日本最北端の島・礼文島において,地域性系統の植物群落の形成を緑化目標として2000 年11 月に施工した自然侵入促進工のひとつである種子なし厚層基材吹付工(無播種施工)の追跡調査を行なった。その結果,施工10 カ月後,および1 年10 カ月後の施工後初期段階から在来種を主体とする合計24 種の自然侵入が認められた。施工6 年9 カ月後には30 種の植物が確認され,目視による植被率も100% に達し,順調な自然回復と景観保全が図られていることが確認された。また,種子なし厚層基材吹付工の補助工法としてオノエヤナギ(
Salix sachalinensis Fr. Schm.)の挿し木工を併用したところ,越冬後の施工10 カ月後の生存率は56.7±15.3%で,被度3,樹高90.9±10.9 cm に成長していた。その後は自然侵入した草本植物の成長に伴って徐々に衰退する傾向が見受けられたが,挿し木工の併用は風衝地における植生の早期回復にプラスに作用することが示唆された。
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