日本緑化工学会誌
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32 巻, 1 号
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論文
  • 野々村 敦子, 増田 拓朗, 守屋 均
    2006 年 32 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/05
    ジャーナル フリー
    研究対象地域である香川県直島は,1976年から現在までに山火事が7件発生していることから,山火事が発生しやすい環境下にあるといえる。樹木による被覆を失った裸地面では,森林本来の機能を失うため,土壌浸食を受けやすく,土壌劣化の可能性が高い。よって,健全な緑地環境を保全するためには,山火事による被害を最小限に抑えることがきわめて重要である。本研究では,2004年1月13日に発生した山火事において,現地調査の結果と衛星データを用いて,山火事による植生被害及び火災後の回復能力という点について火災前の植生との関係を解析・評価した。その結果,活性度が高い植生には延焼防止効果があること,さらに活性度の高い植生は高い回復能力を持つことを明らかにした。本研究を通して,今後の森林の育成および管理に関する基礎データを得ることができた。
  • 根本 淳, 永留 真雄, 佐立 昌代
    2006 年 32 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/05
    ジャーナル フリー
    2005~2006年に,埼玉県の国営武蔵丘陵森林公園内の尾根部の樹林地において,ヤマユリの抽だい個体数,開花状態と,植生,林床植生管理及び光条件の関係を調べた。調査及び解析の結果,下草刈りが,ヤマユリの抽だい個体数,開花個体数,開花数を増加させる効果は,下草刈りの継続期間が2年では不十分であり,9年以上で確実な効果がみられた。2回/年,1回/年,0.4回/年の下草刈り頻度とヤマユリの生育状況の関係では,下草刈り頻度が高いほど,抽だい個体数,着花個体数,着花数の増加にもたらした効果は大きかった。また,林冠でのコナラ等の落葉広葉樹の優占は,アカマツ優占よりも林床へと到達する光を減らし,ヤマユリの生育を抑止する傾向があることが明らかになった。 
  • サロインソン ファビオラ ベイビ, 坂本 圭児, 三木 直子, 吉川 賢
    2006 年 32 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/05
    ジャーナル フリー
    拡大しつつあるハチク林の動態を明らかにするため,落葉広葉樹二次林に隣接するハチク林で稈のセンサス調査を12年間継続した。落葉広葉樹二次林と接する部分では,稈の葉群が林冠木の樹冠より高い場合や樹冠と接する場合があり,ハチク林の拡大を可能としていると考えられる。ハチク林では,落葉広葉樹二次林へ稈を侵入させることによって,林分の稈密度と地上部バイオマスが増加し,最前線の稈の位置は落葉広葉樹二次林の方向へ12年間で7m距離を伸ばした。侵入している稈のサイズは,竹林内部の稈のサイズと異なっていなかった。一方,ハチク林拡大の過程で,ハチクによる被圧のため下層木の枯死が著しかった。
  • 大澤 啓志, 笹隈 哲夫, 勝野 武彦
    2006 年 32 巻 1 号 p. 21-25
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/05
    ジャーナル フリー
    絶滅危惧植物ミズキンバイ(Ludwigia peploides ssp. stipulacea)を対象に,国内での遺伝的多様性の把握を試みた。千葉・神奈川・高知・宮崎の4県11地点の試料を用い,RAPD法にてDNA断片増幅の差異をみた。18種類のプライマーで試みた結果,10種類でDNA断片増幅が認められた。近縁種ケミズキンバイ(L. adscendens)は5種類のプライマーでミズキンバイにはみられるメジャーバンドが欠失し,これらは両種を区分するDNAマーカーと考えられた。国内の産地間では1種類のプライマーでメジャーバンドに多型が認められ,特に宮崎県南部及び室戸岬産のグループは他地区と異なるDNA増幅パターンであった。しかし,他の多くのプライマーではDNA多型が見られず,全体としては国内のミズキンバイ集団の遺伝的多様性は低いことが示された。これは本種を史前帰化種とする前川(1943)を支持する結果であり,稲作伝播以降の個体群分散について一考察を加えた。
  • 佐藤 健司, 小野 芳, 三輪 弌, 奥島 修二
    2006 年 32 巻 1 号 p. 26-31
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/05
    ジャーナル フリー
    近年,ポーラスコンクリートを多自然型護岸に採用する事例が増加しているが,多自然化効果を検証した事例は少ない。そこで,ポーラスコンクリート水路と従来型のコンクリート水路および土水路について動植物調査を行い,ポーラスコンクリートに形成される生物生息環境の特性把握を試みた。その結果,ポーラスコンクリート水路はコンクリート水路と比較して多くの動植物が生息することが明らかとなった。また,ポーラスコンクリート水路内に形成される環境は植生域,底泥域,砂礫域に大別され,それぞれの環境に適応した生物が生息していたため,水路全体の生物多様性を作り出していた。
  • 佐藤 暁子, 米村 惣太郎, 亀山 章
    2006 年 32 巻 1 号 p. 32-37
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/05
    ジャーナル フリー
    生態的回廊に関する研究は,回廊の設置や設置直後のモニタリング事例の紹介が多いが,生育環境における効果は長期的観点から検証することが必要である。本研究では,ニホンリスの生息地において,生態的回廊としてのエコブリッジの効果を把握するために,設置から8年経つエコブリッジを対象とし,ニホンリスの生息状況と生息環境およびビデオカメラを用いたエコブリッジの利用状況を調査した。その結果,エコブリッジは8年経過後も日常的移動・季節的移動のための回廊として利用されており,生態的回廊として機能していたことが明らかとなった。また,長期にわたり利用され続けていたことから,この地域のリス個体群の消滅を回避していると推測された。
