日本緑化工学会誌
Online ISSN : 1884-3670
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28 巻, 1 号
(2002 Aug.)
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論文
  • 吉田 博宣, 牧野 亜友美, 松岡 達郎, 竹田 敦夫
    2002 年 28 巻 1 号 p. 3-7
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    神戸市総合運動公園(西神地区)における切土のり面の地質は神戸層群の軟岩でアルカリ性を呈し, 緑化が困難な条件にあった。そのため, 30cm以上の厚さでマサ土を客土したうえ, 1980年に1本/m2の密度で苗木植栽による緑化がなされた。その後, 1992年と2000年に植生追跡調査および土壌調査を実施した。その結果, 林分の胸高断面積合計は1992年では11m2/ha, 2000年では16m2/haとなり, 当初の緑化計画に示されたように常緑 · 落葉広葉樹の混交林が成立していると判断された。また, 土壌硬度は2000年ではより小さくなっており根系の分布もより多くなっていることが確認され, 土壌条件も改善されていると判断された。
  • 武田 一夫, 土谷 富士夫, 宗岡 寿美, 伊藤 隆広
    2002 年 28 巻 1 号 p. 8-13
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    寒冷少雪地域において, 道路法面の凍上害防止を目的に, 1ヶ所に4方位の揃った切土法面で4冬にわたって凍結深さを観測し凍上害を調査した。その結果, ひと冬の最大凍結深さは, 日射や積雪の影響によって, 大きい方から西向き, 北向き, 南向き, 東向き法面の順になった。また, 被害は西向きと北向きで多く起こることが判明した。これらの法面では, 表層の客土だけでなく地山まで凍結し, その地質構造や地下水が凍上量を大きくすると考えられる。今後, 調査結果を積み重ねて, 同地域での凍上害を防止する, より適切な施工方法や維持管理方法を提案したい。
  • 松尾 奈緒子, 小杉 緑子
    2002 年 28 巻 1 号 p. 14-19
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    樹木個葉による光合成 · 蒸散過程の制御を表す細胞間隙と大気のCO2濃度比 (Ci/Ca) は森林群落上におけるH2O · CO2フラックスの推定を行う際に重要となるパラメータの1つである。本研究では暖温帯性広葉樹のCi/Caの季節変動とその決定要因を明らかにすることを目的とし, 兵庫県赤穂市の人工樹林帯において常緑広葉樹3種 (Quercus glauca, Cinnamomum camphora, Castanopsis cuspidata) と落葉広葉樹1種 (Quercus serrata) を対象として光合成 · 蒸散速度の野外測定を行い, Ci/Caを算出した。対象木は常緑樹 · 落葉樹いずれも展葉期において, 葉の成長にともないCi/Caが減少すること, また落葉樹は落葉期において葉の老化にともないCi/Caが増加することが明らかになった。展葉期と落葉期を除いた成熟期における対象木のCi/Caは幅広い環境条件下で一定となり, 樹種間差が小さいことが明らかになった。
  • 久野 春子, 新井 一司
    2002 年 28 巻 1 号 p. 20-25
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    ポプラ, コナラ, ケヤキ, シラカシおよびスダジイの各個葉におけるガス交換速度が, チャンバー内の温度条件 (20, 25, 30, 35℃) および湿度条件 (50, 60, 70, 80%) の違いにより生じる特徴について研究を行った。温度条件と樹種間について分散分析をした結果, 純光合成速度と気孔コンダクタンスは, いずれの樹種も35℃で低い値になった。特にケヤキは35℃でほとんど停止した。一方, 蒸散速度は交互作用がみられ, ポプラとスダジイは温度の上昇により増大したが, コナラとシラカシは30℃まで増大して, 35℃では低下した。ケヤキは25℃以上で著しく低下した。湿度条件と樹種間については, 純光合成速度と葉内コンダクタンスおよび細胞間隙CO2濃度への湿度の影響は認められなかったが, 気孔コンダクタンスは交互作用がみられた。
  • 藤原 宣夫, 山岸 裕, 村中 重仁
    2002 年 28 巻 1 号 p. 26-31
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    森林のCO2固定量については, 面積あたり固定量を原単位とした算定方法が明らかとされているが, 街路樹など森林形状を有しない都市緑化樹木によるCO2固定量の算定には, 樹木1本あたりの原単位の設定が必要と考えられる。本研究では, 原単位となる年間木質部乾重成長量の算定式を得るため, 都市緑化に多用される6樹種, 30本を対象に, 樹幹解析により成長過程を明らかにした。その結果, 樹高, 胸高直径と木質部乾燥重量には密接な関係があり, 回帰曲線が得られた。また, 樹高, 胸高直径と樹齢とは直線による回帰が可能であり, 両者の関係から, 特定の大きさの樹木1本の年間木質部乾重成長量を推定する式を作成した。この式からは, 各樹種の多様な大きさに対応した年間木質部乾重成長量が得られる。算定式の構造は次のとおりである。Y= a{(X+c)b-Xb} ; Y: 年間木質部乾重成長量(kg/y), X: 樹高(m) または胸高直径(cm), a, bおよびc: 樹種毎の定数
  • 柏木 亨, 大澤 啓志, 藤崎 健一郎, 勝野 武彦
    2002 年 28 巻 1 号 p. 32-36
