秋期に紅葉する落葉樹の黄葉するエノキ, 紅葉するイロハモミジ, 常緑樹のコジイ, タブノキ, スギについて, 樹葉の季節的可視域分光特性変化を積分球付分光光度計を用いて計測した。同時に, 可視域の樹葉分光特性に影響を及ぼしていると考えられているクロロフィル・カロチノイド・アントシアニンの植物色素についての定量を行った。その結果, 緑葉では, 光合成色素であるクロロフィル・カロチノイドの比は, 樹種に関係なく一定かそれに近い値をとるものと考えられた。緑葉の吸収のうち, 680nm付近はクロロフィルによるものであり, 青領域は, クロロフィル・カロチノイドの両方の色素によるものであった。秋期の黄葉現象では, クロロフィルは完全に分解されたが, カロチノイド量も急激に減少した。樹葉の黄色の発現は残存したカロチノイド色素によるものであり, 黄葉の吸収は青領域のみとなった。紅葉は, 黄葉と同様の変化に加えて, 赤色色素のアントシアニンの生成によるものであった。この落葉広葉樹葉の秋期の分光特性変化は, 樹種群に共通な生理的変化によるものであり, 今後, 衛星データ等を利用するリモートセンシング技術において, 森林域の生態的解析に利用できる
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