日本緑化工学会誌
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39 巻, 1 号
1号
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論文
  • 加藤 真司, 桑沢 保夫, 石井 儀光, 樋野 公宏, 橋本 剛, 小木曽 裕, 持田 太樹
    原稿種別: 論文
    2013 年 39 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    緑のカーテンは,夏季の日射を遮るために屋内の温熱環境改善効果に期待が持たれている。しかし,緑のカーテン実践者の家庭の電気使用量から導いた節電効果に比べて,実験による測定値から算定した節電効果はより小さな値を示す傾向にある。このため,緑のカーテンの有無が心理的に感じる温冷感に影響するという仮定のもとに,緑のカーテンを設置した部屋とそうでない部屋における温冷感を被験者に申告させる実験を,UR都市機構が所有する集合住宅で実施した。その結果,温熱環境指標SET∗が等しい場合に,緑のカーテンを設置した部屋では被験者の温冷感が相対的に低い値を示し,緑のカーテンの有無が人体の心理反応に及ぼす影響によって室温を低く感じ取る効果が確認できた。
  • 上町 あずさ, 福井 亘, 下村 孝
    原稿種別: 論文
    2013 年 39 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    国内には日本に自生するテイカカズラ,ケテイカカズラおよび中国などを原産地とするトウキョウチクトウの3 系統が流通している。RAPD 法によりこれら3 系統間の系統特異的なマーカーを検出し,系統識別の指標を得た。得られたRAPD マーカーを利用して,国内に流通している緑化用種苗や園芸品種の識別を試みた。その結果,これまで形態からは明らかに出来ていなかった個体を含め,これらの系統を明らかにすることができた。また,外国産のケテイカカズラが緑化用種苗として国内で流通していることが明らかとなった。さらに,テイカカズラ類を混植している圃場で得られた種子由来の後代をRAPD 法により雑種検定したところ,テイカカズラとケテイカカズラとの交雑個体や,外国産のケテイカカズラ由来の園芸品種と国内産のケテイカカズラとの交雑個体が検出され,緑化の現場で植栽されたテイカカズラ類が自生種と交雑する可能性が示唆された。
  • 森川 政人, 相澤 章仁, 小林 達明
    原稿種別: 論文
    2013 年 39 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    トンボ幼虫の種数及び個体数は,生息池ごとに異なることが分かっている。本研究では,その要因として周囲の植生から供給される落葉の有無が影響しているという仮説を立て,水槽を用いた実験で検証を試みた。トンボ幼虫の個体サイズや種などが異なる環境において,それぞれ水槽内にリター有区と無区を作り,群集形成メカニズムを検証した。結果,リターの存在は,個体サイズが小さいヤゴにとって,個体サイズが大きいヤゴから隠れる場所となることにより,リター有区では,個体サイズが小さい種のヤゴの生存率が有意に増加した。以上より,リターの存在がトンボ幼虫群集の形成に影響を及ぼしていることが明らかになった。
  • 岩永 史子, 山本 福壽, Ailijiang MAIMAITI, 吉田 佑美, 森 信寛, 谷口 真吾, 山中 典和
    原稿種別: 論文
    2013 年 39 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    西表島に生育するマングローブ (オヒルギ,ヤエヤマヒルギ,マヤプシキ,ヒルギダマシ) の葉内浸透調節物質と陽イオン濃度を調査し,(1) 河口に生育する4 種の種間比較,(2) それらの日中と夜間の比較,および (3) 河岸に生育するオヒルギとヤエヤマヒルギ2 種の比較を行った。後良川河口の4 種で,葉内 Na+:K+ 比と糖類・糖アルコール濃度との明らかな相関は認められなかった。日中の葉の総可溶性糖濃度はヤエヤマヒルギとヒルギダマシで夜間よりも上昇した。河口~中流に分布するオヒルギと,中流~河口に分布するヤエヤマヒルギの浸透調節物質濃度と河川水中の塩分,pH,溶存酸素濃度との間に強い相関が示されたが,葉内 Na+:K+ 比との間に強い相関は認められなかった。以上の結果から,各マングローブの浸透調節物質の濃度は,日中と夜間での変化を示す樹種がある一方,分布域内の葉内浸透調節物質の濃度に明らかな差異がないことがわかった。
  • 執印 康裕, 松英 恵吾, 有賀 一広, 田坂 聡明, 堀田 紀文
    原稿種別: 論文
    2013 年 39 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    宇都宮大学演習林内のヒノキ人工林分 (面積3.1km) を対象に,降雨及び林齢の空間分布の経時変化が表層崩壊発生に与える影響を検討した。対象期間は1979 年から2011 年までの33 年間である。対象地では1998 年の8 月末豪雨によって20 年生の林分を中心に表層崩壊が多発している。33 年間の連続した時間降雨データを24 時間連続無降雨で区切り,2303 個の降雨イベントに区分した。うち上位33 個の一雨雨量の降雨を入力値とするモデル計算を行った。使用モデルは地下水位と林齢に対応した根系土質強度補強効果を組み込んだ分布型崩壊モデルである。本モデルは流域が十分に湿潤状態にあることを想定しているため,計算開始条件として確率評価による先行降雨指標を導入した。検討の結果,的中率は高くないものの,崩壊が発生した1998 年8 月時点で最も崩壊危険性が高く,さらに同一降雨に対しては1981 年時点が最も崩壊危険性が高いことが示され,本手法のある程度までの有効性を確認した。