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    雑木林の林床管理を行うためには, まず現状の林床状態の把握が極めて重要となる。 そこで, 関東地方の雑木林の林床において強度の優占種となるアズマネザサ(Pleioblasyus chino) を対象に非破壊で広範囲に渡り群落の構造解析が可能と考えられるプラント · キャノピー · アナライザー(以下, PCA)を用いて葉面積指数(以下, LAI)の測定を行い, 現存量との対応関係を調査した。 その結果, 非樹林地において相対照度を用いた場合と比較して, PCAを用いて測定したLAIと現存量との対応関係の方が高い相関(P<0.05) があり, 樹林内においても林床に生育するアズマネザサの規模を考慮して草本層のLAIから林冠部のLAIを差し引くことで相関係数が増すことが示された。 これにより冬季については手法的確立の可能性が高くなり, 夏季についても地点数の増加により技術化の可能性が示唆された。
  • 大澤 啓志, 勝野 武彦
    2002 年 28 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    1998年から2001年までの4年間にわたり, 神奈川県東部柏尾川に生育する絶滅危惧植物ミズキンバイ (Ludwigia peploidea Raven ssp. stipulacea Raven) の動態を調査した。生育規模は4年間で6倍以上になり, 本調査範囲においてミズキンバイは増加傾向にあることが明らかにされた。これには, 初夏季の少ない降水量にともなう新たな中洲の形成が関与していた。遷移過程において, 中洲の大部分がミズキンバイに覆われる初期段階と, 中洲の中心から縁辺に向かいほぼ同心円的にオオブタクサ, オオイヌタデ, ミズキンバイの順となる群落景観を示す後期段階が認められた。この初期段階から後期段階に移行するその直後が各中洲におけるミズキンバイ生育規模が最大になることが示された。
  • 市川 貴美代, 前中 久行
    2002 年 28 巻 1 号 p. 43-48
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    絶滅危惧植物ツチグリ (Potentilla discolor Bunge) の保全 · 復元のため, 兵庫県内の自生地及び圃場でプランターを用いた栽培実験, 播種実験を行い, 休眠性の有無, 開葉時期, 葉数, 落葉時期, 開花結実時期, 栄養繁殖の有無, 実生数などを調査してフェノロジーを明らかにした。その結果, ツチグリは休眠しない多回繁殖型多年草で, 地上部を刈り取られても速やかに出葉し, 根茎の一部が切断された場合は, 独立個体を形成するような消極的な栄養繁殖を行うことが確認された。播種実験では, 発芽は6∼7月, 9∼10月に多く見られ, 翌年3∼4月にも僅かに発芽した。しかし, 発芽後1年目までの生残率は低かった。ツチグリのフェノロジーから見た場合, 新葉の出葉期と実生の発芽期に合わせた植生管理が, 保全のためには効果的な管理法といえる。
  • 田崎 冬記, 内田 泰三, 丸山 純孝
    2002 年 28 巻 1 号 p. 49-54
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    近年のヨシの幼苗生産では, 地上茎(稈)や地下茎に着生する側芽を伸長させ, これを幼苗とする方法が多用される。本論では, 稈および地下茎を小片に成形, これらに着生する側芽が伸長を開始する割合(側芽伸長開始率)とその生長量について比較検討した。稈および地下茎の側芽伸長開始率は両者に差はなかったが, その後の生長量は前者が大きかった。また, 稈および地下茎のそれぞれを各節位に分別, これら小片の側芽伸長開始率を測定した結果, 稈では下端部が高く, 地下茎では各節位で差がなかった。つまり, ヨシの幼苗生産を生産性から検討すると, 地下茎よりも稈が有効であり, また稈では下端部がより適正と考えられた。他方, 温度や小片の長さが稈の側芽伸長開始率に及ぼす影響を検討した結果, 長さより温度条件が大きく影響することも示唆された。
  • 岡田 準人, 下村 孝, 田中 孝雄, 畑 明宏
    2002 年 28 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    植栽間隔および誘引方法が, 異なるメッシュ径のフェンスを被覆する実生3年生のムベの成長に及ぼす影響を, 被覆率の測定により調べた。植栽間隔および誘引方法の違いが, ムベの成長に影響を与え, 疎植区よりも密植区, そして, フォーク状区 (水平誘引) よりも串状区 (垂直誘引) の方が平均被覆率は高かった。メッシュ径の違いもまた, ムベの成長に影響を与え, メッシュ径小区の方がメッシュ径大区よりも平均被覆率は高かった。
  • 大薮 崇司, 柴田 昌三, 新畑 学, 森本 幸裕, 小橋 澄治
    2002 年 28 巻 1 号 p. 61-66
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    土壌改良条件の異なるモデル擁壁を北側南側2方向に設置し, 産地および母樹が同一のヒメツゲ, ミヤマハイビャクシンの2樹種を冷涼な4箇所の試験地に, シャリンバイ, トベラの2樹種を温暖な6箇所の試験地に植栽した。各樹種の生育は, 暖かさの指数, 最高温度という気象要因と相関が高く, 日射などの影響による土壌水分の変動および降雪により抑制されることが明らかとなった。また, 土壌改良は, 気象要因との相関をより高め, 同一試験地において成長量が大きくなる傾向を示した。
  • 奥村 武信, 澤 教子, 薮下 裕己, 田中 博
    2002 年 28 巻 1 号 p. 67-72
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    国立公園内登山道に近接した長大な治山堰堤の景観的瑕疵を緩和する目的で河床砂礫による盛土が行われ近隣樹林からの飛来種子による樹林化を図るための生育基盤として植生基材吹付工, むしろ伏せ工が準備された。本論文では, (1)広大な河原への種子飛来の可能性を確認し, (2)施工翌年の発芽 · 枯死調査で植生定着にはむしろ伏せ工が適当であること, (3)続く1年の調査で植生基材吹付工が定着植生の初期成長に対して効果を示したこと, (4)その原因は表土層の水分保持特性と地温変動抑制の差異にあること, (5)樹種により効果に差のあることを述べ, その他の観察 · 調査した諸事項から植生基材吹付工の改善すべき点を議論する。
