日本緑化工学会誌
Online ISSN : 1884-3670
Print ISSN : 0916-7439
ISSN-L : 0916-7439
28 巻, 4 号
(2003 May)
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
特集 (地域性種苗の可能性)
特集 (環境にやさしい緑化資材)
  • 大島 一史
    2003 年 28 巻 4 号 p. 490-496
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
  • 久保 繁夫, 河島 章二郎
    2003 年 28 巻 4 号 p. 497-500
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    日本の緑化技術は, 早期緑化が重要であるため化学肥料を大量に使用している。化学肥料合成のためにエネルーを消費し, その過程で二酸化炭素を排出している。本技術報告では, 緑化現場での二酸化炭素排出の削減を目的とし, 糸状菌の一種であるアーバシュキュラー菌根菌 (arbuscular mycorrhizal fungi) を用いることにより, 化学肥料を削減した緑化工法に関する報告を行う。植生マット工法を用いて, 化学肥料標準区及びAM菌を配合した化学肥料半減区を設け, 施工試験を実施した。その結果, 施工約2~3ヵ月後までは, 標準区で植物の生長が早く且つ植被率も高かった。12ヵ月後, 化学肥料半減区における植生は, 標準区とほぼ等しくなった。それ以降, 施工約40ヵ月後まで, 標準区と化学肥料削減区の植生はほぼ同じである。厚層基材吹付工法 (厚:5 cm) の代替として, 化学肥料を半減したAM菌配合植生マット工法で10万 m2を緑化する場合, 約15 tの二酸化炭素の削減が可能となる。この値はスギの約1,000本の年間吸収量に相当する。
  • 谷口 真吾, 小松 輝弘
    2003 年 28 巻 4 号 p. 501-506
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    苗木植栽による広葉樹造林が成功しない原因のひとつにニホンノウサギ (Lepus brachyurus) による食害被害がある。しかしながら, 広葉樹苗木に対するノウサギ被害の低コストで防止効果の高い有効な抑止技術は未だ確立されていない。そこで, ノウサギの生息密度が高い広葉樹造林地において,「生分解性ポリ乳酸不織布」でつくられた「ノウサギ食害防止資材」を苗木に設置し, ノウサギの食害防止効果と資材の耐久性を比較した。その結果, ノウサギ食害防止資材は, 広葉樹苗木に対するノウサギの食害をほぼ完全に防ぐことができた。さらに, ノウサギ食害防止資材を設置することによって, 苗木が枯死に至る致命的な加害部位である地上高30 cmまでの低い部分への幹切断を完全に防ぐことができた。このため, 資材に覆われない部分を食害されても設置個体の生存率を高める効果が期待できるものと考えられた。さらに, 事業規模での広葉樹造林地においても, 植栽苗木にノウサギ食害防止資材を設置することによってノウサギの食害に高い防止効果が認められた。
  • 池田 穣, 北村 洋一
    2003 年 28 巻 4 号 p. 507-511
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    ヤシ殻マットはヤシの廃棄物を有効利用し, ココヤシダストと肥料をヤシ繊維で囲んだリサイクル型植栽基盤である。ここでは, ヤシ殻マットの植栽基盤としての物性および屋上 · 壁面緑化に用いる場合の断熱効果, 防音効果, 耐風圧性などの機能について報告する。
  • 吉田 寛, 古田 智昭, 福永 健司
    2003 年 28 巻 4 号 p. 512-519
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    貝殻廃棄物を利用した酸性雨対策や強酸性土壌地における緑化手法「アルプラス工法」の概要について紹介する。本緑化工法は, 酸性矯正材 (中和材) として臨海施設や養殖産業から排出される貝殻廃棄物を調整加工したリサイクル資材「シェルレミディ」を用いることを特徴としている。この資材は, 中和効果が長期間持続するほか, 多くのミネラルを含んでいることから一般的な中和剤である炭酸カルシウムを使用した場合と比較して植物の成長を促進することができ, 植生基材や酸性矯正層の材料として使用することにより, 酸性雨や強酸性土壌が原因で植生の回復が困難な法面等における良好な緑化が期待できる。
論文
  • 水永 博己, 松本 直輝
    2003 年 28 巻 4 号 p. 520-529
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    照葉樹林をとりまくスギ人工林生態系の修復方法の一つとして, 針広混交林や照葉樹天然林に近い林分に誘導することは有効であると考えられる。そこで屋久島の照葉樹天然林に隣接する若い人工林を対象として, こうした林分への誘導の可能性や播種 · 植栽などの人工更新手段の必要性を判断するために, 人工林内の稚幼樹集団の組成と密度を隣接天然林と比較した。稚幼樹の種の存否に基づく人工林内の稚樹集団の種組成は隣接する照葉樹林と多くの場合類似したが, 本数密度に基づく構造は隣接する林分間で類似しなかった。人工林内の稚樹密度は隣接天然林より有意に低く, 特に人工林に少ない樹種としてイスノキなど8樹種があげられた。こうした樹種の稚樹バンクの少なさから, 若齢人工林から混交林や照葉樹林を誘導する際には植栽, 播種など人工更新手段が有効であると考えられた。また人工林内の樹種ごとの稚樹密度は隣接天然林からの距離や隣接天然林の稚樹密度に依存しなかった。稚樹集団の種組成及び構造で判断した場合には, 照葉樹林からの距離をもとにゾーニングして植栽 · 播種 · ギャップ創出などの作業方針を決定することの有効性は小さいと類推された。
  • 久野 春子, 横山 仁
    2003 年 28 巻 4 号 p. 530-541
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/08/27
    ジャーナル フリー
    大気汚染物質の光化学オキシダントが, 24樹種の各個葉の純光合成速度, 蒸散速度および気孔コンダクタンスに与える影響を調べて, 都市近郊の大気環境下における樹木の生理的特性をみた。1989年4月から10月初旬まで, 東京都立川市内に設置された浄化空気室 (FAC区) と非浄化空気室 (n-FAC区) 内で, 落葉広葉樹12種, 落葉針葉樹1種および常緑広葉樹11種を1/2,000aワグネルポットで育成した。清浄な空気のFAC区において, 純光合成速度, 蒸散速度および気孔コンダクタンスが高い値を示していた落葉樹は, n-FAC区で大気汚染物質の影響を受け, 特に純光合成速度が著しく低下した。対照的に多くの常緑広葉樹は, FAC区において純光合成速度, 蒸散速度および気孔コンダクタンスの値が低く, n-FAC区で大気汚染物質による影響はあまりみられない傾向があった。オキシダントによる純光合成速度の低下率を基準にして, 大気汚染耐性の強弱をみると, 落葉樹のトウカエデ, イチョウおよび常緑樹のサカキ, ヤマモモ, マテバシイは耐性の強い種とみなされた。一方, 長期間大気汚染に曝されても, 蒸散速度と気孔コンダクタンスが他の樹種よりも高い値を示した落葉広葉樹のポプラ, エゴノキ, ムクノキ, ケヤキ, ハナミズキ, ヤシャブシ, ガマズミ, ミズキそして常緑広葉樹のサンゴジュとシャリンバイは大気汚染物質を吸着する能力が比較的高い樹種であると推定された。
feedback
Top