日本緑化工学会誌
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30 巻, 3 号
(2005 Feb.)
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
特集
特集
  • 古澤 仁美, 金子 真司
    2005 年 30 巻 3 号 p. 524-531
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/24
    ジャーナル フリー
    本研究では,1996 年に施工した緑化工試験地における施工後8 年間の土壌の性質の変化を調査した。緑化工試験地では,法面にマサ土を客土し,アカメガシワ区,ヤシャブシ区,アカマツ区,草本区,対照区(裸地)の5 つの緑化工試験区を設置した。施工3 年までは各区とも侵入草本の除草を行ったが,3 年目以降は行わなかった。各緑化工試験区で土壌化学性と土壌微生物バイオマスC(以下バイオマスC)を継続的に測定するとともに,施工8 年後の緑化工試験区の測定値を関西地域の4 タイプの森林における測定値と比較した。その結果,緑化工試験区間における違いは認められなかった。施工後8 年間で全炭素含有率,全窒素含有率,バイオマスC がいずれの緑化工試験区でも経年的に増加したが,森林土壌に比べて低かった。ただし,緑化工試験地では全炭素に対するバイオマスC の割合が高い特徴がみられた。このことは,緑化工試験地の養分循環における微生物バイオマスの役割が大きいことを示唆していた。
  • 吉田 寛
    2005 年 30 巻 3 号 p. 532-540
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/24
    ジャーナル フリー
    代表的な法面緑化手法である播種工は,その歴史的変遷を整理すると,1)播種工の創成期(1927- 1948),2)近代緑化工の普及期(1949-1958),3)外来草本類を用いた急速緑化の普及期(1959-1985),4)早期樹林化方式によるマメ科低木林形成の普及期(1986-1995),5)自生種を用いた自然回復緑化の発展途上期(1996-)に大別することができる。こうした中で,法面の急速緑化から早期樹林化方式の緑化への移り変わりに応じて,1972 年に発行された公的な指針である「のり面工, 斜面安定工指針」の成績判定の目安も,植被率重視から成立本数重視へと改訂された。その結果,1990 年以降に報告されるようになった施工事例の多くでこれに記載されている成績判定に必要な調査が行われ,植物社会学的手法は用いられていない傾向がみられる。近年では,法面緑化の主たる目的が侵食防止から自然回復緑化へと進化しつつあるが,自然回復を評価するためには,緑化工施工後の成績判定はもちろんのこと,初期緑化目標に導くための植生誘導管理や最終緑化目標の達成に向けた監視的管理において,植生遷移が順調に進んでいるかどうかを判定することが重要となると考えられ,そのためのモニタリング手法の確立が求められる。
  • 前田 正明
    2005 年 30 巻 3 号 p. 541-545
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/24
    ジャーナル フリー
論文
  • 近藤 哲也, 三浦 拓, 島田 大史
    2005 年 30 巻 3 号 p. 546-551
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/24
    ジャーナル フリー
    キバナノアマナの群落を種子や苗によって作り出すことを想定して,実用場面で有用な情報となる種子の貯蔵方法,播種時期,埋土深,光の影響を調査した。種子を植木鉢に播種して行った野外実験と,シャーレに播種して行った室内実験を実施した。本論では発芽の段階を,種皮から幼根が突出した「発根」と地上に子葉が出現した「出芽」とに区別した。乾燥5°Cで貯蔵した種子は,2 年間は90% 以上の発根率を保ったが,乾燥25°C貯蔵や乾燥室温貯蔵では,2年後の発根率が30%にまで低下した。乾燥5°C貯蔵の種子を9月上旬までに播種すれば,翌春には70% 以上が出芽したが,10,11 月に播種すると出芽率は30% 以下に低下した。10,11 月の播種区で,翌春に出芽しなかった種子の一部は,翌々春に新たに出芽した。0.5-1 cmの埋土深では,74% 以上の出芽率が得られ,2 cm以上の埋土深では63% 以下に低下した。光条件は発芽にほとんど影響しなかった。これらよりキバナノアマナ種子は取播きを行う必要はなく,乾燥5°Cで貯蔵した種子を9 月上旬までに,0.5-1 cmの埋土深で播種すると,翌春には高い出芽率を得られることが示された。
