日本緑化工学会誌
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31 巻, 1 号
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論文
  • 阿部 佑平, 柴田 昌三, 中西 麻美, 大澤 直哉
    2005 年31 巻1 号 p. 3-8
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/03/03
    ジャーナル フリー
    ヒノキ林化した都市近郊二次林において,植生を転換する際に重要となる埋土種子集団の潜在性を把握するために,埋土種子とそれに影響を与える散布種子について調査を行った。調査の結果,ヒノキ林化した二次林の埋土種子集団には,アカマツと落葉広葉樹を主とする植生を形成する潜在性のあることが明らかとなり,鳥類による種子供給は,止まり木としての機能の高い樹木が存在しないところでは少ないと考えられた。現在のところ,埋土種子集団にヒノキが鬱閉する以前の植生を復元する潜在性はあるが,今後もヒノキの鬱閉した状態が継続し,ヒノキの下で止まり木となるような樹木が枯死するようなことになれば,鳥類による種子供給が減少することを通じて,埋土種子集団の組成が変化し,潜在性が低下する可能性のあることが示唆された。
  • 鈴木 弘孝, 臼井 敦史, 藤崎 健一郎, 田代 順孝
    2005 年31 巻1 号 p. 9-14
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/03/03
    ジャーナル フリー
    本研究は,緩衝緑地整備において適用された「パターン植栽」の手法によって形成された樹林構造の特性を検証するため,施工後約30年が経過した兵庫県姫路市の中島地区を対象に行った樹木調査,植生調査の結果に基づき,天空率,相対照度,土壌環境要因との関係について分析を行うとともに,現在の樹林の生育状況を鬱閉度,多様度,活力度の指標を用いて定量的に評価した。この結果,相対照度と種数,腐植含有量と種数の間に強い相関が見られた。また,全体として樹林の鬱閉度は高く,活力度は低いことから,良好な生育状態とは言えず,多様度は落葉樹が混交し,優占することにより指数が高くなることが示唆された。
  • 里村 明香, 今西 純一, 森本 幸裕, 小島 愛一郎
    2005 年31 巻1 号 p. 15-20
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/03/03
    ジャーナル フリー
    ヤマザクラ Prunus jamasakura の活力度判定指標に関する定量的な知見は未だほとんどなく,衰退木の判断が適切に行われず,不健全な個体が目立つ事例も多い。そこで,本研究では活力度判定指標開発の第1段階として,指標の候補を絞り込むことを目的とした研究を行った。京都市内2箇所において良好木と衰退木の間で様々な指標について測定を行った結果,葉緑素計値,芽鱗痕数,樹幹内温度の日較差,葉面積,光飽和時の純光合成速度に樹木間に有意な差を見出すことができた。また,自動連続計測が可能なヒートパルス速度,幹の肥大生長量も,活力度の有効な診断指標の候補であることが示された。
  • 小峰 正之, 森本 淳子, 勝野 武彦
    2005 年31 巻1 号 p. 21-26
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/03/03
    ジャーナル フリー
    ハマボウフウの屋上緑化素材としての活用を目的に植栽実験を行った。培土土壌を4種類(砂,腐葉土,砂と腐葉土の混合土,人工軽量土),土壌厚を2種類(25cm,15cm),植え付け時の根の処理を2種類(無処理,直根を半分に切断)設定し,計16区画の生育を観測した。生残株数から評価すると,腐葉土以外の土壌が適していた。緑葉の被覆面積から判断すると,混合土に半根処理をして植栽する方法か,軽量土が適していた。開花率を高くするには,軽量土か混合土が適していた。生残株数,被覆面積,開花率から総合的に判断して,混合土に半根処理をして植栽するか,人工軽量土に植栽する方法が,ハマボウフウによる屋上緑化に最適と考えられる。
  • 磯田 一岳, 今西 純一, 木村 裕喜, 長谷川 秀三, 森本 幸裕
    2005 年31 巻1 号 p. 27-32
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/03/03
    ジャーナル フリー
    屋上緑化における植物育成培地の性能評価研究は,個別的,経験的な評価が多く,地方や気象条件の年変動によらず評価することは難しかった。そこで京都大学農学部屋上において,2003・2004年の夏期に培土として泥炭(有機質)と真珠岩パーライト(無機質)を用意しコウライシバ (Zoysia matrella) を張りつけ,気象・土壌水分量データを実測し,シバ屋上緑化の水分動態のシミュレーションモデルを作成した。その結果,薄層屋上緑化における水分動態を比較的正確にモデル化することができ,シバの生死も含めた生育シミュレーションが可能となった。屋上緑化用の培土としては泥炭を母材とする資材が有効で,省管理性がパーライト単用よりも高かった。
  • 大澤 啓志, 小島 仁志, 勝野 武彦
    2005 年31 巻1 号 p. 33-38
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/03/03