  • 細木 大輔, 米村 惣太郎, 亀山 章
    2002 年 28 巻 1 号 p. 73-78
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    森林表土を用いたのり面緑化で成立する植物群落における施工初期の木本の生育に関する知見を得ることを目的に, 施工後5年目までの木本の成長を経年的に調べた。その結果, 木本の生存個体の総数は年々減少していたが, 枯死個体の多くはコウゾであり, 他の樹種の枯死は少なく, 施工時に出現した個体の多くが生存し続けていることが分かった。ネムノキ, コウゾ, イヌザンショウ, ヌルデ, クマノミズキ, アカマツの多くの個体が, 成長が早く施工後5年目の群落の低木層を形成していた。施工後3年目以降に新たに出現し, 生存している木本個体は少なく, 周りの植生からの木本の侵入は少ないものと推察された。周囲の植生に生育する重力散布種が早期に出現することを期待する場合は, 苗木の植栽などの積極的な管理が有効であることが示唆された。
  • 中村 彰宏, 衣笠 斗基子, 陣門 泰輔, 谷口 伸二, 佐藤 治雄, 森本 幸裕
    2002 年 28 巻 1 号 p. 79-84
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    関西地方の18箇所の森林から表土を採取し, 撒き出し施工および実験を行った。多くの森林に生育していたコナラ, アベマキの実生出現頻度は小さかったが, ヒサカキの群落および実生出現頻度はともに大きかった。群落での出現頻度の小さかったアカメガシワ, ヌルデなどの実生出現頻度は大きく, 平均埋土種子密度も7個/m2以上と大きく, 表土撒き出し緑化によって, これらの先駆種からなる群落形成の可能性が示された。複数のサブプロットの組み合わせで算出した種数, 多様度指数—面積曲線によって, 異なる面積のプロット間での多様性の比較が可能となった。低密度出現種の多いプロットでは, 出現種数は面積の影響を大きく受けるため, 種多様性評価を行う場合には大面積の調査が必要であることが明らかとなった。
  • 廣野 正樹, 嶋 一徹, 千葉 喬三
    2002 年 28 巻 1 号 p. 85-90
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    山火事跡地斜面における早期緑化の補助施業として, 燃え残り樹幹を伐倒して等高線方向に並べる処理を行ない, 実生の定着, 養分保持にどのような影響を及ぼすか検討を行った。調査は山火事から5ヶ月が経過した岡山県倉敷市玉島黒崎の斜面上部で行った。山火事後放置した状態と比べて, 土壌溶脱水量は増加し, 処理直後には溶存イオン濃度も増加した。さらに樹幹伐倒処理は実生の定着を抑制したが, 定着後の現存量の増加を促進した。これら成果を総合して早期緑化に対する補助作業として有効であることが明らかになった。
  • 阿部 和時, 黒川 潮, 浅野 志穂, 岡本 隆, 松山 康治, 落合 博貴, 寺嶋 智巳, 島田 和則, 野口 宏典, 大丸 裕武, 宮縁 ...
    2002 年 28 巻 1 号 p. 91-96
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    2000年6月から始まった三宅島の火山活動による多量の降灰で雄山山腹の植生は壊滅的被害を受けた。この影響で泥流災害が島全域で発生し, 現在も危険性は非常に高い状態にあると考えられる。本研究では, このような火山降灰地帯が形成された直後の激しい土壌侵食の実態を実証的に明らかにすることを目的とした土壌侵食の発生状況は降灰による森林被害の程度と相関性があると推察されるので, 空中写真による森林被害区分を行い, それぞれの区分において現地水路侵食実験で侵食特性を検討した。その結果, 降灰が堆積し形成された地表面は流速が20∼35cm/secと早く, 浸透性が低いこと, しかし流出土砂量は降灰層中に枝葉が混入した地区よりも少ないこと等が示された。このデータをもとに汎用土壌侵食式(USLE) によって相対的な面状侵食の危険度を, 火口を中心とした14.5km2の範囲について示した。
  • 近松 美奈子, 夏原 由博, 水谷 康子, 中村 彰宏
    2002 年 28 巻 1 号 p. 97-102
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    大阪府にある万国博記念公園自然文化園 (面積98.5 ha) において, 人工ギャップの形成がチョウの種組成と個体数に及ぼす影響を検討した。2001年4月から11月までの13回にわたり, 林内6箇所のギャップと隣接する林内, 芝生と菜園各1箇所において15m四方の調査区内に10分間に飛来したチョウを記録した。その結果, 地点あたり平均種数Sと平均個体数Nのどちらも畑 (S=13, N=55) , ギャップ (11.3, 40) , 林内 (3.2, 7) , 芝生 (2, 6) の順に多く, チョウ環境指数と多様度指数は, ギャップ, 畑, 林内, 芝生の順に高かった。ギャップのみに出現した種はカラスアゲハなど5種で, ギャップの形成がチョウの種組成を変化させ多様度指数を増加させることが明らかになった。天空率を測定した4つのギャップを比較すると, 天空率が最も大きいギャップで個体数と種数が最大であった。
  • 三木 直子, 平井 晃余, 坂本 圭児, 西本 孝, 吉川 賢
    2002 年 28 巻 1 号 p. 103-108
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    生育土壌の水分条件が異なるアカマツ (Pinus densiflora Sieb. et Zucc.) 苗木の生理特性の違いを明らかにすることを目的として, pF1.8とpF4.2の土壌水分条件下で育てたアカマツ苗木の気孔コンダクタンス, 蒸散速度および純光合成速度の日変化を測定した。その結果, pF4.2処理区の個体は, 水ストレスに対して気孔を閉鎖して失水を抑える日変化を示した。しかし, 純光合成速度は一日中pF1.8処理区と同程度の値を維持していた。気孔開度が等しいときの純光合成速度を比較しても,pF4.2処理区の個体の方が有意に高かった。このことから, 慢性的に水ストレスを受けて生育したpF4.2処理区の個体は, pF1.8処理区の個体よりも少ない水分消費で高い光合成活性を維持できる水分低消費型であることが示唆された。
