日本緑化工学会誌
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34 巻, 4 号
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特集
特集
  • 「緑化思想」とその解体―中国内モンゴルの緑化の現場から
    児玉 香菜子
    原稿種別: 特集
    2008 年 34 巻 4 号 p. 610-612
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/11/30
    ジャーナル フリー
    「砂漠に緑を」,「砂漠緑化」などのキャッチフレーズの下,乾燥地を対象とした緑化の多くがボランティアを中心にして植林という形で実施されている。一方で,この緑化そのものが自然環境に負荷をもたらす危険性が指摘されている。こうした現象がおきる背景には,「緑化はいいことだ」,「緑化すべきである」という,緑化行為を無批判に是とする価値観ともいうべき思想があるからではないか。本稿では,シンポジウムで報告した内容と議論をもとに,中国内モンゴルの事例から,内陸乾燥地の緑化の前提となる「砂漠化」現象とその原因,緑化実践について,緑化の対象となる地域に暮らす人びとの視点からこの緑化思想の再考を試みる。
  • 斜前から見たNPO の緑化ボランティア活動
    前中 久行
    原稿種別: 特集
    2008 年 34 巻 4 号 p. 613-616
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/11/30
    ジャーナル フリー
    中国山西省で緑化活動しているNPO の活動内容を紹介した。特徴は1)カウンターパート内での専門部署の設置,2)苗畑と見本園,実験研修施設,宿舎を備えた環境林センターの設置,3)住民の収益となるアンズ果樹園造成への協力,4)放牧等の停止による植生回復を確認する自然植物園の設置などである。会員は男性が70%,50 歳代以上が過半をしめる。毎年の会員継続率は約85%,加入後5 年以上の会員はほぼ安定して継続手続きしており,その割合は入会者数の約25% 程度である。緑化ツアー参加者の日記分析によれば,65% の人が植樹・緑化に関して記述している。約30% の人が風景・風物や生活・文化,観光それぞれについては記述し,緑化ツアーがエコツアーの性格を強く帯びていることを示している。
  • 中国ホルチン沙地における緑化と環境教育活動
    吉崎 真司
    原稿種別: 特集
    2008 年 34 巻 4 号 p. 617-622
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/11/30
    ジャーナル フリー
論文
  • 呉 初平, 安藤 信
    原稿種別: 論文
    2008 年 34 巻 4 号 p. 623-630
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/11/30
    ジャーナル フリー
    広葉樹の除伐と林床の落葉落枝(L層) を除去する作業が行われた京都市大文字山のマツ枯れ被害林において,1m2 の処理1 区(A0 層すべてを除去) ,処理2 区(A0 層除去後に50 cm 幅の2 段の水平階段造成) ,対照区の3 つの試験区からなる調査区を5 つ設置し,アカマツの播種試験を行った。その後,4 年間追跡調査を行い,実生の定着と成長に及ぼす地表処理の効果を検討した。その結果,2 年目までは処理区間では有意差がみられなかったが,2 つの処理区では対照区より実生の発生率,生残率,成長量がいずれも大きくTR 比が小さかった。これは,A0 層の除去によって根の鉱質土壌への到達が促進され,乾燥や菌による枯死率が低下するとともに,根系の発達が容易であったためと考えられた。一方,4 年目には対照区とシダ植物(ウラジロ) の旺盛な成長がみられた処理2 区では下層植生の回復が著しく,処理1 区と比較して実生の成長量が大幅に低下した。これは,繁茂した下層植生によって実生が被陰され,その成長が抑制されたためと考えられた。以上のことから,施業後4 年間の初期段階においてはA0 層の除去はアカマツ実生の更新を促進させるが,階段の造成は,下層植生の回復を促し,アカマツ実生の成長を抑制する可能性があることが示唆された。
  • 前田 純, 冨永 達
    原稿種別: 論文
    2008 年 34 巻 4 号 p. 631-635
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/11/30
