日本緑化工学会誌
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39 巻 , 4 号
4号
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特集
特集
特集
  • 東京大学千葉演習林におけるニホンジカの生息状況とスギ・ヒノキ植栽木の被害
    山中 征夫, 當山 啓介, 久本 洋子, 廣嶋 卓也, 山田 利博
    原稿種別: 論文
    2013 年 39 巻 4 号 p. 496-502
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/02/13
    ジャーナル フリー
    本論では,房総半島の南東部に位置する東京大学千葉演習林の清澄地区を対象に,ニホンジカの生息密度,ニホンジカによるスギ,ヒノキ植栽木の被害,被害に伴う枯死および樹高成長の関係について考察した。スギ植栽木の被害率は0%から100% まで広く分布していたが,ヒノキ植栽木の被害率は約60% 以上と約10% 以下に偏って分布していた。被害率が高かった調査区 (4 年目以降で累積被害率が300% を超える) における累積枯死率は,スギの場合,植栽後5 年目まで上昇したが,ヒノキの場合,1 調査区を除いて低いままであった。被害率が高かった調査区における樹高成長は,被害率の低かった調査区 (3 年目以降で累積被害率が200% 以下) に比べて,スギでは半分程度で推移し食害を受けうる高さを超える樹高に達すると期待されたが,ヒノキの場合は樹高成長のほぼ止まった箇所も見られた。
  • 知床岬台地草原におけるエゾシカ密度操作実験の植生応答および植生指標の検討
    田崎 冬記, 宮木 雅美, 戸田 秀之, 三宅 悠介
    原稿種別: 論文
    2013 年 39 巻 4 号 p. 503-511
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/02/13
    ジャーナル フリー
    知床岬台地草原では,エゾシカ個体数の増加によってササ類の減少,樹皮剥ぎによる特定樹種の激減,実生・稚樹の採食による更新阻害,海岸性の植生群落とそれに含まれる希少植物の減少および土壌侵食等が問題となっている。このような背景からエゾシカの密度操作実験が行われ,同効果の把握や人為介入の開始・終了等の目安となる植生指標の開発が求められている。本調査では,防鹿柵内外のイネ科草本,アメリカオニアザミおよびハンゴンソウ,台地草原全体のイネ科草本およびクマイザサ,台地草原に隣接する森林の木本葉量の調査を行い,植生指標の適用性について検討した。その結果,イネ科草本はエゾシカ密度操作開始後から増加傾向を示し,逆にアメリカオニアザミはエゾシカの影響を排除した場合,直ちに減少した。これらは短期的な植生指標となり得ると考えられた。また,クマイザサは被度・稈高で密度操作実験開始後の変化が異なることから,被度は短期的,稈高は中長期的な植生指標となり得ると考えた。一方,台地草原に隣接する森林葉量は密度操作開始後,その増加量は高さによって異なったため,高さによって異なる時期の植生指標になり得ると考えた。
  • ニホンジカ高密度化に対する脆弱性とRDB 掲載種からみた植物群落の保全危急性評価
    大橋 春香, 星野 義延, 中山 智絵, 奥村 忠誠, 大津 千晶
    原稿種別: 論文
    2013 年 39 巻 4 号 p. 512-520
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/02/13
    ジャーナル フリー
    シカの高密度化による植生への影響は,生態系機能や他の分類群への影響より早い段階から発生しやすいため,地域スケールで植物相を保全するには,影響が軽微な段階から予防的な対策を行うことが望ましい。保全に費やせる社会的資源が有限ななかで予防的な対策を行うには,地域の植物相を維持するうえで重要な場所を特定し,その優先順位を計画に盛り込む必要がある。本研究では秩父多摩甲斐国立公園において198 地点の植生調査資料をもとに,出現種を「シカ高密度地域での減少種/その他」「RDB 掲載種/非掲載種」の組み合わせから「減少種・RDB 掲載種(A) 」「減少種・RDB 非掲載種(B)」「その他・RDB 掲載種(C)」「その他・RDB 非掲載種(D) 」に区分し,各グループの総種数に対する占有率とシカの相対密度指標の関係を検討した。グループB はシカの相対密度指標の増大とともに減少したのに対し,グループD の種は増加した。また,グループC は相対密度指標の増大に対し一山型の応答を示した。群落型ごとの比較からグループA・B の占有率が高い亜高山帯~ 山地帯の草原や広葉高茎草本型のブナ林,シオジ林の保全危急性が最も高いと考えられた。