  • ズルフィカル ハリデ ジャンダン, 坂本 圭児, 吉川 賢
    2002 年 28 巻 1 号 p. 109-114
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    冠水条件におけるヌマスギ (Taxodium distichum L.), ギンドロ (Populus albaL.), およびケヤマハンノキ (Alnus hirsuta Trucz.)の生態生理的特性を比較検討した。これらの樹種のポット苗を冠水条件においたところ, ケヤマハンノキとギンドロでは, 葉量の減少, 光合成速度の低下, および葉の光阻害がみられ, 成長が抑制された。その抑制の程度はケヤマハンノキの方が顕著であった。ヌマスギでは, 葉量の低下がみられず, 光合成速度の低下および葉の光阻害の程度もギンドロやケヤマハンノキに比べ小さく, 成長が抑制されなかった。ギンドロとケヤマハンノキでは樹幹冠水部に不定根が発達した。ヌマスギでは樹幹冠水部に不定根がみられなかったが, 冠水によって樹幹基部の形態が膨満となり, 冠水によって材の組織構造が変化していることが示唆された。
  • 松浦 光明, 小林 達明, 有田 ゆり子
    2002 年 28 巻 1 号 p. 115-120
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    管理が行なわれず放置され, 大径木化したコナラ二次林において, 更新伐採後のコナラ(Quercus serrata Thunb.)萌芽率の規定要因を検討した。伐採後より年1回の下刈管理を伴う伐採区を50ヶ所選定し, 光条件と下層植生の状態を調べた。また, その中の全てのコナラ切株について, 萌芽枝の有無と最近の年輪成長量, および伐採高を調べた。その結果, 林冠空隙率が高く光条件が良好な伐採区の萌芽率が高かった。また, 伐採前5年間の年輪成長量が5 mm以下であった切株の萌芽率が低く, さらに伐採高が低い切株ほど萌芽率が高かった。これらの3要因について, 数量化II類による分析を行った結果, 実際における萌芽の有無の83%を説明できた。
  • 石丸 香苗, 武田 博清
    2002 年 28 巻 1 号 p. 121-126
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    コナラ稚樹に被陰処理を施し光環境変化に対する当年枝形態の変化を調べた。処理2年目の被陰木の一次フラッシュ(開芽展葉)では, 対照木より長く細い枝を少数出しており, これは対照木の二次フラッシュの枝形態に類似した特徴であった。被陰木では枝長に対する同化器官, 非同化器官重量ともに減少したが, 比葉面積(SLA:leaf area/leaf weight)は増大しており, 結果的に対照木と同程度の葉面積を保っていた。対照木ではのちのフラッシュに備え一次フラッシュで同化器官への配分を多くするのに対し, 被陰木では同程度の葉面積を保ちながら力学的強度と同化器官への配分を削減し伸長を重視していた。コナラは陽樹の性質が強く弱光下での生存が難しいため弱光下では上層への到達を優先し, 伸長重視の戦略をとる形態へ変化すると考えられる。
  • 松林 健一, 根本 淳, 百瀬 浩, 藤原 宣夫, 日置 佳之
    2002 年 28 巻 1 号 p. 127-131
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    植生図は植物群落の広がりを地図化したものである。近年, 自然環境保全のための基礎調査の拡充や, 環境アセスメントの法制化に伴い, 地理情報システム (GIS) で利用するための植生データの需要が高まりつつある。衛星データの植生図化への活用は, 植生データの精度向上と効率的図化の面における寄与が期待されているが, 本研究では4 mおよび1 m空間解像度の高解像度衛星 (IKONOS) 画像を判読資料として用い, 栃木県市貝町を対象地として目視判読により縮尺1/2500で現存植生予察図の作成を行った。図化精度評価の結果, 1 m解像度の画像で十分な図化精度を持つ現存植生予察図が作成できた。また従来の空中写真を用いて植生図化する方法に比べ, 衛星画像を用いた方法は, 作業工程の簡略化が図られるため効率的図化が可能なことも明らかとなった。
技術報告
  • 須永 哲明, 山寺 喜成, 宮崎 敏孝
    2002 年 28 巻 1 号 p. 135-138
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    採石跡地の岩盤法面に対して施工された「削孔+さし木+植生基材吹付工」について, 施工30ヶ月後の生育状況を調べた。さし木1本あたりの被覆面積は1.06 m2で, 風化が進行し, クラックが多い箇所において良好な生育がみられた。根系は吹付土層が残存した箇所ほど, またクラックの多い箇所ほど広範囲に伸長した。吹付土層が流失し, クラックがない箇所の生育は不良で, 根系は削孔内部のみにとどまり, 削孔外への伸長は認められなかった。岩盤において, 導入植物の生育を持続させるには, 吹付土層の維持やクラックが重要であることを認めた。
  • 児玉 俊一, 和田 みつき, 嶋 一徹, 千葉 喬三
    2002 年 28 巻 1 号 p. 139-142
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    異なる植物が導入された法面において, 施工後の生育状況と侵入種の組成などについて調査を行い, 樹林化に対する効果を検討した。その結果, カシ類などの常緑広葉樹林成立を目的とした法面では, 周囲から継続的に木本類が侵入して優占していた。これに対して木本ハギ類やイネ科牧草類を播種した場合, これらが完全に法面を被覆して木本類の侵入が困難な状況を呈していた。今回の発表では, これらを比較して, 法面への導入種の違いが他樹種の侵入 · 定着に及ぼす影響について検討を行う。
