気管支学
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40 巻, 4 号
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表紙
会告
目次
巻頭言
論評
原著
  • 古川原 春菜, 間藤 尚子, 藤城 泰麿, 瀧上 理子, 中山 雅之, 山沢 英明, 坂東 政司, 福嶋 敬宜, 杉山 幸比古, 萩原 弘一
    2018 年 40 巻 4 号 p. 293-299
    発行日: 2018/07/25
    公開日: 2018/08/17
    ジャーナル フリー

    背景.悪性リンパ腫(malignant lymphoma:ML)の肺病変は気管支鏡での診断率が約30%と低いが,なぜ気管支鏡による診断が困難なのか検討した報告はない.目的.MLの肺病変に対して気管支鏡下生検を施行した症例を解析し,診断に関与する因子を検討した.方法.2009~2014年に当科で気管支鏡下生検を施行した肺病変を伴う初発のML 9例において,診断群と非診断群とで臨床所見,画像所見,生検時の情報,病理学的所見を比較検討した.結果.9例の生検部位は,気管支生検(endobronchial biopsy:EBB)2例,経気管支肺生検(transbronchial lung biopsy:TBLB)7例であった.確定診断が得られたのはEBBで2例中2例,TBLBで7例中4例であった.診断群6例の病理診断はびまん性B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma:DLBCL)4例,mucosa-associated lymphoid tissue(MALT)リンパ腫2例であった.診断群は非診断群と比較し,炎症反応およびsoluble interleukin-2 receptor(sIL-2R)が高値であり,発熱などの臨床症状を伴い,CT上肺病変は広範囲に進展し多彩であった.一方,非診断群は最終的にvideo-assisted thoracic surgery(VATS)で診断し,DLBCLが1例,MALTリンパ腫が2例であった.CT上肺病変は限局的であったが,TBLB時には診断群と同様,全例で超音波気管支鏡(endobronchial ultrasonography:EBUS)で病変への到達が確認され,さらに全例で病理所見上リンパ球浸潤が認められていた.しかし,組織検体が微小であり,採取時の挫滅により細胞形態の観察が妨げられ確定診断に至らなかったこと,術前診断で他疾患が想定された例では,病理診断医への診療情報提供が不十分であったことが判明した.結語.MLのTBLBに際しては,十分な検体量を確保し組織の挫滅を避けるため,より大きなカップ径の鉗子を使用することが望ましいと考えられた.また,MLを疑う症例で病理学的にリンパ球浸潤を認めた場合には,生検方法の工夫と病理診断医への適切な診療情報提供により,気管支鏡での診断率が向上する可能性が示唆された.

  • 荒川 総介, 中尾 心人, 村松 秀樹, 鈴木 悠斗, 酒井 祐輔, 藤田 浩平, 佐藤 英文
    2018 年 40 巻 4 号 p. 300-305
    発行日: 2018/07/25
    公開日: 2018/08/17
    ジャーナル フリー

    背景.結核患者の約2割を占める結核性胸膜炎の診断において,局所麻酔下胸腔鏡検査の有用性が報告されている.目的.当院にて胸腔鏡検査を施行され,結核性胸膜炎と診断された患者の臨床的背景や検査結果について検討した.対象と方法.2009年5月から2016年9月に当院において結核性胸膜炎を疑い胸腔鏡検査を施行された18例のうち,結核性胸膜炎と診断された15例を対象に後方視的検討を行った.結果.患者背景は平均年齢77(57~85)歳,男性12例,女性3例であった.胸膜組織を含め抗酸菌塗抹と結核菌群PCRは全症例で陰性であった.抗酸菌培養検査は喀痰,胸水検体でそれぞれ1例,胸膜組織検体では5例(33.3%)陽性であった.病理学的所見で乾酪性肉芽腫は6例(40%)に認めた.また,胸水貯留指摘より検査までの期間が長くなると胸腔鏡所見にて白色肥厚を認めやすく,白色肥厚を認めた場合は肉芽腫検出率や胸膜培養陽性率が低い傾向にあった.結論.結核性胸膜炎における胸腔鏡検査は,細菌学的検査や肉芽腫検出および他疾患除外目的での病理学的検査が可能な点で有用であるが,診断率向上のためには発症早期の施行が望ましいと思われた.

