日本緑化工学会誌
Online ISSN : 1884-3670
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ISSN-L : 0916-7439
41 巻, 3 号
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特集
  • 大橋 瑞江, 柿添 哲也, 池野 英利, 山瀬 敬太郎, 谷川 東子, 檀浦 正子, 青野 健治, 藤堂 千景, 平野 恭弘
    原稿種別: 論文
    2015 年 41 巻 3 号 p. 385-390
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/09/09
    ジャーナル フリー
    海岸に生育するクロマツについて,津波や防風に対する機能を評価するうえで重要となる水平根の広がりを,地中レーダ探査を用いて抽出することを試みた。ここでは同心円状にレーダ測線を配置し, (1) レーダ画像からの樹木根の抽出, (2) 根のつながりを意識した水平根系の抽出, (3) 根を掘り出して得られた鳥瞰図との比較による抽出精度の評価,の 3つを目的として実験を行った。得られたレーダ画像について,コントラストと円弧波形から根を抽出したところ,そのうちの 76%の抽出波形について,実際に同じ場所に根が存在していた。また,抽出点同士のつながりを考慮して抽出した根系と鳥瞰図とを比較したところ, 7本の水平根のうち 5本が,全体的あるいは部分的に実際の水平根を示していた。したがって,地中レーダは主要な水平根の潜在的な広がりを予測するツールとして利用可能だと言える。また得られた波形の情報と抽出精度の関係を検討したところ,円弧の形が美しいあるいはコントラストが強いという 2基準のうち 1基準でも満たしている場合, 70%を超える高い正答率が得られた。よって波形の情報が根の検出に有効であると考えられた。
  • 崎尾 均, 松澤 可奈子
    原稿種別: 論文
    2015 年 41 巻 3 号 p. 391-397
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/09/09
    ジャーナル フリー
    2011年 7月に発生した「平成 23年 7月新潟・福島豪雨」によって,福島県伊南川に分布するヤナギ類を優占種とする河畔林に大きな被害が発生した。また,伊南川流域の多くの山腹が崩壊し,倒木が河川に流れこんだ。本研究ではこの洪水がヤナギ類を優占種とする河畔林に与えた影響,及び河畔林の流木捕捉機能を明らかにすることを目的とした。ヤナギ類が優占する伊南川の中州に調査区を設定し,洪水によって被害を受けた樹木と残存した立木の状況を明らかにするとともに,河畔林が捕捉した流木量を測定した。その結果,流路に近い比高の低い部分に分布していたヤナギ林が倒伏などの影響を受けるとともに,林床には砂礫などの新しい堆積物や残存していた立木によって捕捉された上流から流れてきた流木の分布が確認された。これまで河川管理において,堤外の立木は流木の原因になるとして除去されてきたが,今回の大規模な洪水では,河畔林のヤナギ類の立木が,その 2倍以上の材積を持つ上流域から流れてきた流木を捕捉するという効果を発揮した。
  • 田中 賢治, 森 千夏
    原稿種別: 技術報告
    2015 年 41 巻 3 号 p. 398-401
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/09/09
    ジャーナル フリー
    静岡県駿東郡小山町は,300年前の富士山の噴火によってスコリア (岩滓) が厚く堆積している状況である。厚く堆積したスコリアは近年の豪雨により流出し,甚大な被害をもたらした。そこで,地域住民らが所有する山地での災害を未然に防ぐため,スコリア堆積地を植生回復させ,植物の根系緊縛力によるスコリア流出を抑制する試みを行った。本稿では,山地を所有している住民自らが行った,スコリア堆積地の防災対策事例について報告する。
論文
  • 白石 祐彰, 津田 吉晃, 高松 進, 津村 義彦, 松本 麻子
    原稿種別: 論文
    2015 年 41 巻 3 号 p. 402-409
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/09/09
    ジャーナル フリー
    土木工事により生じた大規模斜面における植栽の際には,自生集団の遺伝的多様性保全のために,自生あるいは遺伝的類縁性の高い近隣集団の種苗を用いるべきことが最近広く認知されている。埼玉県長瀞町および寄居町の送電鉄塔建設予定地において,生物多様性保全に配慮した緑化工を行う観点から,工事に伴う伐採前に採種して育苗したコナラ (Quercus serrata) を建設工事跡地に植栽した。この取組みにより,植栽集団 (実生 2集団) が自生集団の遺伝的多様性に与える影響を評価するために,マイクロサテライトマーカーを用いて植栽集団の遺伝的多様性や他集団 (埼玉県内の近隣 4集団および他県 3集団) との遺伝的分化程度について調査した。その結果,実生集団の遺伝的多様性は近隣の成木集団も含めて他集団と同程度であった。 STRUCTURE解析では埼玉県と他県集団には遺伝構造がみられたが,埼玉県内集団については全体で一つの地域交配集団とみなすことできた。これらのことから,建設工事跡地に植栽したコナラ種苗は自生集団の遺伝的多様性およびその地域性を維持しており,本取り組みによって自生集団の遺伝的多様性保全に貢献できたことがわかった。
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