  • 山寺 喜成, 楊 喜田, 宮崎 敏孝
    2002 年 28 巻 1 号 p. 143-145
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    植栽木と播種木の引き抜き抵抗力に相違があると考え, 施工7年後に植栽木と播種木の引き抜き抵抗力を測定したところ, 播種木と植栽木との間には明らかな差がみられた。根元直径と引き抜き抵抗力の関係をみると, 播種木は根元直径が増すにつれて直線的に引き抜き抵抗力が増すのに対し, 植栽木の引き抜き抵抗力は緩やかな曲線を描き増す結果を得た。植栽木の根系は多量な側根を分岐したが, 播種木には分岐した側根数が少なかった。また, 同じ根元直径に対して, 播種木の側根が植栽木より太かった。植栽木の抵抗力が低いのは, 根系形態の相違に起因していることを認めた。
  • 石塚 公人, 逢坂 興宏, 土屋 智
    2002 年 28 巻 1 号 p. 146-149
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    静岡大学農学部附属上阿多古演習林内のヒノキ人工林を対象として, 樹木根系分布に与える土層の硬さの影響についての現地調査を行った。土層の硬さは簡易貫入試験を行い, 根系分布はトレンチ法により把握した。根系分布とNc値の関係をみると, Nc値10以下では, 土層の硬さが根系伸長に影響を与えていないと考えられた。Nc値10以上では, 根系密度は緩やかに減少するのに対し, 根系断面積合計は急激に減少する傾向がみられた。分布する根系は直径の小さい根系であった。よって根系断面積合計の制限要因となる土層の硬さは, Nc値10~20にあると考えられた。
  • 門田 有佳子, 井上 密義, 岩佐 直人, 佐々木 光
    2002 年 28 巻 1 号 p. 150-153
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    急傾斜地崩壊対策工として, 法切と植生基盤の造成を行う厚層基材吹付工と, 表土 · 樹木への負荷を抑えたワイヤ連結型複合補強土工を対象に, マント群落の保持 · 回復に対する有効性を比較した。厚層基材吹付工では, 施工後に草本群落が優占し, 周辺植物を多く含んだ群落まで回復するのには, 約3年を要した。ワイヤ連結型複合補強土工では, 樹木が受けた負荷によって森林ギャップが発生し, 施工直後からマント群落の植物による自然繁殖が顕著に見られた。このことから, 表土 · 樹木への負荷を抑えた急傾斜対策工では, マント群落自体の保持 · 回復に対して有効であると言える。
  • 井上 謙, 吉田 寛
    2002 年 28 巻 1 号 p. 154-157
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    長崎県大村市に位置する工業団地の切土法面において, 法面の安定, 景観との調和, 公園的要素を持つ群落の造成, 鳥類の誘致という4つの機能を有する植物群落の造成を目標に, 10種類の木本植物を用いた播種工による早期樹林化を行った。その結果, 施工約6年が経過した時点で, 混播した常緑広葉樹, 紅葉する樹木, 鳥類が好む実のなる樹木, 花の咲く樹木などが順調に生育してそれぞれの効果を果たしており, 設計時に設定した緑化目標をほぼ達成していると評価できることが確認された。
  • 木田 善三, 福角 康生, 新本 哲也, 中山 芳樹, 西澤 睦博
    2002 年 28 巻 1 号 p. 158-161
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    近畿技術事務所では, より良い法面緑化工を普及するため, 事務所構内法面に復元目標別の植物群落を, 主に播種から造成する目的で, 8つの試験区を設け, 平成3年3月にモデル緑化試験を行った。今回, 施工後11年を経過した時点の調査に継続調査結果も含めて分析を行った結果, 以下のことが判明した。先駆性肥料木による樹林化は, 施工後3~5年で限界樹高に達した群落が復元され, 施工後5年目頃より衰退が始まり鳥散布等による侵入種により遷移がスムーズに進み, さらに施工時より次世代の種子を混播することによりさらに遷移は早く進み, 多様な群落の復元が可能である。草原型の場合, 現時点では遷移が停滞している。植栽型の場合, 早期樹林化は可能であるが, 植栽の密度 · 配置等問題がある。
  • 宮本 亜紀, 谷口 伸二, 小畑 秀弘
    2002 年 28 巻 1 号 p. 162-164
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    兵庫県三木市志染町戸田地内に建設されている東播磨情報公園都市において, 施工地周辺のコナラ林, アカマツ林内より採取した, リター層を除く表層から5 cm程度深さの表土(表土シードバンクと呼ぶ)を, 生育基盤材に混合して盛土のり面に1 cm厚で吹付けた。表土シードバンクの混入割合を10%, 20%, 35%, 40%と設定し調査を行った結果, 施工後約1年を経過した時点で, 木本類を10種以上, 各1本/m2以上成立させるためには, 本事例の場合においては表土シードバンクの混合割合を20%以上にする必要があることがわかった。
  • 番匠 康夫, 藤田 豊, 横田 聖哉, 河島 洋子
    2002 年 28 巻 1 号 p. 165-168
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    播種工による早期樹林化を目的とし, 先駆性落葉木本(マメ科肥料木), 先駆性落葉木本(マメ科以外), 常緑木本, 修景用落葉木本およびメドハギの種子を混播したのり面緑化施工地において, 施工後1年6ヶ月および3年7ヶ月後に追跡調査を行った。各木本種の成育特性と植生の侵入状況を考察し, その結果, マメ科肥料木のなかでもコマツナギの成育が非常に旺盛であること, その成育密度が高いと林冠が覆われ他の木本種が成育し難くなっていること, 他からの侵入も少ないため侵入種数が少なくなることがわかった。また, マメ科肥料木の成育密度が少ない, あるいはギャップが生じている箇所では周辺からの侵入や, 播種したマメ科肥料木以外の木本種の成育する種数が増加した。特にのり面の端部に位置する箇所や, のり面上部では種子供給源が近いため経年での侵入種数の増加が他の部位よりも多かった。