  • 山田 晋, 根本 正之
    原稿種別: 論文
    2013 年 39 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    河川堤防の築堤の際,法面はシバなど単一の植物種を用いて緑化されるが,生物多様性復元・創出の観点に立脚しながら多様な植物種を導入する手法は知られていない。そこで,堤防緑化に用いられる切りシバの目地に,半自然草地構成種(ノハラアザミ,ユウガギク,ツリガネニンジン,アキノタムラソウ)を播種するとともに,土壌タイプ,播種密度が異なる実験区を設け,張りシバの有無,土壌タイプ,播種密度の違いが播種した種の定着に及ぼす影響を,1シーズン調査した。供試種の定着率は種により大きく異なった。定着率の高いノハラアザミとユウガギクは,播種直後,裸地に播種した実験区よりも張りシバ地における定着率が有意に高かった。その後,シバとの競合により,供試種の定着率に及ぼす張りシバの有意な効果は認められなくなった。畑土壌を用いた実験区は河川土壌よりも発生雑草量が多く,供試種の定着率はより低かった。ノハラアザミについては,播種密度が低いほど定着率が有意に高かった。
  • 田中 晴飛, 高橋 遥香, 岩本 紗弥, 原 鋭次郎, 増田 達志, 衣笠 利彦
    原稿種別: 論文
    2013 年 39 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    Caragana korshinskii Kom. はマメ科の灌木で,中国北部に自生し砂丘緑化によく用いられる。しかし C. korshinskii による砂丘固定の効果が長期間持続するには,種子による天然更新が必要である。そこで中国内モンゴル自治区の砂丘緑化地において,植栽された C. korshinskii の種子散布と実生の発生および枯死を3 ヶ月にわたって調査し,天然更新の可能性を評価した。C. korshinskii の実生の発生と枯死は,降雨にともなう土壌含水率の変化に大きく影響されていた。1 個体が散布した種子のおよそ6 %に相当する実生が発生し,そのうち約半数がその年の秋まで生残した。内モンゴルの砂丘緑化地では,植栽された C. korshinskii の天然更新は可能であるものの,夏期の降雨パターンに大きく影響されると考えられる。本研究は家畜の侵入を制限して行われたため,今後は家畜による食害の影響も検討する必要がある。
  • 香口 成美, 岡田 憲和, 山本 福壽, 山中 典和
    原稿種別: 論文
    2013 年 39 巻 1 号 p. 44-49
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    中国内蒙古自治区の毛烏素沙地で緑化に利用される Salix psammophila C. Wang et Ch. Y. Yang とS. matsudana Koidz.の当年生挿し木苗を水耕栽培によって育成し,NaCl (0,50,100 mM) による塩ストレスが成長,光合成,および葉内のベタイン蓄積におよぼす影響を比較した。その結果,両樹種とも100mM のNaCl 処理区で成長,および光合成は強く抑制された。50mM,100mM の処理区では,両樹種とも根にNa+蓄積が見られた。S. psammophila の葉の100mM 処理区でNa+がわずかに増加したが,S.matsudanaでは顕著に増加した。両樹種の葉におけるグリシンベタイン含有量は100mM 処理区で,β-アラニンベタインは50mM 処理区で増加した。一方,同時にジャスモン酸メチル (0,1,5,10 mM) の散布処理を行い,耐塩性に関わる生理的効果を検討したが,ベタイン類集積を含め,処理の影響はほとんどなかった。
  • 與猶 久恵, 内田 泰三, 荒瀬 輝夫, 早坂 大亮
    原稿種別: 論文
    2013 年 39 巻 1 号 p. 50-55
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    本研究では,絶滅危惧種コギシギシの保護あるいは保全に資する基礎的知見を得ることを目的とした。ここでは,コギシギシ痩果の外部形態ならびに発芽特性について検討を行った。後者においては,高-低温湿層処理ならびに乾燥暗所処理が発芽に及ぼす影響から考察した。その結果,コギシギシの痩果は,3 枚の花被片からなり,それぞれの縁に長い刺を有する点に特徴づけられ,エゾノギシギシの痩果に近い形態にあると考えられた。しかし,それぞれの花被片に粒体が付属する点はエゾノギシギシと異なった。一方,高-低温湿層処理ならびに乾燥暗所処理が発芽に及ぼす影響は認められず,痩果の生理的休眠は浅いものと推察された。
  • 山瀬 敬太郎, 関岡 裕明, 藤堂 千景
    原稿種別: 論文
    2013 年 39 巻 1 号 p. 56-61
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    自然植生復元に有効な土壌シードバンクのポテンシャルを把握するため,兵庫県下3 地域の同一箇所から,2005 年と2012年に森林表土を採取し(計255 地点),実生出現法により種子の密度と種数,組成を比較した。密度と種数を応答変数とし,気候型,林型,採取年,斜面型,傾斜,リター被覆率,土壌硬度,土壌含水率を説明変数,採取地点を変量効果として,一般化線形混合モデルを構築して解析した。密度は,採取年と斜面型の2 要因で推定され,2005 年では採取地点の斜面型が谷>直線>尾根の順に高かったが,2012 年では斜面型に関係なく低下した。組成をみると,人里要素や草原要素の密度が大きく低下する一方で,雑木林・夏緑樹林要素や照葉樹林要素はほとんど変化がなかった。時間経過に伴い密度と組成に大きな変化がみられたことから,復元目標の見直しが必要なことやポテンシャルの評価が不可欠なこと,表土流亡を軽減させる管理が必要なことがわかった。
