日本緑化工学会誌
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36 巻, 4 号
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特集
  • 2011 年日本緑化工学会シンポジウム特集公開シンポジウム「斜面緑化の過去・現在そして未来」の概要
    大澤 啓志, 吉田 寛
    原稿種別: 特集
    2010 年 36 巻 4 号 p. 455
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/12/07
    ジャーナル フリー
    わが国の斜面緑化技術(法面緑化・治山緑化)は,高度経済成長に伴う公共事業の追い風を受けて日本緑化工学会とともに発展してきた。しかし,1989 年に始まったバブル崩壊以降,斜面緑化に関係する法面保護工事の受注額は1998 年をピークに減少の一途をたどり今日に至っている。その一方で,緑化植物問題(要注意外来生物リスト,環境省2005)を契機に,斜面緑化に対する要求は,侵食防止という一義的目的から法面防災と自然回復を図る多面的目的へと着実に変わりつつある。特に,2007 年に4 省庁による緑化植物の取り扱いに関する検討の結果示された「生物多様性に配慮した緑化」の分野は,斜面緑化業界が対応可能な新領域としての発展が期待されている。しかしながら,現場における緑化工事の現実は,外来種(イネ科外来牧草類や外国産在来種)の使用を前提とする旧来の市場単価方式という経済的な壁,在来種という名のもとで使用され続けられている外国産在来種の存在をはじめとする課題を抱え,生物多様性に配慮した自然回復緑化の普及は必ずしも着実に進んでいるとはいえない状況である。特に,地域性系統を踏まえた在来種緑化による自然回復という視点での成績判定や事業評価の方法について,その確立を望む声が増しつつある。本シンポジウムでは,生物多様性国家戦略2010,URBIO 2010,COP 10 をはじめ,自然環境に対する社会的認識が着実に高まりつつある中にあって,依然としてみどりの質よりもコストを重視した緑化工事が目につく斜面緑化をテーマに,生物多様性に配慮した自然回復緑化の普及のための前向きな議論を行うことを企画した。
  • 地域生態系保全のための緑化技術の開発
    松江 正彦
    原稿種別: 特集
    2010 年 36 巻 4 号 p. 456-461
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/12/07
    ジャーナル フリー
  • 法面の自然回復緑化が抱える問題点の実態と今後のあり方
    山田 守
    原稿種別: 特集
    2010 年 36 巻 4 号 p. 462-466
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/12/07
    ジャーナル フリー
  • 生物多様性時代における緑地の評価手法
    今井 祥之
    原稿種別: 特集
    2010 年 36 巻 4 号 p. 467-470
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/12/07
    ジャーナル フリー
  • 生物多様性に配慮した植物材料供給の実態と今後のあり方
    入山 義久, 立花 正, 三輪 哲哉, 鈴木 玲, 高山 光男
    原稿種別: 特集
    2010 年 36 巻 4 号 p. 471-474
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/12/07
    ジャーナル フリー
    生物多様性に配慮した植物材料は,地域性系統,雄性不稔系統や短命系統の外来牧草が挙げられる。地域性種苗については,安定的な生産や供給のために,種子の精選方法,硬実や休眠打破を含む発芽や育苗の方法の解明が進められてきた。一方で,苗生産業者の在庫リスクや地域性種苗であることの保証についての課題も解決していかなければならない。また,雄性不稔系統や短命系統の外来牧草については,植物材料は開発されているものの,緑化に用いた事例が少ないため,今後,更なる知見の集積が必要な段階である。本稿では,これらの緑化植物に関して,現状および問題点を整理し,生産者側からみた将来の方向性について考察する。
論文
  • 鄭 矩, 藤井 義晴, 吉崎 真司, 小堀 洋美
    原稿種別: 論文
    2010 年 36 巻 4 号 p. 475-479
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/12/07
    ジャーナル フリー
