日本緑化工学会誌
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40 巻, 4 号
4号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
特集
  • 相澤 章仁, 田中 愛子, 小林 弘和, 小林 達明
    原稿種別: 論文
    2015 年 40 巻 4 号 p. 527-533
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/19
    ジャーナル フリー
    外来種を管理・防除するためには,どの外来種が在来生態系に影響を与えているかを評価する必要がある。本研究では千葉県北西部を流れる利根運河の堤防植生を対象として,コドラートを使ったランダムサンプリングによる植生調査を行い,TWINSPANと統計モデリングを用いて外来種の在来生態系への影響評価を行った。TWINSPANの結果,対象地の植生はセイバンモロコシ・セイタカアワダチソウを指標種とした 2つの外来植物群落と 2つの在来植物群落に分かれ,統計モデリングでもこの外来種 2種が在来種の分布に影響を与えていることが示された。影響の度合いはセイバンモロコシの方が強く,個体レベルでの影響 (50 cm × 50 cm)と個体群レベルでの影響 (5m × 10 m)の両方の空間レベルで在来種に影響を与えていた。セイタカアワダチソウは個体レベルでの影響は検出されなかったため,本種の完全排除というよりは,低密度管理を行うことで在来種の回復が望める可能性があることがわかった。現地において防除活動を進める際には本研究の調査方法を用いてモニタリングを進めていくことが有用であると考えられる。
特集
論文
  • 嶌田 知帆, 長島 啓子, 榊原 奈々, 高田 研一, 田中 和博
    原稿種別: 論文
    2015 年 40 巻 4 号 p. 547-554
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/19
    ジャーナル フリー
    岐阜県高山市あかんだな駐車場道路法面では約 20年前に先駆種,遷移中期種,遷移後期種の混植を用いた通称自然配植技術と,播種工の 2種類の緑化工法が導入された。本研究では両緑化工法区における林床植生を含む群落構造の違いを把握することを目的とした。前者にはイチイ,シラカンバ,ダケカンバ,タニウツギ,ナナカマド,ミズナラの 6種が植栽された。後者にはイタチハギ,カヤ,メドハギ,ヤマハンノキ,オーチャードグラス,チモシー,ヨモギが吹き付けられた。隣接するそれぞれの法面にプロットを前者に 4つ(10 m × 10 m:3つ,20 m × 10 m:1つ),後者に 4つ( 10 m × 10 m:4つ)設置し,現地調査を 2012年 9月と 2013年 6月から 8月にかけて行った。比較の結果,自然配植技術が導入された法面では植栽木を中心とした階層構造が形成され,実生の個体数は 1,606個体と有意に多かった。一方,播種工が導入された法面はヤマハンノキ以外の導入種は消失し,ヤマハンノキの一斉林が形成されており,実生の個体数は 30個体とわずかに確認されたのみであった。以上より,遷移段階の異なる樹木を混植することで,播種工と比べ林床植生を含む群落構造が発達した森林が継続的に維持されると考えられた。
  • 近藤 哲也, 鄭 亜紀子, 石垣 春
    原稿種別: 論文
    2015 年 40 巻 4 号 p. 555-563
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/19
    ジャーナル フリー
    刈り取りによるオオハンゴンソウの駆除の可能性を検討するために,刈り取りがオオハンゴンソウの生育に及ぼす影響を調査した。実生個体を植木鉢で育成し,播種から開花までの期間を明らかにするとともに,時期と頻度が異なる 8つの刈り取り区を設けて,草高,茎数,開花個体率,個体当りの開花数に及ぼす影響を調査した。春からの生育は前年に蓄積した地下部の現存量に大きく影響されるため,冬前の 11月末に全ての刈り取り区での地上部と地下部の乾物重を測定し,比較した。オオハンゴンソウは,播種から開花までに 2年を要した。無刈では,播種後 2年目には草高が 118 cmに達して全ての個体が開花し,平均 11個の花を着けた。開花と結実を抑制して,実生による更新を防ぐためには,年に 2回,6+8月末の刈り取りが確実であった。年 3回, 6+8+10月末に刈り取ってもオオハンゴンソウの地下部を消耗させることはできなかった。本実験の結果の範囲からは,オオハンゴンソウを刈り取りのみによって駆除することは困難であると結論づけられた。そのため,実際の管理方策としては,まず刈り取りによって広範囲での開花・結実を抑制し,同時に可能な範囲で抜き取りによる除去を行うことが適切であると考えられた。
技術資料
  • 中村 華子, 橘 隆一
    原稿種別: 技術資料
    2015 年 40 巻 4 号 p. 564-571
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/04/19
    ジャーナル フリー
    日本緑化工学会では,生態・環境緑化研究部会が 2013年 9月 28日に第 44回鳥取大会において研究集会「生態系および遺伝子の多様性に配慮した緑化の拡大に向けて」を実施し,環境省自然環境局野生生物課外来生物対策室担当官より,リストおよび行動計画について説明を受け,意見交換を行った。以降,随時,環境省担当者と意見や情報を交換してきた。さらに今回,リストと行動計画が公開されるにあたって,さらなる情報公開が求められていた。 2015年 3月 14日に開催された日本緑化工学会理事会において,緑化植物等のうち,リスト掲載種や,掲載が検討された種について研究成果や事例紹介を社会に還元するためのポータルサイトを作成することが決まった。このサイトを作成するにあたって理事会では,2004年から断続的に連載している,緑化植物に関して会員が寄稿するコラム「緑化植物ど・こ・ま・で・き・わ・め・る」をまず利用すべきだとした。そこで著者らは,これまで掲載されたコラムの一覧表を作成するとともに,今回公表されたリストとの内容のつきあわせを行った。また,公表されたリストから,「利用しながらも管理に取り組む」とされた【適切な管理が必要な産業上重要な外来種(産業管理外来種)】についての情報提供をさせて頂く。今後リストや行動計画に基づいて,行政の施策や様々な主体による取り組みが検討されるにあたって,緑化植物や緑化事業に関連する取り組みについては当学会員からの情報提供が有効に活用されるべきだと考えている。そのためにも,リスト掲載種および検討対象となった種をはじめとする緑化植物の情報やその利用方法,管理方法などに関する会員諸氏からの寄稿・情報提供を期待するものである。
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