中国内蒙古自治区に生育する臭柏 (
Sabina vulgaris) の,個体サイズにともなう光合成能力の変化を調べた。調査した 24 個体の樹冠直径は 20~360 cm であった。葉の飽和光合成速度((
Pmax),最大カルボキシレーション効率 (
Vcmax),気孔コンダクタンス (
gs),葉内窒素濃度と葉重比 (
LMA)を 8 月に測定した。光合成能力の指標となる
Pmax と
Vcmax は樹冠直径に関係なくほぼ一定の値を示し,
gs や葉内窒素濃度も樹冠直径との間に有意な相関が無かった。
LMA も樹冠直径との間には有意な相関は見られなかった。臭柏の光合成能力が個体サイズで変化しなかったのは,光合成能力に関係の深い
gs や葉内窒素濃度がほとんど変わらなかったためと考えられた。また
gs が樹冠直径に関係なく一定の値を示したことは,臭柏が個体サイズの増加による水ストレスの影響をほとんど受けていない可能性を示唆している。これは,臭柏が匍匐性の生活型を示し,樹高にともなう重力ポテンシャルの増加が少ないためと考えられた。
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