    ジャーナル フリー
    緑化植物として優れているチガヤ (Imperata cylindrica (L.) Beauv.) の各々1 穂由来の3 実生集団について,草丈,分げつ数,根茎数,器官別乾物重などを調査した。調査した形質について,実生集団は幅広い変異を示し,それぞれの形質のサイズクラスごとの頻度分布のパターンは由来する穂によって異なっていた。草丈と根茎乾物重および平均根茎長には正の相関が認められたが,草丈が低く根茎数が多いなど緑化資材として優れた特性をもつ個体も認められた。1 穂由来の実生個体間に大きな変異が認められたことは,該当する地域由来の個体からのり面緑化などに適した系統選抜の可能性を示唆した。
  • 阿拉 坦花, 坂本 圭児, 三木 直子, 廣部 宗, 吉川 賢
    原稿種別: 論文
    2008 年 34 巻 4 号 p. 636-640
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/11/30
    ジャーナル フリー
    本研究は,異なる光条件で生育させたケネザサを用いて,個葉の最大光合成速度の季節変化を調べ,葉の寿命との関係を検討し,光環境に応じた光合成特性を明らかにすることを目的とした。その結果,暗い処理区に比べ,明るい処理区では最大光合成速度が春と夏に高いが,葉の寿命が短く冬にかけて急激に葉の生残率が低下する傾向があった。それに対して,暗い処理区では,最大光合成速度は低いが,葉の寿命は長かった。夏季から翌年冬,および夏にかけて葉の生残率が高く,最大光合成速度についても前年より低下の程度が小さかった。
  • 今西 亜友美, 柴田 昌三, 今西 純一, 寺井 厚海, 中西 麻美, 境 慎二朗, 大澤 直哉, 森本 幸裕
    原稿種別: 論文
    2008 年 34 巻 4 号 p. 641-648
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/11/30
    ジャーナル フリー
    ヒノキ林化した都市近郊二次林をアカマツまたは落葉広葉樹主体の林相に転換させることを目的として,母樹を残した小面積 (0.06~0.09 ha) の伐採を行った。3 つの伐採区 (上部,中部,下部) のいずれにおいても伐採後に消失した種はなく,伐採後3 年目には10 種以上の種数の増加が確認された。中でも,落葉広葉樹林の主要構成要素を含むブナクラスの種が上部と中部では6 種,下部では4 種増加し,林相転換に一定の効果が得られたと考えられた。前生稚樹は伐採後にほとんどの個体が枯死し,伐採後の林相には大きく寄与していなかった。散布種子についてはその大部分がヒノキで占められており,風散布種であるヒノキはプロット内に多量の種子を散布することで伐採後の林相に大きな影響を与えると考えられた。また,伐採後3 年目には新たな種の出現がほとんどみられなかったことから,林相が単純なヒノキ林では周囲からの新たな種の供給は少ないと考えられた。伐採面積の最も大きかった上部の伐採区 (0.09 ha) では,相対日射量が60% 以上あり,ヒノキの発芽と生存率が抑制されたと考えられ,アカマツとヒノキの混交する林相への転換が期待された。一方,中部と下部の伐採区では,全実生個体数のうちヒノキが50% 以上を占めており,今後,選択的除去などの人為的な管理が必要であると考えられた。
技術報告
  • 吉田 寛, 氏家 豊和
    原稿種別: 技術報告
    2008 年 34 巻 4 号 p. 649-653
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/11/30
    ジャーナル フリー
    地域性系統による植物群落の形成を緑化目標とする種子なし厚層基材吹付工に関するこれまでの施工実績から得られた知見等をもとに,種子なし生育基盤の造成と,施工後初期段階における種子捕捉効率と侵食防止効果を高める立体型のネットを組み合わせた新しい自然侵入促進工 (工法名:レミフォレスト工法) を開発した。基礎的な試験を行なった結果,1) 立体型の種子定着促進ネット(商品名:シードキャッチャー) の併用により種子捕捉効果が向上すること,2) アルカリ障害が発生しないセメント系侵食防止材 (商品名:レミコントロール) の使用により耐侵食性と耐久性を有する種子なし生育基盤が造成できることが確かめられた。レミフォレスト工法は,吹付工法とマット工法のタイプの自然侵入促進工がそれぞれ有していた問題を解消し,法面の安定を損なうことなく自然回復速度を速める効果が期待される。
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