  • 那須 守, 岩崎 寛, 高岡 由紀子, 林 豊, 金 侑映, 石田 都
    原稿種別: 論文
    2013 年 39 巻 1 号 p. 62-67
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    都心の商業施設の屋上緑地における利用者を対象としたアンケート調査の結果から,利用者の行動と生活における緑地の効果に関する意識を分析し,屋上緑地の効果,及び利用行動と効果の関係から行動の及ぼす効果への影響を明らかにした。その結果,8 割の利用者はストレス緩和や景観の効果を期待通りに得ていること,散策を主とする行動の多様性が生活における効果を複合的に向上させることが明らかになった。都心の商業施設における立地性と集客性,屋上という囲まれた空間による安全性から,本商業施設に整備された屋上緑地は,日常生活において緑地に期待されている精神的充足の効果を,様々な利用者が都心での活動の中で手軽に得られる場として社会的役割を担っていると考えられた。
  • 立石 麻紀子, 宮崎 寛大, 山本 福壽, 毛 惠平, 岡田 憲和, 山中 典和
    原稿種別: 論文
    2013 年 39 巻 1 号 p. 68-73
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    中国黄土高原や内蒙古の乾燥地域では,強風の影響を抑え,砂の堆積や流動,地上面の風食を防ぐことを目的としてPopulus 属を用いた防風林造成が進められている。植栽に用いられるPopulus 属の中でも,小葉楊 (Populus simonii) は埋砂により成長が促進される有用樹種と考えられている。本研究は,砂移動が小葉楊の水利用・成長に及ぼす影響の定量的評価をめざし,内蒙古クブチ砂漠において埋砂の影響を受けている砂丘斜面上と埋砂の影響のない平坦地の小葉楊個体群の間で水利用特性及び成長量を比較した。両地点で樹液流速は同程度であり,飽差に対する応答にも顕著な違いは見られなかった。しかし,個葉スケールでは気孔コンダクタンス,蒸散速度ともに斜面上で小さく,水利用効率が高いことからより乾燥に対応していると考えられた。単木の樹液流量は斜面上の個体群で大きく,個体サイズが反映されていた。
  • 七海 絵里香, 森崎 翔太, 大澤 啓志
    原稿種別: 論文
    2013 年 39 巻 1 号 p. 74-79
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    資料の少ない古代~中世の緑化文化を検討するため,主な和歌集に詠まれている植物および植物に対する行為を分析した。その結果,万葉集および第1~8集の勅撰和歌集の中で植物は計4,171首,植物に対する行為は計1,449首詠まれていた。時代区分毎にそれぞれ割合を求めたところ,奈良時代から平安時代にかけて,詠まれた植物の嗜好がハギからサクラに転換していた。緑化に関わる行為としては,植栽として「植える」「蒔く」「刺す (挿し木) 」,植生管理として「刈る」「伐る」「抜く」「焚く・焼く」「切る」が認められた。また,奈良時代には植物との多様な関わりが存在していたが,それ以降の時代では植栽という行為に対して意識が薄れていったことが示された。
  • 辻  盛生, 小山 大輔, 高橋 克明, 鈴木 正貴
    原稿種別: 論文
    2013 年 39 巻 1 号 p. 80-85
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    急勾配護岸用の緑化型護岸ブロックは,その形状によって植被率に違いが見られる。ここでは,同一河川に施工された複数の急勾配型の緑化型護岸ブロックにおける8年後の植被率から緑化性能を評価した。その結果,護岸ブロックの形状からスキマ型,ポット型,ハコ型に分類でき,開口部面積平均値はそれぞれ0.06,0.07,0.25 m2/m2,植栽基盤土砂量の平均値は0.29,0.13,0.33 m3/m2 であった。植物が十分に生育した9月の平均植被率は,ポット型が約24 %と低く,緑化を目的とした使用には問題があると考えられた。開口部面積の広いハコ型の植被率は70 %と高く,各区画共に木本の侵入が見られた。したがってハコ型は木本の侵入を前提とし,侵入した木本を活用した川づくりに有効と考えられた。スキマ型は,隣接する区画において植被率に差が見られ,平均で約41 %であった。草本は外来種が多くを占め,在来種による緑化を進めるための対策の必要性が示唆された。
  • 永松 大, 山中 典和, 福本 愛弓, 杜 盛, 候 慶春, 張 文輝
    原稿種別: 論文
    2013 年 39 巻 1 号 p. 86-91
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    中国内陸部に広がる黄土高原の半乾燥地における斜面の緑化状況を,現地で撮影した38 地点の景観画像解析により検討した。南向きと北向きの斜面を同一条件で撮影した画像をもとに,斜面を5 つの植生タイプに分類した。斜面内の各植生タイプ占有割合は斜面方位によって異なり,北向き斜面では広葉樹が占める面積が高く,南向き斜面では裸地が占める割合が高かった。南北斜面と微地形単位を組み合わせると,より湿潤なサイトでは植生タイプに対する地形の影響がより明瞭であり,より乾燥したサイトでは不明瞭であった。南北斜面間差と微地形単位は黄土高原における植生発達の重要な規定要因であり,この方法はこれまで行われてきた緑化方法では緑化困難な場所の抽出に有効と考えられた。
