子阻害剤による肺胞出血の報告はまれである.症例.80歳女性.2年前から心房細動に対して,リバロキサバン15 mg 1回/日が投与されていた.2日前からの咳嗽,咽頭痛,頭痛,1日前からの血尿を認め当院受診した.クレアチニンクリアランスは60 ml/minであった.5日後に増悪する血痰と呼吸困難を主訴に,再受診した.クレアチニンクリアランスは37 ml/minに低下していた.気管支肺胞洗浄で,徐々に濃くなる血性の回収液を認め,リバロキサバンによる肺胞出血と診断した.同薬の中止,止血剤,コルチコステロイド投与で改善した.結論.リバロキサバンによる肺胞出血が起こり得る.腎機能悪化による血中濃度過剰から肺胞出血をきたした可能性がある.
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竹ヶ原 京志郎, 吉野 直之, 園川 卓海, 井上 達哉, 臼田 実男
2018 年 40 巻 3 号 p.
221-225
発行日: 2018/05/25
公開日: 2018/06/13
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背景.肺原発MALTリンパ腫は比較的稀な疾患であり,中でも気管・気管支に発生し,かつ限局するMALTリンパ腫の報告は少ない.症例.症例は75歳,女性.大腸癌に対し術後化学療法を施行し,当院消化器外科にて経過観察されていた.経過中に胸部CTで気管から気管支にかけての隆起性病変を指摘され,当科紹介となった.当科で施行した18FDG-PET検査では同部位に集積は認めず,確定診断目的に気管支鏡検査を施行した.気管支鏡検査では気管から気管支にかけて,白色調で易出血性の隆起性病変を多数確認し,自家蛍光内視鏡で病変部に色調の変化を認め,同部位より生検を施行した.生検標本は粘膜下に小型リンパ球様細胞の浸潤を認め,免疫染色でCD20陽性であった.また,全身精査で消化器などの他臓器原発巣は認めず,気管・気管支原発MALTリンパ腫と診断した.結論.気管・気管支原発MALTリンパ腫は気道狭窄の出現により発見されることが多いとされ,本症例のように無症状で発見されることは非常に稀であると考える.
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山入 和志, 杉中 美穂, 古川 皓一, 中村 尚季, 小川 晃一, 吉松 由貴, 丸山 直美, 大谷 賢一郎, 紙森 隆雄
2018 年 40 巻 3 号 p.
226-231
発行日: 2018/05/25
公開日: 2018/06/13
ジャーナル
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背景.結核の治療開始後に,治療の失敗や別の病態ではなく,臨床所見や画像所見が一過性に増悪または新規に出現する現象をparadoxical reactionと呼ぶ.今回我々は,気管,喉頭,食道結核の治療開始から12か月後に,paradoxical reactionによるリンパ節腫大を起こし,気道狭窄を来した症例を経験した.症例.54歳,女性.気管,喉頭,食道結核の診断で結核治療を外来で継続していた.治療開始から12か月後より呼吸困難が出現し,胸部CT検査で縦隔リンパ節の腫大による気管の狭窄が確認された.気管支鏡検査では,腫大したリンパ節の気管内穿破がみられた.培養検査では結核菌の発育はなくparadoxical reactionと診断し,従来の治療を計18か月間継続することで,腫大リンパ節は縮小し,症状は軽快した.結論.結核治療においては,paradoxical reactionによる種々の症状が生じうることを念頭に置くべきである.
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岡本 圭伍, 一瀬 増太郎
2018 年 40 巻 3 号 p.
232-235
発行日: 2018/05/25
公開日: 2018/06/13
ジャーナル
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背景.近年,難治性気瘻に対するEWSを用いた気管支充填術の有用性が報告されているが,長期留置例も多く,抜去についての報告は少ない.症例.右自然気胸手術歴を有する49歳男性.左巨大肺囊胞症の術後難治性気瘻に対して気管支充填術を施行した.長期留置の方針としたが,左前胸部違和感があり,充填1年後に抜去を試みた.術後変化と長期留置による影響で目的気管支であるB1+2,B3へのアプローチに難渋した.外径差の異なる複数の気管支鏡に加え,シングルユースビデオ気管支鏡を使用することで亜々区域支レベルでの内腔観察と鉗子操作が可能となり,合併症なくEWSの抜去を行うことができた.結論.EWSの抜去は,留置部位や患者要因によって処置に難渋することがある.シングルユース気管支鏡の併用は抜去困難例において有用となり得る.
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蜂須賀 康己, 藤岡 真治, 魚本 昌志
2018 年 40 巻 3 号 p.
236-240
発行日: 2018/05/25
公開日: 2018/06/13
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背景.キルシュナー鋼線の迷入は整形外科領域で散見されるが,胸腔内迷入例は比較的稀である.症例.82歳,女性.他院にて右上腕骨頸部骨折に対しキルシュナー鋼線3本による固定術が施行された.固定術後3週間目,透視下での鋼線抜去の際に,鋼線のうちの1本が右胸部に移動していることが確認され,胸腔内迷入が疑われたため,当院に紹介された.胸部単純CTで鋼線の右胸腔内迷入と右気胸を認めた.胸腔鏡所見では,右S6とS8の境界部に7.0 cm長のキルシュナー鋼線が刺さっていた.胸腔鏡下に鋼線を鉗子で把持し摘出した.肺刺入部からの出血・気漏は認めず,術後4日目に退院した.結論.胸腔内に迷入したキルシュナー鋼線の観察と除去に胸腔鏡下手術は有用である.
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池松 祐樹, 福山 聡, 原田 英治, 濵田 直樹, 中西 洋一
2018 年 40 巻 3 号 p.
