日本緑化工学会誌
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27 巻, 1 号
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  • 大澤 啓志, 勝野 武彦
    2001 年 27 巻 1 号 p. 3-7
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    絶滅危惧植物ミズキンバイ (Ludwigia peploidea Ravenssp. stipulacea Raven) を対象とし, 河川水際で群落を維持している機構について調査を行った。種子の発芽実験から25-30℃の温度条件下, 短期間でも高い発芽率が得られた。また, 越冬回数が増すほど発芽能を失う種子からなる果実の割合が多くなった。しかしながら, 3回越冬した果実でも発芽能を失っていない種子を有していれば高い発芽率を示した。群落形成過程における植生動態では, 他種の被圧による影響を特に受けやすく, 高草丈植物の成長によりミズキンバイの優占度が減少した。また, 増水により被圧植物が喪失した空間でミズキンバイの優占度が増すことも認められた。本種は, 埋土種子集団の形成および増水後の撹乱地での早い栄養成長によって, 撹乱の生じやすい河川水際に適応し群落を維持していると考えられる。キーワード: ミズキンバイ, 河川水際, 発芽特性, 増水による撹乱
  • 深田 健二, 亀山 章
    2001 年 27 巻 1 号 p. 8-13
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    雑木林の上層木の伐採が林床植物に及ぼす影響と, 林床植物の生活史戦略との関係を明らかにすることを研究目的とした。生活史戦略を明らかにするために, (1) リーフフェノロジー (2) 草丈, (3) 二次成長の有無, (4) 草丈/基部直径の4項目に着目して, 伐採後の経過年数が異なる調査地において, 林床植物の個体にマーキングして, サイズの測定と開花の有無を調査した。上層木を伐採すると, 多くの種が開花した。また, 調査区間の林床植物のサイズの差異は, (1)~(4) の特徴で説明できた、以上のことから, 上層木の伐採は, 多くの林床植物にとって, 重要な役割をもっていることと, 林床植物の生活史戦略によってその影響に対する反応に明確な差があることが明らかになった。
  • その1上層木の生育および林床植生の特徴
    細木 大輔, 久野 春子, 新井 一司, 深田 健二
    2001 年 27 巻 1 号 p. 14-19
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    本研究では都市近郊の雑木林のもつ植物の生育場所としての機能に着目し, 林床管理の有無によって生じた上層木の生育状態の違いおよび, 林床植生の種組成と各種の優占度合の違いについて調べた。その結果から, (1) 林床管理の有無によって林内の樹木の生育個体数に違いが生じて, 葉面積指数にも違いが生じること.(2) 林床植生は, 林床管理が行われなくなると多年生草本の出現種数と被度が減少して, 木本の出現種数と被度が増加し, 放棄が長年に渡った場合には全出現種数と被度が減少すること.などが明らかとなった。都市近郊林は, 林床管理として冬場の下刈りと落葉掻きが毎年なされることで, 林床に多様な植物種が生育できる環境が整えられることが示唆された。
  • その2林床の光, 気温, 地温および土壌条件の特徴
    久野 春子, 新井 一司, 細木 大輔, 深田 健二
    2001 年 27 巻 1 号 p. 20-25
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    都市化による環境悪化が激しくなるにつれて, 都市近郊林は多様な効用機能を保持するための管理手法が求められている。そこで, 都市近郊二次林において管理の有無が環境条件 (光, 温湿度, 土壌など) にどのような影響を及ぼしているかについて研究を行った。管理された冬期の下刈りなどによって, 林床への光の透過量が高まったが, 晴天日の林内気温は昼間, 管理の有無に関わらず同様な値であった。しかし, 夜間は長期間放置された林の気温が管理された林や短期の放置林よりも低い値であった。地温は長期間放置された林で一日中低い値であった。土壌の硬度, 体積含水率は管理された林の方が放置林より高い値であり, 孔隙率は低かった。長期間の放置林ではこれらの値は短期の放置林よりも大きく変化した。以上のことから, 冬期における林床の下刈りや落ち葉掻きなどの管理は, 林床への光の透過による種の多様性や景観を維持し, 微気象や土壌に影響を与えていることが示唆された。
  • 米村 惣太郎, 那須 守, 田澤 龍三, 松原 徹郎, 亀山 章
    2001 年 27 巻 1 号 p. 26-31
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    調整池に造成された植栽基盤に絶滅危惧植物であるタコノアシ個体群の導入を播種, ポット苗植栽, 自生株移植の3通りの方法で試みた。植栽基盤は現地の砂質埴壌土を用いて盛土により造成し, 表面には水田表土を撒き出した。導入後の育成管理として, 1年目の灌水およびタコノアシの生育を阻害すると考えられたセイタカアワダチソウ, ケイヌビエなどの選択的除去を行った。その結果, 何れの導入方法でも定着出来ることが確認された。またタコノアシは発芽した年に開花・結実するとともに栄養繁殖による増殖も可能であった。導入方法としては, 播種でも充分可能であると考えられるが, 確実性を高めるためにはポット苗植栽法で行うことが望ましいと考えられた。
  • 山火事後2年間の変化
    廣野 正樹, 嶋 一徹, タンジャ マハマドゥ, 山本 裕三, 千葉 喬三
    2001 年 27 巻 1 号 p. 32-37
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    山火事跡地斜面における植生回復とそれに及ほす立地条件の影響について検討を行なった。調査は岡山県倉敷市黒崎の山火事跡地 (1999年5月に32.6haが焼失) 斜面上部で行った。山火事後の実生発生数はプロット傾斜と負の相関が認められ, 緩斜面では埋土種子由来と考えられる樹種以外にも多数の侵入種の定着が認められた。山火事後の植物現存量は時間経過にともない実生由来が萌芽由来を上回った。燃え残った樹幹を伐倒して並べる処理を行なうと土壌養分の保持が図られ, 復旧治山施工までの補助作業として有効であることが明らかになった。
