日本緑化工学会誌
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34 巻, 1 号
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論文
  • 山場 淳史, 佐野 俊和
    原稿種別: 論文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    林野火災跡地復旧のため治山事業により植栽された樹種を対象に,土壌緊縛作用に関する指標として根の引抜抵抗力を評価した。その結果,全樹種において,引抜抵抗力は時間の経過により変動を伴いながら増加しピーク後を迎えた後,急激または徐々に減少しゼロとなるような傾向がみられたが,樹種による明確な差異は確認できなかった。また,全樹種で根直径と最大引抜抵抗力には正の相関があり累乗関数で近似できたが,一定の直径を超えると樹種による差が生じる傾向にあった。さらに,斜面方向別の根系量分布比および立木ごとの全体引抜抵抗力推計では,樹種による特徴が確認された。このような樹種による差異をもとに,目標林型と植生遷移を考慮したうえで,樹種の組み合わせや植栽方法が採用されるべきである。
  • 柏木 亨, 細木 大輔, 松江 正彦
    原稿種別: 論文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    クロバナエンジュ(Amoerpha fruticosa L.)が優占する法面を他種が優占する植生に積極的に遷移させるためには,萌芽力が旺盛であるクロバナエンジュを効率的に除去する技術が必要である。そこで本研究では,クロバナエンジュを植生管理する実験区を設けて,クロバナエンジュの枯死数や萌芽量などについて測定して,処理の効果を検証した。実験区は,1) 春期に1回伐採した区,2) 春期と夏期の2回伐採した区,3) 春期に1回伐採後に薬剤処理した区,4) 夏期に1回伐採後に薬剤処理した区,5) 春期と夏期の2回伐採後に薬剤処理した区を設置した。その結果,4) と5) の処理を行った実験区では,クロバナエンジュの個体を約6割枯死させ,他の実験区よりも萌芽量を少なくできたことから,夏期に1回伐採して薬剤処理を行う方法が効率的であることが明らかとなった。
  • 市川 隆子, 高橋 輝昌, 小林 達明
    原稿種別: 論文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    土壌改良資材として注目されているミミズに関する基礎的知見を得るために,植生の違いとミミズの生態の関係について調査した。様々な植生タイプの調査地で約1年間,ミミズの個体数を調査した。ヒノキやマツ由来のリターの多い調査地ではミミズはほとんど生息せず,スギや落葉広葉樹由来のリターが多い調査地では多くのミミズが生息していた。また,常緑樹の調査地では越冬しやすく,落葉樹や草本の調査地では越冬しにくいと推察された。同調査地の土壌性質の分析の結果,ミミズの少ない調査地土壌の交換性Ca含量が少ないことがわかった。また,ミミズの数と微生物活性および糸状菌数との間にトレードオフの関係が見られた。 
  • 戸田 浩人, 花岡 功大, 江原 三恵, 佐々木 龍一, 生原 喜久雄, 亀谷 行雄, 崔 東寿
    原稿種別: 論文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    2000年の噴火で森林植生に著しい被害のあった地域に,8箇所の植生調査区と3箇所の植栽試験地を設け,2003-2006年の植生変化と植栽木の成長を調査し,土壌の理化学性の影響について考察した。多量の火山灰が固結した地域では,地表面の火山灰にはN供給力がなく貧栄養であり,草本の侵入が抑制されるため,根粒菌と共生するオオバヤシャブシの成長が旺盛であった。火山灰に厚く覆われた鉱物土壌は,N供給力が高く保たれ,今後の緑化基盤として重要である。火山灰の薄い地域では,鉱物土壌が酸性化し,火山灰層・鉱物土壌層ともにN供給力が低く,ハチジョウススキやユノミネシダが繁茂したため,木本の侵入が遅れていた。
  • 田村 悠旭, 張 文軍, 玉井 重信, 山中 典和
    原稿種別: 論文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    中国北部~モンゴル原産で耐塩性が高いタマリスク類の一種,T. austromongolica の植物体内と分泌塩内の塩分組成に土壌の塩分組成がどのような影響を及ぼすか挿し穂を用いて実験を行った。NaClとCaCl2を当量比1 : 1で混合した10000 ppm塩水 (2 : 2区),2 : 1で混合した7500 ppm塩水 (2 : 1区),1 : 2で混合した7500 ppm塩水 (1 : 2区) を灌水した3処理区を設定した。土壌中のCa2+が多かった1 : 2区では植物体中のNa+が他の処理区よりも低かったため,Ca2+によってNa+の吸収が抑えられたと考えられた。また,いずれの処理区でも,植物体中よりも分泌塩中にNa+が多く含まれていたため,T. austromongolica は選択的にNa+を体外に排出していると考えられた。
  • 大藪 崇司, 戸田 健太郎, 水野 由芽, 吉水 祥平, 堀川 真弘, 張 国盛, 三木 直子, 王 林和, 吉川 賢
    原稿種別: 論文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    中国内モンゴル自治区毛烏素沙地において,家畜が喫食しないことから過放牧地に比較的大きな群落がみられる牛心朴子の分布と地下水面からの比高との関係を調査した。その結果,広域踏査調査において,牛心朴子は地下水面からの比高として68 cm から314 cm のプロットで出現していた。丘間低地から砂丘上部にかけて行ったトランセクト調査では,地下水面からの比高が140 cm のわずかに地形が変化する砂丘下部において現存量がもっとも多かった。また,砂丘下部では,他の出現種は少なかった。牛心朴子は,砂の堆積に対して茎を伸ばすことにより適応し,地下水を利用しながら生育しているものと考えられた。過放牧により他の植物による被覆が減り,喫食されずに残る本種は,飛砂を抑える砂丘固定植物として利用可能であることが示唆された。