    ジャーナル フリー
    都市河川に生育するミズキンバイ群落の開花実態および群落内の昆虫相を調査した。全生育範囲を調べることで,2004年の夏季に11,000個を越える極めて多数の開花が確認された。本種が広範囲に群落形成することで,夏季を中心に多数の開花が河川内に継続的に見られると考えられた。2003年5月~9月に実施したスィーピング調査の結果,昆虫類の確認種は8目32 科54種であり,双翅目および半翅目以外では,膜翅目,蜻蛉目等でわずかな種が見られたに過ぎなかった。このやや貧弱な昆虫相は,周囲に良好な自然環境を持つ緑地がほとんどないことに起因すると推察され,本河川における生態的な緑のネットワーク化の必要性が認められた。また当生育地では,多数の開花に対し虫媒昆虫が数的に不十分である可能性が認められ,その負の影響把握および改善が課題として挙げられた。
  • 高橋 和也, 藤田 大知, 白波瀬 卓哉, 吉安 勇介
    2005 年31 巻1 号 p. 39-44
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/03/03
    ジャーナル フリー
    河川改修や土地開発が原因で,海岸の塩性湿地に生育するウラギク(Aster tripolium L.)は,絶滅危惧種に指定されている(環境省RDB(2000))。本論は,紀の川に生育するウラギクに関してその生育環境特性について報告し,本種の保全のための基礎資料とすることを目的とするものである。紀の川に生育するウラギクは,大潮の満潮位付近で土壌が砂礫で構成されており,水際にヨシ(Phragmites communis Trin.),シオクグ(Carex scabrifolia Steud.)等の植生が繁茂する場所を生育地としていることがわかった。礫の存在は,潮位変動時に種子や実生を捕捉し,個体の流出防止に寄与しているものと考えられた。また,水際の植生はこれに加え,出水時の河岸侵食防止に寄与し,生育基盤を保護しているものと考えられた。
  • 田崎 冬記, 内田 泰三
    2005 年31 巻1 号 p. 45-50
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/03/03
    ジャーナル フリー
    水域へのツルヨシ(Phragmites japonica Steudel)の導入に資する基礎的研究として,河川攪乱に伴うツルヨシの群落拡張特性について検討した。本研究では,攪乱によって流出するツルヨシ稈が群落拡張に寄与するものと仮定して検討を進めた。この仮定を刈取ったツルヨシ稈を用いて検証した結果,同稈からは側芽の伸長と不定根の形成が認められた。このことは,攪乱によって流出するツルヨシ稈が群落拡張に寄与する可能性を示唆するとともに,本研究の仮定が成立する可能性を否定できないことを示した。しかし,側芽の伸長と不定根の形成は稈の長さ,乾燥率,温度等に制約され,攪乱によって流出するツルヨシ稈の全てが群落拡張に寄与するとは限らないことも示唆された。一方,攪乱後のツルヨシ群落を調査した結果,攪乱によってツルヨシ稈が流出する可能性は大きいことも示唆された。
  • 今西 亜友美, 村上 健太郎, 今西 純一, 森本 幸裕, 里村 明香
    2005 年31 巻1 号 p. 51-56
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/03/03
    ジャーナル フリー
    都市の緑地配置計画策定に資するため,京都市内孤立林12箇所を対象として,草本植物の1)種数と景観スケールの環境条件との関係を明らかにすること,2)種の出現パターンと入れ子から逸脱しやすい種の特徴について明らかにすることを目的とした研究を行った。その結果,種数と関係の強い環境条件は森林面積であることがわかった。種の出現パターンはある程度入れ子状であり,多年草,風散布種,動物被食散布種は入れ子から比較的逸脱しやすい種であることがわかった。また,1回出現種が入れ子から逸脱しやすいとは言えなかったことから,基本的には入れ子の上位の孤立林を重点的に保全するのがよいと考えられた。
  • 根本 淳, 寺下 史恵, 石川 真咲, 内田 利幸, 逸見 一郎
    2005 年31 巻1 号 p. 57-62
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/03/03
    ジャーナル フリー
    サクラスミレは草地や疎林等を主要な生育環境とする多年生草本である。近年各地で絶滅が危惧されており,保護,保全手法の確立が望まれる。本研究では,埼玉県比企丘陵のコナラ二次林において,サクラスミレの個体密度及び開花・結実率と,地形,植生,土壌含水率,土壌硬度及び相対光量子密度の関係を調べた。この結果,サクラスミレは谷底面や斜面下部等の土壌含水率が高い場所での個体密度が高いことが明らかになった。また,皆伐,下草刈り,落ち葉掻き等の植生管理下では,夏季の相対光量子密度が高い場所ほど,開花・結実率が高くなることが明らかになった。
  • 倉本 宣, 小林 美絵, 杉山 昇司, 野村 康弘, 園田 陽一, 芦澤 和也, 細木 大輔
    2005 年31 巻1 号 p. 63-68
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/03/03
    ジャーナル フリー