  • 篠原 明日香, 小林 達明, 浅野 義人
    2001 年 27 巻 1 号 p. 38-43
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    切土軟岩のり面に生育する木本植物の実生発生条件を明らかにするために, 異なった発芽床実験区を設定し, 実生発生・初期生育実験を行った。その結果, 発芽床の違いによる実生発生タイプには3タイプが認められた。種子サイズが比較的大きく実生のT/R率の小さなキハギ, ヤマハギはどのような条件であっても実生が発生し, 生存率も高かった。種子サイズが小さく, T/R率の大きなウツギ, マルバウツギ, ニシキウツギ, タマアジサイ等低木樹種はリター区とピートモス区で実生発生率が低下した。また, ツツジ属低木はリター区と表層土区では実生発生率も生存率も低下し, 貧栄養条件を好むことを示した。
  • 吉永 知恵美, 亀山 章
    2001 年 27 巻 1 号 p. 44-49
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    近年, 都市において分布拡大しているトウネズミモチ (Ligustrum lucidum) について, 東京都内を中心に分布の実態調査を行い, 分布拡大の要因になると考えられる種の生活史の調査を行った。分布の実態調査では, トウネズミモチは1960年代から都市部の都市公園を中心として大量に植栽され, さらに都市近郊でも植栽されたことと, 1970年代以降, 実生による繁殖が著しくなり, 都市部から都市近郊の各地で分布拡大したことが明らかにされた。生活史の調査では, トウネズミモチの生活史の特性が, 都市環境に適応しやすいものであることが明らかにされた。以上のことから, トウネズミモチが都市において著しく分布を拡大させた主要な要因は, 種の生活史が都市環境に対して適応しやすいものであることと, そのような適応しやすい種であるトウネズミモチを東京都内に大量に植栽したことであると考察された。
  • 植 弘隆, 奥村 武信
    2001 年 27 巻 1 号 p. 50-55
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    海岸砂地での安価な飛砂防止工法として, 現地の砂・種子・肥料を入れて高さ20cmに作成した植生土のうを1×1mの格子状に排列する工法を検討した。その結果, 次のことがわかった.(1) 植生土のう排列は飛砂澗定・堆砂効果を有する。(2) 区画内は風速が紙減し, 土のう背後の接地風速は半減する。(3) 土のうの排列密度が7~10%程度あれば長期に亘り砂地を安定化できる。(4) 導入した外来草 (Festuca arundinacea, Festuca rubra) は草高30cmに成長し, 飛砂固定効果を発揮し, 土のうの高さを超える堆砂を促した。(5) コウボウムギ (Carex kobomugi) は, 1年後に葉長25cmまで成長し横走地下茎を伸長させた。
  • 竇 徳泉, 増田 拓朗, 守屋 均
    2001 年 27 巻 1 号 p. 56-61
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    高松市中央通りの中央分離帯 (クスノキ植栽) において, 埴質土壌の固結土層が根系発達を阻害していることが確認された。従来であれば, この埴質土を除去し良質客土を搬入するということが行われたが, 現地発生土を活用することが時代の要請である。そこで, 通気透水性改善に効果があるとされている黒曜石系パーライトとピーとモスを用いて, 実験的に現地発生土活用の可能性を検討した。その結果'この2種類の土壌改良資材を容積比で各10-20%程度ずつ混入することで根系発達に支障のない土壌条件に改良できることが確認された。ただし, 土壌が水を多く含んだ (圃場容水量に近い) 状態で土壌改良資材を混入・撹絆すると通気透水性が著しく悪化すること, および土壌改良後に強度の圧力 (踏圧・転圧) を受けないよう注意する必要があることが確認された。
  • 虞 毅, 奥村 武信, 末安 克巳, 田熊 勝利
    2001 年 27 巻 1 号 p. 62-67
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    草本根系と砂表面の粗粒化の風食強度に対する影響を風洞実験で検討した。実験は, 3種類の密度で草本根系を列状配置し粒径0.84mm以下の砂丘砂と粒径0.84-2.00mmの粗砂を異なる比率で混合したものをいれ平坦にした砂層を, 砂粒子を連行して来ない空気流に曝して間欠的風食を行った。根系のない砂層と比べ根系を含む砂表面は, 風食開始から約5分間で砂面低下量が抑えられた。風食表面の画像解析によって砂表面に残る粗砂が占める面積の全砂表面面積との割合 (粗砂残留率) を計算し, 次の2点を確認した。(1) 根系を含む砂層では, 露出する列状根系が砂表面の粗度を増大させ粗砂の匍行を阻害し, 砂表面の粗砂残留率を高める。(2) 粗砂残留率が約60%に達すると, 風食は進まなくなる。
  • 炭素安定同位体比を用いた解析
    松尾 奈緒子, 大手 信人, 木庭 啓介, 小杉 緑子, 壁谷 直記, 張 国盛, 王 林和, 吉川 賢
    2001 年 27 巻 1 号 p. 68-73
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    中国内蒙古自治区・毛烏素沙地に生育する植物4種の水利用効率を明らかにするため, 葉と空気中のCO2の炭素安定同位体比を用いて長期平均的な植物固有の水利用効率を評価した。また, 個葉のガス交換速度を測定し, 水損失量とCO2固定量の指標となるパラメータを求めた。緑化に多用されるSalix matsudanaとしばしば植栽されるArtemisia ordosicaCaragana korshinskiiの水利用効率は同程度であった。緑化材料としてS. matsudanaはCO2固定量が大きい点で有利であるが, 地下水位が低い場合の水損失量がA.ordosicaC.korshinskiiよりも大きいため, 緑化に用いる場合は水資源量とのバランスを十分に吟味し, 適切な密度で植栽する必要があると考えられる。Sabina vulgarisは他の3樹種よりも水利用効率が大きく, 水損失量も小さいという特性であった。