  • 入山 義久, 飯塚 修, 高山 光男
    2002 年 28 巻 1 号 p. 169-172
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    国内に自生する草本性の在来種4種について, 収集した種子から育苗定植した株及び収集した母株を供試し, 開花期間及び採種性の調査を行った。種子採種が可能となる所要年数は, 種子から育苗定植した場合は, カワミドリ及びエゾミソハギで育苗定植当年, オミナエシ及びオトコエシで翌年, 一方, 収集母株を移植した場合は, 4種ともに移植当年であった。採種量は, オミナエシ及びオトコエシは年次経過に伴い増加したが, カワミドリは減少し, エゾミソハギは年次により変動した。10 a当りの期待採種量は, 最大でカワミドリ25 kg以上, エゾミソハギ40 kg前後, オミナエシ30 kg以上, オトコエシ30 kg前後と試算された。供試した在来種4種は, 圃場での種子の大量生産が可能であることが示唆され, また緑化に利用可能な有望草種と判断された。
  • 吉田 和男, 杉木 修一
    2002 年 28 巻 1 号 p. 173-176
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    滋賀県北部の山間部に自生する樹木19種について結実調査(前報)を行うとともに, 自生個体から採取した種子を低温貯蔵およびジベレリン処理を施して播種し, 発芽率(前報), 生存率, 生育状況を調査した。本報告では発芽率と生存率から得た得苗率をもとに, 各樹種を効率的に生産するための発芽処理法を判断した。この結果, 2種については低温貯蔵後ジベレリン処理を施すことによって, 17種については低温貯蔵のみで高い得苗率を呈し, 各々を効率的な一手法とした。また, 各樹種の得苗率と採種地で確認した種子量等をもとに母樹1個体からの得苗数についても概算したので報告する。本試行では結実調査, 播種試験をとおして, 自生樹木の生産にかかる一資料を得ることができた。
  • 秋元 利之, 長 信也, 江刺 洋司
    2002 年 28 巻 1 号 p. 177-180
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    播種工によく用いられる湿潤貯蔵型木本種子であるネズミモチ, コナラ種子の劣化は, 草本種子と同様に内生アセトアルデヒドによるタンパク質や核酸変性誘発以外に, それらには認められていない酸素呼吸促進が関わっていることが最近分かってきた。ここでは, この現象が他の湿潤型種子にも普遍的であるかシラカシ, シャリンバイおよびヤブツバキを用いて調べた。全ての種子はアセトアルデヒドの前処理によって劣化したが, 貯蔵養分を糖質とするシラカシでは, アセトアルデヒドによる呼吸促進が認められたが, 多糖類を含むがポリフェノールも含むシャリンバイと脂肪種子のヤブツバキでは, 酸素呼吸促進効果が認められなかった。よってアセトアルデヒドが呼吸促進を介して種子劣化に働くものは糖質を貯蔵成分とする湿潤種子に限られることが分った。
  • 長 信也, 秋元 利之, 江刺 洋司
    2002 年 28 巻 1 号 p. 181-184
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    植物種子は基本的にはHypogeal型かEpigeal型のどちらかの様式で発芽する。以前に, Hypogeal型発芽をするヤブツバキで, 初期生長段階では地下部と地上部とは温度に対して異なる反応を示し, この種子を播種工で用いる場合の施工適期の存在を報告したが, ここでは地上 · 地下部組織の生長のための温度依存性の違いが, Hypogeal型発芽種子全般に当てはまる普遍的な現象である可能性をシラカシ, シャリンバイ, フジを用いて調べた。その結果, 本調査で用いた4種類のHypogeal型発芽種子の発芽後の初期生長で, 主根と茎軸は異なる温度下で異なった生長反応を示し, 13℃という低温下では, 全種子で共通して主根の生長が茎軸に優先していること, つまり, ヤブツバキで見られた現象が他の供試樹種でも見られた。その一方, それぞれの種子には, 主根及び茎軸の異なる生長最適温度があることが確認された。
  • 手代木 純, 柳 雅之
    2002 年 28 巻 1 号 p. 185-188
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    人工軽量土壌の種類及び基盤厚の違いによる植物の生育状況についての比較を目的に調査を行った。既存建築物上に, 4種類の人工軽量土壌及び2種類の基盤厚を用いた屋上緑化試験区を設置し, 1年半にわたって植栽植物毎に人工軽量土壌の種類及び土壌厚の違いによる生育比較を行った。その結果, 人工軽量土壌厚70mmの植栽基盤でも一定の生育が可能なことがわかった, また植物の生育を1年間維持するためには多雪地でも夏期の乾燥対策が重要なことなどの知見が得られた。
  • 大内 公安, 平戸 聡一, 池田 桂, 田山 聡, 浅野 清
    2002 年 28 巻 1 号 p. 189-192
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    伐採木 · 抜根チップや砂質系現地発生土などの建設副産物を主材料として有効利用し, 短繊維を混入することにより勾配 1 : 0.5 の法面に一度に20~50 cmの厚さで造成可能とし, かつ従来のエアによる吹付方式で吐出能力を大幅に向上させた吹付工法を開発した。本事例は, トンネル坑口取付道路法面に設置されたアンカー受圧板を, 導入樹木によって全面緑化 · 被覆して景観性向上を図る目的で施工したものである。吹付材料としては, 第二東名高速道路建設工事に伴い発生した伐採木 · 抜根材の堆肥化物と購入マサ土を主材料とし, 短繊維により補強を図った生育基盤の造成を行ったものである。施工後 11 ヶ月目の調査では, 導入した 9 樹種の苗木の活着状態は良好であり, さらに周辺から飛来したと思われる木本 · 草本の生育も多数見られた。施工後 11 ヶ月目の判断ではあるが, 樹木の生育に適し耐侵食性の高い生育基盤であることが確認された。