  • 勝川 健三, 下村 孝
    2006 年 32 巻 1 号 p. 38-43
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/05
    ジャーナル フリー
    グラウンドカバープランツとして有望なイモカタバミ(Oxalis articulata Savigny)の生育習性の解明を目的に,日長および温度条件が生育と開花に及ぼす影響を検討した。その結果イモカタバミは長日植物で,20℃における限界日長は12時間から13時間の間にあることが示唆された。また長日処理は,暗期中断法で代替できた。一方,露地栽培において梅雨明け後にみられる休眠現象は,人工気象室によるコンテナ栽培での試験の結果,高温による多発休眠と考えられ,自発休眠ではないことが示唆された。
  • 下村 孝, 木内 祥平, 岡田 準人, 平尾 一絵
    2006 年 32 巻 1 号 p. 44-49
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/05
    ジャーナル フリー
    ヘデラ・ヘリックス ‘ピッツバーグ’ のポット苗生産で茎誘引支持材にヒノキ材およびヒノキ材にヤシ殻繊維マットを貼り付けたものを用い,ヘデラ苗の生育への影響を見た。気根はヒノキ材区では,平面に付着して水平に伸長した。ヤシ殻材区では繊維の中に伸長したが,支柱に付着して頂端まで登攀した苗の比率は,ヒノキ材区が約70 %であったのに対し,ヤシ殻材区は33 %に留まった。支柱を用いない区では,茎が斜め上から水平に伸長し,隣の苗と絡まり,さらに,他のポットの鉢土に触れて気根を伸ばすものが見られ,ヘデラ・ヘリックスのポット苗生産では,ヒノキ材支柱を用いることで,効率的な生産が行えることが示唆された。
  • 高橋 輝昌, 吉田 亮, 井上 政義, 小柳 倫生, 中野 裕司
    2006 年 32 巻 1 号 p. 50-55
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/05
    ジャーナル フリー
    木材チップ材に副資材として下水汚泥コンポストを添加したときの堆肥化特性をバーク堆肥の堆肥化特性と比較した。木材チップ材に下水汚泥コンポストを添加して堆肥化させることで,炭素濃度の減少や窒素濃度の増加がバーク堆肥よりも顕著であった。木材チップ材由来の堆肥では,堆肥の温度がバーク堆肥よりも高めに推移した。下水汚泥コンポストを副資材に使うことで,交換性Mgの割合が多くなり,また,塩基飽和度が低くなった。木材チップ材に発酵鶏糞や尿素を添加して堆肥化すると,下水汚泥コンポストを添加した堆肥化と比べてCECや堆肥の温度が低く推移し,微生物の活動が不活発になると推察された。これらのことから,木材チップ材を堆肥化させるときの副資材には下水汚泥コンポストが適していると考えられた。
  • 荒井 香織, 亀山 章
    2006 年 32 巻 1 号 p. 56-61
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/05
    ジャーナル フリー
    河川氾濫原において希少種の保全と植生復元の手法を検討するために,埋土種子の発芽実験と植生調査及び地下水位,冠水状況などの環境条件の調査を行った。地下水位の高さや冠水状況は地盤の高さによって異なり,結果として調査地の水分環境は地盤の高さに強く影響を受けていた。また,地上植生の分布と埋土種子の発芽特性は密接に関係があるため,発芽時の水分条件の違いにより植物群落の種組成が決定されることが明らかにされた。
  • 高 政鉉, 上田 徹, 森本 幸裕, 柴田 昌三
    2006 年 32 巻 1 号 p. 62-67
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/05
    ジャーナル フリー
    自然公園区域において,森林表土の土壌シードバンクを用いた切土法面の植生回復のための施工方法を検討するため,(1)土壌シーバンクと市販種子の導入試験と(2)植生基材吹付工に有機質材料を用いた工法とこれに土壌を添加した材料を用いた工法を行い,施工後4年間に発芽,成立する植物群落について経年的に調べた。森林表土を用いた手法は,市販種子を導入する従来手法に比べ,出現種数は2つの工法でそれぞれ2.8倍及び5.2倍であり,成立本数は1m2当たり6.0本及び17.5本であった。施工4年後には従来の工法に比べて,現存量に関する差がなくなり,多様・多層の植物群落が形成され,自然回復緑化における土壌シードバンクの有効性が示唆された。
  • 大西 竹志, 下村 孝, 水野 志穂, 今西 純一
    2006 年 32 巻 1 号 p. 68-73
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/05
    ジャーナル フリー
    軽量かつ多様な植物の栽培を可能とする薄層緑化技術として,マット植物と保水性能の高い高密度不織布の組合せを採用し,乾物重量と緑被率から有効性を検討した。その結果,密度0.094,厚さ4cmの不織布が保水層として最も有効であり,市販の資材より優れていた。この不織布を保水層として用いると,タマリュウは2週に1回,リペアは週2回の灌水で生育が良好であり,通年にわたって無灌水の管理下でも生育が可能であった。以上の結果から,これら植物材料のマット苗と不織布を組み合わせたシステムにより,無灌水または省灌水管理下で屋上緑化が可能となることが明らかとなった。
  • 小野 芳, 柳 雅之, 工藤 善, 手代木 純, 輿水 肇
    2006 年 32 巻 1 号 p. 74-79
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/05
    ジャーナル フリー