  • 荒 美紀子, 岩崎 寛, 斉藤 庸平
    2001 年 27 巻 1 号 p. 74-77
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    近年勇定枝や間伐材の処理が問題となっている一方, 樹木から放出されるフィトンチッドが人体に有効であることが知られている。本研究において公園緑地や街路で廃材を出す樹種についてフィトンチヅドの放出が認められ, その量は破砕が細かいおがくずにおいて最大であるが, 破砕程度と放出量の関係は樹種によって異なることが判った。また放出されるフィトンチヅドの構成は破砕状態によって割合が異なり, さらにおがくず状態でのみ放出されるフィトンチッドの存在が示唆された。廃材となる樹種が放出するフィトンチッドの特性が明らかにされたことから, フィトンチヅド効果に着目したウヅドチップ利用の可能性が確かめられた。
  • 由井 亜右子, 夏原 由博, 村上 健太郎, 森本 幸裕
    2001 年 27 巻 1 号 p. 78-83
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    京都市内の孤立林38地点において, アリの分布を調査し, 種数に影響を及ぼす要因を探った。調査は単位時間採集法を用い, 1回の採集あたり250m2を15分間探索し発見したアリの種を記録した。調査回数は孤立林の面積と比例させたが, 最大で24回とした。調査努力による種の発見率の違いを考慮して, Jackknife法によって種数を推定し, 比較した。種数と相関の高い要因は微小生息場所の多様度 (r=0.667), 面積 (r=0.624), 樹木の種数 (r=0.623) であったが, いずれの要因に対しても, 実際の採集種数の方が推定種数よりも高い相関を示した。アリの種数は孤立林の面積や形状などマクロな要因と林内の管理, 微小生息場所の多様性というミクロな要因が作用しているという仮説をたて, 共分散構造モデルを検討した。その結果単独の環境要因よりも説明力の高い結果が得られた。単相関係数と共分散構造分析の結果に共通して, アリの種数には孤立林面積などのマクロな要因より, 微小生息場所の多様性がより大きな影響を与えていることが明らかになった。
  • 大窪 久美子, 前中 久行
    2001 年 27 巻 1 号 p. 84-89
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    中国内蒙古自治区毛烏素沙地に自生する臭柏 (Sabina vulgaris) 優占群落において群落調査, 個体群調査及び年輪解析を行った。4プロヅトの個体密度は7.25-38.75本/m2, 推定地上部現存量は12-36ton/haであった。年輪測定の結果, 樹齢最大値は56年, その幹直径は28mmであった。年平均幹直径成長速度は0.21mm/yearで, Sabina vulsarisの成長は非常に緩やかであった。幹直径と樹齢の関係から未測定個体の樹齢を推定した結果, ほとんどの若齢個体は親個体の栄養繁殖に由来しており, 個体群の更新は実生由来のものは少なかった。また若齢個体の少ないプロヅトでは, 栄養繁殖を阻害する要因としては, 親個体の樹齢が高いこと, 主幹や枝先の枯れをもつ個
  • 本田 裕紀郎, 倉本 宣
    2001 年 27 巻 1 号 p. 90-95
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    埋土種子集団は個体群の維持・拡大に重要な役割を果たす。しかし, 絶滅が懸念されている河原固有植物には埋土種子集団を形成しない種が多い。増水による撹乱が頻繁に起こる河原では, それを形成した方が適応度は高くなることも予測される。そのため, 種間競争に弱い河原固有植物にとって, 埋土種子集団を形成する種との適応度に著しい差が生じることは, 個体群の維持・拡大において非常に不利になる。そこで本研究では, 河原に生育するモデル植物を想定し, その植物の繁殖モデルを作成し, 増水の頻度と裸地の割合の変動に伴ったその植物の適応度の変化傾向をシミュレーションにより分析した。その結果, (1) 裸地の減少は埋土種子集団を形成する種との適応度差の拡大をもたらすこと, (2) 適応度差を最小にする最適な増水頻度が存在すること, (3) 裸地の減少率が異なると, その最適な増水頻度が異なることが明らかになった
  • 前中 久行, 石田 均, 山本 聡
    2001 年 27 巻 1 号 p. 96-101
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    植物を一列に列植した場合の植栽間隔が, 植物の成長とその形状に及ぼす影響をみるために, ヒユAmaranthus tricolorをもちいてモデル実験を行った。植栽間隔を4, 8, 16, 32, 64cmとして, 成長や形状への影響を調査した。その結果, 草丈成長に対しては植栽間隔による差がみられなかった。一方, 根元直径の成長速度は, 植栽間隔に応じて小さくなり, 根元直径の上限値があると思われた。葉張り成長も, 植栽間隔に強く影響され, とくに列植方向には横断方向よりも強く抑制された。
  • 渥美 裕子, 山本 福壽, 玉井 重信, 山中 典和
    2001 年 27 巻 1 号 p. 102-107
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    中国原産で半乾燥地緑化に使われるハンリュウ (Salix matudana Koidz.) と日本原産で生育立地の異なるヤナギ属2種 (タチヤナギ: S.subfragilis Andersson, ヤマヤナギ: S.sieboldiana Blume) を用い, 異なる水分条件下での生理生態反応を比較した。土壌水分は, 滞水, 乾燥 (pF2.4), 適潤 (pF1.4) 条件に制御し, 当年生挿し木苗の光合成速度, 蒸散速度や葉の水分特性の測定を行った。川辺に生育するタチヤナギは滞水ストレスに強く.山腹斜面に生育するヤマヤナギは乾燥ストレスに強い結果が得られ, 本来の生育地に対応する生理生態反応を有していた。ハンリュウは本来中国東北部の川辺に生育する種であるが, 乾燥ストレスにも強い傾向が認められた。
  • 三木 直子, 坂本 圭児, 西本 孝, 吉川 賢, 波田 善夫
    2001 年 27 巻 1 号 p. 108-113