  • 古田 智昭, 吉田 寛
    2002 年 28 巻 1 号 p. 193-196
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    植生基材吹付工の生育基盤材に短繊維材を加えることにより, 金網張工を併用した場合と同等の耐久性と植物の発芽 · 生育が可能かどうかを検証するために, 勾配1 : 0.8の切土法面において実地試験を行った。試験区として金網張工併用区 (短繊維なし) , 化学短繊維混合区 (ビニロン) , 天然短繊維混合区 (椰子繊維) の3区を設定し, 施工13ヶ月後までの造成基盤の状態, および導入植物の生育推移について比較した。その結果, 短繊維混合区は金網張工併用区と同様に, 造成した生育基盤の剥離, 侵食, ひび割れ等が生じず, 植物の発芽 · 生育にも悪影響を与えないことが確認された。
  • 山寺 喜成, 楊 喜田, 宮崎 敏孝
    2002 年 28 巻 1 号 p. 197-200
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    乾燥地の緑化工において播種工の確実性を高める手法として, 種子が発芽生育し定着するのに有利な生育基盤を造ることを考え, 土壌に有機物等を混合し, 貫通孔を設けた土壌ブロックを作成した。これを保育ブロックと名づけ, 砂地に施工したところ, 根系が貫通孔に沿って深く重力方向に伸長することを認め, この方法が乾燥地に適用できるとの見通しを得た。
  • 楊 喜田, 山寺 喜成, 宮崎 敏孝
    2002 年 28 巻 1 号 p. 201-203
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    生態環境の回復に有効な手法であり, しかも施工効率に優れ, 確実性が高い「播種工による早期樹林化方式の緑化技術」に着目し, 乾燥地に対する緑化工法の開発を目的として考案した保育ブロックについて, 使用資材の使用量及びその配合と, 保水性や生育性などとの関係について検討した。その結果, 土壌活性改良剤の混合によって, 保育ブロック材の仮比重と固相率が小さく, 液相率と気相率が高くなった。また, 土壌活性改良剤を加え, 保育ブロック材の保水性を改善すると, 植物の生育が良好になる結果を得た。保育ブロックの形状を維持するため土壌保全剤の添加による植物生長への影響は認められなかった。
  • 清水 香代, 山寺 喜成, 楊 喜田, 宮崎 敏孝
    2002 年 28 巻 1 号 p. 204-207
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    ダムや貯水池等に堆積した泥土の処理方法が求められているが, 有効な利用方法は確立されていない。堆積泥土は粘土分の含有量が多いため, 透水性が低く, 気相率も低いので, これを直接用いると植物の生育を妨げる。そこで, 本研究では, 堆積泥土を緑化基盤材として利用する方法について検討した。堆積泥土に団粒化剤を添加し, さらにバーク堆肥を混合すると孔隙率が上昇し透水性が改善された。また, 堆積泥土を主体とした保育ブロックを作成しコマツナの生育実験を行ったところ, 団粒化剤+バーク堆肥を混合した場合, 団粒化剤無添加区の約4倍の生育重を示した。
  • 竹内 健一, 山寺 喜成, 宮崎 敏孝
    2002 年 28 巻 1 号 p. 208-211
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    1998年度の国立公園内道路法面緑化状況検証調査報告に, コンクリート法枠工の植物が周辺植生への移行が遅れ, 自然植生と異なった群落が形成されることが指摘された。この原因は枠工内の水分挙動の違いと考え, 法枠工内の年間の水分挙動を観測したところ, 枠内の草本導入区では枠外と比較すると, 含水率が低く, また, 水分の変動も少なかった。また, 横桁に直径4 cmの水抜き穴を設置しても枠工内の水分挙動には変化がみられなかった。
  • 西川 美智子, 山寺 喜成, 宮崎 敏孝
    2002 年 28 巻 1 号 p. 212-215
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    乾燥地の土壌は粘土分が流出し水分保持力が低下している。砂中の粘土分を凝集させれば土壌の水分保持力が向上し植物の生育が容易になるとの仮説を立て, 砂地に団粒化剤を混合し, 水分保持力の変化, 植物の生育状況, 粘土分の流出について測定した。その結果, 団粒化剤を混合した砂土は, 団粒化剤を混合しない砂土と比較して, 植物の枯死率が低下し, 生育が良好になった。また, 水分保持力が向上し, 粘土分の流出量は減少した。この結果から, 砂中の粘土分を凝集させることは植物の生育に有効であると考えられる。
  • 門田 浩子, 山寺 喜成, 宮崎 敏孝
    2002 年 28 巻 1 号 p. 216-219
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    土壌のFDA (Fluorescein Diacetate) 加水分解活性の測定により, 緑化施工地の植生回復度を評価する手法の確立を目的とした。土壌水分, 地温に影響され易い特性を持つFDA活性の測定値を, 安定した値が得られるように検討した結果, 採取時の土壌環境によるFDA活性のばらつきを小さくするには, FDA活性の測定前に試料の温度, 水分条件を調整して培養することが有効であることを認めた。また, この手法を用いて長野県伊那市権兵衛峠の法面緑化施工地など3調査地において, 土壌環境, 植生, FDA活性等を測定したところFDA活性と調査区の最大樹高, 施工後経過年数との間に高い相関が認められ, 植生回復度の評価に有効な手法になり得ることを見出した。
  • 塚原 高志, 山寺 喜成, 宮崎 敏孝
    2002 年 28 巻 1 号 p. 220-223