症例
  • 鈴木 克幸, 塩野 知志, 早坂 一希, 鑓水 佳, 遠藤 誠, 柳川 直樹
    2018 年 40 巻 4 号 p. 306-310
    発行日: 2018/07/25
    公開日: 2018/08/17
    ジャーナル フリー

    背景.シリコン製気管支充填材(Endobronchial Watanabe Spigot:EWS)は難治性気胸や有瘻性膿胸に対する治療法として用いられているが,長期留置の可否やその際の合併症に関しては一定の見解はない.今回われわれは有瘻性膿胸に対するEWS充填後に施行した肺癌の1切除例を経験し,長期留置した場合の問題点につき考察したので報告する.症例.59歳男性.右有瘻性膿胸に対して胸腔ドレナージと右中葉気管支へのEWS充填術を施行し膿胸の軽快が得られた.その後EWS抜去を検討していたが,術後9カ月の胸部X線で右中肺野に空洞性病変が出現し,徐々に増大した.気管支鏡検査で右上葉扁平上皮癌,cT1cN0M0-stage IA3と診断した.またEWS近傍の右中葉入口部の隆起性病変からの擦過細胞診で異型細胞を認め,こちらも肺癌cTisN0M0-stage 0が疑われた.全身状態に問題がなかったことから手術の方針とし,中葉入口部の病変は肺癌が疑われたこと,中葉は完全無気肺を呈していたことから右上中葉切除術を施行した.膿胸後の癒着の影響で手術に難渋したが,中葉無気肺以外にはEWS留置による周術期の問題点は生じなかった.術後3年現在再発なく経過中である.結語.EWS充填後に施行した肺癌切除の報告はなされていない.EWSの長期留置については不明な点は少なくないが,本例では右中葉切除を追加せざるを得なかった以外EWS留置による問題は生じず,安全に手術可能であった.

  • 鉄本 訓史, 豊田 成徳, 田中 智, 二木 俊江, 日下部 祥人, 鶴田 直敏, 二重 隆史, 池田 聡之
    2018 年 40 巻 4 号 p. 311-315
    発行日: 2018/07/25
    公開日: 2018/08/17
    ジャーナル フリー

    背景.肺胞蛋白症は,気管支肺胞洗浄液が米のとぎ汁様外観を呈する疾患である.症例.73歳男性.検診の胸部CTで,右上葉に限局性のスリガラス様陰影・両側肺に小葉中心性の粒状影・石灰化した縦隔リンパ節が認められ,血清KL-6が高値であり当院に紹介となった.気管支鏡検査を行ったところ,右上葉からの気管支肺胞洗浄液の外観は黄色であり,経気管支肺生検では,肺胞隔壁の結合組織に線維芽細胞様の紡錘形細胞の増生がみられた.気管支鏡では右上葉のスリガラス様陰影の診断はつかず,陰影は悪化したため胸腔鏡下肺生検を行った.生検の結果スリガラス様陰影の部位は肺胞蛋白症を示し,右下葉や結節陰影は非特異的間質性肺炎や珪肺症を示す所見であった.また,血清抗GM-CSF抗体が陽性であったため,珪肺症を合併した自己免疫性肺胞蛋白症と診断した.結論.非典型的な肺胞洗浄液の外観を呈する肺胞蛋白症症例があるため,病理所見・画像所見・臨床経過を総合的に判断し,慎重に診断を行わなければならない.

