森林の埋土種子は緑化素材として注目されており,その密度や空間分布を予測することは重要である。本研究は,埋土種子密度の空間的異質性を,階層的サンプリングにより定量した。調査地は100m斜面に沿って4種のパッチタイプ(針葉樹,ギャップ,落葉広葉樹,常緑広葉樹)が見られる二次林である。パッチタイプごとに,3つの5×5mプロットを設け,その中に20×20cmの方形区を3つ設置した。0―5cm深さの土を採取してプランターに移植し,発芽を5ヶ月間記録した。その結果,計116本25種の発芽が確認され,優占種はヒサカキとヒノキであった。埋土種子密度の空間的変異は,パッチ間より,パッチタイプ内のプロット間で大きく,後者が全データ分散の半分近くを占めた。埋土種子密度は,明るい環境(Indirect Site Factor=0.12―0.16)で減少し,一方,堅果を作る樹種が多いプロットでは増加する傾向があった。プロット内の方形区間での埋土種子密度の変異も大きく,確証を得るためにはさらなる調査が必要であるが,階層的サンプリング法で埋土種子密度の空間的な変動スケールを解析し,植生・環境変数との相関を検討する方法は簡便であり,緑化用の森林表土の効果的な採取法を策定する上で有効だと考えられた。
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