    カワラノギクのメタ個体群動態にとって重要な意味を持つ種子散布については不明な点が多い。そこで,多摩川の永田地区の復元個体群を対象に,種子散布について検討した。種子は散布時期の卓越風の風下に多く散布されたが,風上方向にも散布されていた.風によって散布された種子数は地上からの高さが低いほど多く,ほとんどが高茎草本群落の一般的な群落高よりも低い位置を飛翔していた。また,散布された種子は礫,特にのり石やうき石の多い場所に集中した。実生の出現位置から推定した風散布における最大の散布距離は250mであり,これまで推定されていた30mよりも長く,新たに形成された丸石河原に風による種子散布で実生が生じていた。
  • 笹木 義雄, 森本 幸裕
    2005 年31 巻1 号 p. 69-74
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/03/03
    ジャーナル フリー
    瀬戸内海沿岸域に位置する兵庫県明石市の人工養浜を対象に,沖に設置された離岸堤の有無により異なる波浪環境を設定し,人工養浜上に侵入・定着した海浜植生の種組成および構造と生育地の土壌の粒径組成,土壌水分,土壌塩分などの環境要因について調査を行った。養浜上に成立した海浜植生の成帯構造は,TWINSPAN分類法により4群落型に分割された。また,CCA序列法によりこれらの植生配列と台風後の土壌塩分含量が高い相関を持つことが明らかになった。また,離岸堤の無い養浜部では,波浪後の土壌塩分含量が高く,裸地の面積割合が最も大きかったのに対し,離岸堤のある養浜部では,波浪後の土壌塩分含量が低く,多年生草本群落や矮生低木が優占する群落型の割合が最も大きかった。これらのことより,離岸堤の設置などにより波浪を調整することで,養浜上に成立する海浜植生の種組成や成帯構造の管理が可能と考察された。
  • 中村 彰宏, 塩田 麻衣子, 角屋 圭祐
    2005 年31 巻1 号 p. 75-80
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/03/03
    ジャーナル フリー
    自生地で埋土種子を形成するヨウシュヤマゴボウを対象に,常緑樹林に形成した光環境の異なるギャップ内外の7箇所で灌水区,リター区を設けた出芽実験,実測した地温を再現した人工気象器で異なる水分条件での発芽実験を行った。水ポテンシャルの低下で発芽率は低下,発芽時期は遅くなり,温度変動の小さなプロットおよびリター区では出芽しなかった。ギャップ内の出芽パターンは環境制御下のPEG濃度10%の発芽傾向に似た。ヨウシュヤマゴボウの野外での発芽には,水分条件よりも温度変動条件が大きく影響することが明らかとなった。
  • 近藤 哲也, 西沢 美由紀, 島田 大史
    2005 年31 巻1 号 p. 81-86
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/03/03
    ジャーナル フリー
    北海道礼文島の固有種であるマメ科のレブンソウは,環境庁および北海道のレッドデータブックに,それぞれ,「絶滅危惧IA類」,「絶滅危惧種」に指定されている。種子の発芽条件の把握のため温度条件と濃硫酸処理に関する実験を行った。種子は物理的休眠を有しており,無処理種子では10%程度の発芽率であったが,10-40分間の濃硫酸処理によって種皮に亀裂や穴が生じて吸水が可能になり高い発芽率を示すようになった。休眠が打破された種子は,10-30℃の幅広い温度で播種後10日目に71-77%の発芽率を示した。濃硫酸処理を施した種子を5月下旬に播種し,植木鉢に移植してガラス室内で育成したところ,翌年の5月下旬から8月中旬にかけて開花した。
  • 白 龍, 高橋 輝昌, 小林 達明, 張 興昌, 邵 明安, 神近 牧男
    2005 年31 巻1 号 p. 87-91
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/03/03
    ジャーナル フリー
    中国黄土高原北部の半乾燥地に位置する中国科学院西北水土保持研究所の神木試験地において,退耕還草地の中から25m2の調査区を50ヶ所設置して,植生調査を行い,土壌炭素・窒素及びFDA加水分解活性を測定し,微生物による有機物分解能力の把握を試みた。その結果,土壌炭素量・窒素量は植生量と正の相関関係にあり,FDA加水分解活性は土壌炭素量と高い正の相関関係にあった。したがって,微生物活性は植生の発達にともない高くなると考えた。FDA加水分解活性は土壌pHの上昇,土壌の硬化によって低下していた。
  • 山口 康人, 三木 直子, 吉川 賢
    2005 年31 巻1 号 p. 92-96
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/03/03
    ジャーナル フリー
    オマーン国の海岸線に成立する7つのヒルギダマシ林において,地域集団の遺伝的変異について明らかにするために,RAPD法によりDNA多型解析を行った。その結果,北中部と南部の集団間で遺伝的距離が遠いことが明らかとなった。そのようなヒルギダマシの植林を行う上で,地域間での苗や種子の移動には配慮が必要であることが示唆された。遺伝的多様性と林分面積の間には正の相関があり,林分面積が大きな集団ほど遺伝的多様性が高くなることが示唆された。ヒルギダマシ林の遺伝的多様性を保全するためには大きな林分面積を維持する必要がある。
技術報告
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