    本研究では,屋上緑化の熱環境への負荷低減効果を定量的に算定するための基礎データとして,屋上緑化の蒸発散量の測定を行った。使用した土壌は黒土とパーライト系の人工軽量土,土壌厚は7cm,14cm,21cmの3種類であり,各土壌厚につき裸地と3種の植物の計4試験区を設け,夏・秋・冬・春の4シーズンの蒸発散量を小型ライシメータの重量減少によって測定した。その結果,黒土区で人工軽量土区より植物生育が悪いものが多く,蒸発散量が抑えられ,黒土区のペチュニアの8月の蒸発散量は裸地より少なかった。各土壌厚の中で8月の蒸発散量が最大だったものは,人工軽量土区のローズマリー(Rosmarinus offcinalis L.)が7.2 kg/m2/day,人工軽量土区のバーベナ(Verbena. × hybrida) が12 kg/m2/day,黒土区のオオムラサキツツジ(Rhododendron pulchrum Sweet cv. Oomurasaki)が14 kg/m2/day であった。
  • 鈴木 弘孝, 三坂 育正, 田代 順孝
    2006 年 32 巻 1 号 p. 80-85
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/05
    ジャーナル フリー
    本研究では,壁面緑化による温熱環境改善効果の定量的な評価に寄与することを目的として,アメリカツルマサキ(Euonymus fortunei (Turcs.) Hand.-Mazz.)を用いたパネル緑化材からの蒸発散量を重量法により計測し,計測値から潜熱フラックスを算出して,壁面緑化による建物外部温熱環境への顕熱の低減効果について定量的な検討を行った。実験計測の結果,1)ピートモスを培土とする緑化パネル材からの蒸発散量は一日当たり約4.1kg/m2(4.1mm)で,このうち植物からの蒸散量は約2.4kg/m2(2.4mm)であり,緑化パネル材からの蒸発散量の約60%を示した。2)潜熱フラックスと正味放射量との間には正の相関が認められ,緑化パネル材からの蒸発散量による潜熱フラックスは正味放射量の増加分の約60%であった。実験計測値から緑化パネル材の潜熱フラックスを算出し,熱収支の解析により,壁面緑化による外部温熱環境への顕熱低減効果を定量的に評価できることが示唆された。
  • 大野 朋子, 前中 久行
    2006 年 32 巻 1 号 p. 86-91
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/05
    ジャーナル フリー
    9月と10月の2期の測定において裸地、マンネングサ、芝生とも土壌含水率0.3g cm-3までは土壌含水率の増加にともない蒸発散量が増加した。さらに裸地、マンネングサ、芝生とも蒸発散量の増加にしたがい群落表面温度が低下した。温度低下の傾向には植物による明瞭な差は認められなかった。また、マンネングサ、芝生、モルタル平板ブロックについて分光反射特性を調べた結果、土壌含水率の違いによって裸地、マンネングサ、芝生の反射率が変化し、土壌乾燥条件よりも土壌湿潤条件の方が反射率は高かった。特に近赤外領域での反射率の増加が顕著であった。
  • 小木曽 裕, 坂野 裕人, 嶋 英二, 安楽 裕吾, 若山 治憲, 渡邊 真一
    2006 年 32 巻 1 号 p. 92-97
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/05
    ジャーナル フリー
    建替団地の設計をする上で,既存樹木の移植は活着し難く樹形の回復が遅いと考えられることもあり,植栽設計に移植樹を積極的に活用しない場合がある。本研究は建替団地の落葉樹の移植樹木162本を対象に,活着と樹形回復の状況を調査し,既存樹木の移植の成果を確認するとともに,植栽設計・移植設計の方向性を見出すことを目的とした。その結果,調査した移植樹木の92.6 %が活着し,樹形も概ね4~5年で回復することがわかった。これにより,建替団地の既存樹木の移植活用は,活着や樹形回復から見ても確実性があることが明らかになった。また、落葉樹の中でもケヤキの樹形回復が顕著であることがわかった。
  • 久米 昌彦, 日置 佳之
    2006 年 32 巻 1 号 p. 96-101
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/05
    ジャーナル フリー
    一般に公園樹木の植栽基盤は,造成時の機械施工による締め固めや踏圧などによりしばしば硬くなっており,硬すぎる土壌は根系の生育を阻害し,樹木の衰退の一因となっていると考えられる。そこで,活力度に影響をおよぼしている土層を特定するため,鳥取市の街区公園69箇所のソメイヨシノ(Prunus yedoensis Matsum.)375本を対象に,目視およびSPAD値(対象木1本につき30枚測定)により活力度を評価するとともに,樹木下の土壌硬度を60cmまで測定した。その結果,活力度に影響をおよぼしている土層は地下10~30cmの範囲であり,活力度を特に悪くしている土層は地下10~20cmの範囲であることがわかった。また,目視とSPAD値には有意な相関が認められ,活力度を定量的に評価する指標としてSPAD値を用いることは有効であることが示唆された。
  • 境 恵, 岩崎 寛, 三島 孔明, 藤井 英二郎
    2006 年 32 巻 1 号 p. 102-105
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/05
    ジャーナル フリー
    移植時期の違いが移植後の根の生長に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし,時期別のキンモクセイ(Osmanthus fragrans var. aurantiacus)の根の発根状況を実験的に調査した。実験にはキンモクセイの挿し木2年生苗66個体を用い,仮植した後,2005年の4月,7月,8月に移植を行った。そして,それぞれの時期について2週後,4週後,6週後に根鉢の外に伸びた根を対象に伸長量,太さ,分岐,乾重の測定を行った。その結果,移植時期の違いによって一次根と二次根の生長の仕方に影響が及ぶことがわかった。また,移植時期の違いは根の伸長生長と肥大生長の仕方にも影響を及ぼす傾向がみられた。