  • 野口 敦子, 野村 昌史, 小林 達明
    原稿種別: 論文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    柏市のこんぶくろ池周辺に生育しているズミ集団の遺伝的劣化が懸念されているが,その実態究明と保全方法の検討のために,こんぶくろ池を含む関東地域7集団の遺伝的構造と花の形態変異を調べた。アロザイム分析の結果,全集団のヘテロ接合度期待値は0.22と双子葉植物としては高い値を示したが,こんぶくろ池ズミ集団のそれは0.247でもっとも高かった。遺伝的距離より作成した系統図からは,こんぶくろ池集団は東関東グループに属すると考えられた。しかし,花の形態は,アロザイム分析より得られた地理的グループにとらわれない独特な特徴を持っていた。これらのことから,こんぶくろ池ズミ集団の遺伝的劣化は起きておらず,個体群再生のためには,他地域集団からの移植によらず当地自生集団より苗木を育成することが適当といえる。
  • 米村 惣太郎, 井原 寛人
    原稿種別: 論文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    調整池の水辺に植生基盤を造成し,タコノアシを導入した。管理作業として,初期3年間は競合種と考えられた草本の選択的除草,5年目から8年目まで春先に全面的刈取りと除去を行ったが,9年目以降は管理作業を実施しなかった。その結果,タコノアシは3年目以降減少し,9年目にはほとんどの区画で生育がみられなくなった。これに対し,新たに実験区を植栽基盤に追加し,春先のリターの除去と初夏に他の植物種の刈取りを行った結果,タコノアシの増加がみられた。タコノアシを継続的に生育させるためには,出芽をしやすくし,成長期に被圧を受けなくすることが重要と考えられた。植栽基盤にはタコノアシの種子が残存しており,土壌を耕耘してタコノアシを生育させることができた。またタコノアシの種子は水中でも発芽可能だが成長はできなかった。 
  • 田崎 冬記, 内田 泰三, 林田 寿文, 丸山 純孝, 荒瀬 輝夫
    原稿種別: 論文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 51-56
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    国内における北限(北海道十勝)の絶滅危惧植物ヒシモドキの自生地および生育状況を調査した。また,絶滅の危険分散に資する移植試験および他地域との果実の外部形態を調査した。その結果,自生地は遷移によって,開放水面が著しく減少し,これに伴い生育密度,水中閉鎖花の形成数も大きく減少していることが示された。また,自生地では渇水がみられ,他地域の生育環境とは異なった。水深別の移植試験では,水深40 cm程度の試験区のみで被度・閉鎖花の形成等,旺盛な生長が確認され,容易に定着可能と判断されたが,それ以上の水深では定着しなかった。果実の外部形態では芒数から北海道産は佐賀県産に類似していることが示された。同種の保全には,自生地の保全と共に,土取り場跡地・浚渫排泥跡地等,河川事業を活用した止水環境の創出が重要と考えられた。
  • 岡 浩平, 吉崎 真司, 小堀 洋美
    原稿種別: 論文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 57-62
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    本研究では,静岡県遠州灘海岸における植生の成帯構造の成立要因と保全手法について検討した。その結果,汀線から内陸に向かって,優占種の特徴からコウボウムギ帯→ケカモノハシ帯→ビロードテンツキ帯→チガヤ帯と変化する成帯構造が確認された。成帯構造の各帯の分布は,汀線から内陸に向かって変化する波浪強度や堆砂深の傾度に対応していると考えられた。また分類木解析によって,成帯構造の成立には,最低でも100 m以上の海浜幅が必要であると予測された。一方,海浜幅が100 m以下になるとビロードテンツキ帯が欠落することがわかった。このことから,遠州灘海岸において海浜植生の成帯構造を保全するには,100 m以上の海浜幅を確保することが重要であると考えられた。
  • 福永 健司, 五宝 千嘉, 鈴木 貢次郎
    原稿種別: 論文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 63-68
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    マユミ(Euonymus sieboldianus Blume)種子の長期貯蔵には低温湿潤条件下に置くのが有効と考えられているが,湿潤条件では腐敗しやすい。そこで,含水率を21.3 %に落として低温貯蔵したところ,発芽率が低下した。発芽率低下の原因に二次休眠が考えられたため,乾燥種子に対して低温(0±1℃)や暖温(25℃ 8時間と15℃ 16時間の変温)湿層処理,ジベレリン(GA3)処理を行った。その結果,低温湿層処理3ヶ月間とジベレリン処理の組み合わせで発芽率が高まった。各処理単用や低温湿層処理2ヶ月間とジベレリン処理の組み合わせでは効果が低く,暖温湿層処理の組み合わせ効果も認められなかった。また,ジベレリン処理濃度は100 ppmおよび500 ppm に対し,1,000 ppmで発芽促進効果が著しかった。
  • 大原 尚子, 芦澤 和也, 倉本 宣
    原稿種別: 論文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 69-74