  • 小林 達明, 木村 絵里, 飯塚 和弘, 山本 理恵, 鈴木 弘行, 星澤 保弘, 小竹守 敏彦, 関崎 益夫, 谷口 伸二
    原稿種別: 論文
    2013 年 39 巻 1 号 p. 92-97
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    福島県川俣町山木屋地区の丘陵地落葉広葉樹林林縁法面において,放射性物質の移動防止試験を2012 年6 月~11 月に行った。植生とリターを取り除き,浸食防止工法等を組み合わせた6 つの除染処理区を設定した。処理区では,当初,放射性物質が次第に減少したが,植生の発達によって減少が止まった。4 か月半の間に,処理区面積あたり1.5-8.6 kBq/m2 の放射性セシウムの下方移動が観察された。放射性物質はリターと土砂の形で大部分が下方移動し,その阻止には柵と不織布シートの組み合わせが効果的だった。
  • 飯田 義彦, 今西 純一, 森本 幸裕
    原稿種別: 論文
    2013 年 39 巻 1 号 p. 98-102
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    樹木の開芽フェノロジーは樹木健全性評価の指標として有効とされるが,多個体データによる検討はされていない。奈良県吉野山のヤマザクラ樹林において4 集団102 個体を対象に,花芽と葉芽の開芽フェノロジーならびに樹木活力度を調べた。ほぼ同時期に新規に植栽された集団間の比較によると,出葉日,出蕾日,開葉日,開花日,展葉日,満開日の標準偏差がより大きい集団で生育状況が不良傾向にあることが示唆された。樹木の開芽フェノロジーを指標化することで樹木集団の生育状態を評価できる可能性があり,今後は定量的な生育指標との比較や開芽フェノロジーの客観的な評価手法を検討していく必要がある。
  • 鈴木 哲也, 上野 由樹, 島本 由麻
    原稿種別: 論文
    2013 年 39 巻 1 号 p. 103-108
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    適切な緑地環境の維持管理には,植生に対する環境ストレスの非破壊検出法の開発が急務な技術的課題である。本研究では,気泡運動モデルを用いてAE (Acoustic Emission) 法により検出した植物起源弾性波の周波数特性評価を試みた結果を報告する。水ストレス条件下では,植物体道管部に発生する気液二相流起源の弾性波が検出される。検討の結果,検出されたAE 波の周波数特性は,Rayleigh-Plesset 方程式より評価された周波数範囲と類似していることが明らかになった。このことから,AE 法により検出された弾性波は,水ストレス条件を定量評価できるものと考えられる。
  • 西熱甫江 買買提, 星野 義延, 吉川 正人
    原稿種別: 論文
    2013 年 39 巻 1 号 p. 109-114
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    多摩川の河川敷で繁茂し,分布拡大しているハリエンジュの結実に対する訪花昆虫の役割を明らかにするために,昆虫の訪花頻度の調査と,袋かけおよび人工受粉による受粉実験を行った。30 秒間隔のインターバル撮影で撮影された訪花昆虫の約90%はセイヨウミツバチであった。セイヨウミツバチが撮影された回数とビデオの連続撮影で写った時間とには,高い決定係数を示す正の相関関係が認められ,インターバル撮影による撮影回数は訪花昆虫の訪花時間の推定に利用可能であった。袋かけ処理や自家受粉処理を行った花序ではほとんど結実しなかったことから,ハリエンジュは自家不和合性が強いことがわかった。しかし,セイヨウミツバチの撮影回数と結実率との間には相関が認められず,昆虫の訪花を受けても結実率が低かったことから,結実には昆虫の訪花頻度以外の要因も関係していると考えられた。
技術報告
  • 伊東 日向, 吉崎 真司
    原稿種別: 技術報告
    2013 年 39 巻 1 号 p. 117-120
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    沿岸域に生育する常緑広葉樹の塩水に対する耐性を比較評価する目的で塩水による生育実験を行った。供試苗を塩水により水耕栽培し,植物体内の陽イオンの含有率を測定した。各種の耐性は部位ごとの陽イオンの含有率を測定することで評価した。実験にはクロマツ,シャリンバイ,トベラ,マサキを用いた。実験の結果,トベラが最も地上部への Na+ の移行が抑えられていた。従って,トベラは供試種の中で最も塩水に対する耐性が高い可能性があると結論した。
  • 田崎 冬記
    原稿種別: 技術報告
    2013 年 39 巻 1 号 p. 121-124
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    北海道内の河川においてもハリエンジュ繁茂が各種の問題を引き起こしている。また,道内の河川では,近年,ヤナギ繁茂が著しく,ハリエンジュと同様に適切な管理が求められている。そこで,本調査では,これらの河畔林において冬季に伐株断面への薬剤塗布等を行い,薬剤塗布による河畔林管理の可能性について検討した。その結果,ハリエンジュは伐採のみでは枯死せず, 伐採後8 ヶ月程度で元の樹高の7 割に達する萌芽を複数伸長させた。他方,薬剤塗布ではハリエンジュは7 割が枯死し,生存個体も矮小化した。また,ヤナギでは薬剤塗布により全て枯死した。伐株断面への薬剤塗布は,従来の噴霧型に比べ,水系への薬剤の流出の心配が少なく,有効な河畔林管理の一つとなると考えた。