  • 山本 彩, 山中 典和, 岸本 司, Ricardo Jorge Duarte GALVAO, 玉井 重信
    2006 年 32 巻 1 号 p. 106-111
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/05
    ジャーナル フリー
    本研究では,ブラジル北東部の Caatinga 植生主要樹種を対象に,光‐光合成曲線から得た光合成特性と水利用効率を用いて樹種の現地環境での生育状態を検討し,緑化樹種の選定を試みた。Jurema pretaは,最大純光合成速度と光補償点がともに高く,Caatingaの遷移の先駆的役割を果たすと考えられた。AlgalobaはJurema pretaと光合成特性・水利用効率ともに有意差がなかった。Algalobaは,Jurema pretaと同じく成長の早い樹種であると考えられた。Catingueiraは最大純光合成速度が低く光補償点も低く,Jurema pretaより暗所で光合成活動を行うことができ,Jurema pretaの後に優占すると考えられた。Pinao bravoとJurema pretaとでは,最大純光合成速度・光補償点に有意な差はなかったがPinao bravoはJurema pretaより水利用効率が低いため旱魃などの際にPinao bravoからJurema pretaへの優占種の交代がおこると考えられる。Caatingaの緑化計画としては,Caatinga植生をより原生の状態に再生また維持させることを考慮した際は,Catingueiraのような遷移後期に優占する種を植栽するのが望ましいと考えられる。また,生産性を求めた場合は,Jurema pretaやAlgalobaような光合成活性が高く成長の速い樹種による植栽がよいと考えられる。
  • 山本 将功, 中島 敦司, 松本 尚子, 吉田 尚美
    2006 年 32 巻 1 号 p. 112-117
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/05
    ジャーナル フリー
    気温の上昇が樹木の成長と生物季節に及ぼす影響を検討する目的で,人工気象室内でウリハダカエデの3年生実生苗を用いた育成実験を行った。人工気象室の温度条件は,常に野外の気温と同じにした条件,常に野外の気温よりそれぞれ1.0,2.0,3.0℃高い条件の4種類とした。育成実験の結果,当年枝伸長量,地際の肥大成長量は,処理区間に有意な差が認められなかった。しかし,温暖条件下において,器官別乾物重量,当年枝における節数および展開葉数の減少した個体が確認された。さらに,対象区と比べ,温暖条件下における夏季の蒸散速度は小さくなった。また,+2.0~+3.0℃の温暖条件では,紅葉や落葉の進行が遅れ,着葉した状態で冬を迎える葉が確認された。以上のことから,気温の上昇によりウリハダカエデの連続的な成長は抑制され,紅葉や落葉は遅れると判断された。
  • 重藤 大地, 中島 敦司, 山本 将功
    2006 年 32 巻 1 号 p. 118-121
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/05
    ジャーナル フリー
    本研究では,ヒガンバナの開花と温度の関係について検討することを目的として,人工気象室で育成実験を行った。人工気象室の温度条件は,常に外気に追従した条件,常に外気に対してそれぞれ1.0,2.0,3.0℃ 高い条件の4 種類とした。そして,加温処理を開始した日はそれぞれ6月6日,6月28日,7月15日,8月4日,8月26日,9月5日とした。その結果,供試植物は夏期から秋口である開花期まで継続して外気より高温条件下におかれると開花期に外気より高温条件下でも開花可能となった。特に6月6日から7月15日までに1.0℃ から3.0℃ の加温条件下におかれた個体は,より高温条件下でも開花した。このことから,夏期の気温上昇によってヒガンバナの開花可能温度は上昇すると考えられた。一方,夏期における1.0℃ から3.0℃ までの平均気温の上昇は花の形態には影響を及ぼさないことも明らかになった。
  • 植松 拓理, 倉本 宣
    2006 年 32 巻 1 号 p. 122-126
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/05
    ジャーナル フリー
    多摩川において減少傾向にある雌性両全性異株カワラナデシコの保全に関する知見を得ることを目的に,両性花由来の種子と雌花由来の種子を使用して段階温度法による発芽実験を行った。その結果,本種は永続的埋土種子集団を形成しないことが示唆されたため,現存する個体および生育地の保全が重要であると考えられた。また,埋土種子集団を利用した個体群復元は難しいと考えられた。今後,種子を利用した個体群復元を行う際は,両性花由来の種子と雌花由来の種子に低温湿潤処理を施すことと,春季に播種することが効果的であると考えられた。
  • 中島 敦司, 山本 将功
    2006 年 32 巻 1 号 p. 127-130
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/05
    ジャーナル フリー
    本研究では,年間を通じた気温の上昇がアカマツの成長におよぼす影響を,外気温に対して-1.5 ℃,±0.0 ℃,+1.5 ℃,+3.0 ℃,+4.5 ℃を加温などする人工気象室を用いた育成実験によって検討した。その結果,加温開始2年目の春の成長開始時期には処理区間で違いがみられず,冬芽の休眠解除における低温不足から,高い温度区では開芽可能温度の低下が進まないことが明らかとなった。また,一次伸長量,針葉束数は,+4.5 ℃区で小となった。これは,高温条件下では,前年の葉原基形成の活性抑制があることで翌年の一次伸長量が大きくならないことと,土用芽の発生が促進されることで翌年の伸長部位を使用してしまうことの両方の影響の結果と考えられた。
