日本緑化工学会誌
Online ISSN : 1884-3670
Print ISSN : 0916-7439
ISSN-L : 0916-7439
31 巻, 4 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
特集
論文
  • 伊東 啓太郎, 谷山 暁進, 玉泉 幸一郎, 原田 進, 高木 正三郎
    2006 年 31 巻 4 号 p. 431-435
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/14
    ジャーナル フリー
    日本の伝統的建築材料土漆喰を用いた新しい緑化基盤の開発を目的とした。本手法は,特許出願済(特願2005-227460)である。土漆喰とは,土,消石灰,藁,にがり等の自然素材を原料としており,可塑性が高く多様なデザインを可能にする。また,土漆喰を材料として植栽枡を作製する場合,従来の素焼き植栽枡のように焼成する必要がない。本報では,土漆喰の植栽枡材料としての適用可能性,また,植栽土壌へ与える影響について検証した。まず,強度試験を行い,土と消石灰の配合比率を検討して試験用土漆喰植栽枡を作製した。さらに対照試験体としてプラスチック植栽枡を作製し,両試験体植栽土壌の pH,含水率,温度を測定した。その結果,土漆喰は植栽枡の材料として強度的に使用可能であること,また,土漆喰植栽枡では高い排水性及び植栽枡底面からの吸水が確認され,土壌水分の調節効果が確認された。さらに,夏季の土壌温度は,土漆喰植栽枡では最大で約 4℃ ほど対照試験体を下回ることが確認され,土漆喰植栽枡は土壌温度低減効果を有していると考えられた。以上のことから,土漆喰を使用して植栽枡を作成することは可能であり,これからの緑化基盤材料としての活用が期待される。
  • 田中 憲蔵, 小田 あゆみ, 増田 寛子, 二宮 生夫, 王 林和, 吉川 賢
    2006 年 31 巻 4 号 p. 436-440
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/14
    ジャーナル フリー
    中国内蒙古自治区に生育する臭柏 (Sabina vulgaris) の,個体サイズにともなう光合成能力の変化を調べた。調査した 24 個体の樹冠直径は 20~360 cm であった。葉の飽和光合成速度((Pmax),最大カルボキシレーション効率 (Vcmax),気孔コンダクタンス (gs),葉内窒素濃度と葉重比 (LMA)を 8 月に測定した。光合成能力の指標となる PmaxVcmax は樹冠直径に関係なくほぼ一定の値を示し,gs や葉内窒素濃度も樹冠直径との間に有意な相関が無かった。LMA も樹冠直径との間には有意な相関は見られなかった。臭柏の光合成能力が個体サイズで変化しなかったのは,光合成能力に関係の深い gs や葉内窒素濃度がほとんど変わらなかったためと考えられた。また gs が樹冠直径に関係なく一定の値を示したことは,臭柏が個体サイズの増加による水ストレスの影響をほとんど受けていない可能性を示唆している。これは,臭柏が匍匐性の生活型を示し,樹高にともなう重力ポテンシャルの増加が少ないためと考えられた。
技術報告
  • ―のり面中央部と林縁部の侵入木本種の相違について―
    小畑 秀弘, 中村 剛
    2006 年 31 巻 4 号 p. 441-444
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/03/14
    ジャーナル フリー
    東海環状道路の愛知県豊田市矢並地区で施工した表土シードバンクを植生基材の中に体積比 10% 混入して吹付けた盛土のり面では,施工後2年3カ月にはヌルデ,アカメガシワ,ヒメコウゾ,ニガイチゴなどを主とする鳥散布型の木本種が成立した。その林床に成立したアカマツやリョウブの風散布種は,施工当年から侵入が始まり林縁に近いほど生育本数が多いことがわかった。このことは林縁付近から風散布種が侵入して本数が増加し,のり面全体に広がることが予想される。また,ヒメコウゾ,ニガイチゴが結実し,アカメガシワが花芽を付けているのが観察された。今後,鳥の飛来によってさらに植生が多様化して遷移が促進されることが示唆された。
feedback
Top