緑化法面における土壌環境の変化を生態学的観点から捉える指標として,土壌微生物相の有用性を検討した。その結果,緑化後の年数経過にともない細菌数では減少傾向,糸状菌数では増加傾向を示した。放線菌数では明確な変化は見られなかった。一方,細菌数/糸状菌数(B/F),放線菌数/糸状菌数(A/F),細菌数/放線菌数(B/A)の各菌数比率では,いずれも年数経過にともなって指数関数的な低下傾向を明瞭に示した。また,B/Fでは緑化後の年数経過にともなう土壌のpH(H
2O),全炭素含有率,全窒素含有率,A/FではpH(H
2O),C/N比,B/Aでは土壌採取時の含水率,全炭素含有率,全窒素含有率の変化を反映していた。各微生物数と土壌理化学性との間にはそれほど強い相関は認められなかった。一方,各菌数比率は土壌特性を反映していた。さらに,それぞれの菌数比率によって,反映している土壌特性が異なる可能性も認められた。つまり,緑化法面における土壌発達の指標としては,各微生物数単独ではなく,各菌数を比率として用いる方が有効であると考えられた。また,希釈平板法は,他の微生物実験法に比べて実験操作が簡易で特別な機械も必要とせず費用も安いなど実用性が高く,緑化分野等,現場サイドでの利用には有効であると示唆された。
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