  • 鑓水 佳, 塩野 知志, 早坂 一希, 鈴木 克幸, 遠藤 誠
    2018 年 40 巻 4 号 p. 316-320
    発行日: 2018/07/25
    公開日: 2018/08/17
    ジャーナル フリー

    背景.気管気管支は血管の走行異常を伴うこともあり,3次元(3D)CTなどで術前の入念な検討が必要である.症例1.81歳男性.右上葉肺癌のため右上葉切除術およびND1bリンパ節郭清を施行した.気管気管支を有し,右V1-3は肺動脈の背側を走行し,右A2およびA3aに挟まれて分岐,右A3bは上行型であった.症例2.71歳男性.右気管気管支の中枢側から発生した右上葉肺癌で,右上葉切除術およびND2a-1リンパ節郭清を施行した.右A1が単独で分岐し,右A2bとA3は上行型であった.結語.気管支分岐異常の症例では,血管の走行異常を伴う可能性もあり,術前の3D-CTでの検討が有用である.

  • 合地 美奈, 石黒 卓, 河手 絵理子, 鍵山 奈保, 高柳 昇
    2018 年 40 巻 4 号 p. 321-325
    発行日: 2018/07/25
    公開日: 2018/08/17
    ジャーナル フリー

    背景.気道病変を有する好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis;EGPA)疑いに対しprednisolone 30 mg/日投与40日後に多発性単神経炎を発症した症例を経験した.症例.75歳男性.56歳で気管支喘息を発症した.健診で多発するコンソリデーションを指摘され当院を受診した.好酸球増多,胸部CT上多発浸潤影があり,気道内に一部白苔を伴う隆起性病変が多発していた.外科的肺生検の結果,好酸球浸潤を伴う肉芽腫性血管炎を認めた.ANCAは陰性であった.血管炎による症状を伴っていなかったためステロイド単独で治療を開始したが,後に多発性単神経炎を合併した.EGPAの診断が確定し,シクロホスファミドパルス療法を追加し改善した.結論.EGPAの早期の診断と治療に関して症例の集積が必要である.

  • 酒寄 雅史, 石綿 司, 寺田 二郎, 勝俣 雄介, 島田 絢子, 安部 光洋, 川田 奈緒子, 津島 健司, 巽 浩一郎
    2018 年 40 巻 4 号 p. 326-331
    発行日: 2018/07/25
    公開日: 2018/08/17
    ジャーナル フリー

    背景.喀血の治療として気管支動脈塞栓術や外科的治療が検討されるが,全身状態不良の患者に対しては施行困難な症例も少なくない.全身状態不良の喀血患者にEndobronchial Watanabe Spigot(EWS)を用いた気管支充填術を施行し喀血が制御できた2例を経験した.症例1.68歳女性.肺癌に起因する喀血を認め,安静と止血剤内服で経過観察したが改善せず,全身状態不良であった.症例2.73歳男性.虚血性心疾患による肺水腫,急性呼吸不全に対して気管挿管,経皮的冠動脈形成術を施行後,大量の喀血を認め気管支鏡下にトロンビン散布を試みるも無効であった.2症例とも全身状態不良であることから気管支動脈塞栓術の適応外と判断し,EWSを用いて気管支充填術を施行したところ,合併症を生じることなく止血に成功した.結語.全身状態不良の喀血患者においてEWSを用いた気管支充填術は安全に施行し得る可能性があり,検討する価値があると考えられる.

  • 五十嵐 知之, 林 一喜, 岡本 圭伍, 賀来 良輔, 片岡 瑛子, 川口 庸, 大塩 恭彦, 寺本 晃治, 花岡 淳
    2018 年 40 巻 4 号 p. 332-336
    発行日: 2018/07/25
    公開日: 2018/08/17
    ジャーナル フリー

    背景.胃全摘後の重篤な合併症の1つに,吻合部の縫合不全があり,縦隔炎を引き起こすと致命的となることがある.症例.49歳男性.胃癌に対して腹腔鏡下胃全摘術(D1郭清)・胆囊摘出術を施行した.術後2日目に発熱と低酸素血症を認めたため胸部X線を撮影したところ,両側気胸・胸水貯留・縦隔気腫を認め,胸腹部CTで食道空腸吻合部縫合不全による両側気胸・膿胸・縦隔炎と診断した.ただちに両側胸腔ドレナージと抗菌薬投与を開始したが炎症反応は遷延し,再度施行した胸腹部CTで右胸腔から縦隔にかけての膿瘍腔が残存していたため,全身状態を考慮して局所麻酔下に胸腔鏡下膿胸腔掻爬術を施行した.術後全身状態は急速に改善し,術後3週間で食道空腸縫合不全部位の瘻孔は自然閉鎖した.その後食事摂取可能となり軽快退院となった.考察.胃全摘後の吻合部縫合不全による膿胸・縦隔炎では胸腔ドレナージに難渋する場合が多く,ドレナージ不良部位に対する局所麻酔下の胸腔鏡下処置が有用と考えられたので,文献的考察を加えて報告する.