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    薬用樹,街路樹として植栽されてきた中国原産のキササゲ(Catalpa ovata G. Don)は河原への逸出が確認されている。本研究は,河川での分布拡大の予測を目的とし,多摩川における分布調査と採種時期の異なる種子を用いた光条件と温度条件に関する発芽実験を行った。その結果,河口から60.2~22.8 kmで分布を確認した。特に,河口から60.2~43.7 kmの間に分布が集中していた。発芽適温は30~35 °C であり変温区で発芽が促進された。また,採種時期の異なる褐色〓果種子と緑色〓果種子の発芽率の間に大きな差はみられなかった。出水発生時の種子である緑色〓果種子に発芽能力がみられたことから,出水による分布拡大の可能性が示唆された。
  • 菊地 哲理, 倉本 宣
    原稿種別: 論文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 75-80
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    島嶼には固有種が多い。生物多様性の保全のためには固有種と人間との共存が望まれる。本研究では,伊豆諸島固有のサクユリの保全に関する知見として,自生地の分布特性の解明を目的とし,自生地のある伊豆大島の国立公園特別保護地区において本種の分布および生育状況と周辺環境との関係を調べた。その結果,本種の分布しやすい植生環境は,遷移初期のハチジョウススキの優占する群落であること,好適な植生環境は特別保護地区の狭い地域に限られていること,本種の分布は好適な環境条件の中でもさらに狭い地域に限られていることが明らかとなった。
  • 大石 善隆, 村上 健太郎, 森本 幸裕
    原稿種別: 論文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 81-84
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    外来種のコケ植物であるコモチネジレゴケについて,その生育分布に関する定量的な研究や在来種に与える影響に関する研究はほとんどない。そこで,本研究では京都市内の孤立緑地を調査地として,本種の生育環境,および在来種のコケ植物に与える脅威について考察することを目的とした。その結果,本種の生育分布は,都市という環境条件というより,むしろ,その侵入機会の有無によって規定されていること,また,現段階では本種は在来種のコケ植物の大きな脅威になっていないことが明らかになった。しかし,その脅威を正確に評価するためには,長期的な本種の生育分布動態のモニタリングが必要であると考えられた。
  • 堀川 真弘, 村上 健太郎, 津山 幾太郎, 大藪 崇司, 松井 哲哉, 森本 幸裕, 田中 信行
    原稿種別: 論文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 85-90
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    イヌケホシダの分布データと現在の気候データより分類樹モデルを構築し,現在の分布を規定する気候要因とその閾値を推定した。また,現在と気候変化シナリオ(RCM20)の気候分布から日本全域の分布適域を予測し,分布変化の予測を行った。分類樹モデルおよびその分離貢献度,予測した現在の分布適域より,分布を規定する気候要因は大きくはWI,PRS(夏期降水量)であり,地域的にPRW(冬季降水量)とTMC(最寒月最低気温)が分布を規定していた。現在の分布適域の2次メッシュセル数は1,388であり, 2031~2050年と2081~2100年では,2,179と2,813セルであった。分布適域は2081~2100年に,中部地方から関東・東北にかけての脊梁山脈と北上高地を除く日本全域に広がり,本州最北端までの北上が予想された。
  • 中津 弘, 夏原 由博, 前中 久行
    原稿種別: 論文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 91-96
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    京阪奈丘陵の樹林地,農地,集落などで,二次的自然の配置パターンを調べるために相観植生を調査し,また,それらのパターンと鳥類との関係を検証するために鳥類調査を行った。植生調査の結果,水田および樹木植生の面積比率の間に強い負の相関関係があり,モザイク構造の発達程度や林縁の総延長は,樹木植生面積比率が中程度のときに大きいことが分かった。植生データを説明変数,鳥類の観察種数を目的変数とした回帰分析では,鳥類の種数全体にとっては樹木植生面積比率の高さが重要であったが,非樹林地性鳥類の種数を目的変数として回帰分析を行うと,樹木植生面積比率は負の影響を与えることが分かった。いくつかの鳥類種の観察個体数についても回帰分析を行った。二次的自然を理解するうえで,詳細スケールの相観植生の評価が有効であることが示唆された。
  • 鈴木 弘孝, 吉川 淳一郎
    原稿種別: 論文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 97-102
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    本研究は,東京都千代田区霞ヶ関の実在地区をモデルに,建築敷地内の地上面・屋上や壁面等への緑化条件の相異が地区内の温熱環境改善にどのように寄与するかについてCFD(Computational Fluid Dynamics) 解析の方法を用いてシミュレーションを行った。解析の結果,地区内での顕熱総負荷量で見ると,緑化なしと比較して地上面の芝生緑化と屋上緑化を行うと24 %低減し,加えて建物南・西面を壁面緑化した場合には15 %の低減がみられ,建築敷地内の緑化の違いによる温熱効果を定量的に把握することができた。
  • 豊原 憲子, 吉川 弘恭, 末留 昇, 後藤 丹十郎, 南村 佐保, 島 浩二
    原稿種別: 論文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 103-108