  • 濱田 梓, 福井 亘
    原稿種別: 技術報告
    2013 年 39 巻 1 号 p. 125-128
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    神社林は,都市緑地の中でも日常的な人の出入り自体が少なく,都市部において貴重な緑地であると考えられる。本報告では,京都市内の小規模神社林における鳥類分布と周辺環境条件について,GIS を活用し,調査した。その結果,市内都市部中心においても,樹林面積と大規模緑地からの距離が種数と個体数に影響していることが明らかとなった。大規模緑地に近接する神社は, 大規模緑地から離れている神社と比べて山地型鳥類が多く確認され,多様度が高くなる傾向を示した。また,出現頻度の低い種は,1 ha 程度の面積と樹林面積を有し,周辺緑被率が高く,大規模緑地に近接する神社に多く出現することが分かった。
  • 入山 義久, 三輪 哲哉, 高嶋 啓二, 荒井 浩輔, 近藤 聡
    原稿種別: 技術報告
    2013 年 39 巻 1 号 p. 129-132
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    外来生物法の施行後,国内の緑化工事では,草丈が高い従来の緑化用トールフェスク市販品種の利用が敬遠されている。そこで緑化工への利用が期待される矮性トールフェスクについて,積雪寒冷地および温暖地において,特性調査を行った。その結果,トールフェスクの矮性品種である“ボンサイ3000”は,寒冷地での越冬性および温暖地での越夏性は,問題が無かった。“ボンサイ3000”は晩生品種であり,緑化用市販品種に比べ,出穂期の草丈は57.5~72.7 % と低く,播種翌年の刈取り草量は,32.5~35.2 % と少なかった。また芝生用品種(試験系統名SBT9901)に比べても草丈が低く,草量も少なかった。“ボンサイ3000”を,環境に配慮した緑化材料として有望視した。
  • 加藤 真司, 石井 儀光, 樋野 公宏, 鈴木 弘孝
    原稿種別: 技術報告
    2013 年 39 巻 1 号 p. 133-136
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    緑のカーテンは,蔓性の植物をネットに這わして窓や壁面などを覆って日射を遮るため,夏場の室内の温熱環境改善に役立つとされる。このため,浜松市において緑のカーテン実践者へのアンケート調査を実施し,そこから得られた夏場の電気使用量の経年変化と利用実態から,その効果の把握と望ましい緑のカーテンの利用形態の検証を試みた。その結果,緑のカーテンを新たに導入した世帯と,前年から継続して緑のカーテンを設置した世帯との電気使用量の経年変化の相対比較から,緑のカーテンによるエアコンへの負荷軽減による節電効果が確認できた。また,特に緑のカーテンを設置することによって窓の開放が促進されることなどの,緑のカーテン利用者の利用傾向も確認できた。
  • 村上 順也, 佐々木 静郎, 土路生 修三, 門倉 伸行
    原稿種別: 技術報告
    2013 年 39 巻 1 号 p. 137-140
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    つる性植物による壁面緑化(緑のカーテン)の景観改善,温熱環境改善効果を検討するため,2 階建て事務所(研究所)を対象として,生長量や温度の計測を行った。植物は主に琉球アサガオを用い,生長量は2 週間で最大2.5 m を観測し,9 月に高さ10 m を越えた。壁面温度は6 ℃以上低減した。課題としては, 密実で早期の被覆が達成できる生育方法や温熱環境の計測方法の検討が挙げられる。
  • 香山 雅純, 山中 高史, 赤迫 諒介, 山口 哲哉
    原稿種別: 技術報告
    2013 年 39 巻 1 号 p. 141-142
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    石灰石鉱山における緑化技術において外生菌根菌を利用した植栽技術を確立するため,石灰石鉱山内に外生菌根菌であるツチグリとニセショウロを接種したアラカシとシラカシ実生を約1 年半植栽した。その結果,アラカシ,シラカシとも外生菌根菌を接種した実生は,非接種の実生と比較して順調に成長が促進された。これらの結果から,外生菌根菌を接種したカシ実生は,石灰石鉱山の緑化に有効であると考えられる。
  • 中村 剛, 福井 貴之
    原稿種別: 技術報告
    2013 年 39 巻 1 号 p. 143-146
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    のり面緑化施工地がニホンジカの食害を受け植生不良となるケースが増加しつつある。本報告では,植生工の上に金網を浮かせて設置することで植生工をシカの被食から保護する獣害防止工について,施工事例をもとに,対策工としての効果を検証した。この結果,対策工を設置した個所では,食害の程度が軽減され,設置しない個所に比べて,高い植被率が保たれていた。
  • 簗瀬 知史, 夏目 壽一
    原稿種別: 技術報告
    2013 年 39 巻 1 号 p. 147-150