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    マツ材線虫病被害の発生と立地の関係を明らかにすることを目的として, 岡山県南部の母岩の異なる3調査区において航空写真を用いた解析を行った。立地の指数化には集水面積を用いた。その結果, いずれの調査区においてもマツ材線虫病被害は集水面積の大きさに依存し, 集水面積が小さく乾性な斜面上部で被害率は小さかった。その傾向は15年経過しても変わらなかった。土壌の保水性が低いと考えらえる花崗岩母岩の調査区は保水性が高いと考えられる堆積岩母岩の調査区と比較して, 被害の増加の程度は緩やかだった。被害は慢性の水ストレスがかかっていると考えられる立地で発生しにくいことが示唆され, マツ材線虫病に対する抵抗性の一つとしてマツ樹木の耐乾性があげられることが仮説的に提起された。
  • 細木 大輔, 吉永 知恵美, 中村 勝衛, 亀山 章
    2001 年 27 巻 1 号 p. 114-119
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    森林表土を用いたのり面緑化工法の目標を, 森林の二次遷移初期の植物群落をいち早く成立させることと考えて, 緑化した盛土のり面と皆伐地とで成立した植物群落の比較を行い, 類似度を検証した。その結果, (1) 緑化のり面は皆伐地と同様に早期に緑化がなされたこと.(2) 緑化のり面と皆伐地の出現種には共通種が多くみられたこと.(3) 施工後3年目における樹高2mを超える木本個体の数は, 緑化のり面と皆伐地の間で差がなく, 双方とも同じように木本が成長していること.などが明らかとなり, 森林表土を用いて緑化したのり面に成立した植物群落は, 皆伐地のものと共通する要素が認められ, 目標とする二次遷移初期の植物群落を成立させるという点は満たされていることが示唆された。
  • 山中 典和, 張 国盛, 坂本 圭児, 王 林和, 吉川 賢
    2001 年 27 巻 1 号 p. 120-124
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    中国内蒙古自治区毛烏素沙地に位置する図克 (N35° 58'18'', E109° 18'18'', alt, 1313m) において, 看護植物 (鳥柳: Salix cheilophila Schneid.) の伐採が臭柏 (Sahina Vulgaris Ant.) の生存に与える影響について調査を行った。調査は烏柳の伐採地と烏柳群落内の2カ所に調査区を設け, 臭柏稚樹の生存状況とサイズを1999年9月と2000年9月の2回測定した。臭柏稚樹の生存率は伐採跡地で平均6%, 烏柳の樹冠下で平均88%であった。伐採区での稚樹の死亡状況は74%が消失していたが, 残りの26%は立ち枯れ状態にあり, 看護植物の伐採に伴う急激な環境変化に伴い, 高温や乾燥が大きく稚樹の枯死に関与したものと考えられた。烏柳等の樹冠は乾燥地の厳しい環境下において, 臭柏の稚樹にとって好適な微環境を作り出していると考えられた。
  • 桑田 孝, 酒井 克人, 竹内 真一, T.C. Maximov, 吉川 賢
    2001 年 27 巻 1 号 p. 125-130
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    東シベリアヤクーツク周辺の北方林において, 林分構造に関する調査を行った。 Larix gmelinii, Pinus sylvestrisが優占する林分の成長はきわめて緩慢であったが, 両種の最大樹高はほぼ上限値に達していた。伐採や森林火災後に成林したと考えられるBetula platyphyllaが優占する林分および, L.gmeliniiB. platvphyllaが混交する林分は過密な状態にあり, 樹高成長が旺盛であった。Betula platyphylla優占林分および, L.gmeliniiB. platyphyllaが混交する林分の樹高階分布と直径階分布から, 撹乱後に成立したBetula platyphylla優占林から, L.gmelinii林へと移行していく過程が検出できた。
  • 下村 孝, 平井 順子, 近藤 哲也
    2001 年 27 巻 1 号 p. 131-135
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    イモカタバミの念珠状の塊茎群から形成後の齢が1~5年の塊茎を切り取り, 植え付け後の生育を比較した。1年生の塊茎は頂芽からのみ出葉したが, 他の塊茎では複数の腋芽も萌芽し, 萌芽する芽の数と総出葉数は齢に比例して増加した。1年生塊茎を大, 中, 小に分けて生育を比較したところ, 中, 小の塊茎からは頂芽のみが萌芽したが, 大の塊茎からは頂芽と平均1.6個の腋芽が萌芽し, 出葉数が中, 小の塊茎を有意に上回った。しかし, 芽あたりの出葉数には差がなかった。2年生の塊茎を水平に2分割, 垂直に2及び4分割して植え付け, 分割しない塊茎と成長を比較した。萌芽する芽の数や塊茎あたり出葉数は、分割しない塊茎が勝るものの, 分割した塊茎との間に有意差は見られず, 4分割した塊茎を用いても苗生産が可能であることが明らかになった。
  • 工法, 水生植物の生育と小動物の生息可能性の検討
    百瀬 浩, 須田 真一, 河野 勝, 木部 直美, 武田 ゆうこ, 藤原 宣夫
    2001 年 27 巻 1 号 p. 136-141
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    ダム湖畔の水位変動域に造成したビオトープ池に各種の水生植物を植栽し, 冬期の水没後, 翌年まで生き残って生育するかどうかを調査した。調査の結果, 少なくとも15種の植物は, 冬期に約7ヶ月間水没する立地で生存し, 翌年生育が可能であることを明らかにした。設置標高を1m変えた2つの池の結果を比較すると, 水没時期が短く水没時の水深が浅い上側の池の方が植物の生育が良好だったが, 下側の池でも植物の生育は可能であることを確かめた。また, 両池でトンボ羽化殻の調査を行ったところ, 上側の池では58個の羽化殻が見られたのに対し, 下側の池では3個しか発見されなかった。このことから, 水没時期や水深などの条件の違いにより, 植物の生育は可能であっても, 動物の生息地としての機能は異なる可能性があることを示した。また, 池の造成にあたり異なる工法を試した結果を踏まえ, ダム湖の水位変動域にビオトープ池を設置する際の技術的留意点についても述べた。
