大気汚染物質の光化学オキシダントが, 24樹種の各個葉の純光合成速度, 蒸散速度および気孔コンダクタンスに与える影響を調べて, 都市近郊の大気環境下における樹木の生理的特性をみた。1989年4月から10月初旬まで, 東京都立川市内に設置された浄化空気室 (FAC区) と非浄化空気室 (n-FAC区) 内で, 落葉広葉樹12種, 落葉針葉樹1種および常緑広葉樹11種を1/2,000aワグネルポットで育成した。清浄な空気のFAC区において, 純光合成速度, 蒸散速度および気孔コンダクタンスが高い値を示していた落葉樹は, n-FAC区で大気汚染物質の影響を受け, 特に純光合成速度が著しく低下した。対照的に多くの常緑広葉樹は, FAC区において純光合成速度, 蒸散速度および気孔コンダクタンスの値が低く, n-FAC区で大気汚染物質による影響はあまりみられない傾向があった。オキシダントによる純光合成速度の低下率を基準にして, 大気汚染耐性の強弱をみると, 落葉樹のトウカエデ, イチョウおよび常緑樹のサカキ, ヤマモモ, マテバシイは耐性の強い種とみなされた。一方, 長期間大気汚染に曝されても, 蒸散速度と気孔コンダクタンスが他の樹種よりも高い値を示した落葉広葉樹のポプラ, エゴノキ, ムクノキ, ケヤキ, ハナミズキ, ヤシャブシ, ガマズミ, ミズキそして常緑広葉樹のサンゴジュとシャリンバイは大気汚染物質を吸着する能力が比較的高い樹種であると推定された。
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