日本緑化工学会誌
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30 巻, 2 号
(2004 Nov.)
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
特集
  • 田中 淳, 山田 守
    2004 年 30 巻 2 号 p. 370-376
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/11/22
    ジャーナル フリー
    ダム提体周辺法面の早期樹林化対策として,法面に安定した生育基盤が造成できる連続繊維補強土を20 cm 造成したのち,植栽工で14 種類の樹木を植栽した。植栽した樹木の生存率, 樹高などを最高約8 年に渡って経年的に調査し,各樹木の生育特性を整理した。アキグミ,アカマツは生存率約90%,5年ほどで樹高4mに到達し,群落の主構成種となる。ミヤギノハギ,ヤマツツジは法面の方位によって活着率が大きく異なる。ヤマブキ,ガクアジサイは導入する高木の密度(鬱閉度)に影響を受けるといったことが判った。14 種類の樹木の生育特性を整理し8 パターンに分類することができ,緑化目標に応じた植栽配置の設計に応用が可能であると考えられる。
  • 古田 智昭, 吉田 寛
    2004 年 30 巻 2 号 p. 377-382
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/11/22
    ジャーナル フリー
    寒冷地である岩手県北部に位置する林道切土法面において,コナラ─ミズナラ群落の形成を緑化目標として,多種類の国内産自生種を用いた植生基材吹付工(工法名: 斜面樹林化工法5))の試験施工を実施した。施工後約5 年間にわたる植生調査の結果,ミズナラやコナラとともに多種類の落葉広葉樹が混生した植物群落が形成され,緑化目標に向けて順調に推移していることが確かめられた。また,隣接した法面で実施した,マメ科低木類を主体にカエデ類を混播した試験施工の施工7 年7 ヵ月後の植物群落と比較すると,両者の群落景観は明らかに異なっており,国内産自生種を主体に用いた播種工による植物群落の形成は,寒冷地における法面の自然回復緑化手法として有効であることが確かめられた。
  • 中野 裕司, 二見 肇彦
    2004 年 30 巻 2 号 p. 383-388
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/11/22
    ジャーナル フリー
    1998 年に噴火し,火山ガスの影響により全島避難している三宅島の切土法面植生に対して見取り調査を行った。三宅島は離島であり,国立公園域であるため外来植物である牧草の使用を控え在来種による法面緑化を進めようとする動きがある。しかしながら,在来種の国内採取種子は市場に流通していないため流通している中国産在来種種子を用いることになり,三宅島自生種の遺伝子攪乱を起こすおそれがある。この点を回避するために,過去の牧草による急速緑化箇所の植生推移状況を目視観察し,植生交代の実体を確認し,牧草使用の可能性について検討を行った。牧草は三宅島に自然分布しないため,遺伝子の攪乱に関する心配が無いため,むしろ外国産在来種よりも三宅島自生種に与えるインパクトは低いものと考えるからである。その結果,5 年程度でススキなどの周辺植生との交代が始まり,10 年以降は周辺植生から侵入したトベラなどの低木の生長が始まり,20 年程度で低木とススキの混在する状態となり自然回復が進むことが明らかになった。また,トベラの置苗吹付工を併用すると,5 年程度で同様の景観回復が可能となることが判明した。
特集
論文
  • シュレスタ マドゥスダン バクタ, 山寺 喜成
    2004 年 30 巻 2 号 p. 404-414
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/11/22
    ジャーナル フリー
    道路建設において生じる裸地法面の安定に対して,ネパールでは従来の緑化施工によって施工が行われているが,裸地法面の永続的安定手法の確立が望まれている。そこで,本研究は,ネパールの自然と調和し,永続して安定する木本群落の造成を目指し,播種工による早期樹林化方式の緑化手法を適用し,ネパールの立地条件への適合性を検討した。実験は日本のハイドロ式の植生基材吹付機(ソイルシーダー)を用い,植生基材は現地産の有機物資材や土壌を半量混合し,また,使用植物はネパール産を主体に用いて,これまで施工が全く失敗したシワリク層の急な切り土面において行った。その結果,施工1 年後には,ネパール産の樹木の成長は旺盛で,施工4 カ月後には樹高2 m以上に達し,崩壊法面を完全に被覆した。そして,施工以前には多数の深いガリ侵食が発違し多量の土砂が流出していた法面が完全に安定したことが認められた。