  • 橘 隆一, 福永 健司
    2001 年 27 巻 1 号 p. 142-147
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    播種工による早期樹林化を目的とした法面緑化施工地において、窒素の無機化に関する検討を行った。調査地として、滋賀県米原町にある山腹切土法面より経過年数の異なる緑化法面を7つ選定した。各法面から土壌を採取し、びん培養法により硝化活性を測定した。硝化活性は、年数の経過した法面ほど強まるとともに、硝化細菌にとって量的に限りのある基質よりも、生息環境に関係するpHの影響を強く受けるように変化した。また、森林土壌における窒素の無機化過程に類似する点が多くあった。これらより、本調査法面における窒素の無機化に関して、年数の経過にともなう量的な差と、無機化過程における性質の違いが認められた。このため、硝化活性試験は、播種工による法面施工地の評価方法として、有効である可能性が示唆された。
  • 山崎 一, 松場 輝信, 境 慎二朗, 淺野 善和, 松場 京子
    2001 年 27 巻 1 号 p. 148-153
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    低規格林道の法面を対象とする簡易緑化法の検討を目的として, 深さ30cmまでの森林表土を盛土法面に撒き出し, 発生する植生を4年間調査した。その結果, 実生および萌芽による郷土種植生の成立に極めて高い効果があることが確認された。しかし, 埋土種子起源の実生の発生は少なく, むしろ施工後に風散布された種子に由来する個体が多く出現すること, および表土に含まれる有機物が法面の侵食を防止し, 微小な実生個体の定着に寄与することが示唆された。一方, 表土と共に撒き出された林床植生の株からの萌芽は個体数が少ないものの, 成長がよく高い被覆度を示した。また, 土羽打ちによって実生の定着には若干の効果があったが, 萌芽に対してはやや負の効果が認められた。
  • 戸田 健太郎, 中村 彰宏
    2001 年 27 巻 1 号 p. 154-159
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    植物の生育地の環境評価, 植栽計画における植栽地の環境評価として, 日射量を推定するプログラムを開発した。デジタル全天写真画像より天空率を求め, 全天写真上での太陽位置から直達日射の遮光の有無を判別, 宇田川・木村の近似式を用いて全天日射量を直達および散乱成分に分離して受光量を算出した。推定された日射量は, 実測値の変動を良好に再現し, 日積算値の相対誤差は8%以下であった。さらに, 気象台で観測された1時間ごとの全天日射量を補間して用い, 1分ごとの日射量の推定を行い, 日射量の日および季節変化を明らかにした。このプログラムによって, 植栽樹木の育成に大きな影響を与える日射量を実測せずに全天写真のみから年間を通じて1分ごとに推定できることを示した。
  • 橋口 茂, 牧野 誠一, 大井 順子
    2001 年 27 巻 1 号 p. 163-164
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    河川の排水機場において降雨後の出水により捕捉される塵芥中の植物系の流下物について, 堆肥化実験を実施して完成堆肥の品質分析を行い, 法面吹付に用いる植物生育基盤材としての活用の可能性について検証した。実験は, 塵芥から選別した植物系の流下物と, この比較対象として河川堤防より発生する刈草及びこれらの混合物の3種についてそれぞれ実験ヤードを設置して堆肥化を行った。これらの完成堆肥について, バーク堆肥の品質基準の適合性に関する評価を行った。この結果, 今回の実験における完成堆肥の品質分析結果は品質基準をほぼ満足し, 植物生育基盤材として活用可能であると判断された。
  • 清水 健司, 梅田 義浩, 辻 秀之
    2001 年 27 巻 1 号 p. 165-167
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    下水汚泥から生成される炭化汚泥の有効利用用途として, 土壌改良材としての性状及び効果に関する調査を行った。供試植物としてエノキの苗木を選択した。結果, 対照区である真砂土に比較して, 炭化汚泥を混入することによりエノキの樹高生長, 葉緑素量の増大が認められた。また, 試験期間の夏期の異常渇水により, 対照区において落葉個体が発生したが, 炭化汚泥混入区における落葉は認められなかった。これらは, 炭化汚泥中に含まれる窒素分が生長を促進したことに加え, 炭化汚泥の多孔質な性状が土壌の保水性改善に有効に働いたためと考察された。以上の結果より, 炭化汚泥は, 土壌改良材として成長促進と保水性向上の効果を有することが示唆された。
  • 角田 真一, 佐藤 裕隆, 加藤 和生, 野中 晃, 大平 政喜, 笹本 和好, 上田 純郎
    2001 年 27 巻 1 号 p. 168-171
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    浄水ケーキを主な原料とした土壌改良資材を作成し, 砂質土壌の物理・化学性, および緑化用植物の生育に及ぼす影響について調査した。浄水ケーキを主原料とした改良資材の砂質土壌に対する施用は, 従来より改良材として使用されている赤土+バーク堆肥と比べ, 難効性有効水分量, 液相率を高める傾向があり, また, 化学性に対しては肥料添加により無機成分含有量および, 肥料の保持機能を高める効果が認められた。茨城県波崎町の砂質土壌地帯において, 数種類の緑化用植物を植栽し, 試作した改良資材の施用効果について調査した, その結果, 試作した改良資材の施用は, 従来の改良材に比べ供試したほとんどの植物種の生育を高めた。また, 処理から約2年経過後, 従来の改良材に比べ肥料が充分に保持されていることから, 生育増進の主な原因が土壌の化学性の改善によるものと考察した。
  • 池田 桂, 前田 幸一郎, 三ツ矢 泰久, 大内 公安, 二見 肇彦
    2001 年 27 巻 1 号 p. 172-174
