日本緑化工学会誌
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32 巻, 2 号
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特集
論文
  • 呉 立潮, 新里 孝和, 新本 光孝
    2006 年 32 巻 2 号 p. 337-345
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/06/15
    ジャーナル フリー
    亜熱帯常緑広葉樹林の天然林伐採跡地における二次遷移の研究の一環をなすものである。本論文では熱帯,亜熱帯地域の焼畑を想定し,沖縄西表島で天然林を伐採,伐木を燃焼した跡地18 年後の林分構造と出現樹種の種の多様性について分析した。試験地の面積は0.87 ha で伐採前に燃焼区と対照区に区分し,10m×10m (100 m2)の方形プロットを4 個設定した。再生林について樹高1m 以上の立木を毎木調査した。基底面積と立木密度は,生活形別では差がみられたが,処理区間では明確な差がみられなかった。種の豊かさ度と多様度は,処理区間では明確な差がみられなかったが,日本の暖温帯林より高く,中国の熱帯林より低い傾向を示した。出現樹種は30 科,50 属,72 種で,ブナ科,アカネ科,トウダイグサ科が多く,イタジイ,ボチョウジ,エゴノキの優占度が高かった。根株の萌芽再生が旺盛で,萌芽力の強いイタジイの基底面積は54.9% を占めた。再生林分は萌芽再生を主体にして層化がすすみ,皆伐前の天然林構造に類似,遷移していくものと推察された。
  • 早坂 大亮, 藤原 一繪
    2006 年 32 巻 2 号 p. 346-354
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/06/15
    ジャーナル フリー
    今後の海岸管理・海浜植物群落保全に対する基礎資料を作成する事を目的とし,人為的活動,開発圧の強い湘南海岸に現存する植物群落(海浜・非海浜植物群落を含む)の成立に及ぼす影響について検討した。現地植生調査資料を相互に比較,整理した結果,現在,湘南海岸には,4 クラス,9 群集,6 群落(上級単位不明の2 群落を含む) が成立していた。土壌窒素含量,土質,1m2 あたりの平均海水浴客数および清掃頻度を用いて主成分分析を行った結果,オカヒジキクラス,ハマボウフウクラスおよびハマゴウクラスは,人為的影響が弱い貧栄養地に,オオバコクラスおよび上級単位不明の群落は,細礫率が高く土壌窒素分の高い立地に成立傾向にあり,クラス間で明確な立地環境の違いが認められた。非海浜植物群落であるギョウギシバ群落およびコマツヨイグサ群落は湘南海岸全域で広く見られたが,コマツヨイグサ群落は攪乱強度の低い海岸前面の裸地に,ギョウギシバ群落は人為的攪乱により形成された裸地に侵入するというように,定着場所に明確な違いが認められた。これら群落の分布拡大は神奈川県内だけにとどまらず,人為的影響の強い様々な海岸で生じている。人間の利用地域と海浜植物群落の保護地域との明確な境界を引き,内陸生雑草の侵入経路である植被の隙間(植生の面的拡がりが,人為的撹乱によってパッチ状になること)を作らない事が有効であると考えられる。湘南海岸で見られる全植生単位が,平塚市および大磯町で網羅される事から,今後は,これら2 市町を要保全地域として管理していく必要がある。
  • 松本 雅道, 田金 秀一郎
    2006 年 32 巻 2 号 p. 355-360
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/06/15
    ジャーナル フリー
    絶滅危惧植物であるキスミレの自生地における緑化に際して,配慮すべき点を検討するために,阿蘇山での生育環境の特性と日本における自生地の土壌型を調査した。キスミレは春植物の生活環をもち,春先に充分な光が得られる環境を要求するため,野焼きによる草地の管理は必要である。キスミレの生育環境は土壌が深く,ススキの生育の良い,多様な種組成の群落が成立する環境である。斜面崩壊の発生して3 年経過したすべり面にはキスミレは生育していないが,14 年経過したすべり面の一部には生育を始めており,崩壊地でキスミレが群生する草地が回復するにはさらに時間がかかると推定された。日本におけるキスミレの自生地の土壌型は,草原性の環境において生成した黒ボク土の分布域に遺存することが多い。崩壊によって失われた黒ボク土を再生することにより,ススキ草原を再生することが,緑化に際して配慮すべき点と考えられる。
技術報告
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