都市街路樹の植栽環境, および街路樹の光合成特性の都市環境への順化の程度を明らかにすることを目的として, 福岡市天神地区を対象に日射, 気温及び土壌水分の各環境因子と, 中央分離帯に植栽されているクロガネモチ (
Ilex rotunda Thunb.) の切り枝の光合成速度を1年間測定した。その結果, 都市特有の植栽環境として, 少ない日射量, 高い気温および夏期の土壌乾燥が明らかになった。また都市内に植栽されたクロガネモチの最大光合成速度は, 郊外に植栽されている個体に比較して夏期に低く, 秋期から冬期に高い値を示した。秋期から冬期の高い最大光合成速度は高いCO
2固定効率に依存していた。夏期の低い光合成速度は大気汚染の影響の可能性が考えられた。1994年夏期の高い水利用効率は乾燥した土壌に起因したものと思われた。この様に都市街路樹の光合成特性は, 都市環境に順化したものであることが示唆された。
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