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    熱融着性ポリエステル繊維を用いて固化した培地は,ポット等の容器を用いない条件でかん水を行っても土が流亡しない特性を持っている。固化培地にセル成型苗を植え付けて栽培を行うと,植物の生長に伴い培地の結合性が強くなり,植物を植えていない状態よりも貫入抵抗値が大きくなった。観賞期間を含めた長期肥効型の被覆肥料をあらかじめ培地内に挿入することで,かん水管理だけで長期間開花を維持できた。三号鉢サイズの固化培地で栽培した花壇苗は一般的な5.5cmピッチのネットフェンスに直接挿入することができ,新たな基盤や土壌を用いずに早期に壁面を緑化することができた。屋外高温条件で培地を湿潤状態に保ちながら送風すると,緑化面付近の気温冷却効果が認められた。
  • 下村 孝, 山本 祐子
    原稿種別: 論文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 109-114
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    キンモクセイに2度の開花ピークが見られるとの伝聞にもとづき,その実態を科学的に解明するために,京都北区の住宅地域内に植栽されているキンモクセイを対象に形成花芽数と開花花芽数,開花小花数を経時的に計測した。その結果,キンモクセイは,2007年10月11日の開花ピークの後,10月23日に2度目の開花ピークを迎え,二度咲き現象が見られることが明らかになった。2度目のピークでは,開花小花数が1度目に比べると極端に少なく,全体の香りも弱いため,一部の人々にしか認知されていなかったともの理解された。当年生枝と前年生枝の花芽の種類と数,および開花小花数の測定から,キンモクセイでは,当年生枝と前年生枝の葉腋に形成される定芽以外に不定芽にも花芽が形成され,それらが開花することが分かった。さらに2度目の開花ピークには,当年生枝の花芽より前年生枝の花芽が,定芽より不定芽が大きく寄与することも明らかになった。前年生枝が当年生枝より不定芽を形成しやすく,キンモクセイ二度咲き現象には,前年生枝不定芽の関与が大きいと考えられる。
  • 上町 あずさ, 下村 孝
    原稿種別: 論文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 115-120
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    テイカカズラ類は付着と巻き付きの双方で登攀する為,すぐれた立面緑化素材として期待できる。わが国では,テイカカズラ,トウキョウチクトウおよびケテイカカズラの2種1変種が流通しているが,これらの同定が困難で,生産,流通および利用において混同がある。そこで,これらのテイカカズラ類を同定するための簡易な指標を明らかにすることを目的とし,近畿中部に自生しているテイカカズラ類および国内に流通しているテイカカズラ類の栄養器官の形質を調査した。その結果,成熟相のテイカカズラ,ケテイカカズラおよびトウキョウチクトウを栄養器官の外観により簡易に同定することが可能となった。また,テイカカズラおよびケテイカカズラの成熟相と幼若相の形質の相違点を明らかにした。
  • 吉水 祥平, 大藪 崇司, 山本 聡, 澤田 佳宏, 藤原 道郎
    原稿種別: 論文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 121-126
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    我が国における家庭部門のCO2 排出量の伸びは著しく,抜本的な対策や施策が喫緊の課題である。本研究では,家庭部門において一般住民にとって最も身近なCO2 の吸収源である庭木に着目し,庭木のCO2 固定効果に加えて,庭木の日射遮蔽による冷房エネルギーの削減量を考慮した総合的なCO2 削減効果として戸建住宅の植栽モデルプランを評価した。植栽モデルプランの庭木のCO2 削減効果は,最大70.16 kg- CO2/year と算出された。庭木自体の固定量より日射遮蔽によるCO2 削減効果の削減量が大きく算出されたことから,日射遮蔽を目的とした植栽の検討が重要であると推察された。
  • 太田垣 亮, 日置 佳之
    原稿種別: 論文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 127-132
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    藤棚(パーゴラ)による駐車場の熱環境改善効果を定量的に評価するため,藤棚と実験用に設定した模擬藤棚を用い,各々の日陰とその直近の日向において,気温,地表面温度,日射量,風速及び駐車した車の車内・車体温度を測定した。日向に駐車した車のダッシュボードの温度が最高で70 ℃以上に達したのに対して,日陰のそれは気温より10 ℃高い程度に留まった。日向と日陰の地表面温度差は藤棚天蓋部の被覆率の影響を強く受けていた。藤棚による駐車場の熱環境改善効果は大きく,藤棚下に駐車することでアイドリングストップが促進されれば,それによる二酸化炭素排出抑制効果も大きいと推定された。
  • 田中 健, 村上 大輔, 下村 孝
    原稿種別: 論文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 133-138
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    京都市内を事例として,好ましい屋上緑化のデザインを明らかにするため,市内の屋上から撮影した4種類の景観写真と4パターンの屋上緑化写真を組み合わせた合成画像を用いて景観評価実験を行なった。その結果,同一の背景で緑化形態(緑量)を変化させた場合に,緑量が増える程評価が向上することが示され,さらに,和風庭園風緑化が高い評価を得ることが示された。また,アイマークレコーダ(EMR)による眼球運動の測定を行い,画像内の緑量が増える程,被験者が人工物を探索する傾向があることが示された。以上の結果から古都の景観を残す京都では和風の屋上緑化が望ましいと推測された。
