日本緑化工学会誌
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40 巻, 2 号
4号
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特集
  • 森本 淳子, 内田 泰三
    原稿種別: 特集
    2014 年 40 巻 2 号 p. 301
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/09/18
    ジャーナル フリー
  • 日置 佳之, 高田 真徳
    原稿種別: 論文
    2014 年 40 巻 2 号 p. 302-314
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/09/18
    ジャーナル フリー
    ニワウルシ (Ailanthus altissima (Mill.) Swingle) は,雌雄異株で,風散布に適した翼果を多数付ける中国北部から中部原産の落葉高木である。同種は日本でも街路樹としても多用されており,空き地,河川敷等において野生化している。また,海外では自生地外への分布拡大や生態系への影響が報告されているが,わが国においては侵略性の観点からの研究はほとんど行われていない。そこで,本研究では,鳥取市内の国道 9号線に街路樹として植栽された同種の逸出状況を把握するとともに,種特性から見た侵略性評価を行うことを目的とした。逸出状況については,国道 9号鳥取バイパス及びその周辺約 202 haを対象として, DGPSを用いてニワウルシの位置情報を取得し,樹高,幹周り,萌芽の有無,逸出環境を街路樹と逸出株に区別して記録した。また,侵略性については,上記の調査結果と既存文献に基づき,外来種の導入の可否を判定する Pheloungのモデル及び導入後の外来植物の侵略性を判定する John & Lindaのモデルを用いて評価した。その結果,1)ニワウルシは街路樹から逸出した個体を母樹としてとくに風下側に分布を拡大していると推定された。2)地上部のみ刈取りされている逸出株は,管理が不十分な期間に生長し,種子散布や横走根の生長によって更なる分布拡大のもととなる恐れがある。3) 2つの外来種評価モデルを用いて侵略性を評価した結果,ニワウルシは高い侵略性を持つことが示唆された。
  • 近藤 哲也, 石垣 春, 鄭 亜紀子
    原稿種別: 論文
    2014 年 40 巻 2 号 p. 315-323
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/09/18
    ジャーナル フリー
    オオハンゴンソウ種子の詳細な発芽特性と埋土種子形成の有無を明らかにすることを目的とした。それらの結果を基に,オオハンゴンソウ種子が埋土種子を形成する理由を考察した。恒温器とシャ-レを用いた室内の実験によって,種子の発根に及ぼす,光,変温・恒温,低温湿潤処理,風乾貯蔵の影響を調査した。さらに野外の実験では,種子を異なる深さの地中に埋土して,埋土種子を形成する埋土深,出芽可能な埋土深,および埋土種子が発芽能力を維持できる期間を調査した。また,各埋土深での温度を測定した。室内実験で,採取直後のオオハンゴンソウの種子は明・変温区でのみ発根した。低温湿潤処理後には,明・変温区,明・恒温区および暗・変温区でも高い発根率を示したが,暗・恒温区では低い発根率にとどまった。野外実験では,暗・変温条件となる地下 2cmでは埋土種子を形成しなかったが,暗・恒温条件となる地下 8cm以上では埋土種子を形成した。埋土種子は少なくとも 3年間は発芽能力を保持した。これらの結果から,オオハンゴンソウの種子が深い地中で埋土種子を形成するのは,変温が与えられないためであることが示された。
  • 久保 満佐子, 飯塚 康雄, 大貫 真樹子, 松江 正彦, 栗原 正夫, 細木 大輔
    原稿種別: 論文
    2014 年 40 巻 2 号 p. 324-330
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/09/18
    ジャーナル フリー
    2007年に森林表土利用工による緑化が行われた国営明石海峡公園にある切土のり面において,施工当年から施工後 6年目の 2012年まで,成立した植生の種組成と木本の個体数および樹高を調べた。その結果,植被率は当年から約 95%と高く,当年には一年生草本のオオイヌタデが優占し, 2年目から 6年目までは替わってセイタカアワダチソウやヨモギ,ススキなどの多年生草本やつる性木本のクズが優占した。木本個体数は,施工当年は 2.2個体/m2あったが年とともに減少し, 6年目には 1.3個体/m2になった。本調査のり面では施工当年から継続して群落高約 2mの草本が密生するため,その下で生育する木本は初期に枯死し,新たに定着する種も少なかった。本調査地はセイタカアワダチソウの飛来種子が多い地域にあり,こうした地域で森林表土利用工による施工を行う場合は,事前の調査によって工法の適否を判断することや,施工後初期の植生管理を考慮に入れる必要がある。