  • のり面緑化施工地における金網被覆による鹿害対策工法の施工事例
    福井 貴之, 坂手 修, 中村 剛
    原稿種別: 技術報告
    2013 年 39 巻 4 号 p. 521-524
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/02/13
    ジャーナル フリー
    ニホンジカの増加に伴い,のり面緑化施工地の食害が深刻化しつつある。のり面は獣害防止柵の設置が困難であることから,これに代わる獣害対策工が求められている。そこで,金網で植生工を覆うことにより,植生を保護する方法を実用化した。岡山県内において,植生マットを敷設したのり面に金網を20 cm 浮かせた状態で設置した区画と設置していない区画(対照区)を用意し,導入植物の生育状況について経過観察を行った。金網を設置していない区画では,施工後3 ヵ月から食害が観察されはじめ,施工後6 ヵ月でも植被率は10% であった。一方, 金網を設置した区画では,金網を超出した部分で食跡が確認されたが,植被率は施工後30 ヵ月が経過しても100% であった。また,対照区ではシカの踏み荒らしによる植生マットの破損が確認された。以上のことから,金網で植生工を覆うことで,鹿害を軽減できることがたしかめられた。
  • 南あわじ市における景観構造と地域住民の参加に基づく持続的シカ被害管理のあり方
    宮崎 千尋, 藤原 道郎, 大藪 崇司, 澤田 佳宏, 山本 聡
    原稿種別: 技術報告
    2013 年 39 巻 4 号 p. 525-530
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/02/13
    ジャーナル フリー
    シカによる農業被害の軽減には,シカの個体数を減らすだけでなく,防護柵設置や農地管理を見直し,地域に応じた対策が必要である。本研究では,兵庫県南あわじ市の神代地区と阿万地区において,景観構造,地域住民の役割,取組みの経緯の比較からシカ防除対策を明らかにすることを目的とした。その結果,神代地区では,林縁から100 m 以上離れた農地が36.0% あり,耕作放棄地は4.3% と少なかった。道路の林縁と農地の間に2 重に2.0 m 以上の金属製の効果的なシカ柵設置が計画的に行われるとともに,専門家・住民が連携し,非農家も活動に取り込み,シカ防除が機能していることが明らかとなった。阿万地域は,林縁から100 m 以上離れた農地は約6.0% のみで森林の際にシカが侵出しやすい水田や畑地が多くあり,耕作放棄地も50.0% 存在した。耕作地の所有者ごとにシカ柵の種類や管理状態が異なっており,計画的な防護柵の設置や組織作りが課題として示された。
  • 法面緑化におけるシカの食害防止用特殊ネットの試験施工結果報告
    松本 晶, 関山 真一, 内海 正彦, 山本 一夫
    原稿種別: 技術資料
    2013 年 39 巻 4 号 p. 531-533
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/02/13
    ジャーナル フリー
    近年のシカ生息数の増加に伴い,著者らが平成14 年から獣害防止用として適用していた亀甲金網付き養生マットでは食害を完全に防げないことが明らかとなった。そこで,目合35 mm,高さ15 mm のポリエステル製の特殊ネットを活用する工法を開発した。これをシカによる獣害が多くみられる宮崎県延岡市において,平成23 年10 月に試験施工を実施した。施工後,植生状況と法面内へのシカの侵入状況の観点から追跡調査を行った。その結果,従来工法より植被率1.3 倍,成長量(草高)2.1 倍であった。特殊ネット施工法面では根元まで採食された植物はなく,植生は良好であった。また,施工法面内でシカのフンや足跡は見られなかった。以上より,特殊ネットと養生マットの併用により,シカによる食害や侵入を防ぐ要因の1 つとなることが考えられる。
論文
  • 浅輪 貴史, 梅干野 晁, 清水 克哉, 久保田 光政
    原稿種別: 論文
    2013 年 39 巻 4 号 p. 534-541
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/02/13
    ジャーナル フリー