  • 谷脇 徹, 久野 春子, 細田 浩司
    2005 年 30 巻 3 号 p. 552-560
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/24
    ジャーナル フリー
    都市近郊に造成された小規模孤立林において,地表性昆虫類の群集構造の経年変化をピットフォールトラップ法によって調査し,除歪対応分析(Detrended Correspondence Analysis, DCA)で解析した。その結果,孤立林の林齢の増加に伴って草地生息種は減少し,森林生息種が造成後10 年頃より出現した。しかし,森林生息種は孤立林間の非森林地帯が移動の障壁となるため,孤立林への移入率が低く,群集構造は単純化すると考えられた。草地や生け垣など孤立林とタイプの異なる緑地においても同時に調査を行った。その結果,人為的な下刈りや落葉掻きといった管理を行う調査区でも群集構造の単純化が考えられ,都市近郊における地表性昆虫類の生息場所として,管理の施されない孤立林の重要性が示唆された。また,多様な地表性昆虫相を形成するには,樹林地や草地などタイプの異なる緑地が隣接することが重要と考えられた。
  • 細木 大輔, 中村 勝衛, 亀山 章
    2005 年 30 巻 3 号 p. 561-571
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/24
    ジャーナル フリー
    切土のり面において森林表土を利用した緑化工法で成立する植物群落に関して調べた。埋土種子密度が35.4 個/ L の表土を用いて,南西向き,勾配66°の切土のり面を対象に,植生基材吹付工を併用して緑化施工した。基材に対する表土の混合割合を10%,20%,30% に設定して各試験区を設けた。いずれの試験区でも施工後に多くの出現種を記録し,施工後3 年目の被覆率は50% 程度を記録した。このことから,表土の混合割合を10% に設定した場合でも緑化は可能であり,混合割合を20 - 30% に設定することで,より早期の被覆と,より多くの木本の生育が期待できることが明らかとなった。しかし,既存の盛土のり面における成果と比べると劣っており,また,周囲の植生から木本の侵入は少なかったことから,これらの点で工法に改良の余地があると考えられた。さらに本研究では,表土を採取した森林の林床植生の回復状況についても検証した。採取前と人力による採取後3 年目の林床植生の出現種数と各種の被度を測定した結果,表土採取後に種数は増加し,被度の合計値も増加していた。このことから,表層5 cm程度の土壌を採取することでは林床植生に問題となるほどの悪影響を与えることはないと考えられた。
  • 石垣 逸朗
    2005 年 30 巻 3 号 p. 572-581
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/24
    ジャーナル フリー
    積雪寒冷地帯での崩壊地分布と形状変化および回復過程の時系列変遷を北海道渡島半島八雲地域を対象に航空写真を用いて検証した。その結果,崩壊場の分布は過去31 年間大きな変化はなく,崩壊個数は1967年583個,1983年540個,1998年541個の箇所が確認され1967年頃に最大を示し,北海道南西沖地震(1993)による崩壊地発生は少ない。崩壊面積は1967年86.9 ha,1983年86.1 ha,1998年103.4 ha と1998年に最大を示し,地震での微震動とその後の降雨により表層土の火山灰層を脆弱化し,崩壊地を拡大した可能性が考えられる。また,崩壊地の平均面積は約0.2 ha と比較的小規模崩壊が大部分を占めた。崩壊の形状は崩壊数の約28-33% が伸張係数1.53-1.56 で円形状に近い崩壊場で,崩壊長(L)20-40mの場が約200 カ所,40-60mの場が100-150 カ所で,崩壊幅(W)20-40mの場が約200 カ所以上,40-60 mの場が100 カ所以上からも推定される。崩壊斜面の傾斜角は25 度を境とし,30-45度の急傾斜が多く出現した。崩壊斜面の出現方位は北, 北東, 東斜面に多く存在した。拡大型の崩壊地が優位を示す地域である。
技術報告
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