  • 金田 真吏, 德井 俊也, 谷川 元昭, 近藤 茂人, 豊島 弘一, 井谷 英敏, 笹野 元
    2018 年 40 巻 4 号 p. 337-340
    発行日: 2018/07/25
    公開日: 2018/08/17
    ジャーナル フリー

    はじめに.気管支壁に発生し腔内進展する腫瘍の中でも気管支脂肪腫の報告は稀である.今回我々は気管支内腫瘤を認め,左上葉切除を行い,endobronchial lipomaの診断に至った1症例を経験したので報告する.症例.55歳男性.他疾患術前の胸部X線写真で異常陰影を指摘された.胸部CTにて,左上葉気管支を閉塞する腫瘍が判明した.左上葉は完全無気肺であり,腫瘍より遠位部に気管支拡張像を認めた.気管支鏡検査にて左上葉の気管支を閉塞する弾性軟の腫瘍を認め,その奥から膿汁の排出があった.生検では腫瘍性病変が疑われたが,明らかな悪性所見は認められなかった.しかしながら生検標本での確定診断は困難であった.手術:前側方第4肋間小開胸で左上葉切除を行った.胸腔内に胸水や膿汁は認めず,葉間は強固に癒着していた.左上葉は全体が無気肺となり,内容は膿汁で緊満し実質臓器様であった.病理組織診断:Endobronchial lipoma.経過:経過良好であり術後5日目に独歩退院となった.結語.肺の不可逆的変化を考慮して左上葉切除を行った気管支脂肪腫の1例を経験したので報告した.

  • Isamu Watanabe, Naoki Kanauchi, Hikaru Watanabe
    2018 年 40 巻 4 号 p. 341-345
    発行日: 2018/07/25
    公開日: 2018/08/17
    ジャーナル フリー

    Background. Endobronchial metastasis (EBM) is a rare event in breast cancer. We performed successful tumor debulking and management of airway obstructions due to the tumor by the bronchoscopy. Case. A 66-year-old woman who had undergone right radical mastectomy 17 years previously was admitted to our department with dyspnea. Computed tomography (CT) showed obstruction of the bronchus, a bulky lymph node in the mediastinum, and multiple bone metastases. Bronchoscopic examination revealed multiple polypoid tumors arising from the bilateral endobronchial wall, and total obstruction of the right upper and middle bronchus and left lower bronchus. We vaporized the obstructing neoplasm by high-frequency electrosurgical snaring and argon plasma coagulation (APC) for palliation of symptoms. Based on histological features and evaluation of hormone receptor of the tumor specimen, metastatic breast cancer was diagnosed and a therapeutic strategy was selected. She is still alive 15 months after endobronchial treatment. Conclusion. Bronchoscopic examination is very important for diagnosis, selection of treatment modalities, and palliation of symptoms. Combination of high-frequency electrosurgical snaring and APC through a flexible bronchoscope is a useful and feasible strategy for the obstruction of bronchus due to EBM.