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    地域性苗木とは,高速道路建設地域に自生している樹木の種子から育てた苗木である。移入種による遺伝子の攪乱を防ぐなど,地域性の生態系・種・遺伝子の全てのレベルの生物多様性に配慮しており,平成7年度より地域性苗木を活用した緑化を行ってきた。本研究では,地域性苗木の植栽後の生育状況等について,評価・検証を行うとともに,産地証明のためサンプル採取と遺伝子情報の調査分析を行ったものである。
  • 阪本 理貴, 柏木 秀公, 村岡 義哲, 牧 隆
    原稿種別: 技術報告
    2013 年 39 巻 1 号 p. 151-154
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    プランタースペースのとりづらい都市部での壁面緑化を想定し,奥行きが薄く深い大型プランターと,奥行きと深さを同じくする大型プランターにてツル植物 (ノウゼンカズラ) の生育比較試験を行った。いずれのプランターでも,6 年間地上部は生長を続け,地下部はプランターの底まで到達していたが (前者では1 m) ,ルーピング等の根詰まりは見られなかった。また大型プランターの中央や下部は通気不良になり易いため,外装を通気,不通気としたプランター間で根系比較を行った。いずれも中央や下部まで良好な根張りが確認された。奥行きが薄い深型のプランターも,土壌量を確保できれば,外装の表面通気に関わらず有用な植栽基盤となる可能性が示された。
  • 黒沼 尊紀, 萩原 静, 大林 修一, 渡辺 均
    原稿種別: 技術報告
    2013 年 39 巻 1 号 p. 155-157
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    屋上緑化に用いられる数種の軽量土壌は,施工初期に雨水や灌水により,多くの栄養塩類が流出することが明らかとなっている。そこで本研究は,環境負荷を低減した新たな屋上緑化システムを検討するため,水耕栽培システムを用いて実験を行った。その結果,水耕栽培システムを用いた屋上緑化は,観賞性を保ちながら,慣行法(軽量土壌)よりも灌水量および栄養塩類の流出量を削減することが明らかとなった。
  • 伊藤 文喜, 石川 龍二
    原稿種別: 技術報告
    2013 年 39 巻 1 号 p. 158-161
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    より安価かつ環境に配慮した緑化技術の開発のために,毎年大量に廃棄される古畳を,植栽可能な緑化マットに加工して屋上緑化に利用する技術の可能性を検討した。植物種を加工した古畳に植え付け,4年間の生育とマットの重量の変化を調査したところ,ほとんどの植物種は正常に生育し,マットの重量も,4年経過しても建築基準法に抵触しなかった。また,屋上を模した実験施設により,古畳緑化マットを敷いた箇所を調査したところ,夏季の高温,冬季の低温ともに抑制効果が確認された。以上のことから,植物を植える緑化マットとして,古畳を屋上緑化に利用する技術は有望である。
  • 稲本 亮平, 田中 健一, 竹波 信宏, 松本 淳一, 土居 幹治, 藤島 哲郎, 河野 修一, 江崎 次夫, 全 槿雨
    原稿種別: 技術報告
    2013 年 39 巻 1 号 p. 162-165
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    エチゼンクラゲや食用クラゲなどのクラゲ類を脱塩・乾燥しチップ化したクラゲチップは,自重の約 8 倍の水を吸収するという保水性に優れ,保水機能の低下後は微生物などによって分解され,化学肥料並みの窒素含有量を含むなど肥料効果が認められる。さらに製材の際にでるオガクズも分解のやや遅い有機質の保水材として着目し,この両者の保水性と遅効性の肥料効果を活かして種子吹付工の資材に組み込んだ有機緑化資材を開発した。林道切取りのり面での半年間の実験の結果,植生の発芽や生育状況が無施用区に対して,有意な差を示し,その有効性が確認された。今後,周辺環境に対する負荷の少ない有機質のり面緑化用資材としての活用が期待できる。
  • 河野 修一, 江崎 次夫, 全 槿雨
    原稿種別: 技術報告
    2013 年 39 巻 1 号 p. 166-169
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    昭和55 年からライシメーターを利用した盛土実験斜面で植生の推移を調査している。実験開始から34 年を経過した平成25 年4 月19 日に第4 回目の詳細な植生調査を実施し,侵入した植生の生育状況を把握した。その結果,侵入植生で一番多かったのは,木本植物ではスギの280 本,次いでヒノキの67 本であった。草本植物ではイタドリの12 株,次いでススキの4 株であった。侵入植生は周辺から種子の形態で侵入してきており,試験地の植生は周辺植生の影響を大きく受けていることが判明した。試験地内ではスギやヒノキの成長に伴って内部の相対照度が20 %以下となってきていることから,今後,相対照度の低下が植生の推移にどのような影響を及ぼすかを注視する必要性が示唆された。
  • 佐藤 厚子, 山梨 高裕, 山田 充, 鈴木 輝之, 川端 伸一郎
    原稿種別: 技術報告
    2013 年 39 巻 1 号 p. 170-173