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    根系や微生物の活動により発生するCO2を測定し, 土壌の活性および植物の活力度を評価することを狙いとして, チャンバーとCO2分析器を用い, 森林土壌と緑化施工地で測定を行い立地条件との関係を求めた。その結果, 土壌呼吸量は土壌温度と正の相関を示し, 6月下旬~8月下旬に最大値をとった。また, 森林土壌において根量, 土壌硬度, FDA活性, 有機物量との相関が認められ, 土壌深が深くなると土壌呼吸量の減少がみられた。よって, 土壌呼吸量はこれまでの土壌測定法と関連させることで土壌環境を示す有効な方法であると考える。
  • 橘 隆一, 今井 基裕, 福永 健司
    2002 年 28 巻 1 号 p. 224-227
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    現在, 緑化法面土壌の理化学性や生物学的性質の変化を捉えた情報は少なく, 特に土壌生態系の回復度合を評価する手法は確立されていない。そこで緑化後の経過年数が異なる切土法面土壌について, 理化学性および各微生物数を測定した。また, 各微生物数との比率を算出し, その変化をみた。その結果, 各微生物数とも経年的な変化は見られなかったものの, それぞれpH, 全炭素量, C/N比などの化学性の変化に伴い一定の傾向を示した。一方, B/F(糸状菌数に対する細菌数の比), A/F(糸状菌数に対する放線菌数の比)では, 年数の経過, C/N比の上昇に伴い低下した。A/B(細菌数に対する放線菌数の比)では, 年数の経過, 全炭素量および全窒素量の増加に伴い低い値を示した。以上より, 各微生物数との比率は, 緑化法面土壌の経年変化に伴う有機物分解能などを表す有効な尺度となる可能性が示唆された。
  • 横山 能史, 大石 英子, 土居 洋一
    2002 年 28 巻 1 号 p. 228-231
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    千葉県市原市において植生阻害がみられる酸性土壌を酸耐性微生物による修復を行い, 3 年間の植生モニタリングを実施した。pH 値の改善および更新発芽がみられ, 緑化が可能となり, さらに植物の多様化や植生変化がみられた。酸性土壌の修復方法によって, 出現種に特徴的な変化が確認された。本報告では微生物修復による植生土壌化への経過と植生の変化, 微生物の多様性など, バイオレメディエーションの有効性と植生変化が確認された。
  • 藤崎 健一郎, 浅井 美幸, 勝野 武彦, 酒巻 とも恵, 池田 穂高
    2002 年 28 巻 1 号 p. 232-235
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 酸性土壌の改良材として利用できる材料を, これまで廃棄物として扱われてきている物質やその加工品などの中から探し出すことにより, 土壌改良による緑化の促進と廃棄物の減量の両面による環境の改善を図ることである。第1実験ではpH 4.8の酸性土壌を対照区として, ホタテ貝殻, フライアッシュ, ボトムアッシュ, サイクロン灰, バグ灰, パルプスラッジ炭化物, ペーパースラッジ炭化物, コンクリート廃材, 蛇紋岩, フライアッシュ造粒品を, それぞれ酸性土壌と混合した区を設けて芝草 (トールフェスク) の生育を比較した。その結果, フライアッシュ, サイクロン灰, バグ灰, パルプスラッジ炭化物が良好な生育を示した。第2実験ではこれら4資材の効果を再度確認するため季節を変えて実験を行った。これらの区は対照区に比べて生育が優る傾向が見られ, 酸性土壌の改良資材として活用できる可能性が示唆された。
  • 渡辺 彰, 柴田 規夫, 林 豊, 二見 肇彦, 鈴木 光, 水島 澄夫, 有賀 度, 工藤 孝浩, 勝野 武彦
    2002 年 28 巻 1 号 p. 236-239
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    横浜市金沢区内の平潟湾野島水路において, 汽水域におけるヨシ原復元をめざしたヨシ苗の植栽実験を1998年に行い, その後の経過を定期的に観測している。実験ヤードは, 波浪の影響を受ける潮間帯上位の砂州に設けた。残存ヨシ原前面の実験ヤード (第1区) では, 生育が困難であった。高さ30 cmの盛土により地盤高を変えた比較実験ヤード (第2区) では良好な生育状況を呈しているが, 位置により状況に差異が認められる。波浪及び潮位変化に伴う水流の影響により実験ヤードに40 cmに及ぶ高低差が生じ, 地盤高が低い部分では, ヨシの生育密度も低いという傾向が現れている。移植したヨシ苗が消滅した領域の中に, 生育状況の良い部分からの地下茎の伸長が見られる所があり, 今後の観測が必要と考えられた。
  • 上村 惠也, 柴田 昌三
    2002 年 28 巻 1 号 p. 240-243
    発行日: 2002年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    高速道路ののり面にササ類を導入するため, 現場周辺に自生するササ類の地下茎を用いたのり面緑化試験を行った。1回目の試験施工を平成10年度に東海北陸自動車道で行い, これを改良した2回目の試験施工を平成11年度に東九州自動車道で行った。東海北陸自動車道では, クマイザサの地下茎を使用し, 採取地の土壌とともに麻袋に入れてのり面に張付け, その上に植生基材吹付工, を厚さ5 cm又は7 cmで吹付けたが, 翌年の生存率は吹付け厚5 cm区で2%, 7 cm区で1%と不良であった。このため, 平成11年に地下茎の生育年数別の追加試験を実施し, 2~3年生の地下茎では50%以上が出芽することを確認した。東九州自動車道では, ゴキダケの2∼3年生の地下茎を湿らせたピートモスに包んで麻袋に入れて張付け, 植生基材吹付工を3 cm厚で吹付けた結果, 生存率は70%程度まで上昇した。また同時に, 地下茎をネットに絡ませただけの工法でも40%程度の生存率を示した。
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