    樹高6.4 m のケヤキ単木を対象とした重量計測により,夏季におけるケヤキの蒸散速度と水蒸気拡散コンダクタンスの特性を,潅水停止に伴う水分ストレスの有無に着目して分析した。毎日潅水を行いケヤキが水分ストレスを受けていない条件において,光量子束密度の増加とともに,拡散コンダクタンスは飽和型の増加傾向を示し,700~800[μmol/(m2s)]あたりで飽和に達する傾向が確認された。晴天日において,拡散コンダクタンスのピークは午前に現れ,蒸散速度のピークは午後に現れた。光飽和に達した条件において,飽差の増大とともに蒸散速度は増加したが,飽差が3 倍に増大しても,気孔を閉じることで蒸散速度の増加は1.7 倍であった。この気孔閉鎖の影響は,拡散コンダクタンスの低下傾向として表れた。潅水停止実験により,水分ストレスを受けた状態においても,光量子束密度に対して拡散コンダクタンスには飽和型の増加傾向が示されたが,その日最大値は土壌含水率の低下とともに低下した。潅水停止により,拡散コンダクタンスの低下が現れ始めたのはその2 日目であり,また潅水再開により拡散コンダクタンスが回復したのは,3 日後であった。
  • 多田 純也, 近藤 哲也, 藤 彰矩
    原稿種別: 論文
    2013 年 39 巻 4 号 p. 542-551
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/02/13
    ジャーナル フリー
    ハマボウフウ種子の発芽に及ぼす低温湿潤処理,光,温度,貯蔵,果皮,埋土深の影響ならびに胚生長のための温度条件を明らかにすることを目的とした。採取直後の種子は,明,暗の光条件に恒温,変温を組み合わせたいずれの区でも2% 以下の発根率であった。低温湿潤処理によって明, 暗両区の10~20℃で約50%の発根率を示したが,明区でわずかに発根率が高まる傾向が認められた。乾燥5℃で貯蔵した種子は12 か月後でも貯蔵前と同等の発根率を維持した。果皮の有無は発根に影響を及ぼさなかった。地表面下2cm または5cm に埋土した種子は約60% が出芽したが,15 cm では16% の出芽に留まり,48% が腐敗し, 残りの未発芽種子のうち70% が発根能力を有していた。種子散布時の胚長は,発根時の胚長の13% であったが,雪解け後の気温の低い春に生長して,発根,出芽した。このことから,ハマボウフウの種子は形態生理的休眠のうちintermediate complex MPD を有していると判断された。また,播種や育苗の際には,果皮を除去する必要がないこと,低温湿潤処理が必要なこと,埋土深は5cm 程度が望ましいことが示された。
総説
  • 長谷川 祥子, 下村 孝
    原稿種別: 総説
    2013 年 39 巻 4 号 p. 552-560
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/02/13
    ジャーナル フリー
    これまで,多くの研究が,植物が人の心身に及ぼす影響に関する知見を多く蓄積してきた。我々は,身近な自然として,室内に持ち込まれた植物に焦点をあて,その心理・生理的影響に関する研究を概観し,知見を整理した。室内植物がもたらす心理・生理的影響は,オフィス環境を端緒として,医療環境や教育環境など様々な空間を想定して,調査されてきた。その結果,室内植物がストレスや疲労を軽減し,リラックス状態に導くなど,人の心身に有益な役割を果たすことが明らかにされてきた。そして,植物の量や設置方法のみならず,人と植物との関わり方が植物の効用に及ぼす影響が検討されるまでになっている。これらの知見の整理から,室内植物に対する人の認知度合いが植物の効用に及ぼす影響などを今後の検討課題として抽出した。
技術報告
  • 久保 満佐子, 野田 香
    原稿種別: 技術報告
    2013 年 39 巻 4 号 p. 561-565
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/09/18
    ジャーナル フリー
    島根県松江市にあるタブノキ林の表土を利用した緑化のり面で施工後8 年目の植生と表土採取地の埋土種子相を調べ,全国に成立するのり面植生と比較した。本調査のり面では,植被率99 % の草本と低木による群落高168 cm の植生が成立していた。調査のり面に生育する木本はアカメガシワやカラスザンショウなどがあり,木本の被度合計は37% であった。草本の被度合計は54 % であり,クズとススキの被度が高く,外来草本の被度は低かった。表土の埋土種子数は10 個/リットルと少なく,表土採取地の優占種であるタブノキの埋土種子はなかった。木本の埋土種子はヒサカキやイヌザンショウが多かったが,調査のり面には生育していなかった。全国的な比較では,施工後月数に対して本調査のり面の草本被度が高く,木本被度が低いことが特徴であった。しかし,草本が優占する中でアカメガシワやヌルデの実生が多く生育していることから,本事例は,在来の木本群落が成立するまでに8 年以上の時間を考慮することを示唆するものであった。
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