  • 山本 牧子, 玉井 重信, 山中 典和
    2006 年 32 巻 1 号 p. 131-136
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/05
    ジャーナル フリー
    中国内蒙古自治区,毛烏素沙地の半乾燥地緑化に用いられているサリュウ(Salix psammophila)とハンリュウ(S. matsudana)の挿し木苗について,乾燥ストレスが葉の水分生理特性に及ぼす影響をP-V曲線法を用いて調べた。湿潤な土壌状態において,膨圧を失う時の葉の水ポテンシャル(φwtlp)と十分吸水した時の浸透ポテンシャル(φssat)はサリュウ,ハンリュウともに高い値を示した。さらに,乾燥処理によって成長量が減少するなど,ともに乾燥に対して敏感な樹種であると考えられた。一方で,乾燥処理に対しては,サリュウでは葉の水分生理特性の変化がわずかであったのに対し,ハンリュウではφwtlpやφssatの値が低下した。このことから,ハンリュウはサリュウと比較して高い浸透調節能を持つことが示唆された。
  • 吉川 賢, 坂本 圭児, 堀 幸代, 三木 直子, 黄 勝澤
    2006 年 32 巻 1 号 p. 137-142
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/05
    ジャーナル フリー
    中国寧夏回族自治区銀川市の毛烏素沙地に造成され、その後15 年間放置されてきた約50 haの防風防砂林を対象として、樹木の生育状態を毎木調査と伐倒調査によって調べた。新彊楊は、植栽当初から激しい個体間競争によって間引きが起こり、生存個体数は植栽時の6 割程度まで減少した。しかし、残存個体は多くの資源を獲得することができ、現在も旺盛な成長を持続し、樹高は現在の12 mよりさらに高くなる傾向を示した。一方、合作楊、河北楊は15 年間枯死がほとんど起こらず、共倒れ型の林分を形成し、どの個体の成長も悪く、多くの枯れ枝を持って、樹高は上限(7~10 m)に達していた。新彊楊が優占するプロットの土壌含水率は、合作楊、河北楊が優占するプロットよりも低かった。これは新彊楊は葉量が多く、水消費量が多いためと考えられた。
  • 山中 典和, 山本 福壽, 杜 盛, 大槻 恭一, 薛 智徳, 韓 蕊連, 梁 宗鎖, 侯 慶春
    2006 年 32 巻 1 号 p. 143-148
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/05
    ジャーナル フリー
    砂漠化が進行する中国黄土高原の中心部に位置する延安市郊外の公路山(N36°25'40",E109°31'53",alt.1353 m)において,北アメリカ原産の外来種であるニセアカシアとリョウトウナラを含む13種の郷土樹種について葉の水ポテンシャルを比較した。2002年8月における夜明け前と日中の葉の水ポテンシャルは郷土樹種のリョウトウナラよりもニセアカシアで低い値を示し,ニセアカシアはリョウトウナラよりも強い乾燥ストレス下で生育していた。また,郷土樹種では日中の葉の水ポテンシャルが -3.5 MPaより低下する種が5種認められ,特に灌木や小高木を中心として強い乾燥ストレス下で樹木が生育している実体が明らかになった。  
  • 白 龍, 鄭 紀勇, 小林 達明, 松岡 延浩, 張 興昌, 邵 明安
    2006 年 32 巻 1 号 p. 149-153
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/05
    ジャーナル フリー
    黄土高原北部の陝西省神木県六道溝村において,斜面畑,段々畑,草地とアブラマツ植林地の4つの土地利用形態の土地の土壌全炭素・全窒素・全リンの変化を検討し,アブラマツの成長状況を明らかにした。その結果,斜面畑と段々畑の場合,全炭素含量・全窒素含量は0.3%,0.03%と低かったが,畑作を廃止して20年経過している草地,植林地では畑土壌の2倍ほど増えていた。しかし,20年たっているものの,アブラマツの樹高は4m以下で,年平均伸長量は20cm以下で,成長が遅かった。同じ立地条件のところで,アブラマツの成長は土壌硬度に影響されていたことが示唆された。
  • 市川 隆子, 高橋 輝昌, 小林 達明
    2006 年 32 巻 1 号 p. 154-158
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/05
    ジャーナル フリー
    ミミズを用いた土壌改良についての基礎的知見を得るために,圃場試験地においてミミズを土壌に添加することによる土壌の化学的・生物的性質の変化を調査した。地表の落葉中で見つかった表層性ミミズと,地中で見つかった地中性ミミズでの土壌改良効果の違いや,地温の影響について検討した。その結果,特に地中性ミミズの添加により、微生物活性の増加が大きく,表層性ミミズよりも大きな土壌改良効果を得られることが示唆された。また,夏季の地温上昇を抑制することで,土壌水中の硝酸イオン濃度が高い状態で維持されたことから,ミミズによる微生物の活性化に地温が影響を及ぼすことが示唆された。
  • 中村 彰宏, 衣笠 斗基子, 塩田 麻衣子
    2006 年 32 巻 1 号 p. 159-164
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/05
    ジャーナル フリー
    大阪府都市近郊の宅地開発地で,アベマキ林の表土を切土のり面に撒き出した。のり面で75個の1 m×1 mのサブプロットを,近接したアベマキ林で300個の1 m×1 mのサブプロットを設置し,サブプロットごとに木本実生の同定,個体数を計測した。森林では43種807個,法面では48種1,105個体の実生が出現した。先駆種は法面で有意に多く出現した。スイカズラ科,モチノキ科,ミズキ科,ツバキ科は森林で有意に実生数が多く,これらの種は法面のような乾燥する環境では発芽が困難な種と考えられた。
  • 大河 和夏, 増谷 利博, 原田 恵理子
    2006 年 32 巻 1 号 p. 165-170