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    非木材パルプとして注目をあびているケナフパルプをバーク堆肥や木質系チップと共に厚層基材吹付工の生育基盤材の一部として有効利用を図る吹付試験を実施した。その結果, 豪雪地帯での晩秋施工であったが越冬後, 積雪害による生育基盤の損傷箇所は認められなかった。導入植物の発芽・生育状態は, ケナフパルプの混入量が増加するにつれ生育本数や生長量が増加する傾向があり, ケナフパルプの混入は植物の生育性の向上に有効であるものと考えられた。また, ケナフパルプの混入量は, 吐出状態より判断すると20%程度まで可能であり, 木質系チップに混入する場合, 下水コンポストを添加すると吹付ロスの発生量の減少, 植物の生育性の向上などに寄与することが示唆された。
  • 大澤 和幸, 岡田 拓
    2001 年 27 巻 1 号 p. 175-177
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    間伐や伐採などにより発生する廃木材を有効に利用することが求められており, 特にのり面などの緑化に使用する場合, 自然を復元するという目的と, 廃木材の有効利用という目的を両立するものとして注目されている。しかし, 現在一般的に行われている緑化手法は, 均一に整形されたのり面に対して, 均一に植生基盤を造成するものであり, 本来自然環境には欠かせない “多様性” が失われる事が多い。そこで, 廃木材のチップを使用し, アスファルト乳剤をバインダーとして使用することで, 侵食に強い生育基盤を作ること, また, 凹凸のあるのり面に適用可能なものとすることで, より自然な多様性のある斜面を造成することを目的として緑化工法を開発し, 一定の成果が得られたので報告する。
  • 千秋 由里, 大内 公安
    2001 年 27 巻 1 号 p. 178-180
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    堆肥化の進んでいない木質系チップを法面緑化工の緑化基盤材として使用すると, 木質系チップの堆肥化過程において有害成分の発生や窒素飢餓等の植物の生育障害を引き起こす。このような生育障害を軽減させるような添加剤の検討を行った。その結果, 木質系チップに下水コンポストを添加することにより植物の生育障害は改善されたが, 緑化基盤材が堅くなるため植物の発芽数が少なかった。さらに, 木質系チップに下水コンポストとゼオライトを添加することにより, 植物の発芽数が増え, 生育状況も良好であった。また, 木質系チップに下水コンポストと界面活性剤を添加することでも同様に良好な結果が得られた。
  • 横塚 享, 小林 正宏, 大谷 多香, 高橋 正通, 赤間 亮夫, 太田 誠一
    2001 年 27 巻 1 号 p. 181-184
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    環境負荷低減・利便性などの事情により, 伐採材を粉砕したチップを堆肥化せずにそのまま法面緑化資材として現地リサイクルする事例が増加している。しかし, このような未分解チップを施用した土壌は窒素飢餓などの生育障害が懸念されている。本稿では施工1年後の未分解チップ施用法面の土壌および植生の状況を調査した結果について報告する。未分解チップの腐朽は進行中であるもののその土壌は植物体に窒素を供給することのできる状態であり, 植物は窒素飢餓による生育障害もみられず, 当初の緑化目標を達成していた。
  • 二見 肇彦, 毛利 浩徳, 中野 裕司, 村上 明
    2001 年 27 巻 1 号 p. 185-188
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    国営讃岐まんのう公園内より発生する植物廃材を用いたリサイクル生育基盤材を調製し, 自生種による木本植物の導入試験を試みた。木本植物の導入は, 公園内より採取したドングリ類を主体とした播種工による方法と, 購入苗木による苗木設置吹付工による方法とし, 比較を行った。約1年後の調査結果では, 導入植物の発芽・生育障害は認められず, リサイクル生育基盤材の実用性が確認できた。木本植物の導入に関しては, 播種工による方法は, 採取したドングリ類の出芽が安定した傾向にあることが, 苗木設置吹付工による方法では, アラカシ, クヌギ, コナラ, アカマツの定着が高い傾向にあることが確認できた。公園内で採取した種子を無駄なく用いるには苗木を生産し, 苗木設置吹付工を実施することが有効であると考える。
  • 藤崎 健一郎, 長水 恵美, 勝野 武彦
    2001 年 27 巻 1 号 p. 189-192
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    透光性の膜材で覆われた膜構造建築物内への植物の導入可能性を検討することを目的とし, 透光25%および50%の膜材で造られた実験ドーム (内部の相対照度はそれぞれ約17%と37%) 内においてボッグセージを育て, 光の強さによる生育の差異を比較した。同時に, 倭化剤, 生理活性物質や菌根菌等の資材を施用した場合の効果ならびに定期的に屋外と置き換えた場合の生育を比較した。ボッグセージは日向を好むとされているが, 葉色, 花色などは屋外よりもドーム内の方が良好であった。資材等の添加による生育の向上もわずかながら見受けられた。ドーム内でのボッグセージの生育が可能であったことにより, 日向を好むとされている植物の中にも本実験条件程度の光があれば屋内で生育可能なものがあることが示唆された。ただし根の成長はドーム内では著しく抑制されており, 弱光下で植物を育てる際には根の生育を向上させることが重要と考察された。
  • 田窪 祐子, 小口 深志
    2001 年 27 巻 1 号 p. 193-196
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    屋上緑化へのニーズが高まる背景をもとに, 更なる軽量化と導入植生の選定を目的として人工軽量土壌を用いて土壌厚と植生の関係の検討を行った。植生は乾燥に強く, 屋上緑化によく利用されるセダム類のほか, 花卉類, ハーブ類, 芝などを使用し, それらが従来生育に必要とされる15cm厚さとその半分である7cm厚さにおいて生育状況を観察した。また, マンション等での導入が検討されている屋上菜園についても, 土壌厚と栽培可能野菜について人工軽量土壌を用いて検討を行った。その結果以下のようなことがわかった。
    (1) 薄層緑化では7cm厚さの土壌で花卉類、ハーブ類芝の生育を確認。導入が可能と考えられる。
    (2) 菜園では果菜、葉菜、根菜をそれぞれ栽培。大型の根菜類以外は30cmの人工軽量土壌で栽培可能
  • 小林 恭子, 勝野 武彦, 藤崎 健一郎