  • 李 宙営, 須田 歩, 趙 〓珠, 藤井 英二郎
    原稿種別: 論文
    2008 年 34 巻 1 号 p. 139-142
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    本研究では,3つの異なる高さで刈られた芝生に接触するときの人の反応を,生理・心理学的指標を用いて調べた。実験材料としては20mm,40mm,70mmの高さで刈られたコウライシバを用い,被験者は年齢20歳~24歳の男性7名・女性6名,計13名であった。測定項目は,脳の前頭前野における血流量,脈拍数,SD法,POMSであった。印象評価では刺激の弱い70mmの芝生で自然性や親近感において高い評価が得られた。脳血流動態では,いずれの対象に対しても脳血流量は減少する傾向を示したが,70mmの芝生で脳活動の沈静効果が最も大きいことがわかった。実験結果から,3つの対象に対する人の生理反応に顕著な違いはみられなかったものの,主観評価の一部の結果において対象間の違いがみられた。
技術報告
  • 谷口 真吾, 西原 史子, 中須賀 常雄
    原稿種別: 技術報告
    2008 年 34 巻 1 号 p. 145-148
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    フクギの繁殖生態を解明し,その知見の応用として,果実成熟期に発散する成熟果実の腐敗臭を回避するため,果実生産を極力少なくする適切な剪定位置を検討した。着果が集中する2年枝における果実の着生位置は2節が最も多く,ついで1,3節でありそれ以外の節は10 %以下の着果率であった。開花直後からの果実数の減少は1,2節で低く,4,5節で高い傾向であった。このことから,果実成熟期におけるフクギの果実数は,2年枝のとくに1,2節に多く,それ以外の節では1,2節に比べて少ない傾向であった。剪定によりフクギの果実生産を人為的に減少するには,当年枝を含み2年枝の3節から先端の部分を切り詰めることが現実的であるものと推察された。
  • -13科33種の種子単位重量データ-
    中村 華子, 橘 隆一, 福永 健司
    原稿種別: 技術報告
    2008 年 34 巻 1 号 p. 149-151
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    地域固有の生態系の再生を目指す,自然再生のための緑化を実施するためには,在来植物の種苗採集のための知識の蓄積が不可欠である。また植生資材として緑化事業で多様な樹種を使用するためには,単位体積や単位重量あたりの種子粒数など,定量データの蓄積が不可欠である。ここでは1993年と1996年に国内で採取した在来植物の樹種13科33種について,1粒あたりの重量,1リットルあたりの重量,1 kgあたりの粒数を測定した。その結果,同じ樹種の成木同士でも種子群によって差の大きいものがあり,使用する際には留意する必要のあることが示された。
  • 橘 隆一, 松居 奈緒子, 中村 華子, 小川 裕紀子, 吉原 敬嗣, 福永 健司
    原稿種別: 技術報告
    2008 年 34 巻 1 号 p. 152-155
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    筆者らは,長期間にわたり日本国内各地にて様々な在来木本植物の種子を採取し,その発芽率の情報を収集してきた。その情報量は膨大である。そこで本報告では,これらの中でも特に以下の6科11種について若干の考察を加えて,基礎的な種子情報として提供した。また,著者らが行った発芽実験の結果では,既往文献と比較し低い発芽率を示す樹種が多かった。この原因の一つとして,精選後の貯蔵管理における最適な温湿度や,貯蔵時の種子の含水率などの相違も考えられたが,多数の採取場所に加え,毎年の豊凶の変動も激しい中で採取できた種子を用いたことを考えれば,当然の結果といえた。
  • 坂下 史恵, 福永 健司
    原稿種別: 技術報告
    2008 年 34 巻 1 号 p. 156-159
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    カエデ属種子の2年間以上にわたる長期貯蔵の可能性について検討することを目的とし,種子を10~20 %の含水率に調整して0±1 ℃の冷蔵庫で7年間および5年間密封貯蔵したカエデ属8種の種子生存率をテトラゾリウム地図検査によって調べた。また,採取日と母樹が同一の種子を風乾の有無で含水率を変え,2年間貯蔵した場合の種子生存率を同様の手法によって比較した。その結果,種子の含水率を30 %以下にして低温乾燥貯蔵すると腐敗を防ぐことができ,また12~13 %以下に抑えると死亡率が低下して生存率が高まり,5年間以上にわたる長期貯蔵の可能性が示された。
  • 渡部 ユミ子
    原稿種別: 技術報告
    2008 年 34 巻 1 号 p. 160-163
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    外来生物法の施行により,在来種子の需要が高まっている。当社は国が進める農地貸付方式による企業の農業参入制度を活用し,遊休農地を利用して,緑化用種子採取を目的としてヤマハギ,コマツナギ,アキグミ,チカラシバの栽培を行っている。施工後2年目で,ヤマハギ8 kg,コマツナギ12 kg,アキグミ3 kgの種子を採取することができたのでその生産事例を報告する。
  • 高橋 陽一, 塩川 達夫, 藤田 大知
    原稿種別: 技術報告
    2008 年 34 巻 1 号 p. 164-167
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    滝沢ダムにおける郷土種(地域性系統)を用いた植生復元の取り組みのうち,原石山跡地の植生回復状況について報告する。郷土種種子を厚層基材吹付工により導入した法面は,表土まきだしにより施工された法面と比較して,植被率・群落高は同程度かそれ以上となり,施工後3~5年程度で先駆性木本群落が形成されることが確認された。一方,出現種数は少なく,外来種の割合が高い傾向がみられた。