  • 太田 紗千子, 五明田 匡, 吉村 誉史, 寺田 泰二
    2018 年 40 巻 4 号 p. 346-350
    発行日: 2018/07/25
    公開日: 2018/08/17
    ジャーナル フリー

    背景.呼吸器外科の術後遠隔期に縫合材料が喀出された報告は非常に稀である.症例.85歳,男性.2010年に肺腺癌にて右肺下葉切除を受けた後,2014年の胸部CTで,気管支断端に内腔に向かって突出する腫瘤を指摘された.断端再発の疑いで気管支鏡下に生検を2回施行したが,肉芽腫との診断であった.2016年にテフロン製プレジェットが付着した非吸収性縫合糸を喀出した.再度気管支鏡検査を行い,以前より腫大した腫瘤から縫合糸の一部が確認されたが,結紮部分が肉芽組織内にあり除去できなかった.1カ月後,閉塞性肺炎を発症し,肺炎の治療後に気管支鏡下でargon plasma coagulation(APC)を用いて,腫瘤内に残存する縫合材料を除去した.結語.気管支断端に非吸収性縫合材料を使用する場合には,稀ではあるが遠隔期に異物反応による肉芽形成や気道内に排出されるような合併症が生じる可能性がある.

  • 淡島 舞子, 叶 宗一郎, 藤倉 雄二, 太田 真一郎, 黒川 敦志, 青木 亮太, 濱川 侑介, 橋本 博史, 尾関 雄一, 川名 明彦
    2018 年 40 巻 4 号 p. 351-356
    発行日: 2018/07/25
    公開日: 2018/08/17
    ジャーナル フリー

    背景.気道異物はしばしば出会う疾患であるが,異物の種類や存在する部位などにより対応は一様ではない.症例.症例1は64歳,男性.内服の際にPTPシートごと誤嚥した.軟性気管支鏡下に鰐口鉗子で異物を回収した.症例2は81歳,男性.誤嚥性肺炎の患者.抜管の際に,外れた義歯が誤嚥された.軟性気管支鏡下にスネアループを用いて異物を回収した.症例3は38歳,男性.脳出血に対して血腫除去術後の患者.経鼻胃管を挿入された際に歯牙を誤嚥した.頭低位として軟性気管支鏡下に鰐口鉗子で異物を回収した.結論.軟性気管支鏡を用いた気道異物の摘出には,異物の形状を考慮して適切なデバイスを選択することが必要である.呼吸器内視鏡に用いるデバイスだけではなく,消化管内視鏡のデバイス・手技を応用するといった工夫も有用と思われる.また,挿管や抜管などの医療行為に関連して気道異物が起こりうることに留意する.

  • 園川 卓海, 竹ヶ原 京志郎, 井上 達哉, 臼田 実男
    2018 年 40 巻 4 号 p. 357-360
    発行日: 2018/07/25
    公開日: 2018/08/17
    ジャーナル フリー

    背景.気管乳頭腫は,比較的稀な良性疾患であるが,再発や悪性化の可能性もあり,その診断,治療には慎重を要する.症例.83歳,男性.健康診断で胸部異常影を指摘され,当院へ紹介受診となった.胸部CTでは気管内に約20 mmの結節を認めた.気管支鏡検査では,①声門から6リング末梢側に気管左側壁から突出し気道を70%閉塞する腫瘍,②さらに2リング中枢側の気管右側壁にも約10 mmの結節状の腫瘍を認めた.診断・治療目的に硬性鏡下に腫瘍摘出を施行した.病理診断は気管乳頭腫であった.現在は再発なく外来で経過観察中である.結語.多発性気管乳頭腫に対して硬性気管支鏡下治療を施行した1例を経験した.本症例のように気道狭窄をきたす気管腫瘍に対して,硬性気管支鏡による治療は有用である.気管乳頭腫は再発や悪性化を示すことがあるため,これらに留意した慎重な経過観察が必要である.