    2001 年 27 巻 1 号 p. 197-200
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    コケシートとは乾燥させたコケ (蘚類) をネットに挟んでシート状こしたもので屋上や壁面へのコケ植栽に使用されている。本研究は, コケシートからコケが良好に生満する条件を明らがこすることを目的とし, コクの種類, 灌水および光条件の違いによる生育の差違を, 緑被率と新芽の数などから比較したものである。灌水頻度を変えた実験ではま無灌水区の生育が良く, 実験地の気候条件においては自然の降雨のみで充分な生育が可能と判断された。寒冷紗等により光条件を変えた実験ではコケの種類による違いが見られ, スナゴケは相対照度 (光量子, 日射もほぼ比例) 50%以上の方が旺盛に生育したのに対し, ハイゴケは50%以下の方が生育良好であり, トヤマシノブコケは20%以下の方が良いという傾向がみられた。
  • 池田 穣, 高見 元久, 犬山 雅章, 寺口 善也
    2001 年 27 巻 1 号 p. 201-204
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    セダム (Sedum sp.) を用いた屋上緑化資材.セダムマットによる雨水流出緩和効果を調べた。防水合板製の容器にセダムマット1m2を設置し集中豪雨時の最大降雨量を想定し10分間で37mmの降雨を5分間滴下させた。容器隅の小穴からの流出量を降雨開始直後から流出がほほ停止するまで測定した。容器からの水の流出は.セダムマットを設置することにより1-2分遅延された。流出量のピークは.降雨開始5分後で.15-27分後流出は停止した, , これら結果よりセダムマットの単位面積・単位湿潤重量あたりの保水量は0.2kg/wwkg/m2と評価された。土壌やパーライトの単位面積・単位湿潤重量あたりの保水量はそれぞれ0.1.0.3kg/wwkg/m2と考えられることから.セダムマットの保水能はパーライトと土壌の中間ほとであることが示唆された。
  • 唐沢 明彦, 土田 保
    2001 年 27 巻 1 号 p. 205-208
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    耐踏圧性の向上や上壌の流出防止等を目的として, 人工軽量骨材を使用したポーラスコンクリートの連続空隙内に植生基材を充填し, これを基盤として植物を生育させる屋上緑化システムを開発した。このシステムを埼玉県熊谷市内の集合住宅屋上に施工し, 階下の室内の熱環境に及ぼす効果を1999年夏季と2000年冬季に測定した。その結果, 本システムを施工し屋上を緑化することにより, 夏季と冬季における階下の室内気候を緩和でき, 冷暖房エネルギーを節約できることを確認した。
  • 福田 淳, 小楠 良雄, 中村 聡, 加藤 信男
    2001 年 27 巻 1 号 p. 209-210
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    ビオトープ型屋上緑化を集合住宅屋上に設置した場合, 日射等の外気条件が集合住宅最上階に与える熱的影響を実験施設での温度実測, 並びに年間熱負荷のシミュレーションにより検討した。実測結果は, 日中の最高温度はコンクリート表面温度が53.1℃, 屋上縁化の土部分で土表面下150mmは31.4℃, 水面下150mmの池底は37.9℃ であった。年間負荷のシミュレーションは集合住宅最上階をモデルにして行った, その結果, 年間熱負荷はビオトープ型屋七緑化を設置しない場合が408.06MJ/Wm2, ビオトープ型屋上工緑化を設置した場合が369.55MJ/Wm2となった。これらの結果から, ビオトープ型屋上緑化は集合主宅最上階における熱環境の向上および熱負荷の低減効果に寄与することがわかった。
  • 入山 義久, 寳示戸 貞雄, 高山 光男
    2001 年 27 巻 1 号 p. 211-214
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    水辺緑化用植物として注目されるマコモについて, 採種, 発芽, 育苗方法を検討した。マコモ群落より採穂を行い, 精選後の種子を発芽試験, 育苗試験に供試した。発芽試験の結果, 裸種子の発芽は僅かであったが, ふ付種子の水浸漬越冬処理で良好な発芽が確認された。ポット苗生産を想定した育苗試験の結果, 発芽に際してはふ付種子を5℃ で3ヶ月間冷水浸漬処理を行い, 播種面まで十分に水浸漬する必要があり, また育苗に際しては十分な施肥と日照が必要であった。4ヶ月の育苗期間で草丈約100cmまで生育し, 播種粒数の約20%の苗数を得た
  • 藤原 宣夫, 西廣 淳, 佐藤 寿一, 井本 郁子
    2001 年 27 巻 1 号 p. 215-218
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    ポーラスコンクリートを用いた河川護岸上に植生を成立・維持させる上で配慮すべき点を明らかにするために, 施工後2-4年が経過したポーラスコンクリート河川護岸15箇所において, 成立している植生を調査し, 工法や護岸場所の条件などの影響を検討した。その結果, 頻繁に冠水する低水護岸では, ポーラスコンクリートの表面が平滑な場合には植物は生育していなかったが, 表面に凹凸構造があり土砂が堆積しやすい形状の場合には植物の生育が認められた。またほとんど冠水しない高水護岸では, 播種や張芝などの緑化工が施された場合のみ, 植生の成立が認められた。ポーラスコンクリート河川護岸に植生を成立させるためには, 対象箇所の冠水頻度に配慮して, 適切な形状の基盤, 緑化工法を選択する必要があることが示された。
  • 唐沢 明彦, 小柳 直昭, 高橋 重松, 土田 保
    2001 年 27 巻 1 号 p. 219-222
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    ポーラスコンクリートによる河川護岸工法は, 自然生態系の保全や景観性の向上が可能な工法として期待されている。一方, 河川護岸には半永久構造物としての高い耐久性が求められるが, ポーラスコンクリートの実環境下における耐久性に関しては必ずしも明らかになっていない。このため、植栽を目的としたポーラスコンクリートの実環境下における長期耐久性を評価することを目的として, 寒冷地の鉱山残壁および河川護岸に施工されたポーラスコンクリート製構造物の調査を実施した。その結果, 植栽を目的としたポーラスコンクリートは, 凍結融解作用が生じる寒冷地の実環境下において高い耐久性を有していることが確認された。