  • 野口 宏, 高橋 陽一, 宇田 友紀子, 中西 收, 松井 宏光
    原稿種別: 技術報告
    2008 年 34 巻 1 号 p. 168-171
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    愛媛県四国中央市にある水資源機構富郷ダムは2001年の管理開始にあわせて,1995~98年にダムサイト掘削法面に,緑化施工を実施し,2007年で9~12年が経過した。急勾配法枠内には,遷移の進行により在来植生に置き換わることを期待して,外来草本,外来マメ科低木と在来木本類の種子を混播した厚層基材吹付工法で施工し,法面小段部及びコンクリートダム堤体と下流側法面の接続部(フーチング)には,当時としてはまだ例が少なかった森林表土採取・撒出し工法を採用した。以降継続してコドラート,植生図等の追跡調査を実施してきた結果,種子の混播組成の違い等の影響が徐々に明らかになってきたので2008年までのデータを踏まえて報告するとともに,今後の岩盤の露出した急斜面等での植生管理に関する課題についてとりまとめた。
  • 田中 淳, 堀江 直樹
    原稿種別: 技術報告
    2008 年 34 巻 1 号 p. 172-174
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    森林表土中に含まれる埋土種子は,広範囲にかつ地表面に薄く分布するため,効率的な採取には機動性を考慮した機械化が必要である。これらの課題の解決に,森林表土の効率的な採取技術を主体とした森林表土利用緑化工法を開発した。施工した現場を1年7ヶ月後に調査したところ,アカメガシワが4.0 m,ヌルデが2.5 mまで生長し,出現種数は合計40種であり,自生種による自然回復緑化手法としての有効性が確認された。
  • 中村 剛, 向井殿 陽平, 谷口 伸二
    原稿種別: 技術報告
    2008 年 34 巻 1 号 p. 175-178
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    広島県東広島市内の道路のり面で,森林表土を利用した植生基材吹付工を施工した。施工地付近のアカマツ林から採取した森林表土を植生基材に10 %配合し,盛土のり面に厚さ2 cmで吹き付けたところ,施工翌年にはキク科の草本類が優占する雑草群落が成立した。その後メリケンカルカヤ群落を経て,施工後4年目には,キリ,タラノキ,オオバヤシャブシが散生するススキ群落へと移行した。このとき草本層には,ヒサカキ,アカマツ,リョウブ等の幼樹が3.5 本/m2の密度で生育していた。
  • 中菊 亜弥, 今井 克己, 島崎 雅弘, 谷口 伸二
    原稿種別: 技術報告
    2008 年 34 巻 1 号 p. 179-182
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    岐阜県の林道のり面において,植物誘導マットを用いた植生誘導工の試験施工を実施した。施工後2年7ヵ月の調査では,アカマツ,ヒノキの旺盛な生育が確認された。一方,同一のり面に敷設した植生基材マット工では導入したイネ科草本により全面被覆され侵入種がほとんどみられなかった。植物誘導マット工法は,従来の外来緑化植物を用いた工法と比べ,地域固有の植物を早期に成立させる有効な工法の一つとなる可能性がある。 
  • 寺本 匡寛, 石田 和宏, 木村 正信, 肥後 睦輝
    原稿種別: 技術報告
    2008 年 34 巻 1 号 p. 183-186
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    人工林内において侵食防止と生物多様性の保全を目的とした緑化を,侵食防止機能と飛来種子の捕捉機能を持つ誘導型マットを用いて行った。一般に,人工林は種多様性が低いことが知られている。しかし,当該地の周辺林分には多様な植物種の生育が確認され,誘導型マットに多様な種の侵入がみられたため,その施工事例を報告する。
  • 苫米地 久美子, 吹越 公男, 杉浦 俊弘, 馬場 光久, 小林 裕志
    原稿種別: 技術報告
    2008 年 34 巻 1 号 p. 187-190
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    青森県内で発生する敷き料混入牛糞尿,刈芝,ホタテ貝殻を材料とした堆肥(以下,KT堆肥と略す)を法面緑化資材として用いるため,KT堆肥が緑化植物(トールフェスク)の生育に与える影響や法面緑化資材におけるKT堆肥配合量を検討した。堆肥抽出液を用いたトールフェスク発芽試験より,ECの高いKT堆肥を法面緑化資材に用いる場合はトールフェスクの発芽に支障を与えないよう他の資材を配合してECを低下させるのが望ましいことが明らかとなった。そこで,KT堆肥と黒土の配合量を変化させた法面緑化資材とバーク堆肥を用いてトールフェスク栽培試験を行った。その結果,トールフェスクの出芽と生育が良好で,且つ利活用促進に寄与しうるのは,体積比でKT堆肥6に対し黒土4を配合した法面緑化資材であった。
  • 東海林 あさこ, 福永 健司, 橘 隆一, 太田 猛彦
    原稿種別: 技術報告
    2008 年 34 巻 1 号 p. 191-194
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    下水汚泥炭化物の緑化基盤への適用可能性を検討するため,炭化物の理化学的性質を測定した。また,関東ロームに炭化物を異なる比率で混合した基盤で,コマツナ,ヤマハギ,ヤシャブシの生育実験を行った。その結果,下水汚泥炭化物には孔隙は少ないが,pHやECに問題はなく,無機態窒素や燐酸を多く含むため,土壌化学性の改善に有効と考えられた。生育実験では,炭化物の混合直後の播種や,混合率70 %(体積比)でも発芽・生育障害は認められなかった。生育改善効果の高い混合率は植物によって違いが見られたが,コマツナとヤシャブシで10~30 %,ヤマハギで30~70 %であった。ヤマハギでは根粒形成も旺盛になった。以上から,下水汚泥炭化物は緑化基盤材料として適用可能であり,土壌改善効果が高いと考えられた。
