本報では景観保全の視点から人工草地化が景観構造におよぼす影響や草地景観保全および牧野樹林の景観保全について, 地理情報システム (GIS) により, 「可視・不可視領域」と「被視頻度」を評価指標として定量的に検討した。近景域, 遠景域と比べて, 中景域の可視領域, 被視頻度はより多いため, 開発による景観に与える影響が高く, 重要な景観保全対象になると考えられた。その景域に入る景観構成要素である道路法面および水飲場などの適切な修景が必要である。草地に占める牧野樹林の割合別の可視量を解析した結果, 可視牧野樹林は, 標高別では各景域とも同程度, 傾斜別では, 遠景域での変化が大きいことが判明した。したがって, 遠景域の景観向上のため, 牧野樹林の配置, 樹種の選択, 更新などの景観保全対策を検討することが重要と考えられた。以上の結果は本造成地のレクリエーション機能を評価する際にも有用である。また, 本報で採用した手法は, 農村環境のアメニティ保全を目的にする牧野整備および帯状間伐などの森林景観施業などの計画案評価に対しても有用と考えられる。
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