  • 長 信也, 秋元 利之, 江刺 洋司
    2001 年 27 巻 1 号 p. 223-226
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    イイギリ種子の発芽特性についての記述は書物によって異なる。本研究はその違いが生じた理由を解明すると共に, この種子の真の発芽特性を明らかにするために行った。その結果, イイギリ種子は, 果実の結実直後においては, 内性 (後熟型) 休眠性を示し, 通常の発芽試験条件下では発芽しないが, この休眠性は果実の採取時期が遅れるに連れて樹上での後熟進行と共に覚醒していくことが明らかになった。よって, イイギリ種子の発芽特性についての記述の相違は, 調査に使用した種子の採取時期によることが明らかになった。また, この種子の休眠性は, 低温湿潤処理によってだけでなく, 高酸素分圧下での2種類の植物ホルモン (GA+BA) の添加によって打破されること, 逆に過度の低温湿潤処理によっては発芽力が低下することが明らかになった。
  • 秋元 利之, 長信 也, 江刺 洋司
    2001 年 27 巻 1 号 p. 227-230
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    種子の貯蔵中の劣化要因には草太種子では自らが放出するアルデヒド類が関わることが知られているが, 本研究において, ネズミモチ, コナラという木本種子も自らアセトアルデヒドを放出し, それが草本植物種子と同様にこれらの種子の劣化を促すことが証明された。なお, アセトアルデヒドの影響は濃度と共に大きくなり, これら木本植物種子の活力低下を促した。今回。新知見として, 草本植物種子では知られていないアセトアルデヒドによる種子の酸素呼吸促進作用を見出したが, これらの木本植物種子ではアセトアルデヒドのこのような作用が主となって, 種子自らの体力消耗を促すことによって種子の劣化を誘致すると考えられる。
  • 種子採取~発芽状況
    吉田 和男, 杉木 修一
    2001 年 27 巻 1 号 p. 231-234
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    滋賀県北部の山間部に自生する樹木19種について、4年間の結実状況を確認するとともに、自生個体から採取した種子を低温, ジベレリン処理を施して播種し、発芽状況を調査した。この結果、17種について当地域での採種適期が明瞭となり、発芽状況は18種について播種の処理条件の違いによる差がみられた。樹種によっては発芽に有効な低温処理期間が異なり、7種は数週間の低温処理で、10種は約半年の低温処理で高い発芽率を呈した。また、2種についてジベレリン処理を施すことによって高い発芽率を呈した、本試行では結実調査, 播種試験をとおして、種子の採取から発芽状況までの自生樹木の生産にかかる一資料を得ることができた。
  • 齋藤 与司二
    2001 年 27 巻 1 号 p. 235-238
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    近年, 地球規模での自然環境保全や森林の重要性に対する認識が高まっている中で, 広葉樹などを主体とした日本古来の豊かな自然風景の再現や, 山林の回復及び愛着のもてる美しい樹林形成を目的として, 郷土種を用いた緑化方法の確立に向け, 一昨年から現地予備試験等を行い, 工事への採用に向けた本試験を行っている。今回, 高標高かっ寒冷地での本試験から, 郷土種における播種工 (直播植裁) による発芽特性や優占種並びに幼苗を用いた植裁工における生育特性などの傾向を把握できたほか, 播種が適する樹種, 幼苗で適する樹種について明らかになった。また, カラマツ林内で落葉堆積のある土壌下においては, 完熟発酵汚泥コンポストなどのアシスト材を活用すると生育面で効果があることが明らかとなった。
  • 大型ペーパーポットおよび傾斜度が播種植物の生育, 根系におよぼす影響
    小阪 進一, 胡 玉暉, 大畑 章子, 川元 亜希子, 村山 三郎
    2001 年 27 巻 1 号 p. 239-242
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/06/07
    ジャーナル フリー
    大型ペーパーポヅトの有無および傾斜度の相違がチモシー (phleum pratense L), ヤマハギ (Lespedeza bicolor Turcz. var. japonica NAKAI) の生育および根系におよぼす影響について, 実験を行った。傾斜度処理区は0 ° 区, 20°区, 40°区を設け, プランターを用いて行った。その結果, ヤマハギでは, 大型ペーパーポットを使用した処理区で, 樹高が高く, 葉数が多く, 地上部および地下部乾重が増加した。とくに0° 区, 40°区でその傾向は明らかであった。以上のことから, 播種工による木本植物 (ヤマハギ) の導入における大型ペーパーポットの使用は有効であることが認められた。
  • 柴田 勉
    2001 年 27 巻 1 号 p. 243-246
    発行日: 2001/08/31
    公開日: 2011/02/09
    ジャーナル フリー
    温暖多雨な, 海辺・山麓の一地域において, ウバメガシ, シャリンバイ, ネズミモチ, トベラを播種対象樹とする樹林化を試みた。5~6年経過した現在, 播種対象樹以外に種子散布・芽生え・成長しかつ林冠を形成している10樹種が認められた。ここでは成立量が比較的多いヤマモモ, タチヤナギ, マサキについて考察し, つぎの結果を得た。1) ヤマモモ (Myrica rubra Sieb.et Zucc.) は鳥による散布直後, 大型土壌動物などによる微移動および埋土がなされ芽生えする。2) タチヤナギ (Salix subfragilis And.) は一般植生の生育困難な湧水地に風散布され芽生えする。3) マサキ (Euonymus japonicus Thunb.) は鳥により散布され分散の成功する機会が毎年ある。4) これらの種子散布に対し, 限られた条件下においてではあるが指向性散布仮説の適用が示唆される。
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