  • 江崎 次夫, 河野 修一, 枝重 有祐, 車 斗松, 全 槿雨
    原稿種別: 技術報告
    2008 年 34 巻 1 号 p. 195-198
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    エチゼンクラゲやミズクラゲ等のクラゲ類の高い吸水性の成分と栄養分に着目し,これらを脱水,脱塩,乾燥して荒廃地,山火事跡地,各種のり面および海岸砂丘地などの土壌地改良材として活用する手法を開発した。アラカシについては2年間,クロマツおよびチガヤについては1年間,ポットでの施用実験を行った結果,苗長,根元直径および葉数などに無施用との間に0.1 %レベルで有意な差が認められ,その有効性が確認された。
  • 北山 敬三, 山田 守
    原稿種別: 技術報告
    2008 年 34 巻 1 号 p. 199-202
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    近年,法面緑化工では,現地で発生する伐採木の有効利用(生チップ利用)を図る資源循環型緑化工(リサイクル緑化工法)のニーズが高まっている。一方,地球規模の環境問題に対応するために,生物多様性保全,二酸化炭素の固定などに配慮した在来種による法面樹林化の期待も大きい。本報告は,未分解のチップを利用することが可能なSEGサンソイル工法に苗木植栽工を組合わせた樹林化実験に関するものである。SEGサンソイル工法における苗木の生存率,樹高成長は,従来の有機質系植生基材と同等であった。資源循環型緑化工(リサイクル緑化工法)における生物多様性緑化対策として,苗木植栽工も有効な手法であることが示唆された。
  • 全 槿雨, 金 潤珍, 廉 圭眞, 李 鍾烈, 金 鎭吉, 江崎 次夫
    原稿種別: 技術報告
    2008 年 34 巻 1 号 p. 203-206
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    おが屑を用いたリサイクル緑化工法を開発するため,室内での人工降雨実験と現地適用実験を行った。実験結果から,本工法は物理的・構造的な安定性が非常に高く,導入植物の発芽能力と被覆率の推移等においても有効であることが確認され,今後のリサイクル緑化工法として効果的に利用できるものと判断された。特に,発芽個体数は緑生土工法に比べ,廃流木粉砕材緑化工法が約6.5倍多く,被覆率もI~II等級高い値を示していたことから,おが屑を用いたリサイクル緑化工法は早期緑化に效果的であることが明らかとなった。
  • 堀江 直樹, 石垣 幸整, 福永 健司
    原稿種別: 技術報告
    2008 年 34 巻 1 号 p. 207-210
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    連続繊維補強土は,砂質土とポリエステル製の連続した繊維との混合土で,セメントを混合せずに強いせん断抵抗を有し,法面保護用補強土材として用いられる。連続繊維補強土を水辺などに適用する場合,水理作用に対し植生が定着するまでの保護対策として,ネットで表面を保護したり少量のセメントを添加することがある。セメントの混合は,アルカリ害や土壌硬度が高くなり,植物の生育に影響を及ぼすことが考えられた。そこで,生育基盤としての適正を把握するため,セメントの混合量を変化させた材料のpH値と土壌硬度,植物の生育性に関する実験を行い,その結果,砂にセメントを混合した材料は,強アルカリで土壌硬度が高くなり,植物の生育を抑制することが確認されたので報告する。
  • 顧 衛, 斉藤 誠, 陶 岩, 劉 楊, 山田 守
    原稿種別: 技術報告
    2008 年 34 巻 1 号 p. 211-214
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    中国半乾燥地域の中部に位置する内蒙古自治区赤峰-通遼高速道路において,2層吹付け工+保育ブロック苗移植工法を採用し,岩盤法面における植生回復技術に関する実験的研究を行った。施工3ヵ月後と9ヶ月後の調査結果より,植物種数が平均7種,植生被覆率が平均78 %,木本の樹高が20~50 cmであり,明らかな亀裂や侵食の痕跡はないことが分かった。しかし,雨の少ない半乾燥気候の本調査地においては,法面植物に対する水の供給,群落の安定性,周囲自然植生への遷移などが今後の問題として残った。
  • 田中 淳, 堀江 直樹, 早川 信光
    原稿種別: 技術報告
    2008 年 34 巻 1 号 p. 215-218
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    施工後約10年が経過してクズに覆われた緑化法面において,使用方法が異なる3種類の除草剤(散布・滴下・挿入)を選択し,駆除手法確立のための試験施工を実施した。その結果,全面散布タイプの除草方法では,クズ以外の植物にも影響を与えるが,1回の散布でも翌年5月に再生した株頭はなかった。株頭処理タイプの滴下型では,翌年の5月には若干再生した株頭が確認された。挿入型では,再生した株頭は確認されなかった。しかし,施工時期によっては滴下型の効果が期待できる場合もあった。除草時期と除草剤の特性,クズの生態などを考慮することで,緑化法面におけるクズを駆除できる可能性が示唆された。
  • 入山 義久, 高山 光男, 橋爪  健, 村岡 哲郎
    原稿種別: 技術報告
    2008 年 34 巻 1 号 p. 219-222