  • 坂井 浩佑, 桑原 由樹, 小島 章歳, 戸田 麻衣子, 菊池 聡, 平田 優介, 教山 紘之, 森山 岳, 弦間 昭彦, 植松 和嗣
    2018 年 40 巻 4 号 p. 361-367
    発行日: 2018/07/25
    公開日: 2018/08/17
    ジャーナル フリー

    背景.関節リウマチに対してメトトレキサート(MTX)投与中に,リンパ増殖性疾患を呈することが知られている.これらは多くの場合においてリンパ節生検により診断されており,経気管支生検(TBB)による診断は稀である.症例1.75歳,女性.69歳時よりMTXが開始された.75歳時に咳嗽が出現し,両側下葉に限局性浸潤影が出現した.TBBを施行し,濾胞辺縁帯リンパ腫の診断となった.症例2.64歳,男性.50歳時に関節リウマチに罹患し,プレドニゾロン(PSL)及びMTXによる治療が行われていた.体重減少及び右下葉腫瘤影を認め,TBBを施行しびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の診断となった.結論.MTX関連リンパ増殖性疾患の診断はTBBにより可能であり,比較的生検しやすい表在リンパ節腫脹などがない肺病変を有する症例では,可能であれば積極的にTBBを試みる必要があると考えられた.

  • Kou Chin, Daisuke Iwashima, Hideki Suganuma
    2018 年 40 巻 4 号 p. 368-371
    発行日: 2018/07/25
    公開日: 2018/08/17
    ジャーナル フリー

    Background. Atelectasis is a recognized complication of bronchial asthma. It is usually segmental atelectasis of an entire pulmonary lobe is rare. Cases. Case 1 concerns a 48-year-old woman suffering from bronchial asthma from the age of 3 years. Episodes of asthma at the ages of 27, 29, and 42 years were associated with atelectasis of the right upper lobe. Case 2 concerns a 59-year-old woman diagnosed with aspirin-exacerbated respiratory disease at the age of 24 years. Right middle lobe collapse accompanied asthmatic episodes in the patient at the ages of 52 and 53 years. In addition, left lower lobe atelectasis complicated an asthmatic episode at the age of 59 years. Case 3 concerns a 72-year-old woman diagnosed with adult-onset asthma at the age of 40 years. Left lower lobe, right middle lobe, and right lower lobe atelectasis were observed in asthmatic episodes at the age of 49 years. Over the course of 17 years, she experienced recurrent episodes of asthma associated with lobar atelectases (19 episodes); the right middle lobe was the most frequently involved (17 times) and atelectases involving more than one lobe simultaneously occurred 8 times. Conclusion. Lobar atelectasis tends to recur with episodes of asthma, and is likely to involve the same lobe. Bronchoscopy may reveal epithelial redness and mucous plugs, for example, suggesting the presence of inflammation. The process of airway remodeling is suspected to be the cause of repeated atelectasis.

  • 児玉 達哉, 林 伸好, 太田 真一郎, 青木 亮太, 淡島 舞子, 濱川 侑介, 田上 陽一, 三沢 和央, 藤倉 雄二, 叶 宗一郎, ...
    2018 年 40 巻 4 号 p. 372-377
    発行日: 2018/07/25
    公開日: 2018/08/17
    ジャーナル フリー

    背景.超音波気管支鏡ガイド下針生検(endobronchial ultrasound-guided transbronchial needle aspiration:EBUS-TBNA)は,縦隔・肺門リンパ節腫脹を伴う悪性腫瘍に対する有用性が確立しているが,近年感染性疾患の診断に対してもその有用性が報告されている.今回,EBUS-TBNAが診断に有用であったヒストプラズマによる縦隔リンパ節炎の1例を経験したので報告する.症例.58歳男性.約1カ月のメキシコ滞在から帰国後に発熱と咳嗽を主訴に当科を受診した.胸部単純X線で右中肺野に結節影を認め,胸部CTでは右中葉に周囲にスリガラス影を伴う結節影及び右肺門・縦隔・右鎖骨上窩リンパ節の腫脹がみられた.結節性病変に対する経気管支鏡下生検(TBB)を施行したところ,小型楕円形の酵母様真菌を認めた.後日腫脹した縦隔リンパ節に対して行ったEBUS-TBNAにおいても,同様の真菌を認めた.また血清抗ヒストプラズマ抗体陽性であったことから,急性肺ヒストプラズマ症に合併する縦隔リンパ節炎と診断した.結論.EBUS-TBNAは肺ヒストプラズマ症による腫脹した縦隔リンパ節に対する診断においても有用である.

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