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/05
    ジャーナル フリー
    北海道羊蹄山のガリーの空間分布と面積の推移について時系列解析を行った。解析には1963,1977,1992年の航空写真を使用し,GISによりデータベース化した。その結果,ガリーは北側斜面に18箇所,南側斜面に20箇所あり,全体的に減少傾向にあった。しかし,個別のガリーの推移をみると,一部で拡大しているものが見られた。標高区分別では,標高500m未満区域のガリーがもっともはやく減少した。標高1,500m以上区域のガリーも減少傾向にあったが,南側斜面の減少率は低く,これは春季に凍結・融解の影響を受けて土壌や植生が定着しないためと考えられた。森林限界上下区域ともに減少傾向にあったが,森林限界以上の区域の減少率は次第に低くなった。最上流の堰堤以下のガリーの減少率は高く,堰堤の効果がみられた。
  • -西丹沢山地玄倉川仲の沢流域を対象として-
    石垣 逸朗, 蛭間 敦子, 大河 和夏, 松崎 紀雅, 阿部 和時, 鈴木 雅一, 内山 佳美
    2006 年 32 巻 1 号 p. 171-176
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/05
    ジャーナル フリー
    神奈川県北西部にあたる丹沢山地は神奈川県の重要な水源林である。しかし, 1923年に起きた関東大震災やその後の降雨などによって崩壊や土石流が多発した場所であり, 現在も多くの崩壊地が残存しているため, 森林地帯が本来持つ十分な水土保全機能が発揮されていないと考えられる。本研究では西丹沢山地玄倉川仲の沢流域約370haを対象とし, 崩壊地の植生回復過程を明らかにすることを目的とし, 航空写真による崩壊地の変遷調査と残存する崩壊地の植生回復状況を調べる現地調査を行った。崩壊が発生した後, 短期間で植生が回復する崩壊地と残存する崩壊地の違いは崩壊面積の大きさ, 傾斜角や斜面方位, 標高が要因として大きく関与していた。
技術報告
  • 辻 盛生, 軍司 俊道, 江 東, 平塚 明
    2006 年 32 巻 1 号 p. 179-182
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/10
    ジャーナル フリー
    多自然型川づくりにおいて,植生ブロックと覆土によって緑化が行われる事例が多く見られる。岩手県遠野市 (旧宮守村) を流れる宮守川における植生ブロックと覆土による事例を調査した。その結果,水際部の覆土は失われ,定着する植物は陸生の外来種が多い傾向が見られた。水際部の植物群落は,水辺エコトーンとして多様な機能の発揮が期待できるが,そのためには水域に進出し,水との接触が可能な種の定着が必要である。水辺エコトーンの早期形成と,陸生の外来植物優占の回避とのために,現地周辺に自生する水域に進出可能な植物の植栽が一手法として有効であることが明らかになった。
  • 吉田 正典, 養父 志乃夫, 山田 宏之
    2006 年 32 巻 1 号 p. 183-186
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/10
    ジャーナル フリー
    新潟県上越市,和歌山県かつらぎ町,香川県満濃町において,産卵と幼生生息地の地形と水深,水質,植生条件,ならびに,幼生の成長経過を調査した。その結果,産卵前の1月から変態時期である6月までの期間,少なくとも5~10cmの水位を維持する必要があること,また,水域のpH は,5~7,溶存酸素(mg/l)は, 5.00~5.99,電気伝導度(μs/m)は,7.00~10.00の水準に維持する必要があること,さらに,水域内の植生については,定期的に除草や刈払によって,植被率と群落高を低い状態に抑制する必要のあることが判明した。
  • 秋元 利之, 小野 幸菜, 吉田 寛, 江刺 洋司
    2006 年 32 巻 1 号 p. 187-190
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/10
    ジャーナル フリー
    早期発芽力検定法 (NETIS No. KT-060003) は,従来の発芽試験では結果を出すまで長い期間を必要とする木本植物種子の活力検定を短期間で調査する新技術である。現在までに186種の木本植物種子に適用し,短期間での活力調査が可能となっている。本報告では,後熟型の休眠性 (胚未熟による) を示す種子について本検定法の結果と発芽試験による発芽率との相関関係を調査した結果,両者間に高い相関が認められたので報告する。
  • ―保全と再生への取組み―
    山西 毅, 瀬下 和芳, 北見 俊幸, 丹 左京
    2006 年 32 巻 1 号 p. 191-194
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/10
    ジャーナル フリー
    東海村の原子力科学研究所における大強度陽子加速器施設(J-PARC)の建設では,33haに及ぶ松林の伐採が行われた。当地は,茨城県を代表する飛砂防備林(保安林)と自然環境保全地域に指定されており,数多くの貴重な動植物や自然植生が残る緑豊かな区域となっている。その復旧に当たっては,環境保全に十分配慮することが求められていることから景観復旧,貴重植物の保護,試験植栽,さらには野鳥が集う水辺空間整備等,様々な試みを行っている。クロマツ成林の試みは,第35回大会において口頭発表を行ったが,今回はその後の追跡調査,伐採から復旧植栽までの経緯と環境保全,再生への取組みなどについて報告する。
  • 山本 一夫, 丸本 卓哉, 岡部 宏秋, 市村 正彦, 新見 芳則, 尾崎 新, 大久保 剛, 植木 寿朗, 関山 真一, 立脇 真悟
    2006 年 32 巻 1 号 p. 195-198
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/10
    ジャーナル フリー