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    泥炭は北海道に広く分布しているが,高有機質,高含水であるためそのままの状態では土木材料として使用できない。そこで,高有機質,高含水比の特性を利用することで,泥炭を緑化基盤材として活用することを考えた。特に,植生に適していないとされる砂質土および固化材による改良土での,のり面に対して泥炭を緑化基盤材とした試験施工を実施し,植物の生育状況を観察した。施工後数年経過した時点でも,植物の生育は十分であり,のり面に変状のないことが確認できた。ここでは,泥炭の緑化基盤材としての利用方法についてとりまとめ紹介する。
  • 石丸 香苗, 木下 篤彦, 早田 順英, 村田 浩之, 船越 和也, 黒岩 知恵, 梅村 裕也, 礒嶋 治康
    原稿種別: 技術報告
    2013 年 39 巻 1 号 p. 174-177
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    滋賀県田上山の山腹緑化工施工地において,植生回復状況の把握を目的として空中写真判読,航空レーザ計測および毎木調査を行った。植栽後20年以降は植生による被覆率は大きく変化しない一方,植栽後36,37年目で平均樹高の減少・林冠木の樹高の不均一化・林分構成種の変化が示唆されたほか,植生分布および現地調査の経年変化ではマツ林から広葉樹への移行が観察された。これらから35-40年目付近でアカマツ林から広葉樹林への移行が生じることで林分としてのバイオマスが一時的に低下するものの,一度成立した林分は衰退することなく遷移が進行していること,また広葉樹への推移の谷部からの進行が示唆された。
  • 増田 拓朗, 甲斐 崇, 下岡 直哉
    原稿種別: 技術報告
    2013 年 39 巻 1 号 p. 178-181
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    クリンカアッシュ覆土による雑草抑制効果について検討した。地上部の草刈りだけをしてクリンカアッシュを覆土する区と,草刈り後,表土を深さ20 cm 掘削し,根・地下茎・種子を含まないマサ土 (心土) を埋め戻し,その上にクリンカアッシュを覆土する区を設けた。クリンカアッシュの覆土厚は5 cm,10 cm,20 cm の3 段階設定し,雑草の発生状況を追跡調査した。その結果,雑草抑制には,表土を掘削し,根・地下茎・種子を除去する効果が大きいこと,クリンカアッシュ覆土は厚さ10 cm 以下では雑草抑制効果が小さく,覆土厚20 cm で効果が大きいことが認められたが,2 年目には効果が低下した。時間経過に伴うクリンカアッシュの中性化および劣化がその理由として考えられる。
  • 兵庫 利勇, 佐藤 厚子, 山田 充
    原稿種別: 技術報告
    2013 年 39 巻 1 号 p. 182-185
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    近年,生物多様性に関する関心が高まる中,法面緑化で導入されている植物の適切な取り扱いが求められている。しかし,これまで導入してきた緑化植物と同等程度の法面保護機能を担保しつつ,北海道の気象条件に適合する新たな種子配合に関する科学的知見が十分に得られていない。このことから,生物多様性に配慮した法面緑化の試みとして,現場試験施工による新たな種子配合の比較検討の結果について報告する。
  • 島本 由麻, 上野 由樹, 鈴木 哲也
    原稿種別: 技術報告
    2013 年 39 巻 1 号 p. 186-189
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    本報では,植物起源弾性波を非破壊検査手法の一つであるAE 法により検出し,定量評価を試みた結果を報告する。弾性波の発生は,植物が水ストレスを受けた際,植物体内の道管部において気泡が発生することに起因すると考えられる。この気泡運動は気泡運動方程式であるレーリー・プレセット式より評価した。実験的検討では,トマトより検出した弾性波をAE パラメータおよび高速フーリエ変換のピーク周波数帯域によって評価した。これら実測値とレーリー・プレセット方程式を用いて算出される周波数領域の解析値との比較検証を試みた。検討の結果,実測値は,解析値と比較してピーク周波数が類似していることが確認され,AE 法による植物起源弾性波の定量評価の可能性が示唆された。
  • 上野 由樹, 島本 由麻, 鈴木 哲也, 森井 俊広, 河合 隆行
    原稿種別: 技術報告
    2013 年 39 巻 1 号 p. 190-193
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    緑化木の維持管理には,モニタリング技術が必要である。植物は,水ストレス下において道管内部で負圧が増大しキャビテーション現象に伴う弾性波が発生する。本報では,植物起源弾性波を計測・特性評価した結果を報告する。計測手法には,弾性波を受動的に検出するAE法を用いた。供試植物には,緑化木であるセンリョウとAE法での既往研究において多くの報告があるトマトを用いた。検討の結果,両供試植物から得られた検出波特性とAEパラメータとの関連性が明らかとなった。
  • 加藤 顕, 戸倉 千明, 小林 達明, 野田 佳慶, 有村 恒夫, 福田 聖一
    原稿種別: 技術報告
    2013 年 39 巻 1 号 p. 194-197