  • 今田 省吾, 谷口 武士, 岩永 史子, ACHARYA Kumud, 山本 福壽, 山中 典和
    原稿種別: 論文
    2014 年 40 巻 2 号 p. 331-339
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/09/18
    ジャーナル フリー
    ユーラシアの乾燥地域が原産のタマリスク(Tamarix spp.)は,北米大陸の乾燥地河畔林における代表的な侵略的木本外来種の一つであり,特に米国西部の主要河川沿いに大面積の単純林を形成している。こうした状況においてタマリスクは,河畔林生態系の生物多様性を低下させ,土壌の特性や微生物に影響を与えているとされる。近年,タマリスクの生物学的防除のためにタマリスクビートル(Diorhabda spp.)が原産地から導入され,この昆虫の食害によってタマリスク林で早期落葉現象が見られるようになっている。早期落葉の影響はタマリスク個体の成長量の低下に反映されると言われる。また成長期の落葉はタマリスク林の林床の光環境を改善することで,下層植生定着の促進が期待される。その一方で,落葉の季節性や年間落葉量が変化することで土壌環境に影響を与えるという指摘があるが,これに伴い予測される河畔林生態系の養分循環の変化が植生の変化にどのような影響を及ぼすのかは不明である。これを踏まえて,今後どのように在来植生の回復を実現するのかが重要な課題となっている。
  • 森本 淳子, 小南 遼
    原稿種別: 技術報告
    2014 年 40 巻 2 号 p. 340-342
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/09/18
    ジャーナル フリー
    ニセアカシア人工林において実生発生を許容する環境要因を明らかにし,人工林管理へ応用することを目的とした現地調査,野外播種実験,恒温器での発芽実験を行った。実生発生がほとんど見られないニセアカシア人工林内と,多くの実生が発生する林縁とで,対比的な環境要因 (光環境と A0層の厚さ) に着目した。実験に用いた種子はすべて休眠種子だった。野外調査および野外実験の結果,リターと混在していると発芽しないこと,リターがない場合はより明るい環境で発芽率が高くなることが明らかになった。発芽実験では光発芽性は認められなかったことから,光の強度ではなく,十分な変温環境に晒されることで,発芽率が高くなることが示唆された。埋土種子が蓄積している高齢のニセアカシア人工林では,上木の伐採に伴う枝条や伐採木の搬出などで地表攪乱を伴わないような注意が必要である。また,急傾斜地の源流部など林床にリターが蓄積しにくい環境では,下流域への流水散布に注意する必要がある。
  • 宮脇 成生, 伊川 耕太, 中村 圭吾
    原稿種別: 技術報告
    2014 年 40 巻 2 号 p. 343-347
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/09/18
    ジャーナル フリー
    主に 2001~2005年度の期間に実施された河川水辺の国勢調査の植生図より植生タイプ別面積を集計した。その結果,全国 109水系における外来植物が優占する群落の面積は,調査範囲における陸域の 8%を占めることが明らかになった。また,外来植物が優占する群落面積の 4割以上を緑化植物の優占する群落が占めていた。外来種別の優占群落面積では,上位 10種のうち 6種が緑化植物 (ハリエンジュ,カモガヤ,シナダレスズメガヤ,オオアワガエリ,オニウシノケグサ,イタチハギ) で占められており,日本の河川域において,外来の緑化植物が広範囲に拡大していることが明らかになった。
  • 吉野 知明, 岡田 芳忠
    原稿種別: 技術報告
    2014 年 40 巻 2 号 p. 348-351
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/09/18
    ジャーナル フリー