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    前報に続き,外来植物防除試験の3年目の調査を行った。シバムギ草地中に,育苗した牧草と在来野草を定植して競合力を検討した結果,牧草ではオーチャードグラスおよびアルファルファ,在来野草ではエゾヨモギおよびセンダイハギの被度が高まり,シバムギの被度が低下したことから,これら4種をシバムギに競合できるカバープランツの有望種として選定した。他方,オーチャードグラスが主体のイネ科牧草法面において,在来野草を播種して自然植生への回復を検討した結果,エゾヨモギ,オトコヨモギ,ノコギリソウの被度が高まったことから,これら3種を有望種として選定した。またその導入種の定着を促す技術として,播種前のグリホサート剤散布,翌年以降のフルアジホップP剤散布の組合せが有効であった。
  • 島田 博匡
    原稿種別: 技術報告
    2008 年 34 巻 1 号 p. 223-226
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    三重県尾鷲地域のウラジロに覆われた再造林放棄地の森林再生を目指し,天然更新と播種更新による更新木導入の可否を検討した。再造林放棄地においてウラジロを刈り払った後にスダジイ,アカガシ,アラカシ,クスノキの種子を播種し,播種した種子から更新した稚樹の消長と樹高成長を3年にわたって追跡調査したところ,更新率,生残率は低く,生残稚樹の樹高成長もウラジロによる被陰の影響を受けて不良であった。また,同時に刈り払い後に天然更新した稚樹の調査を行ったが,天然更新で得られた稚樹数はわずかで,高木性広葉樹はほとんどみられなかった。これらの結果から,天然更新と播種更新の有効性は低く,森林再生に必要な稚樹数を確保することは困難であり,苗木の植栽によって更新木を導入する必要があることがわかった。
  • 田中 賢治, 朝日 伸彦, 杉本 弘道, 長山 泰秀
    原稿種別: 技術報告
    2008 年 34 巻 1 号 p. 227-230
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    島根県の森林環境税を用いた森づくり資源活用実践事業において,飯石郡内の林業家が整備している森林(樹齢30~50年生)内で森の健全度評価を平成19年8月に行った結果をとりまとめたものである。調査対象とした森林は,整備(間伐,枝打ち)および未整備のスギ,ヒノキ林を対象としており,立木や下層植生の調査に森林土壌の理化学性を加えることで,間伐,枝打ち等の森林整備の定量的な評価を試みた。
  • 高橋 輝昌, 及川 尚美, 岡田 悠, 小林 達明
    原稿種別: 技術報告
    2008 年 34 巻 1 号 p. 231-234
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    千葉県松戸市において,落葉広葉樹の街路樹を対象に,街路樹の生育状況と植栽基盤土壌の理化学的性質を調査し,それらの関係について検討した。浅根性の樹種では深根性樹種に比べて土壌深30 cm以深の土壌硬度が大きかった。健全度の高い街路樹の土壌は低い街路樹よりも有機物含有量が多く,表層土壌の硬度が大きい傾向にあった。健全な街路樹は根系の発達によって,表層土壌を締め固め,また,樹木から土壌への有機物供給も盛んであると推察された。
  • 佃 千尋, 加藤 陽子, 高橋 輝昌, 小林 達明
    原稿種別: 技術報告
    2008 年 34 巻 1 号 p. 235-238
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    緑地の樹木管理で発生する剪定枝葉をチップ化して公園に敷き均した際の,敷き均し後経過年数の違いによるチップ材の分解特性とチップ材下の土壌の化学的性質の変化を調査した。その結果,チップ材の分解特性は敷き均し後2~3年で最も活発になり,有機物分解によって植物に可給態養分を供給するチップ材の効果は敷き均し3~4年目で弱まることが示唆された。
  • 藤崎 健一郎, 長谷川 秀三
    原稿種別: 技術報告
    2008 年 34 巻 1 号 p. 239-240
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    長谷川式土壌貫入計は深さ100 cm 程度までの土壌硬度を簡易に測定できる器具で,土壌硬度と植物生育の関係を求める調査等によく利用されている。しかし従来の測定結果図化方法ではグラフの幅が大きくなり,報告書などにおいて頁内に少数の測定結果しか並べることができなかった。そこで測定結果の表示方法を,柔らか度の判断規準に従い区分して深さに応じて表すことによりグラフをスリム化し,多数の調査地点の測定結果を並べて比較できるようにした。図化方法は市販の作表ソフト(エクセル)を利用した簡易なもので,深さに応じた柔らか度の程度を濃淡で自動的に描き分けるようにした。作図用の表はインターネットによりホームページから自由にダウンロードして利用できるようにした。
  • 辻 盛生, 宮坂 均, 奥畑 博史, 山田 一裕, 平塚 明
    原稿種別: 技術報告
    2008 年 34 巻 1 号 p. 241-244
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/10
    ジャーナル フリー
    小型植生浮島を用いて水面積約3.7 m2の小閉鎖水域において水質浄化機能を評価した。その結果,浮島によって水面を遮光することで植物プランクトンの量は抑制され,濁度は減少するが,植物プランクトンの炭酸同化作用は活発に行われていた。一方,浮島にアゼスゲを植栽することで,植物プランクトンの活動を抑制し,pH上昇を防ぐ効果が期待できることが明らかになった。さらに,硝化,脱窒の促進,あるいは植物による直接吸収が促され,窒素除去が促進された。リンにおいては,アゼスゲによる直接吸収による浄化傾向が現れた。有機汚濁負荷は主に植物プランクトン由来であり,遮光によって抑制されるものであるが,溶存態の有機汚濁負荷においては,アゼスゲ植栽による除去効果が見られた。 
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