    平成2年に噴火した雲仙普賢岳の水無川本流において共生微生物資材を適用した乾式航空緑化を施工した。10年後,施工区および非施工区において土壌の化学性や微生物バイオマス,菌根菌の感染率,胞子数を調べ,菌根菌が土壌へ及ぼす影響について評価した。その結果,施工区では施用したと考えられる菌根菌や他の複数種の菌根菌が確認されたが,一方の非施工区においては菌根菌の感染率が低く,土壌の養分量や微生物バイオマス量は少なかった。当初導入した菌根菌が土壌の肥沃化に影響を及ぼしていたと推測された。
  • 甲嶋 久知, 谷 和之, 平間 万久, 今村 藤三郎
    2006 年 32 巻 1 号 p. 199-202
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/10
    ジャーナル フリー
    法面に木本植物群落を造成させる場合,植え穴による植栽はのり面を部分的に掘り緩める工法であって,のり面を脆弱にする恐れがあり,特に岩盤形成されたのり面は大きな崩壊の危険性がある。このため植え穴によらない緑化方法として,間伐材等で連結,のり面に固定して植栽可能な培地を造成する「TY緑化コンテナ工法」を開発した。この工法によって不規則な面を持つ急勾配岩盤のり面に木本植物導入の試験を行い高い確率で活着することが確認できた。
  • 下園 寿秋, 永吉 健作, 川畑 佳子, 前迫 俊一, 上野 敏夫
    2006 年 32 巻 1 号 p. 203-206
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/10
    ジャーナル フリー
    治山,林道の切土法面に種子を配合せず,現場採取の表土を混合,あるいは基盤材等だけの吹付試験を行った。施工後の植生経過を調査した結果,基盤材等だけの法面は周囲からの植物の侵入により徐々に法面が被覆された。表土を吹き付けた法面は,基盤材との混合率20 %では徐々に被覆されたが,50 %,100 %での被覆率は低かった。
  • 古田 智昭, 吉田 寛, 宮地 洋一
    2006 年 32 巻 1 号 p. 207-210
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/10
    ジャーナル フリー
    福岡県内のぼた山において,多種類の国内産自生種を混播した厚層基材吹付工(斜面樹林化工法)を施工する際に,一般的に併用している緑化基礎工であるラス張工(金網張工)を省略し,生育基盤材に短繊維材を混合することにより造成基盤の耐久性と連続性を高めた施工を行った。2000年5月~6月に施工した1期工事について施工後約5年間,2001年3月~7月に施工した2期工事について施工後約4年間の追跡調査を実施した結果,1期工事では多様性に富んだ修景効果の高い植物群落が形成されていることが確認され,2期工事では成立した木本植物が順調に生育していることが確認され,法面の自然回復緑化手法としてコストおよび工期を短縮した短繊維材を混合した厚層基材吹付工(植生基材吹付工)の有効性が実証された。
  • 二見 肇彦, 新野 英明, 清宮 浩
    2006 年 32 巻 1 号 p. 211-214
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/10
    ジャーナル フリー
    第二東名高速道路建設工事において出現した切土のり面に,専用の袋材を用いた団粒化客土注入工によって植栽基盤を造成し,苗木を植付ける樹林化工事を実施した。施工後約8ヵ月目および約1年目に実施した追跡調査の結果では,導入した苗木の活着状態にバラツキが認められるものの,全体で約90 %以上の活着率となっていることが確認された。根系の伸長状況は,袋材背面から露出した根系が,地山の土層中に旺盛に伸長している状況が確認された。これらの結果から,切土のり面の樹林化を図るための方法として,本工法の有効性が実証されたものと考えられる。
  • 杉山 太宏, 大川 良輔, 福田 耕司
    2006 年 32 巻 1 号 p. 215-218
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/10
    ジャーナル フリー
    これまであまり実験・調査報告例のない粘性土地盤材料を対象として,根系による地盤の補強効果を調べた.樹種の異なる単一根の設置や,ヒマワリを生育させた粘性土(ローム,黒ボク)を対象に三軸圧縮(&Cmacr;Ū,UU)試験と一面せん断試験を行った.根系の存在は試験方法によらず地盤材料の非排水せん断強度を増加させるが,試験によって φ が増加する場合とc が増加する場合があること,補強効果は圧密圧力に依存刷る可能性が高いことなどがわかった。
  • 久保 光
    2006 年 32 巻 1 号 p. 219-222
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/10
    ジャーナル フリー
    下水汚泥及び街路樹剪定枝葉の緑地への有効利用を図ることを目的として,消化脱水汚泥と街路樹剪定枝葉を混合し,堆肥製造試験を行った。その結果,良好な堆肥を製造することができた。また,堆肥を街路樹植栽等の土壌改良材として使用するだけでは,利用用途が限定されるため,用途拡大のため,堆肥となった材料をのり面緑化に使用するバーク堆肥の代替として使用し,のり面緑化試験を行った。その結果,のり面緑化材料として使用可能なことが分かった。
  • 横山 能史, 土居 洋一, 河合 富佐子
    2006 年 32 巻 1 号 p. 223-226
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/10
    ジャーナル フリー
    極強酸性土壌の緑化は困難なことが多く,裸地のままで植生がみられないことがある。著者らは,酸耐性微生物を利用した土壌改良による緑化工法の開発を行ってきた。アルミニウム耐性菌(カビ菌)を使用して,pH=3.0以下の泥岩切土面において緑化試験工事を行い,岩盤面の中和効果および3cm厚の吹付基盤材により緑化が可能であることが確認できた。極強酸性土壌において,アルミニウム耐性菌の有効性と植生基盤への改良効果について報告する。