    愛知県豊田市を流れる逢妻女川において平成 20年度から平成 22年度にかけて特定外来生物アレチウリの防除対策が講じられた。防除 1年目の平成 20年度には,結実前の 8月中旬に選択引き抜き除去と 2月の植生全面刈り取り,防除 2年目の平成 21年度には,結実前の 8月下旬にアレチウリが繁茂する河道内の植生を全面刈り取る手法を採用した。引き抜き除去や刈り取りによる植生変化を把握するために,除草対象範囲を区切り,アレチウリが繁茂し始める各年度の 7月中旬にアレチウリの発生有無と優占植生の把握を行った。アレチウリは選択引き抜き後 1年が経過する平成 21年度には確認区画数が増加したが,平成 22年度には取り組み前の 8割程度に減少することが確認された。また,植生全面刈り取りによりツルヨシ等の在来多年生植物群落の衰退が生じないことも確認された。アレチウリの発見初期対策では,既存植生が残存しており,選択引き抜き除去よりも植生全面刈り取りの方が効果的といえた。また河川維持管理による除草作業のタイミングと同調させることにより,継続的に除草ができる仕組みづくりにつながることが示唆された。
  • 渕田 早穂子, 山本 聡, 澤田 佳宏, 藤原 道郎, 大藪 崇司, 能勢 健吉
    原稿種別: 技術報告
    2014 年 40 巻 2 号 p. 352-364
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/09/18
    ジャーナル フリー
    生物多様性保全のためには園芸的に利用される外来種も含め,植物種の特定が重要である。しかし,緑化や園芸,学術の各分野において同一植物を異なる通称名で呼ぶなど植物種の把握に障害となる場合がある。ここでは,それら通称名の分野間の整合を図るため,植物種名の対応表を作成した。作成に当たっては,保全上の観点から帰化植物図鑑に記載されている植物種を中心とした。
論文
  • 大津 千晶, 小林 慶子, 長池 卓男
    原稿種別: 論文
    2014 年 40 巻 2 号 p. 365-371
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/09/18
    ジャーナル フリー
    緑化施工後初期における法面の表面侵食の防止と周辺植生からの在来種 (以下,侵入種) の侵入・定着の促進が両立しやすい要因を明らかにするために,山梨県内で過去 5年以内に施工された緑化施工地を対象に,立地環境と施工条件がそれらに与える影響を調査した。表面侵食のみられた法面は全体の 37%と,少なくはなかった。植被率は概ね高かったが,侵入種の植被率は低かった。侵入種の植被率は,客土吹付工が施工された法面や,谷地形に位置する法面で高い傾向にあることから,これらの条件では比較的早期の侵入種の定着が潜在的に期待できる。一方,種子吹付工と比べて厚層基材吹付工や植生マット工は,表面侵食の防止効果は高いものの,侵入種の定着を阻んでしまいがちであることが明らかになった。したがって施工地の植生工を決定する際には,表面侵食の防止と侵入種の定着促進のどちらに重点を置くかを事前に検討する必要がある。施工後初期の法面において,表面侵食の防止と侵入種の定着促進を両立させる手段としては,植生工や種子配合の選択,獣害対策の実施による法面環境の整備が有効だと考えられた。
  • 永留 真雄, 根本 淳, 寺田 (佐立) 昌代, 梅木 清, 小林 達明
    原稿種別: 論文
    2014 年 40 巻 2 号 p. 372-386
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/09/18
    ジャーナル フリー
    二次林における林冠優占種および落葉かきの実施がヤマユリ個体群動態に及ぼす影響を明らかにすることを目的として,2006~2008年・2011年~2013年に都市公園内の尾根部の樹林地において,ヤマユリ幼令個体 (一枚葉) を対象として個体数および個体サイズと,植生および林床植生管理の関係を調べた。栽培試験および自生地の観察結果より,幼令個体は当年生実生サイズ,抽だい個体へ推移可能なサイズ,その中間のサイズの 3つのサイズクラスに分類された。推移行列を用いた解析の結果,幼令個体は自生条件下で抽だい個体への推移に平均 7~9年を経ていること,小サイズの抽だい個体に推移した後に生存率は当年生実生と同程度に低下すること,落葉広葉樹の優占度増加は幼令個体から抽だい個体への推移を低下させることが明らかになった。弾力性行列を分析した結果,ヤマユリは開花個体以外の成育ステージにも弾力性値を分散させており他の森林性多年生草本と異なる傾向を示すこと,落葉かきに伴う当年生実生の定着が個体群成長率 (λ) の増加に寄与していることが明らかになった。また,ヤマユリはリター層の厚さによって有性繁殖と無性繁殖への配分を変化させる可能性が示唆された。
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