241-245
発行日: 2018/05/25
公開日: 2018/06/13
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背景.アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(allergic bronchopulmonary aspergillosis:ABPA)とアスペルギローマの合併は稀であり,治療は難治性である.症例.57歳女性.9歳時に肺化膿症のため左上葉部分切除歴あり.ABPAの治療中,発熱と咳嗽が出現し,胸部CTで左上葉の囊胞状気管支拡張と周囲の壁肥厚,液貯留及び右下葉の浸潤影を認めた.精査加療目的に気管支鏡検査を行い,左上葉支入口部より脆弱性の菌球様所見と,右下葉支では著明な粘液栓を認めた.アスペルギローマの合併を疑い,抗真菌剤を開始した.ABPAに対し,ステロイド治療も併用し,症状の改善を認めた.後に菌球様病変の洗浄細胞診よりアスペルギルスが検出された.結語.広範な囊胞状気管拡張を伴うABPAにおいては,気管支内アスペルギローマ合併及び気管支鏡検査を考慮する必要がある.
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松本 大資, 広瀬 敏幸, 中川 靖士, 阿部 あかね, 坂口 暁, 手塚 敏史, 稲山 真美, 吉田 成二, 葉久 貴司
2018 年 40 巻 3 号 p.
246-250
発行日: 2018/05/25
公開日: 2018/06/13
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背景.肺癌に対する化学療法中に発症した続発性気胸は難治性であり,症例に応じた様々な工夫を要する.症例.70歳代,男性.右肺下葉原発の進行肺腺癌に対して,1次治療としてcarboplatin+pemetrexed+bevacizumab療法を計6コース施行した.Pemetrexed単剤による維持療法に変更したが,CT検査で腫瘍の増大を認めたため,2次治療としてnivolumab療法を開始した.投与後10日目に右気胸を発症し緊急入院した.タルクによる胸膜癒着術を2度試みたが奏効しなかったため,EWS留置を行った.Lサイズのspigotにポリグリコール酸不織布(ネオベールⓇ)を縫着し,ガイドワイヤー下に中間気管支幹へ留置した.処置後より気漏は停止したため,OK-432による胸膜癒着術を施行し,気胸は治癒した.結語.ガイドワイヤー下にポリグリコール酸不織布を縫着したEWS留置は,肺癌に伴う難治性続発性気胸に対し有用であった.
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石川 祐也, 小島 史嗣, 吉安 展将, 板東 徹
2018 年 40 巻 3 号 p.
251-255
発行日: 2018/05/25
公開日: 2018/06/13
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背景.気管支食道瘻は肺炎や膿胸を合併し,時に致死的となる疾患であるが,保存的治療後の再燃に対する外科的介入の成功例の報告は稀である.症例.63歳男性.4年前に他院で,食道潰瘍を背景に発生した肺食道瘻に対して内視鏡治療歴がある.1か月前から続く食後の嘔吐を主訴に当院を受診し,精査で気管支食道瘻とそれに伴う肺炎,胸部下部食道癌に伴う食道狭窄と診断された.中心静脈栄養管理および抗菌薬治療の後,一期的に右下葉切除術および食道亜全摘術を施行された.術後15日目で軽快退院した.術後6か月現在,外来で術後補助化学療法中である.結論.進行食道癌に伴う通過障害により,治療後の良性気管支食道瘻が再燃をきたしたと考えられた.肺炎および低栄養の改善を待つことにより,一期的な手術が奏功した.
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星野 大葵, 石田 久雄, 桑原 正喜
2018 年 40 巻 3 号 p.
256-261
発行日: 2018/05/25
公開日: 2018/06/13
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背景.癌の化学療法中に有瘻性膿胸を発症した場合は抗癌剤の投与が困難となるばかりでなく,有瘻性膿胸自体によっても全身状態が悪化して,遷延すれば予後に影響を及ぼす.症例.54歳,男性.右上中葉原発の肺腺癌(cT4N2M1a/stage IVA,同側肺転移,悪性胸水)に対し化学療法(カルボプラチン/パクリタキセル/ベバシズマブ)を開始したが2コース目の途中でS状結腸穿孔と右肺の気胸を併発した.前者は手術で治癒したが右気胸はその後に有瘻性膿胸となった.胸腔ドレナージ,Endobronchial Watanabe Spigot(EWS)気管支充填術を行い,膿胸腔と気漏は減少した.しかし,気漏は継続するため開窓術を行い,その後胸郭成形と大胸筋弁充填術を施行して治癒に至った.結論.肺癌と関連した難治性有瘻性膿胸に対してもEWS気管支充填術は有用な治療選択肢である.
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泉 源浩, 玉垣 学也, 平田 一人
2018 年 40 巻 3 号 p.
262-267
発行日: 2018/05/25
公開日: 2018/06/13
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背景.近年,気管支壁肥厚を伴うIgG4関連疾患の報告が散見される.症例.78歳,男性.自己免疫性膵炎に対して経口ステロイド漸減中,発作性の乾性咳嗽と労作時呼吸困難が出現し,喘息COPDオーバーラップ(ACO)と診断された.吸入ステロイド薬と気管支拡張薬とで症状は一旦改善したが,ステロイド内服中止後に徐々に労作時呼吸困難が増悪した.血清IgG4は高値で,CTで気管支壁肥厚,気管支鏡検査で気管支内腔に多発結節を認めた.ミクリッツ病の確定診断を受けており,全身ステロイド投与後,気管支壁肥厚,呼吸機能の改善を認め,肺病変もIgG4関連疾患が示唆された.結語.IgG4関連呼吸器疾患には中枢気道病変による閉塞性換気障害を呈する病態が存在する.COPDや気管支喘息合併例では診断が困難な症例も存在し,身体所見,血液検査所見,胸郭外病変から総合的に判断する必要があると考えられた.
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