荒廃林地の早期緑化を目的とした早生樹の植栽が水土保全機能に及ぼす影響を明らかにするため, フィリピン・ルソン島中部の植栽区において, 森林形態, 地表条件の違いが表層土の侵食と浸透能の変化に及ぼす影響を調査した. 降水量と流出土砂量との間には正の相関が認められ, 裸地やショウガ畑における土壌侵食量が多くコゴン草地では少なかった.また, アナビオン林やカカワテ林における侵食量はコゴン草地より多い. その理由は, これらの森林が若くリター層や根系がまだ十分に発達していないのに比較し, コゴン草地では茎と葉が地表面を高密度で覆い根系がマット状に発達しているためであった. それぞれのプロットにおける土壌浸透能は3グループに区分された.すなわち, Aグループは山火事の影響を頻繁に受けている林地が含まれ浸透能が低く, Bグループは主として8-12年生の早生樹の林からなり浸透能は中間のレンジを占めるが, Cグループの浸透能は抜群に高かった. Cグループの林床の特徴はリターや有機物が厚く堆積し, 根系が良好に発達し, ミミズ類などの土壌動物の活動に起因する多くの孔や糞塊が観察されることであった.以上の結果より, 荒廃地への森林造成による森林環境の発達にともない, 土壌の物理的性質が多孔質な構造に変化し, そのことが土壌の浸透能や水土保全機能の増大に結びついていることが確かめられた.
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