  • 田中 賢治, 小川内 良人, 杉本 弘道, 長山 泰秀
    2006 年 32 巻 1 号 p. 227-230
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/10
    ジャーナル フリー
    植生基材吹付工等の緑化工を実施する時点で選定する植物種の基礎資料とするために,有機質資材であるバーク堆肥に塩基飽和度が低から高の両特性を持った竹燻炭を配合した培地を作成し,草本,木本類を規定量播種した後の経過調査を行った。試験開始後4ヶ月経過した時点において,塩基飽和度違いによる植物の個体数,成長量の変化が植物種によって異なった特性を示したことから,調査内容の評価と今後の課題について報告する。
  • 土居 洋一, 横山 能史, 惣田 〓夫, 大石 英子
    2006 年 32 巻 1 号 p. 231-234
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/10
    ジャーナル フリー
    千葉県市原市において,酸耐性微生物による酸性土壌の修復効果および植生変化について試験施工を行った。本報告は,第31回および第33回大会(2002年)で技術報告の最終報告をするものである。第33回大会の技術報告で木本種の発芽,生育があったことを報告した際に指摘,助言をいただいた。法面の樹林化は,道路や造成地における盛土面においては比較的容易に樹林化が可能である。岩盤や植生障害が起こる酸性土壌などは様々な方法が行われている。
    著者らは,酸耐性微生物(アルミニウム耐性菌)を利用した土壌改良による緑化工法の開発を行ってきた。継続的な追跡調査から,酸耐性微生物の土壌改良効果および木本類による発芽・生育が可能となった植生環境について報告する。
  • 入山 義久, 荒井 浩輔, 高山 光男
    2006 年 32 巻 1 号 p. 235-238
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/10
    ジャーナル フリー
    在来野草(地域性系統)5草種について,採集種子および採集株から採種圃場を造成し,採種性を調査すると共に,種子の保存性を調査した。10 a当りの採種量は,エゾカワラナデシコ25 kg,エゾノコンギク45 kg,オカトラノオ30 kg,センダイハギ80 kg,ノコギリソウ65 kgと試算された。5草種の種子は5 ℃暗黒で5年間低温保存しても,発芽率は低下しなかった。
  • 中村 剛, 本田 慶司, 谷口 伸二
    2006 年 32 巻 1 号 p. 239-242
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/10
    ジャーナル フリー
    屋久島内の林道のり面で,土壌シードバンクを利用した植生基材吹付工を施工した。施工地に隣接するスダジイ林から採取した森林表土を植生基材に10~20 %配合し,切土のり面に厚さ5 cmで吹き付けた。施工後1年半の調査では,オオバライチゴ,ウラジロエノキ,ハドノキ等19種の木本植物と20種の草本植物を確認した。この時木本植物の生育密度は,表土配合率が10 %の試験区で9 本/m2,20 %で19 本/m2であった。
  • 稲垣 栄洋, 山口 亮, 加藤 公彦, 影山 智津子, 伊代住 浩幸
    2006 年 32 巻 1 号 p. 243-246
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/10
    ジャーナル フリー
    耐病性の強い可能性のある緑化植物種を広く評価する目的で,キュウリ炭そ病菌を被検菌とした検定法によって緑化植物および景観植物170種の植物防除活性の評価を行った。その結果,90 %以上の高い抑制率を示し,病害防除活性が強いと考えられる植物種として,イタドリ,サナエタデ,ムシトリナデシコ,ウマノアシガタ,クリスマスローズ,アピオス,キンレンカ,ヘデラ,ブルーマロー,レモンバーベナ,ヒメイワダレソウ,オレガノ,ラベンダー,セージ,チェリーセージ,メキシカンセージ,ミントブッシュ,ヒヨドリバナ,ブットレア,ローマン・カモミール,ジャーマン・カモミール,ヨメナ,アーティチョーク,スズラン,ススキ,バミューダグラスを選定した。
  • 岩崎 寛, 山本 聡, 権 孝〓, 渡邉 幹夫
    2006 年 32 巻 1 号 p. 247-249
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/10
    ジャーナル フリー
    近年、植物による癒しの効果に注目され、屋内空間においても多くの植物が配置されるようになった。しかし、それらが実際に人の生理的側面に与える効果に関する検証は少ない。そこで本研究では屋内空間における植物の有無が人のストレスホルモンに与える影響を調べた。その結果、観葉植物を配置した場合、無い場合に比べ、ストレスホルモンが減少したことから、室内における植物の存在はストレス緩和に効果があると考えられた。
  • ―根萌芽による栄養繁殖―
    谷口 真吾
    2006 年 32 巻 1 号 p. 250-253
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/04/10
    ジャーナル フリー
    イタヤカエデの更新形態を解明するため,更新稚樹の本数密度,サイズ,齢構成などを調査した。樹冠が閉鎖した林床において,雪圧害ならびに被圧による日照不足等によって主幹の頂端部が欠落・枯死した7~9年生(地際径10~15 mm)個体に根萌芽の発生が確認された。イタヤカエデの根萌芽は,実生更新に不利な時期あるいは場所,環境条件下における個体維持の有力な手段であると考えられる。このように,イタヤカエデは積雪環境下や被陰下において,根萌芽による栄養繁殖と実生繁殖を相互に補完し合いながら生育地の拡大と確実な世代交代を保証する繁殖戦略をとっていることが示唆された。
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