  • 竹下 正哲, 新谷 融
    2004 年 30 巻 2 号 p. 415-420
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/11/22
    ジャーナル フリー
    斜面崩壊は土壌表層に多く生息する土壌動物相に深刻な攪乱をもたらすと予想される。また生息場であるリター層が消失することからその回復には長時間かかると予想されるが,実際に検証した報告はない。そこで本研究では,山腹工施工地の土壌動物相の回復過程を把握することにより,崩壊により攪乱を受けた土壌動物相が,その後の山腹緑化工によって崩壊以前の状態を回復しうるか検討することを目的とした。北海道南部活火山恵山地区の山腹工施工年代の異なる崩壊跡地において,土壌動物相の時系列推移について比較検討を行った。その結果,土壌動物相は崩壊により減少していること,その後の植生回復にともなって個体数, 種構成ともに回復していくことなどが明らかとなった。しかし山腹工施行地の土壌動物の群集組成は通常の森林のものと比べて特異であり,山腹工施行地には土壌環境の安定化を妨げる要因が存在していることが示唆された。
  • 小西 麻衣, 伊藤 操子, 冨永 達
    2004 年 30 巻 2 号 p. 421-427
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/11/22
    ジャーナル フリー
    のり面の被覆植物として優れているとされるチガヤImperata cylindricaは,種内変異が大きく,緑化資材としての特性にも,系統間差異が大きいことが推察される。そこで採取地や生育の様相の異なるチガヤ22 系統について,生育特性,萌芽, 発根力,根茎の耐乾性を比較調査した結果,葉数,葉の下垂程度,草高,地下部重量,根茎の萌芽, 発根率および耐乾性のいずれにおいても系統間に著しい差異が認められた。これら6 形質についてのレーダーチャートを作成し,22 系統について緑化資材としての特性を評価したところ,レーダーチャートの形は系統間で異なっており,6 形質すべてに関して優れた値を示す理想的な系統はなかった。しかし葉数が多く草高が低いなど地上部の形質が優れている系統や,萌芽力, 耐乾性が大きく定着力に関して優れている系統があり,本研究で明らかになった有用形質についての系統間差異の大きさは,のり面緑化に適した系統の選抜の可能性を示唆した。
技術報告
  • 邑瀬 章文, 江波戸 宗大, 米林 甲陽, 安井 輝雄
    2004 年 30 巻 2 号 p. 428-430
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/11/22
    ジャーナル フリー
    公園の緑化樹や街路樹などの大量に発生する整枝剪定屑の有効利用を促進するため,整枝剪定屑を2 種類の工程によりそれぞれ処理し,性質の異なる有機質資材を適宜組み合わせることで,野菜の栽培に利用するシステムの開発を検討した。発生現場にて車載型粗破砕機によりチップ化した整枝剪定屑を,集積場にて木質部および葉部に分別し,得られた葉部のみを約3-6カ月間堆肥化させた後,乾燥させて反応を停止させた(堆肥A)。一方,整枝剪定屑をそのままタブグラインダーにより微粉砕して堆積し,約10 カ月以上にわたり十分に堆肥化させた後,約5mm孔の篩を通した(堆肥B)。篩を通過しなかった画分,堆肥B に少量の堆肥Aを混入させた用土の順にポットに重層し,そこに野菜の苗を移植した後,少量の油かすを添加し,さらに堆肥A のみを積層した。各層の厚さ比は下から順に約3: 7: 1 であった。堆肥A は用土の物理性を改善する効果のほかに,水溶性カリウム量が18.4 cmolc kg-1 と堆肥B に比べて約4.6 倍高く,肥効が期待できた。栽培後の野菜の生長および根張りは非常に良好であったことから,ポット内の排水性および塩類濃度は適度に保持されていたと考えられた。整枝剪定屑堆肥化物のみを利用して野菜を栽培できることが実証された。
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