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    高速道路法面緑化地での植栽管理は多大な労力と費用がかかる。本研究では,高密度でレーザー照射する車載レーザーシステムを用いて高密度レーザーデータを取得し,取得された点群データから高速道路法面の樹木の葉面積指数を推定した。結果検証のために,高密度レーザーによる葉面積指数と現地調査で取得した魚眼レンズによるLAI 推定値を比較して整合性を検討した。また同じ場所で,地上レーザーからのLAI 推定値とも比較を行った。車載レーザーは照射場所からの距離が離れるに従って解像度を調整してLAI 推定する必要があるが,地上レーザーは解像度を調整する必要がなかった。本研究によるレーザーによる葉面積推定技術は,アクセス困難な法面緑化地での光環境を把握する上で有効な手法である。
  • 大貫 真樹子, 久保 満佐子, 飯塚 康雄, 栗原 正夫
    原稿種別: 技術報告
    2013 年 39 巻 1 号 p. 198-201
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    侵略性の高い外来の緑化植物として指摘されているイタチハギを選択的に伐採する駆除試験を行った。イタチハギが優占する栃木県真岡市の切土のり面において,5 月,6 月,8 月および5 月と8 月の4 種の異なる時期に伐採時期を設け,イタチハギのみの定期的な伐採を3 年間継続した結果,無処理区と比較してイタチハギの平均個体数,平均樹高,植被率が低下した。5 月と8 月の年2 回伐採を行った試験区では,いずれの値も開始当年から低く,在来の高木種の植被率が増加したことから,今後の継続した伐採によって高木種がイタチハギを被陰し,イタチハギを駆除できるものと考えられた。
  • 七海 絵里香, 大澤 啓志
    原稿種別: 技術報告
    2013 年 39 巻 1 号 p. 202-205
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    畦畔植生の修復を目的に,既存の圃場基盤整備畦畔に他の畦畔表土を移植する手法について検討した。栃木県市貝町の畦畔表土を用い,30 cm 四方の表土ブロックを深さ5 cm および10 cm あるいはマット状および撹拌して移植する条件区を設定し,その後の発芽・出芽状況を記録した。種数には大きな差は認められず,全体に帰化率も低かった。生活型による優占度では,マット区の方が撹拌区よりも在来種多年草の割合が高く,これはマット区ではシバが多くなったこと,また撹拌区では一年草の埋土種子が多く発芽したことに依る。ただし,種組成的には類似していた。また,採取表土の深さによる差はほとんど認められなかった。
  • 白川 一代, 簗瀬 知史
    原稿種別: 技術報告
    2013 年 39 巻 1 号 p. 206-209
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    日光宇都宮道路は,国立公園の特別地域内を通過する自動車専用道路であることから,大規模な自然環境保全が実施され,供用後5 回にわたる追跡調査が行われてきた。供用から30 年が経過した日光宇都宮道路を対象として,自然環境保全の現状を把握し,過去の調査結果を踏まえた総括的な分析を行った。のり面と周辺既存林の調査の結果,人為的管理や高木の枯死・消失,シカの採食圧の影響で植生変化の大きい場所がみられた。
  • 野呂 恵子, 倉本 宣
    原稿種別: 技術報告
    2013 年 39 巻 1 号 p. 210-213
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    明治大学は2004 年,神奈川県川崎市麻生区黒川に農場用地を取得した。農学部応用植物生態学研究室は耕作放棄地を2007 年に借地し,水田を再生して調査や農作業を開始した。多摩丘陵の自然豊かな場所に拠点を得たことで学生は里山に興味を示し,地域と関わりを持ちながら生き生きと活動を展開した。農場が完成するとさらに研究や活動の可能性が増した。研究をおこなうには,土地に対する何らかの権利を有することが重要なキーとなった。
  • 内山 知二, 佐野 修司, 遠藤 常嘉, 工藤 渚, 山崎 敬亮, 長崎 裕司, 西本 登志, 松山 眞三, 隅谷 智宏
    原稿種別: 技術報告
    2013 年 39 巻 1 号 p. 214-217
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    中空構造栽培槽は,垂直方向に多段配置することで壁面を構成することができるため,自由度の高い壁面緑化材として利用できると考えられる。そこで,イチゴやレタスを植栽した栽培槽を垂直方向に配置して壁面を構成し,保温材の有無や品種間差について調査した。その結果,寒冷期においても簡易な保温によって生育が確保され,本栽培槽が壁面緑化材として有用であることを示した。
  • 日高 英二, 篠崎 圭太郎, 清水 厚郎, 竹内 真一
    原稿種別: 技術報告
    2013 年 39 巻 1 号 p. 218-221
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/02
    ジャーナル フリー
    新キャンパスの整備の一環として,造園教育に必要な樹木導入の検討をした。旧キャンパスにおける植栽樹種を造園技能士の要素試験の多少の有無で重要度を分析し,樹種別の特性から移植や挿木繁殖の可能性について整理を行った。導入樹種の移植や挿木は学生の実験・実習などに取り入れてキャンパス整備への関心を高めることとした。植栽予定地の土壌や日照条件の環境と樹種特性を考慮した配植を検討し,植栽に際しては同属の樹種や特徴の似る樹種を近隣に配植し,学習効果の向上を試行した。
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