    オニグルミのアレロパシー活性がニセアカシアの初期生長に及ぼす効果を明らかにするために,混植実験と根圏土壌法による検定を行った。混植実験において,オニグルミとニセアカシアを混植した区では,対照区に比べて,ニセアカシアの乾物重量が約50% に低下した。また, 混植区の土壌は,1.2%×10-6g g-1 のユグロンが含まれ,ニセアカシアの初期生長を50% 阻害するユグロンの量とほぼ一致した。根圏土壌法による検定では,ニセアカシアの初期生長は根域土壌よりも根圏土壌で阻害される傾向を示し,根に近い土壌ほど生長が低下することから,根から出るユグロンが作用していることが強く示唆された。以上のことから,オニグルミが生育する土壌では,オニグルミの根のアレロパシー活性により,ニセアカシアの初期生長を阻害する可能性があることがわかった。
  • 淑 敏, 日置 佳之
    原稿種別: 論文
    2010 年 36 巻 4 号 p. 480-489
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/12/07
    ジャーナル フリー
    日射遮蔽棚による駐車場の熱環境改善効果を定量的に評価するため,アスファルト舗装された駐車場に日射遮蔽棚を設置して,その日陰の地表面温度,駐車した車の車内・車体温度等を測定し,日向及び芝生地のそれと比較した。その結果,夏期の昼間,日射遮蔽棚下では,地表面温度が日向と比べて,最大22.2℃,芝生地の地表面よりも2℃~5℃ 程度低かった。また,車内・車体温度は,12℃~30℃ 程度低く,日陰の車内気温は,外気温とほとんど同じになる時もあった。日射遮蔽ネットの被覆率は,地表面及び車内・車体温度低減効果に強く影響したが,被覆率が80% 以上になると効果は頭打ちとなった。夏期の日中,ツル植物の葉からの蒸散作用により,葉表面温度は低く維持されていた。また植物は非生物的な日射遮蔽素材よりも輻射熱低減効果が大きいことが明らかになった。
短報
  • 久保 満佐子, 柏木 亨, 松江 正彦
    原稿種別: 短報
    2010 年 36 巻 4 号 p. 490-494
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/12/07
    ジャーナル フリー
    伐採と薬剤によるイタチハギの駆除処理を行った栃木県真岡市の切土のり面で,処理後のイタチハギの再生状況を調べた。駆除処理は2007 年7 月に行い,処理当年の2007 年10 月(以下,処理当年)と2 年後の2009 年8 月(以下,処理2 年後)にイタチハギの個体数と萌芽本数,主幹の直径を調べ,処理2 年後には樹高と果序数,種子数も調べた。処理2 年後にイタチハギは樹高約2m の群落を再生し,個体数は処理当年より多くなっていた。イタチハギは処理当年に多くの萌芽を発生させ,処理2 年後に萌芽本数は減少していたが,主幹の直径は処理当年と同程度にまで成長していた。さらに,再生した個体の約半分が結実していた。本調査で行った薬剤処理では,萌芽により再生した個体を駆除するには至らなかった。また,本のり面の伐採を伴った駆除処理では,イタチハギが萌芽により群落を再生し,さらに新規に個体が侵入する機会となった可能性がある。
技術報告
  • 栗林 祐大, 高橋 輝昌, 池田 昌義, 沓澤 武
    原稿種別: 技術報告
    2010 年 36 巻 4 号 p. 495-499
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/12/07
    ジャーナル フリー
    近年の法面緑化では,堆肥化,チップ化した現地発生木材の基盤材としての活用が行われているが,植物の生育阻害などの問題が懸念される場合があり,導入技術には検討の余地がある。また,緑化目標の達成度は植生調査のみから測られることが多く,基盤や他の生物について経年変化を調べることは少ない。自然回復緑化への施工法の変化に対応するには,基盤や土壌生物の変化について調査し,物質循環系の形成や生物相の多様化といった観点から,法面緑化地を評価することが有効であろう。そこで,膨軟化処理を行った木材チップを施用した法面緑化の特性を,植生,植栽基盤および土壌生物について施工後6 年目までの変化を定量的に把握することで検討した。結果として,施工後5ヶ月でC/N 比が平均約40 から約30 まで下がり,植生被度は施工後15ヶ月で平均70% を超えた。本工法では少なくとも施工後4 年で植物量,C/N 比は安定したが,施工後3ヶ月間の植物量が少ない期間に,窒素溶脱が確認された。微生物活性は施工後一定の値で維持され,植物の増加に伴う物質循環系の形成が推察された。ミミズの増加と基盤の理化学性や植生状況の関係は説明できなかった。
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